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フォゼベル(テナパノル)の作用機序【高リン血症】

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2023年9月25日、「透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」を効能・効果とするフォゼベル錠(テナパノル)が承認されました!

協和キリン|ニュースリリース

基本情報

製品名 フォゼベル錠5mg/10mg/20mg/30mg
一般名 テナパノル塩酸塩
製品名の由来 新規(novel)作用機序のリン(phosphate)吸収阻害薬
製造販売 協和キリン(株)
効能・効果 透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善
用法・用量 通常、成人にはテナパノルとして1回5mgを開始用量とし、1日2回、朝食及び夕食直前に経口投与する。
以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は1回30mgとする。
収載時の薬価 5mg:234.10円
10mg:345.80円
20mg:510.90円
30mg:641.80円
発売日 2024年2月20日(HP

 

フォゼベルは国内初のナトリウムイオン/プロトン交換輸送体3(NHE3)を阻害する薬剤ですね!

 

木元 貴祥
木元 貴祥
これまでの高リン血症の治療薬は、リンの吸着薬のみでしたが、フォゼベルは新規の作用機序として期待できるのではないでしょうか。

 

ちなみに、米国では便秘型の過敏性腸症候群(IBS-C)に対する治療薬として「IBSRELA」の商品名で承認されていますが、国内ではIBS-Cには使用できませんのでご注意ください。IBSについては以下をご参照ください。

リンゼス(リナクロチド)の作用機序【便秘型IBS】

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また、米国では、国内と同様の「透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」を効能・効果として「XPHOZAH」の製品名で申請中です(現在はFDA未承認)。

 

今回は慢性腎臓病(CKD)と高リン血症、そしてフォゼベル(テナパノル)の作用機序について紹介していきます!

 

慢性腎臓病(CKD)とは

慢性腎臓病(CKD:chronic kidney disease)は、腎障害が慢性的に持続する疾患の全体を意味するもので、以下の場合、CKDと確定診断されます。1)

  • 尿異常(蛋白尿)、画像診断・血液所見・病理所見等で腎障害の存在が明らか
  • GFRが60(mL/分/1.73㎡)未満

※GFR:「糸球体ろ過量」のことで、腎機能の指標です。

 

CKDのリスク因子としては、以下です。

 

また、CKDの初期にはほとんど無症状のため徐々に腎機能が低下していきます。

 

腎臓は老廃物の排泄骨代謝造血器機能調節といった様々な役割を担っているので、CKDによって腎機能低下が進行してしまうと、

といった様々な症状が現れます。

 

従って、早期からリスク因子である原疾患の治療、症状に対する対処療法と共に、生活習慣改善が重要です!

 

基本的には合併症に準じた治療が行われ、例えば、高血圧を合併している場合には、腎保護作用も期待されているACE阻害薬やARBが推奨されています。1)

また、近年ではSGLT2阻害薬の有効性が示されていることから、フォシーガ(ダパグリフロジン)などが併用されることも多くなってきました。

フォシーガ(ダパグリフロジン)の作用機序【糖尿病/心不全/CKD】

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CKDが進行すると、透析が必要な状態になりますが、透析を伴うCKDではリンの排泄がうまくできないことから、特に高リン血症に注意する必要があります。

これまで、CKDの高リン血症に対しては、食事制限の他、炭酸ランタンやカルシウム・鉄製剤・セベラマーなどのリン吸着薬による治療が一般的でした。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
今回ご紹介するフォゼベルは、リンの吸収を抑制することで、血中のリン濃度を減少させる薬剤です!

 

ちなみに、CKDの症状の一つである腎性貧血に対しては

が使用されます。

エベレンゾ(ロキサデュスタット)の作用機序:類薬との比較・違い【腎性貧血】

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それではここから、腸管におけるリンの吸収のメカニズムを見ていきましょう!

 

腸管におけるリンの吸収:傍細胞経路

食物に含まれるリン(リン酸塩)は腸管上皮細胞の隙間(“タイトジャンクション”と呼びます)である傍細胞経路から吸収されると考えられています。2)

腸管におけるリンの吸収メカニズム:タイトジャンクション(傍細胞経路)によってリンが吸収される

 

タイトジャンクションには、ジッパーみたいな役割を担うクローディンと呼ばれるタンパク質が存在していて、必要に応じてクローディンが構造変化することでタイトジャンクションの開閉を行っています。

また、腸管上皮細胞にはナトリウムイオン(Na+)と水素イオン(H+)を交換するナトリウムイオン/プロトン交換輸送体3(NHE3)が存在していて、Na+とH+の吸収・排泄を調整しています。

 

通常、NHE3によってH+が腸管内に排泄されることで、腸管上皮細胞内のpHは中性付近に保たれていて、その場合、クローディンは構造変化を起こさないため、タイトジャンクションが開いている状態が保たれています。

 

フォゼベル(テナパノル)の作用機序:NHE3阻害薬

フォゼベルは腸管上皮細胞のNHE3を選択的に阻害する薬剤です。

NHE3が阻害されることで、Na+の吸収が抑制され、H+の排泄が抑制されます。その結果、腸管上皮細胞内のpHが酸性側に傾き、クローディンの構造変化を引き起こします。

 

クローディンが構造変化を引き起こすと、タイトジャンクションが閉じられてしまい、腸管内のリン酸塩が傍細胞経路から吸収されなくなってしまいます2)

フォゼベル(テナパノル)の作用機序;NHE3の選択的阻害薬

 

木元 貴祥
木元 貴祥
タイトジャンクションからのリン酸塩の吸収が抑制され、高リン血症の改善につながるといった作用機序ですね。

 

また、フォゼベル自身は腸管からほぼ吸収されることがないため、全身性の作用を示すことなく、腸管選択的に作用すると考えられています。

 

ちなみに、Na+と水分は同じような動き方をするため、Na+の吸収が抑制されると、水分の吸収も抑制されます。その結果、腸管内には水分が滞留しますので、便秘型のIBSに対しても効果が期待されているというわけです(国内ではIBSは未承認。米国ではIBS-Cに対してIBSRELAの商品名で承認)。

 

エビデンス紹介:国内第Ⅲ相試験

根拠となった臨床試験をご紹介します。3)

本試験は、国内における血液透析施行中の高リン血症の成人患者さん164名を対象に、フォゼベルとプラセボ投与時の有効性および安全性を評価した第Ⅲ相臨床試験試験です。

 

主要評価項目は「投与開始8週後の血清リン濃度のベースラインからの変化量」とされ、結果は以下の通りでした。

フォゼベル群 プラセボ群
投与開始8週後の血清リン濃度の
ベースラインからの変化量
-1.89mg/dL 0.05mg/dL
p<0.0001

 

木元 貴祥
木元 貴祥
フォゼベル群で有意なリンの低下が認められていますね。

 

海外でも同様の比較試験であるPHREEDOM試験4)やAMPLIFY試験5)が実施され、いずれもプラセボと比較して有意なリンの低下が認められていました。

 

副作用

5%以上に認められる副作用として、下痢(61.3%)が報告されています。

 

重大な副作用としても「重度の下痢(0.5%)」が挙げられていますので、作用機序的にも注意が必要ですね。

 

用法・用量

通常、成人にはテナパノルとして1回5mgを開始用量とし、1日2回、朝食及び夕食直前に経口投与します。以後、症状、血清リン濃度の程度により適宜増減しますが、最高用量は1回30mgです。

 

収載時の薬価

収載時(2023年11月22日)の薬価は以下の通りです。

  • フォゼベル錠5mg:234.10円
  • フォゼベル錠10mg:345.80円
  • フォゼベル錠20mg:510.90円
  • フォゼベル錠30mg:641.80円(1日薬価:1,283.60円)

 

算定根拠については、以下の記事で解説しています。

【新薬:薬価収載】13製品(2023年11月22日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

フォゼベルはこんな薬

  • 国内初のNHE3阻害薬
  • 腸管細胞内の酸性化によってクローディンの構造変化を引き起こし、リンの吸収を抑制する
  • 1日2回朝食・夕食直前に経口投与
  • 下痢に注意が必要

 

透析を伴うCKDではしばしば高リン血症が問題となりますが、これまでの高リン血症の治療薬は、リンの吸着薬のみでした。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
フォゼベルは吸着ではない新規の作用機序として期待できるのではないでしょうか。

 

以上、今回は慢性腎臓病(CKD)と高リン血症、そしてフォゼベル(テナパノル)の作用機序とエビデンスについて紹介しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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