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コムプレラ配合錠(リルピビリン/エムトリシタビン/テノホビル)の作用機序【HIV】

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2014年11月18日、抗HIV薬のコムプレラ配合錠の承認を取得したと発表がありました。

 

コムプレラ配合錠は既に販売されている以下のHIV治療薬を配合した薬剤です。

  • リルピビリン:非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)
  • エムトリシタビン:核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)
  • テノホビルアラフェナミド:核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)

今回はHIV感染症とコムプレラ配合錠の作用機序についてご紹介します。

 

AIDSとHIV

AIDS(エイズ)という言葉は一度は耳にしたことがあると思います。

正式名称は「後天性免疫不全症候群(Acquired immune deficiency syndrome:AIDS)」と呼ばれ、体内の免疫細胞が破壊されて後天的に免疫不全を引き起こす疾患です。

 

AIDSを引き起こす原因とされているウイルスが「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」です。

HIVに感染して数年の潜伏期間(無症状)を経た後にAIDSが発症すると言われています。

 

AIDSを発症すると全身倦怠感、体重の急激な減少、咳、発熱、発疹、といった風邪のような症状を呈します。

その後、普通では感染しないような日和見感染症(例:ニューモシスチス肺炎、カポジ肉腫、サイトメガロウイルス感染症)を合併し、生命に危機を及ぼします。

 

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染と増殖メカニズム

HIVの感染経路には以下の3つが知られています。

  • 性的感染
  • 血液感染
  • 母子感染

 

HIVは一本鎖RNAを持つレトロウイルスで、単体では増殖できません。

従って、ヒト等の動物の細胞内に感染して増殖を行います。それではここから増殖メカニズムについてご説明します。

 

HIVの構造と吸着・膜融合・脱殻

HIVはエンベロープと呼ばれる外膜の中にカプシドがあり、その中にRNAが封入された構造を有しています。

 

HIVがヒト細胞に感染すると、
吸着⇒膜融合⇒脱殻というプロセスを経てヒト細胞内にウイルスRNAが放出されます。

 

ウイルスRNAの逆転写

ヒトの細胞内に放出されたウイルスRNAは「逆転写酵素」と呼ばれるウイルス酵素によって二本鎖DNAが合成されます。

合成されたウイルス二本鎖DNAはヒト細胞の核内へと運ばれていきます。

 

ヒトDNAへの組み込み(インテグラーゼ)

核内に運ばれたウイルスDNAは、そのままでは複製や転写・翻訳ができません。

そのためウイルスDNAは「インテグラーゼ」と呼ばれるウイルス酵素によって、ヒトDNAの中にウイルスDNAを組み込みます

 

ウイルスDNAがヒトDNAに組み込まれることで、HIVに感染したヒト細胞が増殖する際にはウイルスDNAも一緒に増殖していってしまいます。

そしてウイルスDNAの遺伝情報を元に、転写・翻訳が行われ、ウイルスに必要なタンパク質も勝手に合成されていってしまいます。

 

以上がHIVの感染・増殖のメカニズムです。

 

HIV感染症の治療

HIV感染症は早期に行うことで、AIDSの発症までの期間を延長することができます。

ただし、HIVを完治させることは現代医学では難しいとされています。

 

主に使用される薬剤には以下の種類があり、これらを適宜併用した多剤併用療法が基本です。

 

初回治療の組み合わせとしては、以下のいずれかが患者さんの適正に併せて推奨されています。

 

 

今回ご紹介するコムプレラ配合錠は上記の「NRTI×2剤+NNRTI×1剤」として使用できる薬剤です。

これらの多剤併用療法を原則、一生涯行うことでAIDSで死亡することはほとんど無くなったと言われています。

 

コムプレラ配合錠の作用機序

コムプレラ配合錠は逆転写酵素阻害剤(核酸系+非核酸系)を配合した薬剤です。

 

前述のウイルスの逆転写酵素を阻害することで、二本鎖DNAが合成できなくなり、その後の反応が全てストップします。

 

このような作用機序によってHIVの増殖を抑制するのがコムプレラ配合錠です。

 

コムプレラ配合錠の副作用と注意事項

主な副作用として、下痢、頭痛、悪心、不眠症、浮動性めまい、異常な夢、などが報告されています。

 

中等度及び重度の腎機能障害のある患者さんでは、テノホビルとエムトリシタビンが個々に用法・用量の調節が必要となります。

従って、上記の患者さんでは本剤のような配合剤は投与せずに、個別の製剤を使用することとされています。

 

コムプレラ配合錠の用法・用量

1回1錠を1日1回食事中または食直後に経口投与します。

 

類薬とあとがき

2018年にはコムプレラ配合錠と同じく「NRTI×2剤+NNRTI×1剤」を配合した薬剤としてオデフシィ配合錠が登場します。

有効成分も下表の通り、ほぼ同じです。

製品名 オデフシィ配合錠 コムプレラ配合錠
有効成分 NNRTI リルピビリン塩酸塩
NRTI エムトリシタビン
テノホビル アラフェナミドフマル酸塩 テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩

 

今後は使い分け等が検討されれば興味深いと感じます。

以上、今回はHIVとコムプレラ配合錠の作用機序についてご紹介しました。

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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