7.炎症・免疫・アレルギー

ベンリスタ(ベリムマブ)の作用機序【エリテマトーデス】

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2024年6月24日ベンリスタ皮下注200mgオートインジェクター(ベリムマブ)の「既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス」の用法・用量に5歳以上の小児を追加されることが承認されました。

基本情報

製品名 ●ベンリスタ点滴静注用120mg/400mg
●ベンリスタ皮下注200mgオートインジェクター
●ベンリスタ皮下注200mgシリンジ
一般名 ベリムマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来 特になし
製造販売 グラクソ・スミスクライン(株)
効能・効果 既存治療で効果不十分な全身性エリテマトーデス

 

ベンリスタは2017年9月成人の全身性エリテマトーデスを効能・効果として承認されていますが、小児にも適応拡大が承認されましたね。

 

また、ベンリスタには以下の剤形がありますが、これまでの小児用量は点滴静注用のみでした(2019年9月20日に適応拡大)。今後はオートインジェクター製剤も小児に対して使用可能となりますね。

  • 点滴静注用120mg、同400mg
  • 皮下注200mgオートインジェクター
  • 皮下注200mgシリンジ

 

今回は全身性エリテマトーデスとベンリスタ(ベリムマブ)についてご紹介します☆

 

全身性エリテマトーデスとは

全身性エリテマトーデスは、日本全国に約6~10万人程の患者さんがいると考えられており、男女比は約1:9で、圧倒的に女性に多い病気です。1)

英語では「systemic lupus erythematosus」といい、その頭文字をとって「SLE」と略されます。

 

systemicとは、“全身”のという意味で、この病気が全身の様々な臓器や場所に、多彩な症状を引き起こすということを指しています。

 

具体的な症状としては、発熱、全身倦怠感などの炎症性の症状と、関節、皮膚、そして腎臓、肺、中枢神経などの内臓の様々な症状が一度に、あるいは経過とともに起こってきます。

 

全身性エリテマトーデスの原因

現在、様々な研究が行われていますが、残念ながら今のところはその原因は分かっていません。

 

一つ分かっていることとして、何らかの原因で、免疫系の異常が引き起こされ、自分の免疫(抗体)が自分自身を攻撃してしまうのがSLEです。

本来なら、免疫とは細菌やウイルスなどから自分自身を守ってくれる大切な役割をしているのですが、SLEでは、自身の抗体が自身の体を攻撃するようになり、全身にさまざまな炎症を引き起こします。

 

そして免疫系異常の中心を担っているのが、「抗核抗体」という自己抗体で、SLE患者さんのほぼ全員が、血液中に有しています。

この自己抗体が自身の細胞・臓器・器官を攻撃することで多彩な症状が引き起こされます。

 

そしてこの「抗核抗体」はB細胞が分化した「形質細胞(プラズマ細胞)」によって産生されています。

B細胞に「可溶性Bリンパ球刺激因子(BLyS)」と呼ばれる因子が結合することで、B細胞の活性化・生存、形質細胞への分化が促されると考えられており、SLEの患者さんでは過剰に発現していることが知られています。

 

全身性エリテマトーデスの治療

治療の基本は「副腎皮質ステロイド」です。1)

症状が重度の場合、大量のステロイドを投与するステロイドパルス療法が行われることもあります。

 

その他、免疫抑制薬や対処療法(NSAIDs、降圧剤、抗凝固療法)等が行われることもありますが、ステロイド治療に抵抗性を示すこともしばしばあり、新たな治療法が求められていました。

 

2021年にはサフネロー(アニフロルマブ)も承認されています。

サフネロー(アニフロルマブ)の作用機序【エリテマトーデス】

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ベンリスタ(ベリムマブ)の作用機序

ベンリスタは、B細胞の活性化・生存、形質細胞への分化に寄与している「BLyS」を選択的に阻害するモノクローナル抗体製剤です!

BLySを阻害することで、B細胞の生存抑制や形質細胞への分化を抑制し、結果的に抗核抗体の産生を抑制することができます☆

ベンリスタ(ベリムマブ)の作用機序

 

副作用

主な副作用として、上気道感染(4.0%)、帯状疱疹(2.3%)、鼻咽頭炎、細菌性尿路感染及び咳嗽(2.1%)が報告されています。

 

その他、重大な副作用として以下がありますので特に注意が必要です。

  • 重篤な過敏症(0.6%)
  • 感染症(20.0%)
  • 進行性多巣性白質脳症(PML)(頻度不明)
  • 間質性肺炎(0.1%)

 

まとめ・あとがき

ベンリスタはこんな薬

  • 全身性エリテマトーデスに対する初の抗体薬
  • 5歳以上の小児にも適応拡大された
  • BLySを阻害することで、B細胞の生存抑制や形質細胞への分化を抑制する

 

木元 貴祥
木元 貴祥
SLEを適応とする抗体製剤はベンリスタが初のため、今後大いに期待される薬剤かと思います♪

 

全身性エリテマトーデスは若年者にも多いことから、小児への適応拡大は朗報ではないでしょうか。

 

以上、本日は全身性エリテマトーデスと、その治療薬のベンリスタ(ベリムマブ)についてご紹介しました。

 

参考資料・文献等

  1. 難病情報センター|全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49)

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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