9.眼疾患

アイベータ配合点眼液(ブリモニジン/チモロール)の作用機序【緑内障】

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2019年9月20日、「緑内障、高眼圧症」を対象疾患とするアイベータ配合点眼液(ブリモニジン/チモロール)が承認されました!

基本情報

製品名 アイベータ配合点眼液
一般名 ●ブリモニジン酒石酸塩
●チモロールマレイン酸塩
製品名の由来 アイファガンの「アイ」と、チモロールが非選択的アドレナリンβ(ベータ)受容体遮断薬であることから
「ベータ」とを組み合わせて「アイベータ」とした。
製薬会社 製造販売元:千寿製薬(株)
販売:武田薬品工業(株)
提携:大塚製薬(株)
効能・効果 緑内障、高眼圧症(他の緑内障治療薬が効果不十分な場合)
用法・用量 1回1滴、1日2回点眼する。
収載時の薬価 456.00円(1日薬価:45.60円)

 

ブリモニジンはアドレナリンα2受容体作動薬、チモロールはアドレナリンβ受容体遮断薬に分類されています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
α2受容体作動薬とβ受容体遮断薬の組み合わせは国内初ですね!

 

ブリモニジンとチモロールの単剤は既に以下が承認・販売されています。

  • ブリモニジン:アイファガン点眼液0.1%
  • チモロール:チモプトールXE 点眼液 0.5%、リズモンTG点眼液0.25%

 

今回は緑内障を中心に、アイベータ配合点眼液の作用機序について解説します。

 

緑内障と症状

緑内障は眼の病気です。

眼の見えている範囲が徐々に狭くなったりボヤけたりしていき、治療が遅れてしまうと最悪失明に至ってしまいます。

 

高齢になればなるほど発症する確率が高くなり、日本では40歳以上の約5%に緑内障が発症すると推定されています。1)

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ただし、早期に治療を開始すれば失明することはほぼありませんので、早めの発見・診断・治療が重要です。

 

緑内障の原因と眼房水の排出経路

緑内障は眼の中の圧力(眼圧)が異常に上昇することで視神経が圧迫されて生じます。

 

眼圧を調整する物質として眼の中の水(眼房水)があります。

通常は、眼圧を保つと共に角膜・水晶体の栄養補給の役目を果たしていますね。

 

何らかの異常によって眼房水の量が増えてしまうと、眼の中が眼房水でパンパンになり、眼圧が上昇してしまいます。

 

 

通常、眼房水は以下の排出経路によって排出されます。

  • 主経路:シュレム管(経線維柱帯流出路)による排出(約90%
  • 副経路:ブドウ膜強膜流出路による排出(約10%

Copyright: Santen Pharmaceutical Co., Ltd.

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ほとんどがシュレム管による主経路ですが、一部、ブドウ膜強膜による副経路ですね。

 

しかし緑内障では様々な原因によって上記の排出経路が障害されて眼の中に貯留してしまいます。

また、緑内障は原因によって大きく以下の分類があります。

①原発緑内障 排泄経路が障害されているもの。
隅角が開いている「原発開放隅角緑内障」と、
隅角が閉じている「原発閉塞隅角緑内障」に分類される。
②小児緑内障 先天性のもの。
③続発緑内障 他の原因(外傷や網膜剥離、薬物の副作用等)によるもの。

 

緑内障の治療

緑内障の治療の原則は眼圧を下げることです。

 

主な治療には以下がありますが、「原発開放隅角緑内障」の場合は主には薬物治療が基本となります。

  • 薬物治療
  • レーザー治療
  • 手術

 

薬物治療のうち、局所投与薬(点眼薬等)には以下の選択肢があります。2)

  • プロスタノイド受容体関連薬:プロスタノイドFP受容体作動薬、プロスタノイドEP2受容体選択性作動薬
  • アドレナリンβ受容体遮断薬
  • 炭酸脱水酵素阻害薬
  • アドレナリンα2受容体刺激薬
  • アドレナリンα1受容体遮断薬
  • 副交感神経刺激薬
  • イオンチャネル開口薬
  • ROCK阻害薬

 

木元 貴祥
木元 貴祥
主には眼房水の産生抑制、もしくは排出促進ですね。

 

第一選択薬で推奨されているのはプロスタノイド受容体関連薬で、その他にはアドレナリンβ受容体遮断薬がよく用いられています。

 

プロスタノイドFP受容体作動薬(プロスタグランジンF2α誘導体製剤)については以下の記事で作用機序や一覧表をまとめていますのでご参考ください。

【緑内障】プロスタグランジンF2α誘導体製剤の作用機序と一覧

続きを見る

 

最近では、新規作用機序のプロスタノイドEP2受容体作動であるエイベリス(一般名:オミデネパグ)も登場してきました。

エイベリス(オミデネパグ)の作用機序:プロスタグランジンF2α誘導体製剤との違い【緑内障】

続きを見る

 

基本は単剤から治療を開始しますが、眼圧が十分に下がらない場合、別の単剤への切り替え(作用機序の異なる薬剤等)、もしくは副作用に注意しながら併用療法が行われます。

 

今回ご紹介するアイベータ配合点眼液はα2受容体刺激薬とβ受容体遮断薬の配合剤ですので、最初からは使用できません。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
単剤で効果不十分な場合に使用することができますね。添付文書にも「単剤での治療を優先すること。」と書かれています。

 

アイベータ配合点眼液(ブリモニジン/チモロール)の作用機序

アイベータの有効成分は、

  • ブリモニジン:アドレナリンα2受容体作動薬
  • チモロール:アドレナリンβ受容体遮断薬

です。

 

眼には様々な受容体が存在していて、ブリモニジンの明確な作用機序は不明とされていますが、アドレナリンα2受容体に作用することで

  1. 眼房水の産生抑制
  2. 眼房水の副経路(ブドウ膜強膜)からの排出促進

の作用を発揮すると考えられています。

 

また、チモロールの明確な作用機序も不明とされていますが、アドレナリンβ受容体を遮断することで眼房水の産生抑制作用を発揮すると考えられています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
まとめると下図のようになりますね。

アイベータ配合点眼液(ブリモニジン/チモロール)の作用機序

 

エビデンス紹介

根拠となった国内第Ⅲ相試験をご紹介します。3)

本試験はチモロール点眼液を4 週間点眼した後の眼圧値が18.0mmHg以上の原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者さんを対象に、チモロールとアイベータを比較した国内第Ⅲ相試験です。

 

主要評価項目は「治療期投与4週における眼圧変化値」で、結果は以下の通りでした。

試験群 チモロール群 アイベータ群
治療期投与4週における眼圧変化値 -1.8±2.1mmHg -3.1±2.4mmHg
-1.34
p<0.0001

 

木元 貴祥
木元 貴祥
このようにチモロール単剤で効果不十分な場合、アイベータにすることでより眼圧低下が期待できますね。

 

副作用・注意事項

重大な副作用として、

  • 眼類天疱瘡(頻度不明)
  • 気管支痙攣、呼吸困難、呼吸不全(いずれも頻度不明)
  • 心ブロック、うっ血性心不全、心停止(いずれも頻度不明)
  • 脳虚血、脳血管障害(いずれも頻度不明)
  • 全身性エリテマトーデス(頻度不明)

などが挙げられていますので特に注意が必要です。

 

アイベータに含まれるチモロールはβ受容体遮断作用を有することから、以下の患者さんには投与禁忌とされています。

  • 気管支喘息
  • 気管支痙攣
  • 重篤な慢性閉塞性肺疾患
  • コントロール不十分な心不全
  • 洞性徐脈
  • 房室ブロック
  • 心原性ショック

 

木元 貴祥
木元 貴祥
これはアドレナリンβ受容体遮断によって悪化する恐れがあるからですね。

 

気管支喘息の病態と治療については以下の記事をご参考ください。

デュピクセント(デュピルマブ)の作用機序【アトピー性皮膚炎/気管支喘息/副鼻腔炎】

続きを見る

 

また、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病態と治療については以下の記事が参考になります。いずれもβ受容体作動薬が治療に用いられますので、β遮断薬は使用できません。

ビレーズトリ(LAMA/LABA/ICS)の作用機序【COPD】

続きを見る

 

用法・用量

1回1滴、1日2回点眼します。

 

収載時の薬価

薬価収載時(2019年11月19日)の薬価は以下の通りです。

 

  • アイベータ配合点眼液1mL:456.00円(1日薬価:45.60円)

 

収載時の算定根拠については以下の記事で解説しています。

【新薬:薬価収載】14製品と市場拡大再算定(2019年11月19日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

アイベータはこんな薬

  • 初のα2受容体作動薬とβ受容体遮断薬の配合剤
  • ブリモニジンのα2受容体作動による眼房水の産生抑制と排出促進
  • チモロールのβ受容体遮断による眼房水の産生抑制
  • 気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、心疾患等には投与禁忌

 

チモロールを配合した配合剤(+プロスタグランジン製剤や、+炭酸脱水素阻害薬)は既にいくつか承認・販売されていますが、ブリモニジンを配合したのは初ですね。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
緑内障の治療の原則は単剤ですが、治療効果が得られないこともしばしばあります。

 

その際にはアドヒアランスの向上する配合剤が使用されますが、一方で副作用にも注意が必要となってきます。

配合剤にはいくつか種類がありますので、今後、どの配合剤がどういった患者さんに適しているのか検討が進めば興味深いですね。

 

以上、今回は緑内障と初のα2受容体作動薬とβ受容体遮断薬の配合剤であるアイベータ配合点眼液について解説しました。

 

チモロールとプロスタグランジンF2α誘導体製剤の配合剤一覧表にについては以下の記事でまとめていますので併せてご覧ください。

【緑内障】プロスタグランジンF2α誘導体製剤の作用機序と一覧

続きを見る

 

参考資料・論文等

  1. 日本眼科医会|よくわかる緑内障―診断と治療―
  2. 日本眼科学会緑内障診療ガイドライン(第5版)
  3. アイベータ配合点眼液 添付文書

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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