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エプキンリ(エプコリタマブ)の作用機序【DLBCL】

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2023年9月25日、「再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫」を対象疾患とするエプキンリ皮下注(エプコリタマブ)が承認されました

いわゆる、悪性リンパ腫に使用する薬剤ですね。

ジェンマブ|ニュースリリース

基本情報

製品名 エプキンリ皮下注4mg/48mg
一般名 エプコリタマブ
製品名の由来 有効成分であるepcoritamabに由来する。
製薬会社 製造販売:ジェンマブ(株)
販売提携:アッヴィ(合)
効能・効果 ●以下の再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫
-びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
-高悪性度B細胞リンパ腫
-原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫
●再発又は難治性の濾胞性リンパ腫
用法・用量 通常、成人にはエプコリタマブ(遺伝子組換え)として、28日間を1サイクルとして、
1サイクル目は1日目に1回0.16mg、8日目に1回0.8mg、15日目及び22日目に1回48mgを皮下投与する。
その後は1回48mgを、2及び3サイクル目は1、8、15、22 日目、
4から9 サイクル目には1、15日目、10サイクル目以降は1日目に皮下投与する。
収載時の薬価 皮下注4mg:137,724円
皮下注48mg:1,595,363円
発売日 2023年11月22日

 

エプキンリは、CD3とCD20に共に結合可能な二重特異性抗体に分類されています。

 

木元 貴祥
通常、抗体は1種類の抗原にしか結合できませんが、エプキンリは2種類の抗原と結合可能です!

 

二重特異性抗体は既に何製品か承認されていますが、大細胞型B細胞リンパ腫では初でしょうか。

 

二重特異性抗体の例

 

今回は悪性リンパ腫の中でも「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」とエプキンリ(エプコリタマブ)の作用機序・エビデンス等について解説していきます。

 

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悪性リンパ腫とは

造血機腫瘍の中でも、リンパ系の血球成分(例:B細胞、T細胞、NK細胞など)から発生するものを「悪性リンパ腫」と呼んでいます。

 

細かい分類は非常に多いのですが、大きく分類すると以下の2種類です。1)

  • ホジキンリンパ腫(HL:Hodgkin lymphoma)
  • 非ホジキンリンパ腫(NHL:Non Hodgkin lymphoma)

 

木元 貴祥
国内ではほとんどがNHLと言われていますね。

 

今回ご紹介するびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B-cell lymphoma)は、NHLの中でも最も多いサブタイプです。

 

また、悪性リンパ腫では、疾患の悪性度や予後の臨床分類としてアグレッシブ分類(低悪性度、中悪性度、高悪性度)が行われますが、DLBCLは「中悪性度」のアグレッシブ分類とされています。

 

そしてDLBCLの原因となるリンパ腫細胞は「B細胞」に由来していることがほとんどで、細胞膜表面にはしばしば「CD20」を発現していることが知られています。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)とCD20

 

DLBCLと治療

DLBCLは発見時の進行度(限局期もしくは進行期)によって治療が若干異なりますが、基本は薬物療法です。2)

 

限局期であっても進行期であっても「R-CHOPアールチョップ療法*」を3~8回行い、場合によっては放射線と併用することもあります。

*R-CHOP療法:リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用療法

 

最近では、初回治療としてポライビー(ポラツズマブ ベドチン)とR-CHP療法**を併用することも可能となりました。

**R-CHP療法:リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、プレドニゾロンの併用療法

ポライビー(ポラツズマブ ベドチン)の作用機序・特徴【DLBCL】

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さて、初回のR-CHOP療法やポライビー+R-CHP療法で抵抗性を示した場合や再発してしまった場合、その後の治療選択肢としては以下があります。2)

 

  • DHAP療法:デキサメタゾン、シスプラチン、シタラビン
  • ESHAP療法:メチルプレドニゾロン、エトポシド、シタラビン、シスプラチン
  • ICE療法:イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド
  • CHASE療法:シクロホスファミド、シタラビン、デキサメタゾン、エトポシド
  • Dose adjusted-EPOCH療法:エトポシド、プレドニゾロン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン
  • MINE療法:ミトキサントロン、イホスファミド、メスナ、エトポシド
  • GDP療法:ゲムシタビン、デキサメタゾン、シスプラチン

いずれもリツキシマブと併用する場合あり

 

ちなみに、CD19が陽性の場合、同様の治療選択肢としては、以下のCAR-T細胞療法もありますね。

キムリア(チサゲンレクルユーセル)の作用機序・特徴と副作用【急性リンパ性白血病】

続きを見る

 

しかし、上記の治療を2回以上行ったにも関わらず抵抗性・再発を示した場合、その後の治療選択肢は限られていました。

 

木元 貴祥
今回ご紹介するエプキンリは、再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫に対して治療効果が期待されています!

 

エプキンリ(エプコリタマブ)の構造・作用機序

体内の腫瘍細胞を除去する免疫細胞としてT細胞やNK細胞がありますが、T細胞は細胞膜表面に「CD3」と呼ばれるタンパク質を発現していることが知られています。

エプキンリは白血病細胞のCD20を認識する抗CD20抗体と、T細胞のCD3を認識する抗CD3抗体を組み合わせた構造を有していて、DuoBody®と呼ばれる技術で生成された抗体とのことです。

エプキンリー(エプコリタマブ)は白血病細胞のCD20を認識する抗CD20抗体と、T細胞のCD3を認識する抗CD3抗体を組み合わせた構造を有する。

 

T細胞は体内の白血病細胞を発見して除去してくれる免疫細胞ですが、白血病細胞はそれから逃れようとしています。

 

エプキンリは白血病細胞のCD20とT細胞のCD3を共に認識することで、白血病細胞とT細胞に架け橋を形成します。白血病細胞とT細胞が連結することで、白血病細胞は逃げられなくなります。

エプキンリー(エプコリタマブ)の構造と作用機序

 

木元 貴祥
白血病細胞とT細胞の橋渡しをするイメージですね。

 

その結果、白血病細胞に対するT細胞の攻撃が促進され、さらにADCC(抗体依存性細胞障害)活性やDCD(補体依存性細胞障害)活性によって白血病細胞を除去できると考えられます。

 

エビデンス紹介:GCT3013-01試験(EPCORE NHL-1試験)

根拠となった臨床試験はいくつかありますが、代表的なGCT3013-01試験(EPCORE NHL-1試験)をご紹介します。3-4)

本試験はDLBCLを含む再発・難治性の成熟B細胞NHL患者さんを対象に、エプキンリの初回投与用量漸増パート(第Ⅰ相パート)と第Ⅱ相拡大パートからなる非盲検・単群の国際共同第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験です(日本を含む)。

 

第Ⅱ相パートの主要評価項目は「奏効率」とされ、結果は「61%(完全奏効38%+部分奏効23%」と主要評価項目を達成していました。

 

木元 貴祥
生存期間等の成績はまだ未公表のため、今後の結果も気になりますね。

 

用法・用量

通常、成人にはエプコリタマブ(遺伝子組換え)として、28日間を1サイクルとして、以下の投与スケジュールで皮下投与します。

  • 1サイクル目:初回(day 1)に0.16mg、day 8に0.8mg投与、day 15とday 22に48mg投与
  • 2~3サイクル目:毎週(day 1, 8, 15, 22)に48mg投与
  • 4~9サイクル目:隔週(day 1, 15)に48mg投与
  • 10サイクル目以降:day 1に48mg投与

 

木元 貴祥
単剤で治療可能かつ皮下注投与のため、投与時間は約1分とかなり簡便な印象です。

 

副作用

重大な副作用として、

  • サイトカイン放出症候群(56.0%)
  • 免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(5.7%)
  • 感染症(11.4%)
  • 血球減少(35.2%)
  • 腫瘍崩壊症候群(1.0%)
  • 進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明)

が挙げられています。

 

特にサイトカイン放出症候群は、二重特異性抗体薬のエプキンリやCAR-T細胞療法(キムリアなど)でも高頻度で認められていて、死に至る可能性もあるため特に注意が必要です!!

キムリア(チサゲンレクルユーセル)の作用機序・特徴と副作用【急性リンパ性白血病】

続きを見る

 

なお、サイトカイン放出症候群の対処薬として、CAR-T細胞療法と同様にアクテムラ点滴静注用(一般名:トシリズマブ)を使用します。

 

収載時の薬価

収載時(2023年11月22日)の薬価は以下の通りです。

  • エプキンリ皮下注4mg:137,724円
  • エプキンリ皮下注48mg:1,595,363円(1日薬価:113,955円)

 

算定根拠については、以下の記事で解説しています。

【新薬:薬価収載】13製品(2023年11月22日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

エプキンリはこんな薬

  • 2つ以上の前治療歴を有する再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫に使用する
  • 抗CD20抗体と抗CD3抗体を組み合わせた構造を有する二重特異性抗体(DuoBody®
  • サイトカイン放出症候群には注意が必要

 

DLBCLを含む大細胞型B細胞リンパ腫は、近年様々な治療法が登場してきていますが、それでも治療選択肢が限られている状況です。

 

木元 貴祥
そんな中、新規の作用機序を有するエプキンリは期待できるのではないでしょうか。

 

初回治療を対象とする第Ⅲ相臨床試験(jRCT2021220043)も進行中のため、今後の適応拡大も期待したいと思います♪

 

以上、今回は悪性リンパ腫の中でも「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」とエプキンリ(エプコリタマブ)の作用機序等について解説しました!

 

その他の二重特異性抗体についても、興味があればぜひご確認くださいませ。

二重特異性抗体の例

 

引用文献・資料等

  1. がん情報サービス|びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
  2. 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版
  3. GCT3013-01試験(EPCORE NHL-1試験)の第Ⅰ相パート:Lancet. 2021 Sep 25; 398(10306): 1157-1169. 
  4. GCT3013-01試験(EPCORE NHL-1試験)の第Ⅱ相パート:https://www.epkinlyhcp.com/clinical-trial-results

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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