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厚労省は2017年7月3日、「関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品のプラリア皮下注60mgシリンジ(一般名:デノスマブ(遺伝子組換え))を承認したと発表がありました!
今回は骨の代謝と関節リウマチ、そしてプラリア(デノスマブ)の作用機序についてご紹介します。
骨の代謝(リモデリング)
骨には大きく以下の2つの役割があります。
- 体の骨格維持
- 電解質バランス(特にカルシウム)の維持
これらの役割を果たすために、骨は「リモデリング」と呼ばれる代謝を繰り返して、常に丈夫な骨が保たれています。
リモデリングに関わる細胞には、骨を壊す「破骨細胞」と骨を作る「骨芽細胞」が知られています。
破骨細胞が古くなった骨を壊し(“骨吸収”と呼びます)、壊された部分に骨芽細胞が新しい骨を作ります(“骨形成”と呼びます)。
このようなリモデリングがバランス良く行われることで、約2年で全身の骨が作り替えられと言われています。
破骨細胞とRANKL
正常な状態では骨のリモデリングに関わる骨吸収と骨形成がバランスよく存在しています。
しかし、骨粗鬆症や関節リウマチでは何らかの原因で骨吸収と骨形成のバランスが崩れ、骨吸収が優勢になってしまっています。
骨吸収に関わる破骨細胞は、生体内の「RANKL(“ランクル”と読みます)」と呼ばれるサイトカインによって分化(活性化)することが知られています。
関節リウマチについて
一般に、骨や関節、筋肉などが全身的な炎症を伴って侵される病気を総称して「リウマチ性疾患」といいます。
このうち、関節に炎症が続いて、関節が徐々に破壊され、やがて機能障害を起こす疾患のことを「関節リウマチ」と呼んでいます。
関節リウマチの特徴的な症状は「関節の腫れ」で、最も発現しやすい部位は、手首や手足の指の関節です。
また、関節リウマチの症状は「対称性」といって、左右両側の関節に発現することが多いのが特徴です。
関節リウマチの発症メカニズムは明確には不明ですが、免疫系の異常が考えられています。
免疫系が異常に活動する結果として、関節滑膜組織にリンパ球、マクロファージなどの白血球がでてきます。
このリンパ球やマクロファージが産生するサイトカイン(TNFα、IL-6など)と呼ばれる物質の作用により関節内に炎症反応が引き起こされると考えられています。
これらサイトカイン(TNFα、IL-6など)の作用によって、体内のRANKLが増加することが知られています。
RANKLが増加する結果、破骨細胞によって関節滑膜で骨が破壊されてしまい、骨が欠けてしまうことがあります。
これを「骨びらん」と呼んでいます。
X線検査ではっきりと骨が虫食い状態に穴が開いていることが確認でき、進行していくと骨が脱臼や亜脱臼をしてしまいます。
関節リウマチの治療
治療には通常、
痛みを抑えるNSAIDsや炎症を抑えるステロイド、抗リウマチ薬(DMARD:“ディーマード”と読みます)が使用されます。
DMARDを使用してもリウマチ症状の進行が抑えられない場合、生物化学的製剤が使用されます。
また、DMARDによる治療を行っても骨びらんの進行が認められる患者さんに対してプラリア皮下注を追加投与して用いることができます☆
プラリア皮下注(デノスマブ)の作用機序
プラリアは、破骨細胞の活性化に関与するRANKLを特異的に阻害するヒト型抗RANKLモノクローナル抗体製剤です。
RANKLを阻害することで、破骨細胞の活性化を抑制し、骨のリモデリングのバランスが保たれます。
その結果、骨破壊の進行(骨びらんの進行)を抑制すると考えられています。
プラリア皮下注の副作用
主な副作用には慢性胃炎、低カルシウム血症などが認められています。
特に重篤な低カルシウム血症は生命の危機にもなりますので、常に血中のカルシウム濃度は注意して観察する必要があります。
稀に重大な副作用として顎骨壊死(がっこつえし)の報告もあります。
これは顎の骨が壊死していく副作用で、重篤な場合は手術する必要もあるため、早めの発見が重要です。
あとがき
プラリアは今までは骨粗鬆症のみの適応でしたが、関節リウマチの適応が拡大されました☆
患者さんにとっては治療選択肢が増えるため、朗報ではないでしょうか。
ちなみに、
有効成分のデノスマブは、がん(腫瘍)関連にはランマーク皮下注(一般名:デノスマブ)として使用されています。
ランマーク皮下注(一般名:デノスマブ)は腫瘍(がん)に関連した疾患に使用し、用法・用量も異なりますので、区別されています。
以上、本日はリウマチによる骨びらんと、プラリア皮下注についてご紹介いたしました♪
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