9.眼疾患

ルセンティス(ラニビズマブ)の作用機序【加齢黄斑変性】

今回は眼科領域でよく使用されるルセンティス硝子体内注射液(一般名:ラニビズマブ)についてご紹介します。

 

ルセンティスは以下の適応を有している薬剤で、眼の硝子体に注射して投与します。

  • 中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性
  • 網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫
  • 病的近視における脈絡膜新生血管
  • 糖尿病黄斑浮腫
  • 未熟児網膜症2019年11月22日適応追加

 

今回の記事では「加齢黄斑変性」の疾患解説を中心に、未熟児網膜症やルセンティスの作用機序についてご紹介します☆

 

眼の構造と黄斑(中心窩)

眼の構造は以下のイラストの通りですが、網膜の中心には「黄斑」と呼ばれる部位があります。

黄斑は視細胞が密集しているため、モノを見るための視機能では最も重要な部位とされています。

眼の構造と黄斑(中心窩)

 

黄斑の中心は中心窩(“ちゅうしんか”と読みます)と呼ばれ、ここには視細胞が最も密集しているため特に重要です。

 

加齢黄斑変性の病態と症状

加齢黄斑変性は、黄斑が加齢とともに障害を受け、視力の低下や視力異常をきたす疾患です。

 

50歳以上の男性に好発し、日本では増加傾向にあります。また加齢黄斑変性は失明(中途失明)の原因の上位を占めています(中途失明の第1位は緑内障)。

 

木元 貴祥
緑内障の疾患解説と薬については以下の記事をご覧くださいませ。
エイベリス(オミデネパグ)の作用機序:プロスタグランジンF2α誘導体製剤との違い【緑内障】

続きを見る

 

発症のリスク因子としては「喫煙」や「肥満」がありますので、「目の生活習慣病」とも呼ばれています。

 

症状としては

  • 物が歪んで見える
  • 視野の中心が暗くて見えにくくなる
  • 視力が低下する

などがあります。

 

多くの場合、症状は片眼から現れますが、両眼で見ているとなかなか症状に気付かずに、発見が遅れることもあります。

 

加齢黄斑変性の分類と原因

加齢黄斑変性には以下の2種類があり、原因が異なっています。

  • 萎縮型:黄斑組織が加齢によって萎縮していく。進行は遅い
  • 滲出型:脈絡膜新生血管による。進行が速い

 

多くの場合、「滲出型」と言われていますので、滲出型について解説します。

 

網膜のすぐ下には「脈絡膜」が存在していますが、網膜に老廃物が増えていくと、これを除去するために脈絡膜から新たな血管が作成されます。このように新たな血管が作られることを「新生血管」と呼んでいます。

 

木元 貴祥
“新生血管”、と聞くと良さそうな印象がありますが、そうとは限りませんよ。

 

病的で異常な新生血管は非常に脆く、血液成分が漏れ出してしまうことで、水分などが異常に貯まって浮腫となり、黄斑に障害をきたします。

加齢黄斑変性と新生血管:VEGFの働き

 

異常な新生血管には「VEGF(血管内皮増殖因子)」と呼ばれる因子や、PlGF(胎盤増殖因子)が関わっていると考えられています。

これらが過剰に分泌されることで脈絡膜新生血管が引き起こされ、滲出型の加齢黄斑変性が発症します。

 

加齢黄斑変性の治療

萎縮型は進行が遅いことから、特に治療は行われません。

しかし、滲出型に移行することもありますので、定期的な検査によって異常がないかを調べておく必要があります。

 

滲出型では、以下の治療法が行われます。1)

  • 抗VEGF薬:ルセンティス、アイリーアなど
  • レーザーによる光線力学的療法
  • レーザーによる光凝固法

 

今回ご紹介するルセンティスは「抗VEGF療法」に分類されていて、アイリーアと同程度の治療効果が認められいます。2)

 

未熟児網膜症とは

未熟児網膜症(ROP:Retinopathy of Prematurity)は希少な失明性疾患で、早産児・未熟児における網膜血管の異常発達により生じると考えられています。

 

早産児・未熟児では、網膜に血液を供給する血管の成長がしばらくの間、止まることがあります。

その後、成長が再開した場合、VEGFによる無秩序な新生血管が引き起こされ、最悪の場合、網膜剥離・失明に至ってしまいます。

 

軽度な場合には自然に治りますが、重度な場合にはレーザー治療が基本です。3)

 

木元 貴祥
しかし、レーザー治療ではVEGFの増加には対処できませんし、将来的に白内障の合併症の危険性もあるため、新たな治療選択肢が望まれていました。

 

ルセンティスはレーザー治療と比較して有意差はないものの、レーザー治療と同程度の治療効果が認められています!4)

 

ルセンティス(ラニビズマブ)の作用機序

ルセンティスはVEGF-Aを特異的に阻害するモノクローナル抗体のFab断片です。

ルセンティス(ラニビズマブ)の作用機序

 

新生血管の形成に関わるVEGF-Aを阻害することで、異常な新生血管を抑制し、滲出型の加齢黄斑変性や未熟児網膜症の症状を改善するといった作用機序を有しています!

 

類薬とあとがき

同様の作用機序を持つ薬剤としてアイリーア(一般名:アフリベルセプト)があります☆

アイリーアはVEGF-A、VEGF-B、PlGFを阻害しますが、ルセンティスはVEGF-Aのみを阻害します。

 

その他、加齢黄斑変性症に使用する新規のVEGF-A阻害薬であるベオビュ(一般名:ブロルシズマブ)も20220年に承認されました!各薬剤の比較一覧表等については以下の記事で解説していますのでご参考くださいませ。

バビースモ(ファリシマブ)の作用機序:類薬との違い・比較【加齢黄斑変性】

続きを見る

 

以上、今回は加齢黄斑変性症・未熟児網膜症とルセンティス(ラニビズマブ)の作用機序についてご紹介しました。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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