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2022年1月20日、「KRAS G12C変異陽性の非小細胞肺がん」を対象疾患とする初のKRAS阻害薬であるルマケラス(ソトラシブ)が承認されました!
アムジェン|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ルマケラス錠120mg |
一般名 | ソトラシブ |
製品名の由来 | LUMA(ラテン語で「光」や「明るさ」を意味する語源を持ち、明確な道筋を照らすことを意味する) KRAS(NSCLCに認められる変異の1つであるKRAS G12C変異を標的とすることを意味する) |
製造販売 | アムジェン(株) |
効能・効果 | がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の 切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん |
用法・用量 | 通常、成人にはソトラシブとして1回960mgを1日1回経口投与する。 なお、患者の状態により適宜減量する。 |
収載時の薬価 | 4,204.30円 |
発売日 | 2022年4月20日新発売(HP) |
これまでKRASを標的とする薬剤の開発は不可能とまで言われていましたが、ついにKRAS阻害薬が登場です!
今回は非小細胞肺がんとKRAS変異、そしてルマケラスの作用機序・エビデンスについて解説です!
肺がんの分類について
肺がんは性質や薬の効き方によって“非小細胞肺がん”と“小細胞肺がん”に分類されています。
早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。
非小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)
非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。
- 非扁平上皮がん
- 扁平上皮がん
今回は非扁平上皮がんを中心にご紹介します。扁平上皮がんについては以下の記事をご確認ください。
-
ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】
続きを見る
非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)の初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況(ドライバー遺伝子変異など)によって対応するチロシンキナーゼ阻害薬を使用します。1)
ドライバー遺伝子変異など | 初回化学療法例 |
EGFR遺伝子変異陽性 |
|
ALK融合遺伝子陽性 | |
ROS1融合遺伝子陽性 | |
BRAF遺伝子変異陽性 | |
MET遺伝子変異陽性 | |
RET融合遺伝子陽性 | |
遺伝子変異/転座陰性 (または不明) |
|
今回ご紹介するKRAS変異のうち、KRAS G12C変異は日本人では4.5%に認められると言われています。2)
ただし、ルマケラスは初回化学療法としては使用できず、二次・三次化学療法で使用されるため、初回化学療法は「遺伝子変異/転座陰性(または不明)」の場合に該当しますね。1)
抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬の併用については以下の記事で解説しています。
-
テセントリク(アテゾリズマブ)の作用機序【肺がん/乳がん/肝がん】
続きを見る
KRAS G12C遺伝子変異陽性のがん細胞
がん細胞が増殖するメカニズムは様々な仕組みが存在していますが、がん細胞はしばしばEGFRと呼ばれるタンパク質を発現していることあります。
因子であるEGFが、がん細胞のEGFRに結合すると、その刺激が細胞内を伝達(シグナル伝達)し、核内に刺激が届けられます。
このシグナル伝達の中継点としてKRASが存在することが知られており、KRASに伝わったシグナルはいくつかのタンパク質を経由して核内まで届けられます。
核内まで刺激が伝達すると、増殖・活性化が促進され、がん細胞の増殖に繋がります。
ただし、因子であるEGFが存在しない場合、刺激が核に伝達しないため、がん細胞は増殖しません。
しかし、非小細胞肺がんの4.5%にはKRAS遺伝子変異の中でもG12Cに変異あることが知られています。
KRAS遺伝子変異陽性の場合、因子であるEGFが存在しないにも関わらず、恒常的にシグナル伝達が核へと伝達されています。
つまり、KRAS遺伝子に変異があると、常にがん細胞の増殖が活性化されるというわけです。
元々、KRAS遺伝子に変異のある患者さんではがん細胞の増殖速度や転移が促進されており、更には薬剤が効きにくいことから予後不良とされていました。
そんな中、ついにKRASを阻害する薬剤として登場したのがルマケラスです!!
ルマケラス(ソトラシブ)の作用機序
ルマケラスはKRAS G12C変異に対する初の阻害薬です。変異したKRASの働きが抑制されることで、がん細胞の増殖抑制効果が得られると期待されています。
エビデンス紹介:CodeBreaK 100試験
根拠となったのは国際共同で実施された第Ⅱ相試験(CodeBreaK 100試験)です。3)
本試験はKRAS G12C変異を有する既治療(3治療以下)の局所進行または転移のある非小細胞肺がん患者さんを対象に、ルマケラス1日1回投与の有効性と安全性を検討した試験で、主要評価項目は「奏効率」とされました。
結果は以下の通りで、主要評価項目は達成されています。
- 奏効率:37.1%(95%CI:28.6-46.2%)
- 奏効期間中央値:11.1か月
- 無増悪生存期間中央値:6.8か月
- 全生存期間中央値:12.5か月
用法・用量
通常、成人にはソトラシブとして1回960mgを1日1回経口投与します。
患者の状態により適宜減量
副作用
5%以上の認められる副作用としてh、下痢(27.9%)、悪心(16.3%)、嘔吐、腹痛、疲労(11.1%)などが報告されています。
重大な副作用としては、
- 肝機能障害:ALT増加(16.3%)、AST増加(16.3%)
- 間質性肺疾患:肺臓炎(1.1%)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
収載時の薬価
収載時(2022年4月20日)の薬価は以下の通りです。
- ルマケラス錠120mg:4,204.30円
算定根拠については以下をご参考ください。
-
【新薬:薬価収載】8製品+再生医療等製品(2022年4月20日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ルマケラスはこんな薬
- 初のKRAS阻害薬
- KRAS G12Cを阻害することでがん細胞の増殖を抑制する
- 1日1回経口投与
開発不可能とまで言われてKRAS阻害薬。他の固形がんでも良好な成績4)が報告されていますので、今後の適応拡大等も期待したいですね!
まずは二次・三次化学療法として使用が見込まれますが、今後は初回化学療法からも期待したいと思います!
以上、今回は非小細胞肺がんとKRAS変異、そしてルマケラスの作用機序・エビデンスについて解説しました♪
参考資料・論文等
- 日本肺癌学会|肺癌診療ガイドライン2024年版
- J Clin Oncol. 2020;38(5):9589.
- CodeBreaK 100(非小細胞肺がん):N Engl J Med 2021; 384:2371-2381
- CodeBreaK 100(固形がん):N Engl J Med. 2020 Sep 24;383(13):1207-1217.
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