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2020年3月25日、ステラーラ(ウステキヌマブ)の適応に「既存治療で効果不十分な中等症から重症の潰瘍性大腸炎」を追加することが承認されました!
ステラーラには点滴静注と皮下注の2種類の剤形があって、適応が異なっています。
効能・効果 (一部略) |
点滴静注 | 皮下注 |
尋常性乾癬、乾癬性関節炎 | × | 〇 |
クローン病の導入療法 | 〇 | × |
クローン病の維持療法 | × | 〇 |
潰瘍性大腸炎の導入療法 | 〇 | × |
潰瘍性大腸炎の維持療法 | × | 〇 |
今回の潰瘍性大腸炎もクローン病と同様、
- 導入療法 ⇒ 点滴静注製剤
- 維持療法 ⇒ 皮下注製剤
となります。
今回はクローン病と潰瘍性大腸炎と共に、ステラーラの作用機序について解説します。
乾癬についてはこちらの記事をご覧ください。
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【乾癬】生物学的製剤の一覧と作用機序/特徴のまとめ
続きを見る
クローン病とは
大腸及び小腸の粘膜に慢性の炎症または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)といい、クローン病もこの疾患の一種とされています。
クローン病は主として若年者にみられ、口腔にはじまり肛門にいたるまでの消化管のどの部位にも炎症や潰瘍が起こりえますが、小腸と大腸を中心として特に小腸末端部が好発部位です。
非連続性の病変(病変と病変の間に正常部分が存在すること)を特徴とし、それらの病変により腹痛や下痢、血便、体重減少などが生じます。
そしてこのクローン病の発生原因は未だ不明とされていますが、炎症性疾患であることから、炎症サイトカインであるTNFαや各IL(インターロイキン)が関わっていると考えられています。
特に、クローン病では腸の抗原提示細胞によるIL-12およびIL-23の分泌が増加していることが知られています。
クローン病の治療
クローン病は、その病状により、「軽症」「中等症」「重症」に分類されております。
クローン病は原因が不明であるため、腸管の炎症を抑えて症状を鎮め寛解に導くこと、そして炎症のない状態を維持することが治療の主な目標になります。
内科的治療(薬物療法と栄養療法)が主体となりますが、内科的治療が有効でない場合や腸閉塞、穿孔などの合併症では外科治療が行われることもあります。
主な薬物療法は、以下の薬剤があり、重症度によって適宜併用して用います。1)
- 5-ASA製剤:メサラジン、サラゾスルファピリジン
- 副腎皮質ホルモン:ブレドニゾロン、ブデソニド
- 免疫調整薬:アザチオプリン、6-メルカプトプリン
これらの薬剤を使用しても症状が改善しない場合、「難治」とされ、難治性のクローン病に対して使用できる薬剤がステラーラです!
潰瘍性大腸炎と治療
潰瘍性大腸炎は炎症性腸疾患(炎症を伴う腸疾患)の1つであり、大腸の粘膜に炎症が起き、ただれたり、潰瘍が発生する疾患です。
好発年齢は10歳代後半~30代前半で、比較的若年者にみられます。
主な自覚症状としては、粘血便、下痢、腹痛などの症状が持続的かつ反復的にみられ、症状が悪化すると体重減少や発熱など、全身の症状が起こることもあるようです。
特に初期症状としては粘血便が多いとされています。
潰瘍性大腸炎の多くは、寛解(症状が落ち着いている状態)と再燃(症状が悪化している状態)を繰り返します。
長い経過のなかでは、徐々に病気が進行し、重大な合併症を引き起こすこともあり、さらに、長期間罹患していると、大腸がんの発現率も高くなると言われています!!
また、初期に行う主な薬物療法はクローン病と同じで、初期治療を使用しても症状が改善しない場合、「難治」とされ、以下のような生物学的製剤(抗TNFα抗体製剤)の使用が検討されます。1)
- レミケード点滴静注(一般名:インフリキシマブ)
- ヒュミラ皮下注(一般名:アダリムマブ)
- シンポニー皮下注(一般名:ゴリムマブ)
ステラーラも生物学的製剤のため、基本的には難治性の場合に使用します。
最近では新規の作用機序(α4β7インテグリン阻害)を有する生物学的製剤のエンタイビオ(ベドリズマブ)も登場してきました。
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エンタイビオ(ベドリズマブ)の作用機序【潰瘍性大腸炎/クローン病】
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IL-12とIL-23の構造
IL-12はp40サブユニットとp35サブユニットと呼ばれるタンパク質から構成されています。
IL-23はp40サブユニットとp19サブユニットと呼ばれるタンパク質から構成されています。
このように、IL-12とIL-23は共に「p40サブユニット」を有しているのが特徴です!
ステラーラ(ウステキヌマブ)の作用機序
ステラーラはヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤です。
IL-12とIL-23に共通する「p40サブユニット」を特異的に認識して結合する抗体のため、IL-12とIL-23を共に阻害することができます!
炎症の原因であるIL-12とIL-23を共に阻害することができるため、クローン病や潰瘍性大腸炎の進行を抑え、症状を軽減する、といった作用機序ですね!
副作用
重大な副作用として
- アナフィラキシー(頻度不明)
- 重篤な感染症(1%未満)
- 結核(頻度不明)
- 間質性肺炎(頻度不明)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
あとがき
p40サブユニットを標的にした抗体薬はステラーラしかありません。
p19サブユニットを標的にした抗体薬は乾癬の領域で以下が使用されていますが、いずれも潰瘍性大腸炎やクローン病の適応は有していません。
潰瘍性大腸炎もクローン病も治療選択肢が限られていましたので、治療選択の幅が広がることは朗報だと思います!
以上、今回はクローン病・潰瘍性大腸炎とステラーラについてご紹介いたしました♪
乾癬の生物学的製剤のまとめ記事も是非ご確認くださいませ~。
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【乾癬】生物学的製剤の一覧と作用機序/特徴のまとめ
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引用文献・資料等
- 日本消化器病学会ガイドライン:炎症性腸疾患(IBD)診療ガイドライン2020
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