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エンブレル(エタネルセプト)の作用機序【関節リウマチ】

「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」と「既存治療で効果不十分な多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎」を効能・効果とするバイオ後続品

  • エタネルセプトBS皮下注シリンジ/ペン「TY」
  • エタネルセプトBS皮下注シリンジ/ペン「日医工」

2019年3月26日に承認されました。

 

エタネルセプトの先発医薬品は「エンブレル」で、既に以下のバイオ後続品(バイオシミラー:BS)が承認・販売されています。

  • エタネルセプトBS皮下注用10mg「MA」、同25mg「MA」、同皮下注25mgシリンジ0.5mL「MA」、同皮下注50mgシリンジ1.0mL「MA」、同皮下注50mgペン1.0mL「MA」:2018年1月19日に承認

 

バイオ後続品とは高分子タンパク製剤(抗体薬などのバイオ医薬品)の後発医薬品のことで、「バイオシミラー」とも呼ばれます。

 

本日はバイオ後続品について、そして関節リウマチとエタネルセプトの作用機序についてご紹介します☆

 

バイオ後続品(バイオシミラー)とは

通常、低分子医薬品の後発医薬品(ジェネリック医薬品)は主成分の構造式が全くの同一です。構造式が同一であれば、生体内の作用・副作用も先発医薬品と同一であるとみなされています。

ただし、先発医薬品とジェネリック医薬品では添加剤や製法等は異なることがあります。

 

最近では、先発医薬品と添加剤や製法等も全く同一の「オーソライズド・ジェネリック(AG)」も登場していますね。

 

一方、抗体薬に代表されるバイオ医薬品は、低分子の医薬品と比べて分子量が非常に大きく、また三次構造等の複雑な構造をしていることから、先発医薬品と主成分が全く同じであることを証明することが困難です。

従って、生体内の作用・副作用も先発医薬品と同一でない可能性があります。

 

そのため、作用や副作用が先発医薬品と同一かを検証するために、臨床試験を行い、同一性を証明する必要があります。

厚労省に提出する申請資料として、低分子のジェネリック医薬品では最大4種類ですが、バイオシミラーでは臨床試験成績を含む最大20種類に上ります。

 

今回ご紹介するエタネルセプトBSは、臨床試験でも同一性が証明されたため、承認に至っています。

それではここからエタネルセプトBSの主な効能・効果である関節リウマチについてご紹介します☆

 

関節リウマチについて

一般に、骨や関節、筋肉などが全身的な炎症を伴って侵される病気を総称して「リウマチ性疾患」といいます。

 

このうち、関節に炎症が続いて、関節が徐々に破壊され、やがて機能障害を起こす疾患のことを「関節リウマチ」と呼んでいます。

関節リウマチの特徴的な症状は「関節の腫れ」で、最も発現しやすい部位は、手首手足の指の関節です。

また、関節リウマチの症状は「対称性」といって、左右両側の関節に発現することが多いのが特徴です。

 

関節リウマチの発症メカニズムは明確には不明ですが、免疫系の異常が考えられています。

免疫系が異常に活動する結果として、関節滑膜組織にリンパ球、マクロファージなどの白血球がでてきます。

このリンパ球やマクロファージが産生するサイトカイン(TNFαTLα、IL-6など)と呼ばれる物質の作用により関節内に炎症反応が引き起こされると考えられています。

 

関節リウマチの治療

治療には通常、
痛みを抑えるNSAIDsや炎症を抑えるステロイド抗リウマチ薬(DMARD:“ディーマード”と読みます)が使用されます。

これらの薬剤を使用しても進行が抑えられない場合、生物化学的製剤が使用されます。

 

エタネルセプトの構造

エタネルセプトは、TNFαやTLαが結合する「TNFα受容体部分」とヒトIgG抗体の「Fc領域(定常領域)」を組み合わせた完全ヒト型可溶性TNFα/LTαレセプター製剤です。

このような構造を有することから、エタネルセプトは「囮受容体」とも言われています。

 

エタネルセプトの作用機序

エタネルセプトは、関節リウマチの炎症や関節破壊に関与するTNFαとTLαに結合し、その活性を抑制することで関節リウマチの進行抑制、症状緩和効果を発揮します!

 

エタネルセプトの剤形

エタネルセプトBS「MA」「TY」「日医工」には以下の剤形があり、先発品のエンブレルと規格が若干異なります。

皮下注用 皮下注シリンジ 皮下注ペン
先発品(エンブレル) 10mg
25mg
25mg
50mg
25mg
50mg
エタネルセプトBS「MA」 10mg
25mg
25mg
50mg
50mg
エタネルセプトBS「TY」 - 10mg
25mg
50mg
50mg
エタネルセプトBS「日医工」 - 10mg
25mg
50mg
50mg

 

BS「TY」と「日医工」は注射用製剤がない代わりに、10mg・25mg・50mgは全て注射用シリンジにまとめられていますね。

2018年2月9日、先発医薬品のエンブレルに「皮下注ペン25mg」の規格が追加承認されましたので、BSと規格が異なっています(BSのペンは50mgのみ)。

 

類薬

既にTNFαを阻害する以下の生物学的製剤も販売されています。

エタネルセプトを含め、これらTNFαを阻害する生物学的製剤は感染症やアレルギー等の副作用に注意が必要です。

 

その他にもIL-6の受容体を阻害する以下の生物学的製剤(抗体製剤)も販売されています。

 

 

IL-6受容体阻害薬の副作用としては、共に感染症やアレルギーの他、脂質代謝異常(高コレステロール血症)等の副作用にも注意が必要です。

 

あとがき

近年、関節リウマチ領域では、プラリア皮下注(一般名:デノスマブ(遺伝子組換え))スマイラフ(一般名:ペフィシチニブ)等、新規薬剤が次々に登場しています。

 

今後はこれら薬剤の使い分け等が検討されれば興味深いと感じます!

 

以上、今回は関節リウマチとエタネルセプトについてご紹介しました!

 

関節リウマチの生物学的製剤一覧のまとめ記事もありますので是非ご覧ください☆

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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