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2025年8月22日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて「去勢抵抗性前立腺がん」を対象疾患とするプルヴィクト静注(ルテチウムビピボチドテトラキセタン)の承認が了承されました!
ノバルティス ファーマ|FDA承認のニュースリリース
現時点では未承認のためご注意ください。
基本情報
製品名 | プルヴィクト静注 |
一般名 | ルテチウムビピボチドテトラキセタン(177Lu) ※略語:177Lu-PSMA‐617 |
製品名の由来 | |
製薬会社 | ノバルティス ファーマ(株) |
効能・効果 | PSMA陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん |
用法・用量 | 通常、成人には1回7.4GBqを6週間間隔で最大6回静脈内投与する。 なお、患者の状態により適宜減量する。 |
収載時の薬価 | |
発売 |

プルヴィクトに結合しているルテチウム-177(177Lu)は、神経内分泌腫瘍に使用されているルタテラ(一般名:ルテチウムオキソドトレオチド)と同じでね。
プルヴィクトは前立腺がんで高発現しているPSMA(Prostate Specific Membrane Antigen)を標的としています。
今回は前立腺がんとプルヴィクト(Lu-PSMA‐617)の作用機序についてご紹介します。
前立腺がんとは
前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱から続く尿道の周りを取り囲むように存在しています。
この前立腺が腫瘍化(がん化)したものが前立腺がんです。
基本的には進行が緩やかながんで、早期に発見できれば治癒も期待できます。
自覚症状としては、尿が出づらい、頻尿、などがありますが、早期にはほとんど症状が出ません。進行すると、血尿や腰痛等が発現することがあります。
前立腺がんの発生・増殖メカニズム
前立腺がんの発生や成長には男性ホルモンが大きく関与することが知られています。
男性ホルモンにはいくつかの種類がありますが、総称して「アンドロゲン」と呼ばれており、約95%が精巣で分泌されています。その他にも副腎や前立腺がんからも分泌されます。
前立腺がんはアンドロゲンが結合する「アンドロゲン受容体」を持ち、ここにアンドロゲンが結合することでがん細胞の増殖が促進されます。
その他、前立腺がんに特有の膜タンパク質であるPSMA(Prostate Specific Membrane Antigen:前立腺特異抗原)も、がん細胞の増殖に関与することが知られています。
前立腺がんの治療
早期の前立腺がん(限局性、局所進行)の場合、
- 手術
- 放射線療法
- ホルモン療法
などを単独もしくは適宜組み合わせた治療が行われます。
中心的に用いられるのはホルモン療法で、前立腺がんはアンドロゲンによって増殖するため、アンドロゲンを除去する治療(androgen deprivation therapy:ADT)を行います。
昔はADTとして精巣を物理的に摘出する「外科的去勢術」が行われていました。
しかし、患者さんによっては精巣がなくなることへの抵抗感が強いため、現在のADTは薬による「内科的去勢術」としてホルモン療法が行われます。
現在、初回のホルモン療法としては、
- LH-RHアゴニスト:アンドロゲン生成抑制
- GnRHアンタゴニスト:アンドロゲン生成抑制
- 抗アンドロゲン製剤:がんのアンドロゲン受容体を阻害
などが行われ、最近ではこれらに新規アンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI:novel androgen receptor signaling inhibitor)であるザイティガ(アビラテロン)やイクスタンジ(エンザルタミド)やニュベクオ(ダロルタミド)を併用することがあります。
ドセタキセルを併用することもある
ARSIについては、以下の記事でまとめていますので併せてご確認ください。
-
-
ニュベクオ(ダロルタミド)の作用機序・類薬との違い【前立腺がん】
続きを見る
また、ホルモン療法によるADTを行っていても抵抗性を示して、がんの増殖が抑えられないこともあります。
このような状態を去勢抵抗性前立腺がん(CRPC:castration resistant prostate cancer)と呼んでいます。

プルヴィクトの対象
- PSMAが陽性
- ARSI(±タキサン系薬剤)の治療歴がある
- 遠隔転移を有する
なお、PSMAの標識や検出をするために、以下の医薬品が同日承認了承されています。
- ロカメッツキット(一般名:ゴゼトチド)
- ガリアファーム68Ge/68Gaジェネレータ(一般名:塩化ガリウム(68Ga))
プルヴィクト(Lu-PSMA‐617)の作用機序
プルヴィクトは、前立腺がん細胞のPSMAを特異的に認識する「ビピボチドテトラキセタン(PSMA‐617)」に「ルテチウム-177(177Lu)」を結合させた構造を有しています。
プルヴィクトが前立腺がんのPMSAに結合すると、がん細胞内にルテチウ-177(177Lu)が移行します。
その後、ルテチウムが細胞障害作用を有するβ線(ベータ線)を放出しますが、β線は体内では最大2.2mm程度(平均1mm未満)の範囲しか届かないという特徴があります。1)
がん細胞に取り込まれたルテチウム-177が放出するβ線は、がん細胞を特異的に攻撃すると同時に、周りの正常細胞に与えるダメージが少ないといった利点がありますね!
ただし、同時に放出されるγ線は飛距離が長いため、暫くの間、体内からγ線が放出されてしまいます。
周囲への影響を避けるため、医療法で定められた放射線量に低下するまでは、放射線を適切に管理できる病室内に滞在する必要があり、入院が必要な場合もあります。

エビデンス紹介:VISION試験
根拠となった臨床試験(VISION試験)をご紹介します。2)
本試験は、PSMA陽性で1種類以上のARSIと1~2種類のタキサン系薬剤による治療歴を有する転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんを対象に、標準治療群と標準治療にプルヴィクトを併用する群の有用性を検証した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は、「無増悪生存期間(PFS)」と「全生存期間(OS)」とされ、結果は以下の通りでした。
標準治療群 | 標準治療+ プルヴィクト群 |
|
PFS中央値 | 3.4か月 | 8.7か月 |
HR=0.40(99.2%CI:0.29~0.57) P<0.001 |
||
全生存期間中央値 | 11.3か月 | 15.3か月 |
HR=0.62(95%CI:0.52~0.74) P<0.001 |

その他、PSMA陽性で1種類のARSIによる治療歴を有し、タキサン未治療の転移性去勢抵抗性前立腺がん患者さんを対象としたPSMAfore試験においても、主要評価項目のPFSの有意な延長が認められていました。3)
副作用
正式承認後に更新予定です。
臨床試験では、疲労、口渇、悪心・嘔吐などが認められていました。
用法・用量
通常、成人には1回7.4GBqを6週間間隔で最大6回静脈内投与します。
なお、患者の状態により適宜減量
基本的にはγ線の影響もあるため、入院で実施されます、
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
まとめ・あとがき
プルヴィクトはこんな薬
- 前立腺がんでは初の放射性リガンド療法
- ビピボチドテトラキセタン(PSMA‐617)にルテチウム-177(177Lu)を結合させた構造
- 前立腺がん細胞のPSMAを特異的に認識する
- 基本的には入院で投与する
近年、前立腺がん領域では新規のアンドロゲン受容体シグナル阻害薬(ARSI)が多数登場しました。
-
-
ニュベクオ(ダロルタミド)の作用機序・類薬との違い【前立腺がん】
続きを見る
しかしながら、ARSI抵抗性を示す場合、タキサン系薬剤や抗がん剤による治療しかなく、新たな治療選択肢が望まれていました。

以上、今回は前立腺がんとプルヴィクト(Lu-PSMA‐617)の作用機序について解説しました~!
引用文献・資料等
- 国立がん研究センター 東病院|ルタテラ
- VISION試験:N Engl J Med 2021;385:1091-1103
- PSMAfore試験:Lancet. 2024 Sep 28;404(10459):1227-1239.
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