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2024年9月24日、「活動性甲状腺眼症」を効能・効果とするテッペーザ(テプロツムマブ)が承認されました!
アムジェン|ニュースリリース
基本情報
製品名 | テッペーザ点滴静注用500mg |
一般名 | テプロツムマブ(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | 販売名「TEPEZZA」は、 一般名Teprotumumabから派生した造語である。 |
製造販売 | アムジェン(株) |
効能・効果 | 活動性甲状腺眼症 |
用法・用量 | 通常、成人にはテプロツムマブ(遺伝子組換え)として 初回は10mg/kgを、2回目以降は20mg/kgを7回、 3週間間隔で計8回点滴静注する。 |
収載時の薬価 | 979,920円 |
発売日 | 2024年11月20日(HP) |
甲状腺眼症は治療選択肢が限られていたことから、新規作用機序を有するテッペーザは期待できるのではないでしょうか。
今回は甲状腺眼症と共に、テッペーザ(テプロツムマブ)の作用機序やエビデンスについて解説します!
甲状腺眼症とは
甲状腺眼症とは、バセドウ病や橋本病などの甲状腺の疾患に伴って認められる眼窩組織の自己免疫性炎症性疾患です。1-2)
バセドウ病は甲状腺機能亢進症、橋本病は甲状腺機能低下症に分類されていて、いずれも甲状腺に対する自己抗体が原因だと考えられています。
ただし、甲状腺機能が正常でも甲状腺眼症を発現することが知られているため、必ずしも甲状腺の疾患に伴うものではありません。
症状
甲状腺眼症では、以下のような眼に関連する様々な眼症候を呈します。1-2)
- 眼や眼の周囲の痛み
- 複視(ものがだぶって見えること)
- 眼球突出
- 流淚
- 眼瞼後退・眼瞼腫脹
- 結膜の充血や浮腫
- 視力低下、視野欠損
眼窩組織の炎症に伴って、脂肪細胞の増殖や眼を動かす筋肉(外眼筋など)の肥大化によって、眼球が前に押されて出てきてしまいます。
治療
治療は重症度や活動性に応じて決定されます。2)
- 軽症例:経過観察を基本とし、眼瞼腫脹や上眼瞼後退が認められた場合、ステロイドやボツリヌス毒素の局所投与。
- 中等症~重症例(非活動性):視機能の回復と整容性を目的に手術療法。
- 中等症~重症例(活動性):ステロイドのパルス療法と放射線外照射の併用療法など。テッペーザの使用も可能。
- 最重症例:至急、ステロイド・パルス療法を開始する。眼窩減圧術も考慮する。
活動性については、Clinical activity score (CAS)2) が用いられ、10項目中4項目以上該当すれば「活動性」と判断されます。
日本甲状腺学会・日本内分泌学会|甲状腺眼症診療の手引きDigest 版
原因
甲状腺眼症は、甲状腺疾患(バセドウ病や橋本病など)に関連する自己抗体が原因だと考えられています。
これら自己抗体の作用する受容体は、甲状腺にももちろん存在していますが、眼の組織(眼窩線維芽細胞)にも存在しています。
眼窩線維芽細胞には、
- 甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR:thyroid stimulating hormone receptor)
- インスリン様成長因子-1受容体(IFG-1R:Insulin-like Growth Factor Receptor)
などが存在していて、自己抗体などによって刺激されると「β-アレスチン」を介して複合体を形成し、シグナル伝達が活性化されます。
その結果、眼周辺の脂肪細胞の増殖や眼を動かす筋肉(外眼筋など)の肥大化によって、眼球が前に押されて出てきてしまいます(眼球突出)。
テッペーザ(テプロツムマブ)の作用機序
テッペーザは、国内初の抗IGF-1R抗体です。
IGF-1Rに結合することによって、β-アレスチンを介したTHSRとの複合体形成が抑制され、眼組織におけるシグナル伝達が抑制されます。
エビデンス紹介:OPTIC試験
根拠となった臨床試験(OPTIC試験)をご紹介します。3)
本試験は、中等症から重症の活動性甲状腺眼症患者さん(CASが4点以上)を対象に、プラセボ群とテッペーザ群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。
過去に甲状腺眼症の治療を目的とした眼窩への放射線療法又は外科的療法を受けた患者は除外。ステロイドによる治療歴を有する患者は、スクリーニングの4週間以上前に副腎皮質ステロイド投与を中止していれば組入れ可能。
本試験の主要評価項目は「投与24週時の眼球突出奏効率*」とされ、結果は以下の通りでした。
プラセボ群 | テッペーザ群 | |
投与24週時の 眼球突出奏効率* |
9.5% | 82.9% |
p<0.001 | ||
投与24週時の 複視奏効率** |
28.6% | 67.9% |
p=0.001 |
*眼球突出奏効率:試験眼の眼球突出がベースラインから2mm以上減少し、かつ僚眼の眼球突出の悪化(2mm以上の増加)が認められない患者の割合
**複視奏効率:ベースラインに試験眼で複視がグレード1以上であった患者のうち、試験眼で1グレード以上減少し、かつ僚眼で悪化(1グレード以上の増加)が認められなかった患者の割合
副作用
10%以上に認められる副作用として、脱毛症、筋痙縮などが報告されています。
重大な副作用としては、
- 聴覚障害:耳鳴(4.8%)、聴力低下(3.8%)、感音性聴力低下(1.9%)、自声強聴(1.0%)、難聴(1.0%)、耳管開放(1.0%)
- 高血糖(1.9%)
- 糖尿病(3.8%)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
IGF-1は内耳の蝸牛機能の発達・成熟・保護に関与していることが知られています。4-5)
つまり、IGF-1が作用するIGF-1Rが内耳の有毛細胞などに発現しているということです。テッペーザによってその働きが阻害されることで視覚障害が現れると考えられますね。
また、IGF-1Rはインスリン様成長因子-1受容体のため、テッペーザによって阻害されると成長ホルモン分泌のフィードバック阻害の喪失を引き起こし、成長ホルモン濃度上昇に伴うグルコースおよびインスリン濃度の増加が起こると考えられています。4)
グルコースが過剰になれば高血糖、インスリンが過剰になれば糖尿病を呈するというわけですね。
用法・用量
通常、成人にはテプロツムマブ(遺伝子組換え)として初回は10mg/kgを、2回目以降は20mg/kgを7回、3週間間隔で計8回点滴静注します。
tepezza.jp|テッペーザ適正使用ガイド
収載時の薬価
収載時(2024年11月20日)の薬価は以下の通りです。
- テッペーザ点滴静注用500mg:979,920円
以下の記事で算定根拠等について解説しています。
-
【新薬:薬価収載】17製品(2024年11月20日)
続きを見る
まとめ・あとがき
テッペーザはこんな薬
- 国内初の抗インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)抗体薬
- 中等症~重症例の活動性甲状腺眼症に対して効果が期待
- 3週間間隔で計8回点滴静注する
- 糖代謝異常や聴覚異常には注意が必要
これまで、甲状腺眼症に対してはステロイドのパルス療法や放射線療法といった限られた治療選択肢しかありませんでした。
テッペーザは抗IGF-1R抗体薬という新規の作用機序を有しているため、新たな治療選択肢として期待できるのではないでしょうか。
以上、今回は甲状腺眼症と共に、テッペーザ(テプロツムマブ)の作用機序やエビデンスについて解説しました。
引用論文・資料等
- 日本眼科学会|甲状腺眼症
- 日本甲状腺学会・日本内分泌学会|甲状腺眼症診療の手引きDigest 版
- OPTIC試験:N Engl J Med 2020; 382:341-352.
- テッペーザ 審査報告書
- Otol Jpn 31 (4): 397–401, 2021
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