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2022年12月20日、イエスカルタ(アキシカブタジン シロルーセル)について、「再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)」の二次治療としての適応拡大が承認されました!
第一三共|ニュースリリース
基本情報
製品名 | イエスカルタ点滴静注 |
一般名 | アキシカブタジン シロルーセル |
製造販売 | 第一三共(株) |
効能・効果 | 以下の再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫* ・びまん性大細胞型B 細胞リンパ種 ・原発性縦隔大細胞型B 細胞リンパ種 ・形質転換濾胞性リンパ種 ・高悪性度B 細胞リンパ種 |
収載時の薬価 | 32,647,761円 |
*ただし、CD19抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない患者に限る
イエスカルタは2021年1月22日に「B細胞リンパ腫」の三次治療以降を対象として承認されていましたが、今回の適応拡大により、二次治療から使用可能となりました!
イエスカルタはキムリアに次いで2製品目の「CAR-T細胞(キメラ抗原受容体T細胞)療法」に分類されており、患者さん自身の“生きたT細胞”によって治療効果を発揮するといった作用機序ですね!
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キムリア(チサゲンレクルユーセル)の作用機序・特徴と副作用【急性リンパ性白血病】
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キムリアは急性リンパ性白血病(ALL)とB細胞リンパ腫に適応を有していますが、B細胞リンパ腫の中で「原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ種」には使用することができません。
同じくB細胞リンパ腫に使用するCAR-T細胞療法としてはブレヤンジ(リソカブタゲン マラルユーセル)がありますね。ブレヤンジもB細胞リンパ腫の二次治療から使用可能です。
今回は悪性リンパ腫の中でも「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」とイエスカルタの作用機序・エビデンス等について解説していきます。
悪性リンパ腫とは
造血機腫瘍の中でも、リンパ系の血球成分(例:B細胞、T細胞、NK細胞など)から発生するものを「悪性リンパ腫」と呼んでいます。
細かい分類は非常に多いのですが、大きく分類すると以下の2種類です。1)
- ホジキンリンパ腫(HL:Hodgkin lymphoma)
- 非ホジキンリンパ腫(NHL:Non Hodgkin lymphoma)
今回ご紹介するびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL:diffuse large B-cell lymphoma)もNHLの一種に分類されています。
また、悪性リンパ腫では、疾患の悪性度や予後の臨床分類としてアグレッシブ分類(低悪性度、中悪性度、高悪性度)が行われますが、DLBCLは「中悪性度」のアグレッシブ分類とされています。
そしてDLBCLの原因となるリンパ腫細胞は「B細胞」に由来していることがほとんどで、細胞膜表面には「CD19」を発現していることが知られています。
DLBCLと治療
DLBCLは発見時の進行度(限局期もしくは進行期)によって治療が若干異なりますが、基本は薬物療法です。2)
限局期であっても進行期であっても「R-CHOP療法*」を3~8回行い、場合によっては放射線と併用することもあります。
*R-CHOP療法:リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用療法
しかし、上記の治療を行って治療効果が得られたとしても、多くの場合、再発してしまうことがあり、その後の治療選択肢は限られていました。
また初回のR-CHOP療法で抵抗性を示した場合にも、その後の治療選択肢は限られています。
- DHAP療法:デキサメタゾン、シスプラチン、シタラビン
- ESHAP療法:メチルプレドニゾロン、エトポシド、シタラビン、シスプラチン
- ICE療法:イホスファミド、カルボプラチン、エトポシド
- CHASE療法:シクロホスファミド、シタラビン、デキサメタゾン、エトポシド
- Dose adjusted-EPOCH療法:エトポシド、プレドニゾロン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン
- MINE療法:ミトキサントロン、イホスファミド、メスナ、エトポシド
- GDP療法:ゲムシタビン、デキサメタゾン、シスプラチン
いずれもリツキシマブと併用する場合あり
上記の治療を行ったとしても残念ながら再発・再燃することがありますが、今回ご紹介するイエスカルタは上記の薬物療法の後に使用することで効果が期待されています!
CAR-T細胞療法とは:イエスカルタの治療概念
イエスカルタは「CAR-T細胞療法」と呼ばれる新たな治療法です。
参考CAR(Chimeric Antigen Receptor):キメラ抗原受容体
ヒトの体内には異物やがん細胞を排除する機構(免疫機構)が存在しており、その中心を担う細胞として「T細胞」が知られています。このT細胞を改変するのがCAR-T細胞療法です。
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1患者さんのT細胞を取り出す
CAR-T細胞法ではまず患者さん自身のT細胞を取り出します(下図の①)。
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2CARを導入する
その後、遺伝子改変技術を用いて白血病細胞のCD19を特異的に認識する受容体である「CAR」をT細胞に導入します(下図の②)。CARは白血病細胞を発見するアンテナのような役割ですね♪
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3増殖させた後、投与する
CARが導入されたT細胞を「CAR-T細胞」と呼んでいますが、CAR-T細胞を培養・増殖(下図の③)させ、数を増やした後に患者さんの体内に投与します(下図の④)。
なお、培養したCAR-T細胞を患者さんの体内に投与する前には「前処置」として免疫抑制薬等が投与されます。これはイエスカルタの効果を減弱させてしまう“制御性T細胞”の働きを事前に抑制させる目的です。
このように患者さんが本来持っているT細胞を改変して、白血病細胞をより認識するように設計されたのがCAR-T細胞療法です。
従って、イエスカルタは「患者さん自身のCAR-T細胞」を主成分とする医薬品です!
イエスカルタ(アキシカブタジン シロルーセル)の作用機序と特徴
体内に投与されたCAR-T細胞は、CD19を発現したリンパ腫細胞を特異的に認識して攻撃します。
その結果、リンパ腫細胞の死滅・増殖抑制効果が得られると考えられています。
また、投与されたCAR-T細胞が体内に定着すると、自分自身で増殖することができますので、永久的にCD19を発現したリンパ腫細胞を監視・攻撃することが可能です!
そのためイエスカルタは基本的には1回の投与で治療が完了します。
このようにイエスカルタは患者さん自身の“生きたT細胞”によって治療効果を発揮する新規の治療法です!
エビデンス紹介:国際共同第Ⅰ/Ⅱ相試験(ZUMA-1試験)
再発・難治性のDLBCLに対するイエスカルタの根拠となった臨床試験を一つご紹介します。3-4)
本試験は治療抵抗性のDLBCL患者さんを対象にイエスカルタの有効性と安全性を検討した国際共同第Ⅰ/Ⅱ相試験です。
主要評価項目は「奏効率」で、82%という結果でした。3)
また、長期フォローアップ解析(27.1か月時点)も報告されていて、生存期間中央値は未到達、無増悪生存期間は5.9か月という結果でした。4)
ちなみに本試験では最初の投与で反応があり、その後、最初の投与から少なくとも3か月後に疾患が進行した場合に再投与することが可能でした。
副作用:サイトカイン放出症候群と対策
前述の臨床試験3)では、以下のような特徴的な副作用が報告されています。
- サイトカイン放出症候群(悪心、倦怠感、頭痛、発熱、頻脈、など):93%
- 神経毒性(脳卒中、錯乱、せん妄、振戦、傾眠、など):64%
特にサイトカイン放出症候群は死に至る可能性もあるため特に注意が必要です!!
類薬のキムリアと同様、サイトカイン放出症候群の対処薬としてはアクテムラ点滴静注用(一般名:トシリズマブ)が使用可能とされています。
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キムリア(チサゲンレクルユーセル)の作用機序・特徴と副作用【急性リンパ性白血病】
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収載時の薬価
収載時(2021年4月21日)の薬価は以下の通りです。
- イエスカルタ点滴静注(1患者当たり):32,647,761円
ちなみに再生医療等製品の保険適用は、医薬品(薬価)か医療機器(材料価格)か、個別に判断されます。
<平成 26 年 11 月5日 中医協総-2-1(抜粋)>
1.保険適用に係る今後の対応について
○ 再生医療等製品の保険適用に関する当面の間の対応
・薬事法改正後に承認(条件・期限付承認を含む。)された再生医療等製品については、保険適用の希望のあった個別の製品の特性を踏まえ、医薬品の例により対応するか、医療機器の例により対応するかを、薬事承認の結果を踏まえて判断
※引用:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第285回) 議事次第」
算定の根拠については以下をご確認ください。
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【新薬:薬価収載】11製品+再生医療等製品(2021年4月21日)
続きを見る
まとめ・あとがき
イエスカルタはこんな薬
- 国内2製品目のCAR-T細胞療法
- 患者さん自身の“生きたT細胞”によって治療する
- 1回の投与で治療が完了する
- サイトカイン放出症候群と神経毒生に注意が必要
イエスカルタはCAR-T細胞療法といった新規の作用機序を有する医薬品です!
現在、キムリアやイエスカルタ以外のCAR-T細胞療法が様々な疾患に対して開発が進行中ですので、今後の動向も注目されています。
ただ、CAR-T細胞療法は現時点では血液がん(造血器腫瘍)にしか効果がなく、固形がん(例:大腸がん、肺がん、胃がん、等)には効果が示されていません。
以上、今回は悪性リンパ腫の中でも「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」とイエスカルタの作用機序・エビデンス等について解説しました!
引用文献・資料等
- がん情報サービス|びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
- 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版
- ZUMA-1試験:N Engl J Med 2017; 377:2531-2544
- ZUMA-1試験(長期):Lancet Oncol. 2019 Jan;20(1):31-42.
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