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2024年9月24日、「不眠症」を効能・効果とするクービビック(ダリドレキサント)が承認されました!
ネクセラファーマジャパン|ニュースリリース
基本情報
製品名 | クービビック錠25mg/50mg |
一般名 | ダリドレキサント |
製品名の由来 | QUEST(探求)+VIVA(生き生きとした)+IQ [intelligence](特性・叡智)に由来する。 |
製薬会社 | 製造販売:ネクセラファーマジャパン(株) 販売:塩野義製薬(株) |
効能・効果 | 不眠症 |
用法・用量 | 通常、成人にはダリドレキサントとして1日1回50mgを 就寝直前に経口投与する。 なお、患者の状態に応じて1日1回25mgを投与することができる。 |
収載時の薬価 | |
発売日 |
クービビックは国内3製品目のオレキシン受容体拮抗薬ですね!
- ベルソムラ(一般名:スボレキサント):2014年承認
- デエビゴ(一般名:レンボレキサント):2020年承認
-
デエビゴ(レンボレキサント)の作用機序【不眠症】
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今回とクービビック(ダリドレキサント)の作用機序、そして類薬のベルソムラやデエビゴとの違い・比較について解説します。
不眠症とは
皆様もストレスや不安、緊張で夜眠れなくなった経験があるのではないでしょうか?
日本人を対象にした調査によれば、5人に1人(約20%)が「睡眠で休養が取れていない」、「何らかの不眠がある」と回答しているようです。1)
近年、ストレス社会ともいわれ、不眠症の患者さんは年々増加傾向にあります。
不眠の症状は以下の4つに分類されています。1)
- 入眠障害:なかなか寝付けない
- 中途覚醒:夜中に目が覚めてしまう
- 早期覚醒:朝早くに目が覚めてしまう
- 熟眠障害:睡眠が浅く、よく寝た気がしない
不眠症の原因と脳の興奮系・抑制系バランス
不眠は、以下のような様々な原因によって引き起こされます。
- ストレス(仕事、人間関係、家庭など)
- アルコール摂取
- 薬の服用
- 精神疾患(うつ病など)
- 生活習慣病
脳内には、「興奮系」と「抑制系」の神経が存在しています。
通常はバランスよく存在していますが、上記のような原因によって、興奮系が優位となることで不眠症を発症すると考えられています。
興奮系には「オレキシン」と呼ばれる物質が関与しており、抑制系には「GABA(γ-アミノ酪酸)」が関与しています。
脳内の神経から分泌されるオレキシンが「オレキシン受容体」を刺激することで脳が興奮・覚醒すると考えられています。2)
不眠症の治療
不眠症の治療には、
- 非薬物療法:生活改善、適度な運動、お酒を控える等
- 薬物療法
があります。
まずは、非薬物療法として日常生活の見直しや生活改善(お酒を控える、ストレスを減らす)、入眠環境を整える、 などの改善を心がけます。
非薬物療法を行っても改善しない場合、症状や程度に合わせて以下のような薬物療法が行われますが、日本神経治療学会のガイドラインでは以下の記載があります(一部改編)。3)
薬物療法 | 作用機序 | 副作用 | 依存性 | コメント |
ベンゾジアゼピン(BZ)系 睡眠薬 |
GABA増強 抑制系の増強 |
持ち越し 健忘 せん妄 転倒 依存 |
あり | 使用頻度多い |
非ベンゾジアゼピン(非BZ)系 睡眠薬 |
GABA増強 抑制系の増強 α1選択性 |
あり | 第一選択 | |
メラトニン受容体作動薬 | メラトニン受容体作動 体内リズムの調整 |
少ない | ない | 睡眠覚醒リズム調子作用に 優れるリズム調製 |
オレキシン受容体拮抗薬 | オレキシン受容体遮断 覚醒系の遮断 |
(少ない) | (ない) | 覚醒系を抑制 |
抗ヒスタミン薬 | ヒスタミン受容体遮断 | 持ち越し効果 体重増加 |
なし | 早期に耐性形成 |
今回ご紹介するクービビックは「オレキシン受容体拮抗薬」に分類されている薬剤です!
なお、いずれの薬剤も最低用量から開始し、副作用を最小限に抑えながら効果が得られるように慎重に増減して治療を行っていきます。
クービビック(ダリドレキサント)の作用機序
クービビックはオレキシン受容体を選択的に遮断する薬剤です!
オレキシン受容体には
- オレキシン1受容体
- オレキシン2受容体
がありますが、クービビックは両方の受容体に対して遮断作用を有します(ベルソムラやデエビゴも同じ)。
オレキシンがオレキシン受容体に結合することを阻害し、脳の興奮・覚醒を抑制する結果、睡眠作用を促すといった作用機序を有しています。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬、メラトニン受容体作動薬との作用機序の違い
ベンゾジアゼピン受容体作動性(ベンゾジアゼピン系)の睡眠薬は、抑制系のGABAの働きを高める働きがあります。
抑制系を亢進させることで、覚醒を無理やり抑えるといった作用機序で睡眠を促していました。
それに対し、オレキシン受容体拮抗薬は興奮系の働きを直接抑制することができるので、より自然な睡眠を促すことが可能と考えられています。
また、オレキシン受容体拮抗薬はベンゾジアゼピン受容体作動性の睡眠薬と比較して依存性(リバウンドや半跳性不眠)や副作用が少ないことも特徴です。3)
メラトニン受容体作動薬については、睡眠作用は弱いものの筋弛緩作用、依存形成、認知機能への影響はほぼ無いとされています。ただし、効果発現まで2~4週間を要することもあるため、即効性は期待できません。
現在は、小児の入眠困難例に使用するメラトベル顆粒(メラトニン)などがあります。
-
メラトベル顆粒(メラトニン)の作用機序【神経発達症】
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なお、ベルソムラは高齢者に対するせん妄予防効果も示唆されていて、国内で第Ⅲ相試験が実施されましたが、残念ながら有意差はなかったと報告されました(JAMA Netw Open. 2024 Aug 1;7(8):e2427691.)。
エビデンス紹介:国内第Ⅲ相試験
根拠となった主な臨床試験(国内第Ⅲ相試験)をご紹介します。
本試験は、成人および高齢の不眠症患者さんを対象に、プラセボとクービビック(25mgまたは50mg)を比較した国内第Ⅲ相臨床試験です。4)
主要評価項目は4週目における「主観的指標の総睡眠時間(sTST)」および「主観的指標の睡眠潜時(sLSO)*」のベースラインからの変化とされ、結果は以下の通りでした。
クービビック 50mg群 |
クービビック 25mg群 |
|
プラセボと比較した sTSTのベースラインからの変化 |
20.3分 プラセボとの差:p<0.001 |
9.2分 プラセボとの差:p=0.042 |
プラセボと比較した sLSOのベースラインからの変化 |
-10.7分 プラセボとの差:p<0.001 |
-7.2分 プラセボとの差:p=0.006 |
*睡眠潜時:消灯あるいは就床時刻から睡眠開始までの時間
いずれの用量でも、プラセボと比較して有意な改善が認められていますね。
なお、米国で実施された同様の第Ⅲ相試験5)と同程度の有効性・安全性とのことです。
副作用
3%以上に認められる副作用として、傾眠等が報告されています。
なお、クービビックはプラセボと比較して翌朝の眠気の増加は示されなかったとのことです。
その他、投与中止に伴う離脱症状やリバウンド効果を示唆する兆候も認められていなかったようですね。
用法・用量
通常、成人にはダリドレキサントとして1日1回50mgを就寝直前に経口投与します。なお、患者の状態に応じて1日1回25mgを投与することも可能です。
海外では、中等度のCYP3A4阻害剤と併用する際の最大用量は25mgまでとされています(強いCYP3A4阻害薬との併用は避けること、とされている)。
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デエビゴ(レンボレキサント)の作用機序【不眠症】
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収載時の薬価
現時点では薬価未収載です。
一包化は可能?
クービビックの一包化は可能です。
クービビックの添付文書では「アルミピロー包装開封後は湿気を避けて保存すること。」とあり、インタビューフォームには「25℃、相対湿度 0~95%の範囲において、質量変化は 0.2%未満であり、吸湿性は認められなかった。」とあることから一包化は可能であると推察されます。
類薬のベルソムラの添付文書では「光及び湿気を避けるため、PTPシートのまま保存し、服用直前にPTPシートから取り出すこと。」とあるため、ベルソムラは一包化不可です。
クービビックとデエビゴとベルソムラとの違い・比較
現時点までの添付文書やIFの情報を元に、クービビックとデエビゴとベルソムラの比較一覧表を作成してみました!
レビュー論文6)によれば、クービビックは半減期が他の2製品よりも短いことから、日中の眠気などの低減にも寄与しているのでは、と考察されていました。
相互作用については、クービビックがCYP3A4で代謝されることから、CYP3Aの強い阻害薬とは併用禁忌です。
まとめ・あとがき
クービビックはこんな薬
- オレキシン受容体拮抗薬で、オレキシン受容体を遮断することで覚醒系を抑制する
- 類薬にはベルソムラ(スボレキサント)とデエビゴ(レンボレキサント)がある
- 半減期が短いため、日中の眠気の軽減が期待されている
2014年にベルソムラが日本において世界初のオレキシン受容体拮抗薬として承認を取得し、大きな話題となっていました。その後、2020年にはデエビゴが承認されました。
以上、今回は不眠症とクービビック(ダリドレキサント)の作用機序について、そして類薬のベルソムラ・デエビゴとの違い・比較について解説しました!
引用論文・資料等
- e-ヘルスネット|不眠症
- Pharmacol Rev. 2012 Jul;64(3):389-420.
- 日本神経治療学会|不眠・過眠と概日リズム障害の診療ガイドライン
- 国内第Ⅲ相試験:Sleep Med. 2024 Oct:122:27-34.
- 米国第Ⅲ相試験:Lancet Neurol. 2022 Feb;21(2):125-139.
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