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2022年9月26日、「既存治療で効果不十分な関節リウマチ」を対象疾患とするナノゾラ皮下注(オゾラリズマブ)が承認されました!その後、2023年7月28日にはオートインジェクター製剤も承認されました。
大正製薬|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ナノゾラ皮下注30mgシリンジ/オートインジェクター |
一般名 | オゾラリズマブ(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | NANOBODY®+ Ozoralizumabから命名した。 |
製造販売 | 大正製薬(株) |
効能・効果 | 既存治療で効果不十分な関節リウマチ |
用法・用量 | 通常、成人にはオゾラリズマブ(遺伝子組換え)として 1回30mgを4週間の間隔で皮下投与する。 |
収載時の薬価 | シリンジ:112,476円 オートインジェクター:113,858円 |
発売日 | シリンジ:2022年12月1日新発売(HP) オートインジェクター:2024年1月16日新発売(HP) |
ナノゾラは国内初の「ナノボディ」に分類されていて、ラクダ科の動物が産生する特殊なタイプの抗体から創薬されました。
今回は関節リウマチと、ナノゾラ(オゾラリズマブ)の作用機序・特徴、エビデンスについて解説していきます。
関節リウマチとは
一般に、骨や関節、筋肉などが全身的な炎症を伴って侵される病気を総称して「リウマチ性疾患」といいます。
このうち、関節に炎症が続いて、関節が徐々に破壊され、やがて機能障害を起こす疾患のことを「関節リウマチ」と呼んでいます。
関節リウマチの特徴的な症状は「関節の腫れ」で、最も発現しやすい部位は、手首や手足の指の関節です。
また、関節リウマチの症状は「対称性」といって、左右両側の関節に発現することが多いのが特徴です。
全身症状としては、貧血症状、倦怠感(体がだるい)、微熱等があり、これが現れると症状が悪化していくと言われています。1)
関節リウマチの原因
関節リウマチの明確な発症原因は不明確ですが、
- 遺伝的素因
- 環境要因(ストレス、食生活、肥満等)
などによって、免疫機能が異常になることで発症すると考えられています。
免疫系が異常に活動する結果として、関節滑膜組織にリンパ球、マクロファージなどの白血球がでてきます。
このリンパ球やマクロファージが産生するサイトカイン(TNFα、IL-6など)と呼ばれる物質の作用により関節内に炎症反応が引き起こされると考えられています。
関節リウマチの治療
治療には通常、痛みを抑えるNSAIDsや炎症を抑えるステロイド、抗リウマチ薬(DMARD:“ディーマード”と読みます)が使用されます。2)
近年では、経口JAK阻害薬などの分子標的型DMARD(tsDMARD)、抗TNFα抗体薬などの生物学的製剤(bDMARD)も登場しました。
DMARDの種類 | 具体的な薬剤 |
従来型DMARD(csDMARD) | MTX、サラゾスルファピリジン、ブシラミン、 タクロリムス、イグラチモド、 |
分子標的型DMARD(tsDMARD) | JAK阻害薬 |
生物学的製剤(bDMARD) | 抗TNFα抗体や抗IL-6受容体抗体などの生物学的製剤 |
関節リウマチの薬物治療は、進行度に応じてフェーズⅠ~Ⅲがあり、フェーズⅠでは禁忌等に該当しない場合、MTXが最も推奨されています(MTXは“アンカードラッグ”とも呼ばれます)。
MTXで効果不十分な場合、MTXの増量(最大16mg/週)を検討したり、他のcsDMARDとの併用も考慮します。
-
メトジェクト(メトトレキサート)の作用機序:リウマトレックスとの違い【関節リウマチ】
続きを見る
フェーズⅠで効果不十分な場合、フェーズⅡではMTX併用・非併用において、bDMARD(MTX非併用では抗IL-6受容体抗体が推奨)とJAK阻害薬が同列で推奨されています。
フェーズⅢでは、フェーズⅡで使用しなかったbDMARDまたはJAK阻害薬に変更します。2)
経口JAK阻害薬については以下のまとめ記事をご覧ください。
-
JAK阻害薬の一覧表(経口7製品)と作用機序のまとめ
続きを見る
今回ご紹介するナノゾラ(オゾラリズマブ)は従来の抗体薬とは少し違いますが、生物学的製剤に分類されていますね。
関節リウマチに使用する生物学的製剤についてはまとめ記事をご参考ください。
-
【関節リウマチ】生物学的製剤の作用機序・副作用・特徴のまとめ
続きを見る
ヒトIgG抗体とナノボディ(VHH抗体)
通常、国内の抗体薬と言えば、ヒトのIgG抗体を応用した医薬品ですよね。
IgG抗体は重鎖と軽鎖から構成されています。また、抗原との結合部位はFab領域と呼ばれ、この部位も重鎖と軽鎖から構成されています。
医薬品によっては、Fab領域のみのものもありますよね。例えば、加齢黄斑変性に使用するルセンティス(ラニビズマブ)やベオビュ(ブロルシズマブ)が代表です。
そして、ラクダ科の一部の動物が産生する抗体は、ヒトの抗体と構造が異なっていて、重鎖のみで構成されています(重鎖抗体)。
重鎖抗体の抗原結合部位のみを分離したものが「ナノボディ」です。3)
ナノボディというのはAblynx社の登録商標で、
- 「VHH抗体(variable domain of heavy chain of heavy chain antibody)」
- 「シングルドメイン抗体」
と呼ばれることもありますね。
ナノボディは通常のIgG抗体と比べて分子量が小さいため、従来なら作用できなかった部位にも作用が期待されている技術ですよー!
ナノゾラ(オゾラリズマブ)の構造と作用機序・特徴
ナノゾラは以下の3つのナノボディを組み合わせた三量体構造を有しています。3)
- 抗TNFαナノボディ(結合部位1)
- 抗TNFαナノボディ(結合部位2)
- 抗血清アルブミンナノボディ
三量体でも合計の分子量は約38kDaと、通常の抗体薬よりかなり分子量が小さいですね。
血友病では、1つの抗体で2つの結合部位を有する二重特異性抗体のヘムライブラ(エミシズマブ)が使用されています。
-
ヘムライブラ(エミシズマブ)の作用機序と二重特異性抗体【血友病A】
続きを見る
ナノゾラはTNFαの2つの部位と結合し、関節リウマチの原因となるTNFαの働きを抑制します。
また、ナノゾラは血清アルブミンと結合することで、血中半減期が延長し、より長時間血中で作用できると考えられています。
これらの特徴により、動物試験において、通常の抗体と比較して血中半減期が延長し、炎症組織への集積性が向上したことが報告されています。
これが臨床的に従来の抗TNFα抗体(例:レミケード、エンブレル、ヒュミラ、シンポニー、シムジア)と比べて治療効果がどのように違うのか、気になるところですね。
エビデンス紹介:OHZORA試験
根拠となった臨床試験をご紹介します(OHZORA試験)。4)
本試験は、MTX(メトトレキサート)治療にも関わらず活動性を有する関節リウマチの患者さんを対象に、MTX併用下でナノゾラ(30mg or 80mg)の4週間投与とプラセボ群を比較する国内第Ⅱ/Ⅲ相試験です。
主要評価項目は「投与16週時のACR20%改善率*」とされ、結果は以下の通りでした。
プラセボ群 | ナノゾラ 30mg群 |
ナノゾラ 80mg群 |
|
投与16週時点の ACR20%改善率 |
37.3% | 79.6% | 75.3% |
- | プラセボとの差: いずれもP<0.001 |
*米国リウマチ学会の関節リウマチの診断基準で、20%以上改善した割合
用法・用量、在宅自己注射
通常、成人にはオゾラリズマブ(遺伝子組換え)として1回30mgを4週間の間隔で皮下投与します。
在宅自己注射も可能です。
副作用
5%以上に認められる副作用として、上咽頭炎が報告されていました。
重大な副作用として、
- 重篤な感染症:蜂巣炎(0.7%)、肺炎(0.3%)等
- 結核(頻度不明)
- ループス様症候群(頻度不明)
- 間質性肺炎(2.4%)
- 脱髄疾患(頻度不明)
- 重篤なアレルギー反応(頻度不明)
- 重篤な血液障害(頻度不明)
等が挙げられています。抵TNFα抗体と同様ですね。
収載時の薬価
収載予定時(2022年11月16日)の薬価は以下の通りです。
- ナノゾラ皮下注30mgシリンジ:112,476円
算定根拠については以下をご確認ください。
-
【新薬:薬価収載】16製品(2022年11月16日)
続きを見る
オートインジェクターは、2023年11月22日に収載されました!
- ナノゾラ皮下注30mgオートインジェクター:113,858円
まとめ・あとがき
ナノゾラはこんな薬
- 国内初のナノボディ(VHH抗体)製剤
- 2種類の抗TNFαナノボディと、抗血清アルブミンナノボディを組み合わせた三量体構造
- TNFα阻害によって関節リウマチの炎症を抑える
- 血清アルブミンと結合することで、血中半減期の延長(作用時間の延長)
ナノゾラは国内初のナノボディ製剤で、今後、他疾患への応用も期待される技術だと思います!
近年、関節リウマチ治療薬はJAK阻害薬や生物学的製剤など、様々な製品が登場しています。抗TNFα抗体薬も多くの製品がある中、ナノゾラがどの位置づけで使用されていくのか興味深いですね。
以上、今回は関節リウマチと、ナノゾラ(オゾラリズマブ)の作用機序・特徴、エビデンスについて解説しました!
関節リウマチに使用する生物学的製剤のまとめは以下をご覧ください♪
-
【関節リウマチ】生物学的製剤の作用機序・副作用・特徴のまとめ
続きを見る
引用文献・資料等
- 日本整形外科学会|関節リウマチ
- 日本リウマチ学会|関節リウマチ診療ガイドライン2024
- Front Immunol. 2022 Feb 22;13:853008.
- OHZORA試験:Arthritis Rheumatol. 2022 Nov;74(11):1776-1785.
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