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ケブザラ(サリルマブ)の作用機序と副作用【関節リウマチ】

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既存治療で効果不十分な関節リウマチ」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品のケブザラ皮下注シリンジ/オートインジェクター(一般名:サリルマブ(遺伝子組換え))2017年9月27日に承認されました!

製薬会社

  • 製造販売元:サノフィ(株)
  • 発売元:旭化成ファーマ(株)

 

シリンジは2017年11月22日に薬価収載され、オートインジェクターは2018年11月28日に薬価収載されました。

共に2018年12月1日より在宅自己注が可能となっています!

 

本日は関節リウマチとケブザラ(サリルマブ)の作用機序についてご紹介します☆

 

関節リウマチについて

一般に、骨や関節、筋肉などが全身的な炎症を伴って侵される病気を総称して「リウマチ性疾患」といいます。

このうち、関節に炎症が続いて、関節が徐々に破壊され、やがて機能障害を起こす疾患のことを「関節リウマチ」と呼んでいます。

 

関節リウマチの特徴的な症状は「関節の腫れ」で、最も発現しやすい部位は、手首手足の指の関節です。

また、関節リウマチの症状は「対称性」といって、左右両側の関節に発現することが多いのが特徴です。

 

関節リウマチの発症メカニズムは明確には不明ですが、免疫系の異常が考えられています。

免疫系が異常に活動する結果として、関節滑膜組織にリンパ球、マクロファージなどの白血球がでてきます。

このリンパ球やマクロファージが産生するサイトカイン(TNFα、IL-6など)と呼ばれる物質の作用により関節内に炎症反応が引き起こされると考えられています。

 

特に、IL-6は関節リウマチ患者の血清中および滑液中に最も多く認められるサイトカインで、IL-6のレベルは疾患活動性および関節破壊と相関すると言われています。

 

関節リウマチの治療

治療には通常、
痛みを抑えるNSAIDsや炎症を抑えるステロイド抗リウマチ薬(DMARD:“ディーマード”と読みます)が使用されます。

これらの薬剤を使用しても進行が抑えられない場合、生物化学的製剤が使用されます。

 

ケブザラ(一般名:サリルマブ)の作用機序

ケブザラ皮下注は炎症の原因物質であるIL-6の結合する受容体を阻害する「完全ヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体」で、生物学的製剤に分類されています。

 

IL-6は疾患活動性と関節破壊を亢進するサイトカインのため、ケブザラ皮下注によってIL-6のシグナル伝達を阻害することで、関節リウマチの進行抑制、症状緩和が期待できます!

ケブザラシリンジ/オートインジェクターの薬価、自己注射

シリンジの収載時(2017年11月22日時点)の薬価は以下の通りです。

  • 150mg 1.14mL1筒:45,467円
  • 200mg 1.14mL1筒:60,329円(1日薬価:4,309円)

 

オートインジェクターの収載時(2018年11月28日)の薬価は以下の通りです。

  • 150mg 1.14mL 1キット:44,945円
  • 200mg 1.14mL 1キット:59,509円

 

シリンジ/オートインジェクターは共に2018年12月1日より自己注射も可能です!

オートインジェクターはキャップを外して皮膚に押し当てるだけで自動的に針が出て投与が完了します。患者さんは針先を見ることなく投与可能ですので、より利便性が良いのではないでしょうか。

 

ケブザラの類薬とモノクローナル抗体の種類

同様の作用機序を有する生物学的製剤としてアクテムラ点滴静注/皮下注(一般名:トシリズマブ(遺伝子組換え))が既に販売されています。

 

共にIL-6の受容体を阻害する抗体製剤ですが、ケブザラは「“完全ヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体」で、アクテムラは「ヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体」に分類されています。

 

一般的には、完全ヒト型抗体の方が、通常のヒト抗体に近いため副作用が低いと言われていますが、この違いが臨床的効果・副作用にどのような差が現れるのか気になるところですね。

 

使い方は、以下の通りです。

  • ケブザラ皮下注、アクテムラ皮下注:2週間隔皮下投与
  • アクテムラ点滴静注:4週間隔静脈投与

共にメトトレキサート併用・非併用でも使用できます。

 

なお、アクテムラ皮下注は効果不十分な場合、1週間隔まで投与期間を短縮することができます。

 

副作用としては、共に感染症やアレルギーの他、脂質代謝異常(高コレステロール血症)等の副作用にも注意が必要です。

 

ケブザラの特徴・ヒュミラとの直接比較試験

ケブザラとヒュミラ(一般名:アダリムマブ)を直接比較した第Ⅲ相臨床試験(MONARCH試験)があります。1)

 

MTXは併用せずに、ケブザラ(2週間毎)群とヒュミラ(2週間毎)群を直接比較した結果、以下の成績でした。

ケブザラ群 ヒュミラ群
24週時点のDAS28-ESR*
(主要評価項目)
-3.28 -2.20
p<0.0001
ACR20/50/70 71.7%/45.7%/23.4% 58.4%/29.7%/11.9%
p≤0.0074

*ヨーロッパリウマチ連盟が推奨している関節リウマチの活動性の評価法のうち、赤血球沈降速度を評価しているもの
†米国リウマチ学会の関節リウマチの診断基準で、20%/50%/70%以上改善した割合

 

ケブザラの使用を考慮する際に参考になる臨床試験だと思われます。

 

1)MONARCH試験:Ann Rheum Dis. 2017 May;76(5):840-847.

 

あとがき

近年、関節リウマチ領域では、
オルミエント錠(一般名:バリシチニブ)プラリア皮下注(一般名:デノスマブ(遺伝子組換え))等、新規薬剤が次々に登場しています。

 

また、既にTNFαを阻害する以下の生物学的製剤も販売されています。

これらTNFαを阻害する生物学的製剤は感染症やアレルギー等の副作用に注意が必要です。

 

今後もMONARCH試験のような使い分け等が検討されれば興味深いと感じます!

以上、本日は関節リウマチとケブザラ皮下注についてご紹介しました!

 

<2018年4月10日追記>

関節リウマチの生物学的製剤一覧のまとめ記事を公開しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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