7.炎症・免疫・アレルギー

アイマービー(ニポカリマブ)の作用機序【重症筋無力症】

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2025年8月29日、厚労省の薬事審議会・医薬品第一部会にて「全身型重症筋無力症」を対象疾患とするアイマービー点滴静注(ニポカリマブ)の承認が了承されました!

ヤンセンファーマ|申請のニュースリリース

基本情報

製品名 アイマービー点滴静注300mg/1200mg
一般名 ニポカリマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来
製造販売 ヤンセンファーマ(株)
効能・効果 全身型重症筋無力症(ステロイド剤又はステロイド剤以外の免疫抑制剤が十分に奏効しない場合に限る)
用法・用量 通常、成人及び12歳以上の小児には、ニポカリマブ(遺伝子組換え)として、
初回に30mg/kgを点滴静注し、以降は1回15mg/kgを2週間隔で点滴静注する。
収載時の薬価
発売日

 

木元 貴祥
木元 貴祥
アイマービーはヒト胎児性Fc受容体(FcRn)に対するモノクローナル抗体薬です!

 

作用機序・位置付けは、同疾患で既に承認されているヒフデュラ配合皮下注/ウィフガート点滴静注(エフガルチギモド)リスティーゴ皮下注(ロザノリキシズマブ)と似ていますね。

ヒフデュラ/ウィフガート(エフガルチギモド)の作用機序【重症筋無力症】

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上記の類薬は「成人」のみにしか使用できませんでしたが、アイマービーは12歳以上の小児から使用可能です!

 

ただし、アイマービーは点滴静注のため、ヒフデュラやリスティーゴのような皮下注製剤ではありませんので注意が必要です。

 

今回は重症筋無力症とアイマービー(ニポカリマブ)の作用機序、エビデンスについて解説していきます。

 

重症筋無力症とは

重症筋無力症(MG:myasthenia gravis)は難病に指定されている疾患で、神経と筋肉の境目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体(IgG)により破壊される自己免疫疾患です。

男女比は1:1.15でやや女性に多いのが特徴で、有病率は人口10万人あたり23.1人、患者数は29,210人とされています(2018年時点)。1)

 

症状としては、全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂(まぶたが下がってくる)、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴です。

また、嚥下が上手く出来なくなる場合もあり、重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともあります。

 

重症筋無力症の原因

通常、我々が筋肉を動かそうとする場合、神経筋接合部の運動神経の末端から「アセチルコリン」が放出され、これが筋肉の「アセチルコリン受容体」に結合することで筋肉が収縮します。

 

しかし、重症筋無力症の多くの患者さんでは何らかの原因でアセチルコリン受容体に対する自己抗体(AChR抗体)が産生されていることが知られています。

この自己抗体がアセチルコリン受容体に結合することで、アセチルコリンが結合できなくなってしまい、筋肉が収縮できなくなってしまいます(筋力の低下)。

重症筋無力症では抗アセチルコリン受容体抗体(IgG)が原因となっている

 

その他にも、筋特異的受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)に対する自己抗体(MuSK抗体)が原因となることも報告されています。2)

 

ちなみに、重症筋無力症のうち、AChR抗体陽性が約80~85%MuSK抗体陽性は約5%とのこと2)です。ほとんどがAChR抗体陽性ですね。

 

重症筋無力症の治療

対症療法としてコリンエステラーゼ阻害薬が使用されることもありますが、治療の基本は免疫療法で、この病気の原因である自己抗体の産生を抑制したり、取り除く治療です。2)

 

第1選択は自己抗体の産生を抑制するステロイド薬、第2選択は免疫抑制薬(タクロリムス、シクロスポリン)、第3選択は免疫グロブリン静注療法または血漿交換療法です。

今回ご紹介するアイマービーは少なくとも1剤以上(コリンエステラーゼ阻害薬、ステロイド薬、免疫抑制薬)の治療が行われている場合、その後に使用することで治療効果が期待されています!

 

なお、免疫グロブリン大量静注療法・血液浄化療法による症状の管理が困難な場合にはソリリス(エクリズマブ)ユルトミリス(ラブリズマブ)が使用できます。

ユルトミリス(ラブリズマブ)の作用機序:ソリリスとの違い【PNH】

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アイマービー(ニポカリマブ)の作用機序:抗FcRn抗体

重症筋無力症の原因とされているAChR抗体やMuSK抗体は、いずれもIgGに分類されていて、通常、細胞内に取り込まれるとリソソームによる分解を受けてしまいます。

しかし、IgGが細胞内のFcRn(胎児性Fc受容体)と結合することで、リソソームの分解が回避でき、そのまま再利用(リサイクル)することが可能です。

IgGのリサイクリングにはFcRnが重要である。

 

これをIgGの“リサイクリング”と呼んでいます。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
重症筋無力症の原因物質であるIgGの半減期が延長してしまうため、やっかいですよね・・・。

 

アイマービーはIgGのリサイクリングに関与しているFcRnを選択的に阻害するモノクローナル抗体薬です!

つまり、IgGとFcRnの結合が阻害され、FcRnに結合できないIgGはリサイクルできずに分解されていきます。

アイマービー(ニポカリマブ)の作用機序:抗FcRn抗体

 

その結果、重症筋無力症に関与しているAChR抗体やMuSK抗体などのIgGの半減期が短縮し、症状緩和・病状進行抑制効果が得られると考えられています。

 

エビデンス紹介:Vivacity-MG3試験

根拠となった臨床試験をご紹介します(Vivacity-MG3試験)。3)

本試験は、現在の標準治療で十分な効果が得られない全身型重症筋無力症患者さん(AChR抗体/MuSK抗体/LRP4抗体の陽性・陰性含む)を対象に、アイマービーとプラセボの有効性を比較した第Ⅲ相臨床試験です(いずれの群も現在の標準治療を併用)。

 

主要評価項目は各抗体の陽性例における「MG-ADLスコアのベースラインから22週、23週、24週までの変化量*」とされ、結果は以下の通りでした。

試験群 アイマービー群 プラセボ群
MG-ADLスコアのベースラインから
変化量
-4.70 -3.25
p=0.0024

*MG-ADLスコア:重症筋無力症の重症度を評価するスコアで、合計点数が高いほど重症

 

木元 貴祥
木元 貴祥
アイマービー群でMG-ADLスコアの有意な低下が示されていますね!

 

副作用

正式承認後に更新予定です。

 

用法・用量

通常、成人及び12歳以上の小児には、ニポカリマブ(遺伝子組換え)として、初回に30mg/kgを点滴静注し、以降は1回15mg/kgを2週間隔で点滴静注します。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
小児にも使用できるのがよいですね!

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

アイマービーはこんな薬

  • FcRnを選択的に阻害するモノクローナル抗体薬
  • 自己抗体(IgG)のリサイクリングを抑制し、半減期を短縮させる
  • 2週間隔で点滴静注
  • 12歳以上の小児に使用可能

 

木元 貴祥
木元 貴祥
重症筋無力症は治療選択肢が限られているため、治療選択肢が増えるのは朗報ですね。小児にも使用できる点がポイントです。

 

同様の位置付けで使用できるヒフデュラ(エフガルチギモド)ジルビスク(ジルコプラン)リスティーゴ(ロザノリキシズマブ)との使い分けも気になるところですね。

リスティーゴ皮下注(ロザノリキシズマブ)の作用機序【重症筋無力症】

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以上、今回は重症筋無力症とアイマービー点滴静注(ニポカリマブ)の作用機序、エビデンスについて解説しました~!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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