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2023年9月25日、「高コレステロール血症」を対象疾患とするレクビオ皮下注(インクリシラン)が承認されました!
ノバルテイス|ニュースリリース
基本情報
製品名 | レクビオ皮下注300mgシリンジ |
一般名 | インクリシランナトリウム |
製品名の由来 | LEQVIO は以下の要素を由来としている。 ・この製品を通じて(VIO) ・LDL を正常レベルに戻す(LDL Equilibrium) |
製造販売 | ノバルティスファーマ(株) |
効能・効果 | 家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症 ただし、以下のいずれも満たす場合に限る。 ・心血管イベントの発現リスクが高い ・ HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分、又はHMG-CoA還元酵素阻害剤による治療が適さない |
用法・用量 | 通常、成人にはインクリシランナトリウムとして 1回300mgを初回、3か月後に皮下投与し、以降6か月に1回の間隔で皮下投与する。 |
収載時の薬価 | 443,548円(1日薬価:2,430円) |
発売日 | 2023年11月22日 |
レクビオは、国内では初となるPCSK9に対してRNA干渉(RNAi:RNA interference)を利用したsiRNA治療薬です。
siRNA治療薬は、既に以下の2製品が承認されていますので、レクビオは国内3製品目になりました。
オンパットロとアムヴトラはいずれもトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーに使用するため、脂質異常症に対するsiRNA治療薬はレクビオが初です。
機序的には抗PCSK9抗体のレパーサ(エボロクマブ)と似ていますね。
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レパーサ(エボロクマブ)の作用機序と副作用【高脂血症】
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いずれも皮下注投与が可能で、レパーサ4週間毎の投与が必要でしたが、レクビオは半年に1度の投与で治療効果が期待されていますよー!
今回は脂質異常症(高コレステロール血症)とレクビオ(インクリシラン)の作用機序・エビデンスについて紹介します。
脂質異常症について
厚生労働省の「平成29年(2017)患者調査の概況」によると、脂質異常症の患者さんの総数は220万5,000人と推計されており、年々増加傾向です。
やはり、その理由として食生活の欧米化、運動不足などが関与していると考えられます。
このような脂質異常症に関連する生体内の脂質には以下の3つの種類があります。
- LDLコレステロール(悪玉コレステロール)
- 中性脂肪(トリグリセライド)
- HDLコレステロール(善玉コレステロール)
脂質異常症は、これら脂質の基準値が異常となった場合に診断されます。1)
e-ヘルスネット|脂質異常症
今回ご紹介するレクビオは「高LDLコレステロール血症」に使用できる薬剤です。
治療
脂質異常症の治療の基本は、
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
です。
脂質異常症は多くの場合、食事や運動などの生活習慣が大きく関係しています。従って、治療の基本は食事療法と運動療法で、長期的に継続する必要があります。
食事療法と運動療法で脂質が改善しない場合、もしくは緊急を要する場合(心筋梗塞、脳梗塞)には薬物療法を行います。
高コレステロール血症の薬物療法では、HMG-CoA還元酵素阻害薬(例:クレストールやリピトールなどのスタチン系薬剤)が用いられます。最近では配合剤も色々登場してきました。
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リバゼブ配合錠(ピタバスタチン/エゼチミブ)の作用機序【高脂血症】
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HMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分または適さない場合、今回ご紹介するレクビオが使用できます。
ちなみに、高トリグリセライド血症の薬物療法では、エパデールEM(イコサペント酸エチル)などが用いられます。
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エパデールEM(イコサペント酸エチル)の作用機序|エパデールとの違い【高脂血症】
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PCSK9とLDLコレステロール
血中に存在しているLDLコレステロール(LDL-C)が増えすぎた場合、それを低下させる機構があります。
それを担うのが肝臓の「LDL受容体」です。
肝臓のLDL受容体にLDL-Cが結合することで、LDL-Cは肝細胞内に取り込まれ、血中のLDL-C値が下がります。
その後、LDL受容体は再利用されます。
しかし、このLDL受容体の分解を促進する働きを持つタンパク質が「PCSK9」です。
PCSK9と結合したLDL受容体がLDL-Cと結合すると、肝細胞内に取り込まれ、LDL受容体ごと分解されてしまいます。
レクビオ(インクリシラン)の構造と作用機序:RNA干渉
レクビオの有効成分はsiRNAと呼ばれる二本鎖のRNA構造で、標的となる遺伝子(この場合、PCSK9遺伝子)と同じ配列を有しています。
siRNAは非常に不安定な構造のため、そのまま体内に投与されると分解酵素等によって速やかに分解されてしまい薬効が発揮できません。
レクビオは、siRNAにGalNAc(N-アセチルガラクトサミン)を結合させた構造を有しています。GalNAcは、肝臓にて高発現しているアシアロ糖タンパク受容体(ASPGR)と結合する性質があるため、肝臓に対して選択的に運ばれて取り込まれます。2)
GalNAcで修飾することで、皮下注でも投与可能になるという特徴も!いいこと尽くし!
類薬のアムヴトラも同様の修飾によって安定性を高めていますね。
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アムヴトラ皮下注(ブトリシラン)の作用機序【TTR-FAP】
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siRNAが肝臓の細胞内に到達すると、速やかに一本鎖RNAになり、Argonauteと呼ばれるタンパク質と複合体(RISC)を形成します。
このRISCが標的であるPCSK9遺伝子のmRNA配列を認識し、切断していきます。
その結果、PCSK9遺伝子のmRNAが翻訳されなくなり、PCSK9の合成・産生が抑制されます。
レクビオは上記の作用機序によってPCSK9の合成を抑制し、結果的にLDL受容体が再利用されることで血中LDL-Cの取り込みを促進し、血中LDL-Cを低下させると考えられています。
エビデンス紹介:ORIONプログラム
根拠となった臨床試験はいくつかあり、ORIONプログラムとして実施されました。今回は代表的な2つの臨床試験(ORION-10試験、ORION-11試験)をご紹介します。
両試験は、最大耐量のスタチン療法を受けているにもかかわらずLDL-Cが高値のアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者さん(ORION-10試験)、およびASCVDまたはASCVDと同等のリスクを有する患者さん(ORION-11試験)を対象に、レクビオ群とプラセボ群を比較した第Ⅲ相臨床試験です。3)
主要評価項目は、「ベースラインから510日目までのLDL-C値の変化率(プラセボで調整)」と、「ベースラインから90日後および最大540日までのLDL-C値の時間調整済み変化率」とされ、レクビオ群の結果は以下の通りでした。
ORION-10試験 | ORION-11試験 | |
ベースラインから510日目までの LDL-C値の変化率(プラセボ調整) |
52.3% | 49.9% |
ベースラインから90日後および最大540日までの LDL-C値の時間調整済み変化率 |
53.8% | 49.2% |
※いずれもプラセボとの比較のp<0.001であった。
いずれもプラセボと比較して50%前後のLDL-C低下効果が得られていますね!
国内では、第Ⅱ相試験のORION-15試験が実施され、上記の臨床試験と同程度の治療成績が確認されました。4)
副作用
5%以上に認められる副作用として、注射部位反応(注射部位疼痛、注射部位紅斑、注射部位発疹等)が報告されています。
用法・用量
通常、成人にはインクリシランナトリウムとして1回300mgを初回、3か月後に皮下投与し、以降6か月に1回の間隔で皮下投与します。
収載時の薬価
収載時(2023年11月22日)の薬価は以下の通りです。
- レクビオ皮下注300mgシリンジ:443,548円(1日薬価:2,430円)
算定根拠については、以下の記事で解説しています。
-
【新薬:薬価収載】13製品(2023年11月22日)
続きを見る
レクビオとレパーサとの違い・比較
基本的な薬剤情報を以下にまとめました。
有効性を非盲検で直接比較した試験はありませんが、参考までに、レクビオとプラセボを比較したORION-1試験のうち、プラセボ投与群をレパーサ投与に切り替え、その後、レクビオに切り替えを行った際の有効性・安全性を検討したORION-3試験の結果をご紹介します。5)
試験デザインがややこしいので、論文の図5)を引用しています。
ORION-3試験の開始1年間については、レクビオとレパーサを比較していますので、その結果は以下の通りです。
1年目における経時的に平均したLDL コレステロールのベースラインからの平均変化率は、レパーサ群で-61.0%、レクビオ群で-42.5%という結果でした。ただ、統計処理を行っていないので差があるかどうかは不明ですが、論文中では「両群の有効性は同程度であった」と述べられています。
その他、レパーサでは心血管イベント抑制効果6)も示されている一方で、現状、レクビオは心血管イベント抑制効果についての報告はありません。
以上より、治療効果をより期待したい場合や心血管系の併存疾患がある場合にはレパーサの方が優れているかもしれません。また、よりアドヒアランスや利便性を向上したいのであれば投与回数の少ないレクビオが適しているのではないでしょうか。
まとめ・あとがき
レクビオはこんな薬
- 国内で3製品目のsiRNA治療薬
- RNA干渉によってPCSK9遺伝子をノックアウトさせる
- GalNAc(N-アセチルガラクトサミン)で修飾している
- 6か月毎の皮下注で治療が可能
これまで、HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)で効果不十分または適さない場合、抗PCSK9抗体薬のレパーサ(エボロクマブ)が使用されていましたが、4週間毎の皮下注が必要でした。
レクビオは6か月毎の皮下注投与で治療が可能なため、アドヒアランスの向上が期待できるのではないでしょうか。
以上、今回は脂質異常症(高コレステロール血症)とレクビオ(インクリシラン)の作用機序・エビデンスについて紹介しました。
引用文献・資料等
- e-ヘルスネット|脂質異常症
- STI Horizon 2019 Vol.5 No.4:新しい創薬モダリティとしての核酸医薬の動向
- ORION-10試験/ORION-11試験:N Engl J Med 2020; 382:1507-1519
- ORION-15試験:J Atheroscler Thromb. 2024 Jun 1;31(6):876-903.
- ORION-3試験:Lancet Diabetes Endocrinol. 2023 Feb;11(2):109-119.
- FOURIER試験:N Engl J Med. 2017 May 4;376(18):1713-1722.
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