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2014年5月23日、厚生労働省は、「骨巨細胞腫」を効能・効果とするランマーク皮下注(一般名:デノスマブ)を承認したと発表がありました。
すでにランマークは「多発性骨髄腫による骨病変及び固形癌骨転移による骨病変」に対する適応を有していましたので、今回は適応追加の承認になります☆
今回は骨巨細胞腫とランマーク(デノスマブ)の作用機序についてご紹介します。
骨の代謝(リモデリング)
骨には大きく以下の2つの役割があります。
- 体の骨格維持
- 電解質バランス(特にカルシウム)の維持
これらの役割を果たすために、骨は「リモデリング」と呼ばれる代謝を繰り返して、常に丈夫な骨が保たれています。
リモデリングに関わる細胞には、骨を壊す「破骨細胞」と骨を作る「骨芽細胞」が知られています。
破骨細胞が古くなった骨を壊し(“骨吸収”と呼びます)、壊された部分に骨芽細胞が新しい骨を作ります(“骨形成”と呼びます)。
このようなリモデリングがバランス良く行われることで、約2年で全身の骨が作り替えられと言われています。
破骨細胞とRANKL
正常な状態では骨のリモデリングに関わる骨吸収と骨形成がバランスよく存在しています。
しかし、骨巨細胞腫では何らかの原因で骨吸収と骨形成のバランスが崩れ、骨吸収が優勢になってしまっています。
骨吸収に関わる破骨細胞は、生体内の「RANKL(“ランクル”と読みます)」と呼ばれるサイトカインによって分化(活性化)することが知られています。
骨巨細胞腫とは
骨巨細胞腫は、手足の長い形状の骨である長管骨や脊椎などに発現する極めて稀な骨腫瘍で、新規発症の患者さんは日本で約2500人と言われています。
また、骨巨細胞腫では破骨細胞が活性化しています。
発症すると腫瘍細胞が急速に増殖して、破骨細胞を活性化することで骨を著しく破壊し骨周囲の軟部組織にまで浸潤するという特徴があり、肺転移を起こすこともあります。
今まで、日本では骨巨細胞腫に適応を有する有効な治療薬はなく、腫瘍の切除が可能な場合に限り、外科的処置が唯一の根治治療となっていました。
ランマーク皮下注(デノスマブ)の作用機序
ランマークは、破骨細胞の活性化に関与するRANKLを特異的に阻害するヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤です。
RANKLを阻害することで、破骨細胞の活性化を抑制し、骨のリモデリングのバランスが保たれます。
その結果、骨巨細胞腫の進行を抑制すると考えられています。
ランマーク皮下注の副作用
主な副作用として頭痛、疲労、悪心、低リン酸血症、低カルシウム血症などが報告されています。
特に重篤な低カルシウム血症は生命の危機にもなりますので、常に血中のカルシウム濃度は注意して観察する必要があります。
稀に重大な副作用として顎骨壊死(がっこつえし)の報告もあります。
これは顎の骨が壊死していく副作用で、重篤な場合は手術する必要もあるため、早めの発見が重要です。
あとがき
骨巨細胞腫は今まで有効な治療薬はありませんでしたので、今回のランマークは患者さんにとって朗報になるのではないでしょうか。
ちなみに、
有効成分のデノスマブは、骨粗鬆症や関節リウマチにはプラリア皮下注(一般名:デノスマブ)として使用されています。
ランマーク皮下注(一般名:デノスマブ)は腫瘍(がん)に関連した疾患に使用し、用法・用量も異なりますので、区別されています。
がんの骨転移とランマークについては以下の記事をご参照ください。
以上、今回は骨巨細胞腫とランマーク(デノスマブ)の作用機序についてご紹介しました。
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