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2025年2月20日、サークリサ(イサツキシマブ)の多発性骨髄腫における初回治療が承認されました!
サノフィ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | サークリサ点滴静注100mg/500mg |
一般名 | イサツキシマブ(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | 弊社の開発コード(SAR)にクリニカル(CLI)、 イサツキシマブ(ISA)の一般名を掛け合わせ設定した。 |
製薬会社 | サノフィ(株) |
効能・効果 | |
用法・用量 | 他の抗悪性腫瘍剤との併用において、 通常、成人にはイサツキシマブとして1 回10 mg/kg を、 併用する抗悪性腫瘍剤の投与サイクルを考慮して、 以下のA 法又はB 法の投与間隔で点滴静注する。 デキサメタゾンのみとの併用投与又は単独投与の場合(再発又は難治性の場合に限る)、 通常、成人にはイサツキシマブ(遺伝子組換え)として1 回20 mg/kg を、 以下のA法の投与間隔で点滴静注する。 A法:1週間間隔、2週間間隔の順で投与する。 B法:1週間間隔、2週間間隔及び4週間間隔の順で投与する。 |
収載時の薬価 | 100mg:64,699円 500mg:285,944円 |
サークリサは2020年6月29日に承認されたCD38に対するモノクローナル抗体薬で、同じく多発性骨髄腫に使用されるダラザレックス(ダラツムマブ)と同じ作用機序ですね。
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ダラキューロ/ダラザレックス(ダラツムマブ)の作用機序【多発性骨髄腫】
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その後、2021年11月25日には「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の効能・効果において、
- カイプロリス+デキサメタゾン(Cd療法)との併用
- デキサメタゾンとの併用
- サークリサ単独療法
を追加することが承認されています。
今後は初回治療として、VRd療法(ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾン)と併用で使用可能となります。
今回は多発性骨髄腫とサークリサ(イサツキシマブ)の作用機序についてご紹介します。
多発性骨髄腫について
通常、人の体内では、異物(ウイルス・細菌など)が侵入した際、B細胞から免疫グロブリン(抗体)が作られることで体を異物から守って感染症等を抑えてくれています。
多発性骨髄腫では、この抗体を産生するB細胞が異常増殖(腫瘍化)することで引き起こされる疾患で、血液腫瘍に分類されています。
がん化したB細胞(“骨髄腫細胞”と呼ばれます)は、健康な血液の産生を妨げたり、骨をもろくするなどのさまざまな障害を引き起こします。
その結果、症状として、
- 骨痛
- 腎機能障害
- 貧血
- 易感染性
- 出血傾向
などがみられます。
またこの骨髄腫細胞の表面には、「CD38」と呼ばれるシグナル伝達分子が過剰に発現していることも知られています。
多発性骨髄腫の治療
多発性骨髄腫の治療は造血幹細胞移植が可能かどうか、によって選択肢が異なります。1)
- 移植が可能:ボルテゾミブ+デキサメタゾン等を3~4回施行し、奏効すれば造血幹細胞移植
- 移植が不能:Ld療法*やMPB療法*が標準治療。その他、MPT療法*等もある。
*参考
- Ld療法:レナリドミド+デキサメタゾン
- MPB療法:メルファラン+プレドニゾロン+ボルテゾミブ
- MPT療法:メルファラン+プレドニゾロン+サリドマイド
移植が不能な場合の初回治療として、Ld療法やMPB療法とダラザレックスを併用することもあります。また、サークリサは初回治療として、VRd療法(ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾン)と併用で使用可能になりました。
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ダラキューロ/ダラザレックス(ダラツムマブ)の作用機序【多発性骨髄腫】
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造血幹細胞移植やその後の維持療法については以下の記事をご覧ください。
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ニンラーロ(イキサゾミブ)の作用機序【多発性骨髄腫】
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移植が成功したとしても一定数の患者さんは残念ながら再発してしまいます。また、移植が不能でMPB療法やMPT療法を行ったとしても不応(難治性)となる場合もあります。
その場合、プロテアソーム阻害薬(例:ボルテゾミブ、イキサゾミブ)もしくは免疫調整薬(例:レナリドミド、ポマリドミド)を単独または併用した治療法が行われます。
サークリサは、再発・難治性の多発性骨髄腫に対して、
- ポマリドミド+デキサメタゾンと併用
- カイプロリス+デキサメタゾン(Cd療法)との併用
- デキサメタゾンとの併用
- サークリサ単独療法
も使用可能とです。
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カイプロリス(カルフィルゾミブ)の作用機序【多発性骨髄腫】
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サークリサ(イサツキシマブ)の作用機序
サークリサは、骨髄腫細胞の表面にある「CD38」に特異的に結合する抗体製剤です。
サークリサが目印となって免疫細胞が攻撃しやすくなったりすること(ADCC活性)によって、抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。
その他にも以下の作用によって腫瘍細胞を排除すると考えられています。
- CDC(補体依存性細胞傷害)作用:補体系が活性化し、腫瘍細胞が障害される
- ADCP(抗体依存性細胞貪食)作用:貪食細胞が腫瘍細胞を貪食する
再発・難治性のエビデンス紹介:ICARIA-MM試験
再発・難治性の根拠となった臨床試験(ICARIA-MM試験)をご紹介します。2)
本試験はレナリドミドやプロテアソーム阻害薬を含む2回以上の治療歴がある再発・難治性多発性骨髄腫患者さんを対象に、ポマリドミド+デキサメタゾン(Pd)群とPd+サークリサ群を比較する第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「無増悪生存期間」で、結果は以下の通りでした。
試験群 | Pd療法 | サークリサ+ Pd療法 |
無増悪生存期間中央値 | 6.5か月 | 11.5か月 |
HR=0.596(95% CI 0.44-0.81) p=0.001 |
このように再発・難治性の多発性骨髄腫患者におけるPd療法ににサークリサを併用することで増悪までの期間を有意に延長することが示されています。

ちなみに、カイプロリス+デキサメタゾン(Cd療法)の根拠となったのはIKEMA試験です。3)
初回のエビデンス紹介:IMROZ試験
初回治療の根拠となった臨床試験(IMROZ試験)をご紹介します。4)
移植が不能な多発性骨髄腫患者さんを対象に、標準治療のVRd療法(ボルテゾミブ、レナリドミド、デキサメタゾン)とサークリサ+VRd療法を比較した第Ⅲ相臨床試験です。
本試験の主要評価項目は「無増悪生存期間」です。
VRd療法 | サークリサ+ VRd療法 |
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60か月時点の無増悪生存率 | 45.2% | 63.2% |
HR=0.60(95%CI:0.41~0.88)、 p<0.001 |

副作用
重大な副作用として、
- Infusion reaction(35.4%)
- 骨髄抑制:好中球減少症(21.3%)、血小板減少症(8.0%)、発熱性好中球減少症(2.9%)、貧血(3.0%)、リンパ球減少症(0.4%)
- 感染症(35.4%)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
収載時の薬価
収載時(2020年8月26日)の薬価は以下の通りです。
- サークリサ点滴静注100mg:64,699円
- サークリサ点滴静注500mg:285,944円(1日薬価:20,425円)
算定根拠については以下の記事で解説しています。
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【新薬:薬価収載】13製品(2020年8月26日)
続きを見る
まとめ・あとがき
サークリサはこんな薬
- 腫瘍細胞のCD38を特異的に認識する抗体製剤
- ADCC作用、DCD作用、ADCP作用によって抗腫瘍効果を発揮する
- 類薬にはダラザレックスがある
CD38に対する抗体製剤としてはダラザレックスに次いで2製品目の登場となります。
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ダラキューロ/ダラザレックス(ダラツムマブ)の作用機序【多発性骨髄腫】
続きを見る
ダラザレックスは多発性骨髄腫の初回治療から使用可能で、サークリサも初回治療から使用可能となりましたので、今後の使い分けが気になるところです。

以上、今回は多発性骨髄腫とサークリサ(イサツキシマブ)の作用機序についてご紹介しました。
引用文献・資料等
- 造血器腫瘍診療ガイドライン 2024年版
- ICARIA-MM試験:Lancet. 2019 Dec 7;394(10214):2096-2107.
- IKEMA試験:Lancet. 2021 Jun 19;397(10292):2361-2371.
- IMROZ試験:N Engl J Med. 2024 Oct 31;391(17):1597-1609.
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