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2023年2月24日、ニュベクオ錠(ダロルタミド)の効能・効果に「遠隔転移を有する前立腺がん」を追加することが承認されました!
バイエル薬品|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ニュベクオ錠300mg |
一般名 | ダロルタミド |
製品名の由来 | 特になし |
製薬会社 | 製造販売:バイエル薬品(株) プロモーション提携:日本化薬(株) |
効能・効果 | ●遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん ●遠隔転移を有する前立腺がん |
用法・用量 | <遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん> 通常、成人にはダロルタミドとして1回600mgを1日2回、食後に経口投与する。 なお、患者の状態により適宜減量する。 <遠隔転移を有する前立腺がん> ドセタキセルとの併用において、通常、成人にはダロルタミドとして 1回600mgを1日2回、食後に経口投与する。 なお、患者の状態により適宜減量する。 |
収載時の薬価 | 2,311.00円 |
ニュベクオは2020年1月23日に「遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺がん」を効能・効果として承認された新規経口アンドロゲン受容体阻害薬ですね。
今回は前立腺がんとニュベクオ(ダロルタミド)の作用機序、そして上記類薬との違いについてご紹介します。
前立腺がんとは
前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱から続く尿道の周りを取り囲むように存在しています。
この前立腺が腫瘍化(がん化)したものが前立腺がんです。
基本的には進行が緩やかながんで、早期に発見できれば治癒も期待できます。
自覚症状としては、尿が出づらい、頻尿、などがありますが、早期にはほとんど症状が出ません。進行すると、血尿や腰痛等が発現することがあります。
前立腺がんの発生・増殖メカニズム
前立腺がんの発生や成長には男性ホルモンが大きく関与することが知られています。
男性ホルモンにはいくつかの種類がありますが、総称して「アンドロゲン」と呼ばれており、約95%が精巣で分泌されています。その他にも副腎や前立腺がんからも分泌されます。
前立腺がんはアンドロゲンが結合する「アンドロゲン受容体」を持ち、ここにアンドロゲンが結合することでがん細胞の増殖が促進されます。
それではアンドロゲン受容体とがんの増殖機構についてもう少し詳しく解説します。
アンドロゲン受容体とがんの増殖機構
アンドロゲン受容体は、がん細胞の細胞質内に存在しています。
アンドロゲン受容体にアンドロゲンが結合して活性化すると、核内に移動していきます。
活性化したアンドロゲン受容体は、核内のDNAと結合することで、がん細胞の増殖が促進・活性化されると考えられています。
前立腺がんの治療
早期の前立腺がん(限局性、局所進行)の場合、
- 手術
- 放射線療法
- ホルモン療法
などを単独もしくは適宜組み合わせた治療が行われます。
中心的に用いられるのはホルモン療法で、前立腺がんはアンドロゲンによって増殖するため、アンドロゲンを除去する治療(androgen deprivation therapy:ADT)を行います。
昔はADTとして精巣を物理的に摘出する「外科的去勢術」が行われていました。
しかし、患者さんによっては精巣がなくなることへの抵抗感が強いため、現在のADTは薬による「内科的去勢術」としてホルモン療法が行われます。
現在、初回のホルモン療法としては、
- LH-RHアゴニスト:アンドロゲン生成抑制
- GnRHアンタゴニスト:アンドロゲン生成抑制
- 抗アンドロゲン製剤:がんのアンドロゲン受容体を阻害
などが行われますが、場合によってはザイティガ(アビラテロン)やイクスタンジ(エンザルタミド)やドセタキセルを上記と併用することもあります。
今回ご紹介するニュベクオは、ホルモン感受性で遠隔転移を有する前立腺がんに対して、ADTとドセタキセルと併用で使用します!
また、ホルモン療法によるADTを行っていても抵抗性を示して、がんの増殖が抑えられないこともあります。
このような状態を去勢抵抗性前立腺がん(CRPC:castration resistant prostate cancer)と呼んでいます。
他の臓器に転移の無いCRPCでは、その後、約90%の患者さんが骨転移を経験してしまい、予後が不良となります。従って、なるべく転移を遅らせることが重要です。
ニュベクオは、元々は他の臓器に転移の無いCRPCに使用できる薬剤として登場しましたね。
ちなみに、以下の薬剤も転移のあるCRPCに使用可能なため、使い分け等は気になるところです。
ニュベクオ(ダロルタミド)の作用機序
ニュベクオは、前述のがん増殖機構のうち、以下を阻害する薬剤です。
- アンドロゲン受容体への結合を阻害
- アンドロゲン受容体の核内への移動を阻害
- アンドロゲン受容体のDNAへの結合を阻害
上記の作用機序により、アンドロゲンによるがん増殖のシグナル伝達が阻害される結果、がん細胞の増殖抑制効果が発揮されると考えられています。
転移のないCRPCのエビデンス紹介(ARAMIS試験)
転移のないCRPCの根拠となった臨床試験はARAMIS試験です。1)
本試験は、ハイリスク因子を有し、他の臓器に転移の無いCRPC患者さんに対して、ADTのみを行う群と、ニュベクオとADTを併用する群を直接比較した第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目の無転移生存期間は、ニュベクオとADTを併用する群で有意に延長していました。
ADTのみ | ADT+ ニュベクオ |
|
無転移生存期間中央値 | 18.4か月 | 40.4か月 |
HR=0.41, p<0.001 | ||
全生存期間中央値 | 未到達 | 未到達 |
HR=0.71, p=0.045 |
転移を有する前立腺がんのエビデンス紹介(ARASENS試験)
続いて、遠隔転移を有する前立腺がんの根拠となった臨床試験はARASENS試験です。2)
本試験は、ホルモン感受性で遠隔転移を有する前立腺がん患者さんを対象に、ADT+ドセタキセルを行う群と、それにニュベクオを併用する群を直接比較した第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「全生存期間」とされ、以下の結果でした。
ADT+ドセタキセル | ADT+ドセタキセル+ ニュベクオ |
|
全生存期間中央値 | 48.9か月 | 未到達 |
HR=0.68, P<0.001 |
ニュベクオの特徴:アーリーダとの違い・比較
他の臓器に転移の無いCRPC使用し、同様の作用機序を有する薬剤にはアーリーダ(一般名:アパルタミド)があります。
- 効果と安全性
- 血液脳関門の透過性(中枢作用)
- 薬物相互作用(CYP)
効果と安全性
ニュベクオ1)とアーリーダ3)の転移のないCRPCに対する各臨床試験を比較してみたいと思います。
対象症例は厳密に同一でないため、参考程度です。
SPARTAN試験2) | ARAMIS試験3) | |||
ADTのみ | ADT+ アーリーダ |
ADTのみ | ADT+ ニュベクオ |
|
無転移生存期間中央値 (主要評価項目) |
16.2か月 | 40.5か月 | 18.4か月 | 40.4か月 |
HR=0.28, p<0.001 |
HR=0.41, p<0.001 |
|||
全生存期間中央値 | 39.0か月 | 未到達 | 未到達 | 未到達 |
HR=0.70, p=0.07 |
HR=0.71, p=0.045 |
|||
有害事象(全Grade) ・疲労 ・高血圧 ・皮疹 ・下痢 ・悪心 ・関節痛 ・めまい |
発現率 ・21.1% ・19.8% ・5.5% ・15.1% ・15.8% ・7.5% ・6.3% |
発現率 ・30.4% ・24.8% ・23.8% ・20.3% ・18.1% ・15.9% ・9.3% |
発現率 ・8.7% ・5.2% ・0.9% ・6.9% ・5.0% ・8.1% ・4.0% |
発現率 ・12.1% ・6.6% ・2.9% ・5.6% ・5.8% ・9.2% ・4.5% |
無転移生存期間中央値は同じくらい、生存期間はニュベクオで有意差が付いていますが、効果としてはアーリーダとそんなに差は無いように思いますね。
有害事象は数値だけ見るとニュベクオで低そうですが、プラセボ群がそもそも低いのでこれも明確に比較はできませんでした。
血液脳関門の透過性(中枢作用)
ニュベクオは非臨床的モデルにおいて、イクスタンジ(一般名:エンザルタミド)とアーリーダ(一般名:アパルタミド)より血液脳関門の透過性が低いことが報告されています。4)
薬物相互作用(CYP)
ニュベクオは臨床用量ではCYP阻害作用を示さないことが報告されています。5)
It has no CYP inhibition or induction with therapeutic doses.
アーリーダやイクスタンジはCYP3A4の阻害作用や誘導作用があるため、CYPで代謝される薬剤との相互作用(併用注意)が多数あります。
他のCYP(2C9、2C19、2C8など)には影響がないことから、併用薬がある場合にはニュベクオは使いやすそうですね!
収載時の薬価
収載時(2020年4月22日)の薬価は以下の通りです。
- ニュベクオ錠300mg:2,311.00円(1日薬価:9,244.00円)
算定根拠については以下の記事をご確認ください。
-
【新薬:薬価収載】8製品(2020年4月22日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ニュベクオはこんな薬
- 他の臓器に転移の無いCRPCや、転移を有する前立腺がんに対して使用する
- アンドロゲン受容体の各ステップを阻害する
- 血液脳関門の透過性が低い
- 薬物相互作用が少ない
これまで、他の臓器に転移の無いCRPCに有効な薬剤はほとんどありませんでしたが、2019年にはアーリーダが登場しました。アーリーダは2020年にホルモン感受性の前立腺がんに対しても適応が拡大されました!
-
アーリーダ(アパルタミド)の作用機序と副作用【前立腺がん】
続きを見る
今後はニュベクオによって治療選択肢が増えるとともに、両薬剤の使い分け等について検討が進めば興味深いと感じました!
以上、今回は前立腺がんとニュベクオ(ダロルタミド)の作用機序、そして類薬との違い・比較について考察しました。
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