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2021年3月23日、「変形性関節症(膝関節、股関節)」を対象疾患とするジョイクル関節注(ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム)が承認されました!
生化学工業|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ジョイクル関節注30mg |
一般名 | ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウム |
製品名の由来 | JOY「喜び、Joint(関節)、ヒアルロン酸ナトリウムとジクロフェナクとの Joint(結合)」と、 CLU「来る、Diclofenac」から名付けた。 |
製薬会社 | 製造販売:生化学工業(株) 販売:小野薬品工業(株) |
効能・効果 | 変形性関節症(膝関節、股関節) |
用法・用量 | 通常、成人1回1 シリンジを4週間ごとに関節腔内に投与する。 |
収載時の薬価 | 4,394円 |
変形性関節症(OA:osteoarthritis)の治療ではヒアルロン酸製剤の関節内投与や、経口のNSAIDsが使用されますが、これを結合させたものがジョイクルですね。
既存のヒアルロン酸製剤は1週間間隔投与ですが、ジョイクルは4週間毎のため、利便性の向上も期待できるのではないでしょうか。
今回の記事では高齢者に多い「変形性関節症」の病態や症状・治療法と共に、代表的なNSAIDsとヒアルロン酸製剤、そしてジョイクルの作用機序・特徴について解説します。
変形性関節症(OA)の病態
変形性関節症は加齢とともに発症しやすくなり、様々な関節に痛みを生じますが、場合によってはQOLが大きく低下するため、早期の発見・治療が重要です。
通常、関節の骨と骨の間には「軟骨」と呼ばれる組織があり、クッションの役割を担っています。
関節の骨に力が加わっても、軟骨によって力が分散され、関節の滑らかな動きを可能にしてくれています。(潤滑性)
しかし、加齢や外傷・関節炎、肥満等によって軟骨がすり減ったり、十分な機能を果たせなくなったりすると、関節が滑らかに動かなくなってしまいます。
そのため、関節の骨と骨の間に大きな摩擦が生じ、炎症を誘発し、痛みが発生します。
変形性関節症が悪化していくと、関節の骨自体も変形し、動かせる範囲が狭くなってしまいます。
変形性関節症(OA)の分類としては以下の2種類がありますが、多くは「一次性OA」です。
- 一次性OA:原疾患が明らかではないもの
- 二次性OA:原疾患が明らかなもの(例:関節リウマチ、外傷、内分泌疾患等が原因で発症したもの)
症状と部位
変形性関節症の症状としては、
- 関節の疼痛
- こわばり感(引っかかり感)
- 可動域が狭くなる
- 関節の違和感
などがあります。1)
進行してしまうと、関節運動が高度に制限された「強直」を生じてしまうこともあるため、早めの診断・治療が重要です。
部位としては全身の関節に発症しますが、特に体重の負荷がある「膝」、「股」、「腰」が好発部位です。 仕事や生活上、肩や肘を多く使う方では肩関節や肘関節に発症することもあります。1)
治療
治療の基本としては、
- 生活指導・運動療法
- 薬物療法
などが挙げられます。2)
生活指導では、肥満の改善や関節に負担のかけない動作の指導などが行われます。
運動療法では関節に負担をかけすぎない簡単なストレッチやウォーキングを行うことで筋肉量を増やし、関節の動作性向上を図ります。
また、並行して薬物療法も実施されますが、高齢者の変形性膝関節症に対する薬物療法の第一選択については、ガイドラインで以下の通りとされています。2)
- 併存疾患がない場合:アセトアミノフェン、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の外用薬、非選択的NSAIDsの内服薬、COX-2選択的阻害薬、ヒアルロン酸製剤の関節内投与
- 消化管障害リスクがある場合:アセトアミノフェン、NSAIDsの外用薬、ヒアルロン酸製剤の関節内投与
- 心血管障害リスクがある場合:アセトアミノフェン、NSAIDsの外用薬、ヒアルロン酸製剤の関節内投与
- 腎障害リスクがある場合:アセトアミノフェン、ヒアルロン酸製剤の関節内投与
これらを行なっても改善しない場合や重症の場合、人工関節置換手術が行われます。
今回はジョイクルの関与するNSAIDsとヒアルロン酸製剤の主な種類について解説していきます。
NSAIDsの作用機序と一覧表
NSAIDsは、疼痛抑制と関節の炎症抑制の目的で使用されます。
炎症や疼痛を引き起こす物質として「プロスタグランジン(PG)」がありますが、これはアラキドン酸から「シクロオキシゲナーゼ(COX)」によって合成されます。
COXにはCOX-1とCOX-2があり、それぞれで合成されるPGの働きは異なっています。
- COX-1:胃粘膜保護、腎機能維持といった生理機能維持のPGの合成
- COX-2:炎症・疼痛を引き起こすPGの合成
NSAIDsはCOXを阻害することで炎症・疼痛に関わるPGの合成を抑制し、炎症・疼痛を抑制させるといった作用機序ですね。
またNSAIDsには下表のように、COX非選択的(COX-1とCOX-2を共に阻害)な薬剤と、COX-2選択的な薬剤があります。(下表が全てではありません)
選択性 | 分類 | 主な薬剤例(一般名) |
COX-2選択性 | オキシカム系 | メロキシカム |
アリール酢酸系 | エトドラク | |
コキシブ系 | セレコキシブ | |
COX非選択性 | プロピオン酸系 | ロキソプロフェン |
ナプロキセン | ||
フルルビプロフェン | ||
イブプロフェン | ||
ザルトプロフェン | ||
オキシカム系 | メロキシカム | |
ロルノキシカム | ||
ピロキシカム | ||
アリール酢酸系 | ジクロフェナク | |
アンフェナク | ||
ナブメトン | ||
スリンダク | ||
アセメタシン | ||
インドメタシン | ||
フェナム酸系 | メフェナム酸 | |
フルフェナム酸 |
NSAIDsは経口投与で長期に使用するとCOX-1の阻害による副作用(消化管障害)発生の可能性が高くなることが考えられますので、副作用を避けるために、COX-2選択的NSAIDsが使われることもあります。
ただし、変形性関節症でNSAIDsを経口投与する場合、「長期間の投与には慎重を有する」とされているため、基本的には短期の使用が推奨されていますね。2)
ヒアルロン酸製剤の作用機序と一覧表
ヒアルロン酸は軟骨の保護や潤滑作用、保湿作用などを有する物質で、生体内にも多く存在しています。
最近では、化粧品にも保湿成分として含まれていますよね。
変形性関節症では軟骨のヒアルロン酸が減ってしまっており、それによって関節の摩擦が生じています。
関節内に投与されたヒアルロン酸は、
- 軟骨表面の被覆、保護
- 潤滑性能の向上
などの効果を持つことが確認されています。
2021年1月時点で承認・販売されている関節内投与のヒアルロン酸製剤には以下があります。
製品名 | 効能・効果(一部略) |
アルツ関節注/ アルツディスポ関節注 |
○変形性膝関節症 ○肩関節周囲炎 ○関節リウマチにおける膝関節痛 |
スベニールディスポ関節注/ ベニールバイアル関節注 |
|
サイビスクディスポ関節注 | 保存的非薬物治療及び経口薬物治療が十分奏効しない疼痛を有する 変形性膝関節症の患者の疼痛緩和 |
上記のヒアルロン酸製剤は「膝関節」や「肩関節」には使用できますが、「股関節」には使用することができませんのでご注意ください。
今回ご紹介するジョイクルはヒアルロン酸製剤で初の股関節でも効果が期待されています。
ジョイクル関節注の作用機序・特徴
ジョイクルは、ヒアルロン酸にNSAIDsのジクロフェナクを結合させた薬剤です。
関節内に注射で投与すると、関節内でヒアルロン酸の作用とジクロフェナクによる抗炎症作用が得られると考えられます。
また、ジクロフェナクは徐放(徐々に放出)されるように設計されているため、抗炎症作用の効果持続も期待できますね。
NSAIDsは長期間の経口投与によって消化器障害、腎機能障害、肝機能障害が懸念されますが、ジョイクルは関節内で局所的に作用するため、これら副作用の軽減も期待できるのではないでしょうか。
用法・用量
通常、成人1 回1 シリンジ(ジクロフェナクエタルヒアルロン酸ナトリウムとして1 回30 mg)を4 週間ごとに関節腔内に投与します。
副作用:ブルーレター発出(ショック、アナフィラキシー)
1%~5%未満に認められる副作用として注射部位関節痛があります。
また、重大な副作用としては
- ショック、アナフィラキシー(0.4%)
が挙げられていますので特に注意が必要です。
加えて、2021年3月23日の製造販売承認取得以降、2021年5月28日までの間に、本剤使用患者において重篤なショック、アナフィラキシーの症例が10例報告されたことから、ブルーレターが発出され、添付文書には警告欄が追加されています。
PMDA|安全性速報(ブルーレター):ジョイクル関節注30mgによるショック、アナフィラキシーについて
【警告】
本剤投与により重篤なショック、アナフィラキシーが発現することがあるので、本剤は、緊急時に十分な対応のできる準備をした上で投与し、投与後も十分な観察を行うこと。
収載時の薬価
収載時(2021年5月19日)の薬価は以下の通りです。
- ジョイクル関節注30mg:4,394円
算定根拠については以下をご覧ください。
-
【新薬:薬価収載】13製品+再生医療等製品(2021年5月19日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ジョイクルはこんな薬
- ヒアルロン酸とジクロフェナクを結合させた薬剤
- ジクロフェナクの作用時間延長と副作用軽減が期待
- 関節内に4週間毎に投与する
- ショック・アナフィラキシーに注意
変形性関節症は加齢とともに生じ、QOLを低下させてしまう可能性がある疾患です。
初期には痛みなどが軽度なことから、病院を受診される方は少なく、発見が遅れることもしばしばあります。
もし関節に違和感や痛み等がありましたら早めに受診し、早期発見・早期治療を行うことをおススメします。
今後、これまでのヒアルロン酸製剤とジョイクルの使い分け等に関しても検討されれば興味深いと感じますね。
以上、今回は変形性関節症とNSAIDsとヒアルロン酸製剤の一覧表、そしてジョイクルの作用機序・特徴についてご紹介しました。
参考資料・論文等
- 日本整形外科学会|変形性関節症
- Minds|変形性股関節症診療ガイドライン2023
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