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2019年12月20日、ボトックス注用50単位、同100単位(一般名:A型ボツリヌス毒素)の以下の疾患に対する適応拡大が承認されました!
- 既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
- 既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない神経因性膀胱による尿失禁
ボトックスは既に、「眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頸、上肢痙縮、下肢痙縮、2歳以上の小児脳性麻痺患者における下肢痙縮に伴う尖足、重度の原発性腋窩多汗症、斜視、痙攣性発声障害」の効能・効果を有していましたが、上記が追加されています。
その後、2024年6月24日には、「上肢痙縮」と「下肢痙縮」において2歳以上の小児用量が追加されました。
今回は代表疾患として痙攣性発声障害とボトックス(A型ボツリヌス毒素)の作用機序についてご紹介します。
発声のしくみと声帯
我々が声を出すとき、普段は意識せずに発声することが可能です。
あまり発声について考える機会は少ないと思いますが、なぜ声が出るのか?について解説します。
発声は以下のステップによって起こると考えられています。
- 息を吸って吐き出す
- 声帯の振動
- 共鳴
- 発音
まず、肺に吸い込んだ息(空気)を吐き出すことで、声道を通って声帯に空気を送ります。
声帯は喉仏の付近にある器官で、呼吸をしている時には開いた状態です。
音が出そうとする時は声帯が閉じ、空気が声帯に触れることで声帯が振動し、音が発生します。
声帯が振動するだけでは、発音はできず、あくまで「音が発生する」だけです。
次に発生した音が体内の空間(空洞)で共鳴して音が大きくなります。
主な体内の空洞には、咽頭腔(口の奥)、 鼻腔(鼻の中の空洞)、口腔(口の中の空洞)があります。
最後に、共鳴によって大きくなった音に、口や舌、表情筋などで音に形を加えることで意味を持った言葉の発声が可能となります。
我々は特に意識することなく発声を行っていますが、上記のステップのどれかが欠けるだけで上手く声を出せなくなってしまいます。
痙攣性発声障害とは
痙攣性発声障害は、発声しようとする際に自身の意識とは無関係に声帯が異常な動きをしてしまい、うまく声が出せなくなってしまう疾患です。
タイプとしては以下の3つが知られています。
- 内転型:声帯が内側に勝手に閉じてしまう
- 外転型:声帯が外側に勝手に開いてしまう
- 混合型:上記2つを併せ持つタイプ
最も多いのが内転型で、声を出そうとすると声帯が極端に閉じてしまうため、締め付けられるような絞り出そうとする声になってしまいます。
逆に外転型では声帯が開いているためうまく音の形が作れず、息が漏れるような声になってしまいます。
声帯の見た目は正常の人と変わらないため、精神疾患等によって声が出ないと診断されるケースもしばしばあります。
痙攣性発声障害の原因
痙攣性発声障害の原因は現時点では不明とされています。
声帯の過度な緊張によって引き起こされるため、ジストニア(無意識な持続的な筋収縮)の一種と考えられています。
痙攣性発声障害の治療
主な治療には、以下があります。
- 甲状軟骨形成術Ⅱ型:局所麻酔下で声を出しながら声帯を広げて調整し、チタン器具で固定する
- 甲状披裂筋摘出術:緊張している声帯筋を手術で摘出する
- 音声訓練
- ボトックス注射:世界的に一般的に行われているが、日本では未承認であった
これまで日本で承認されている医薬品はなく、唯一、医療機器であるチタンブリッジ(甲状軟骨形成術Ⅱ型で使用するチタン器具)が承認されていました。
今回ご紹介するボトックスは世界的に行われている痙攣性発声障害の治療法です。
筋肉の収縮(緊張)とアセチルコリン
通常、我々が筋肉を動かそうとする場合、神経筋接合部の運動神経の末端から「アセチルコリン」が放出され、これが筋肉の「アセチルコリン受容体」に結合することで筋肉が収縮します。
何らかの異常でアセチルコリンの放出が過剰になると、過度に筋肉が収縮してしまい、緊張状態になってしまいます。
痙攣性発声障害でも過度なアセチルコリンによって声帯が緊張してしまうことで発症すると考えらえています。
ボトックス(A型ボツリヌス毒素)の作用機序
神経末端に存在しているアセチルコリン小胞内にアセチルコリンが蓄えられています。
アセチルコリン小胞が「SNAP-25」と呼ばれるタンパク質と結合することで、アセチルコリンが神経末端から放出されていきます。
ボトックスはボツリヌス菌が産生するボツリヌス毒素を利用した医薬品です。
ボトックスが声帯筋に投与されると神経細胞内に取り込まれ、SNAP-25を切断していきます。
SNAP-25が切断されることでアセチルコリン小胞からのアセチルコリン放出が抑制され、筋肉の過度な収縮・緊張が和らぐと考えられています。
ちなみに、過活動膀胱(OAB)の治療には基本的に抗コリン薬もしくはアドレナリンβ3受容体作動薬が使用されますが、これらに不応の場合にボトックスが使用されます。
疾患については以下の記事で詳しく解説しています。
-
ベオーバ(ビベグロン)の作用機序:ベタニスとの比較・使い分け【過活動膀胱(OAB)】
続きを見る
ボトックス注の特徴と副作用
ボトックスは声帯筋に直接投与して用いますが、手術(甲状軟骨形成術Ⅱ型)と比較すると侵襲性は低いです。
ただし、ボトックスの効果は2~3か月程しか持続しないため、定期的に投与を行う必要があります。
また、投与後しばらくは、一過性に嚥下しにくい、呼吸し辛いといった副作用が現れる可能性もあります。
稀にアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
ボトックスはボツリヌス菌の毒素を利用していることから、投与・取扱いについては十分に注意する必要があります。
あとがき
これまで痙攣性発声障害の治療としてのボトックスは承認されておらず、適応外で使用されていました。
世界的な標準治療であるボトックス治療が日本でも正式に承認され、使用可能となりました!
これまで承認の範囲内では手術しか治療選択肢がありませんでしたが、ボトックスによって選択肢の幅が広がることは朗報ではないでしょうか。
ちなみに、美容目的にボトックスを使用する場合は、製品名が異なり、また保険適応外のため全額自費負担です。
-
ボトックスビスタ(A型ボツリヌス毒素)の作用機序と副作用【目尻の表情じわ】
続きを見る
以上、今回は痙攣性発声障害とボトックス(A型ボツリヌス毒素)の作用機序についてご紹介しました。
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