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「クッシング病(外科的処置で効果が不十分又は施行が困難な場合)」の効能・効果を追加する新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品のシグニフォーLAR筋注用キット10mg、同筋注用キット20mg、同筋注用30mg、同筋注用キット40mg(一般名:パシレオチドパモ酸塩)が2018年3月23日に承認されました。
今回はクッシング病とシグニフォー(パアシレオチド)の作用機序についてご紹介します。
コルチゾール分泌のメカニズム
通常、我々の体内のホルモンバランスは様々な因子によって調整されています。
クッシング病で関与している「コルチゾール」は副腎で合成されるホルモンです。
コルチゾールの分泌は、脳下垂体で合成される「副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)」によって促進されています。
即ち、
脳下垂体のACTH⇒副腎⇒コルチゾールの分泌、といった流れで分泌量が調整されています。
クッシング病と症状
クッシング病とは、
脳下垂体に良性の腫瘍ができることでACTHが過剰に分泌され、コルチゾールの過剰分泌が引き起こされる疾患です。
コルチゾールの過剰分泌によって、
- 満月様顔貌(ムーンフェイス):むくんだ赤ら顔
- 肥満
- 高血圧
- 糖尿病
- 骨粗鬆症
- うつ病
などの症状がみられます。
男女比は、1:4で女性に多い疾患です。
クッシング病の治療
脳下垂体の良性腫瘍が原因のため、基本は手術によって取り除く治療が行われます。
しかし、画像診断等で発見しずらかったり、脳の手術のため、手技が困難であったり、と手術ができないことも少なくありません。
今回ご紹介するシグニフォーは、手術で効果不十分または手術が困難な場合に使用できる薬剤です!
シグニフォー(一般名:パアシレオチド)の作用機序
脳下垂体のホルモン分泌を抑制する物質として「ソマトスタチン」が知られています。
ソマトスタチンが脳下垂体に作用すると、各種ホルモン分泌量が抑制されます。
クッシング病の良性腫瘍にもソマトスタチンが結合する「ソマトスタチン受容体」が存在しています。
シグニフォーはソマトスタチンアナログ製剤で、腫瘍のソマトスタチン受容体を刺激することで、腫瘍からのACTH分泌を抑制します。
※アナログとは“類似の”という意味です。
ACTH分泌が抑制される結果、副腎からのコルチゾール分泌も抑制され、クッシング病の症状緩和につながると考えられます。
類薬とシグニフォー(一般名:パアシレオチド)の特徴
ソマトスタチン受容体には1~5の種類があります。
他のソマトスタチンアナログ製剤の類薬には、
- サンドスタチン(一般名:オクトレオチド)
- ソマチュリン(一般名:ランレオチド)
などがありますが、これらは主にソマトスタチン受容体2に作用します。
シグニフォーは2以外のソマトスタチン受容体(1~5)にも作用することから、より薬理作用が強力だと考えられます。
また、有効成分がカプセルに包まれて、マイクロスフェア型徐放製剤としているため、長時間作用が持続する特徴もあります。
あとがき
クッシング病に使用できる薬剤は限られていたことから、シグニフォーの選択肢が増えたことは朗報かと思います。
以上、今回はクッシング病とシグニフォー(パアシレオチド)の作用機序についてご紹介しました。
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