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厚労省は2017年3月30日、「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品のザルトラップ点滴静注(一般名:アフリベルセプト ベータ(遺伝子組換え))を承認したと発表がありました!
製薬会社
- 製造販売:サノフィ(株)
ザルトラップは2017年5月24日に薬価収載されています。
本日はがんの血管新生とザルトラップ(アフリベルセプト)の作用機序のついてご紹介します☆
がんと血管新生
がん全般的に言えることですが、がん細胞が大きくなるためには多くの栄養素や酸素が必要となります。
そこでがん細胞は、自分のところに血管を無理やり作らせようとし、それに関与する因子として、がん細胞はVEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、PIGFなどを放出することが知られています。
この因子が、血管の受容体(VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3)に結合すると、がん細胞に対して異常な血管が作られ(これを“血管新生”といいます)、この血管を通じてがん細胞は大量の栄養と酸素を得ることができます。
そうすることでがん細胞はどんどんと成長し、他臓器へ転移もしやすくなってしまいます。
ザルトラップ(一般名:アフリベルセプト)の作用機序
今回紹介するザルトラップは、血管新生に関与するVEGF-A、VEGF-B、PIGFと結合し、その作用を特異的に阻害するタンパク製剤で、がん細胞の血管新生を抑えることができます!
すなわち、がん細胞周辺での血管新生に関与する因子に結合することで血管新生を阻害し、がん細胞の栄養・酸素供給を妨げることなどにより、がんの増殖を抑制すると考えられています^^
既にアイリーア(一般名:アフリベルセプト)として、眼科領域では承認・販売されていますが、今回は初めてがん領域で使用可能となりました。
StageⅣの大腸がんの初回化学療法では、一般的にFOLFOX療法(オキサリプラチン、レボホリナート、5-FU)とアバスチン(一般名:ベバシズマブ)の併用療法が広く使用されてるため、ザルトラップはこれらの抗がん剤によって増悪が認められた患者さんに対してFOLFIRI療法(イリノテカン、レボホリナート、5-FU)と併用して投与されます。
エビデンス紹介(VELOUR試験)
根拠となった臨床試験は、進行・再発大腸がん(StageⅣ大腸がん)の初回治療としてオキサリプラチンによる治療(例:FOLFOX療法)に抵抗・耐性がみられた患者さんを対象に、FOLFIRI+プラセボとFOLFIRI+ザルトラップを比較する第Ⅲ相臨床試験(VELOUR試験)です。1)
即ち、StageⅣ大腸がんの二次治療として行われた臨床試験です。
本試験の主要評価項目は「全生存期間」で、結果は以下の通りでした。
試験名 | VELOUR試験 | |
試験群 | FOLFIRI+ プラセボ |
FOLFIRI+ ザルトラップ |
全生存期間中央値 | 12.06か月 | 13.5か月 |
HR=0.817, P=0.0032 | ||
無増悪生存期間中央値* | 4.67か月 | 6.9か月 |
HR=0.758, P<0.0001 | ||
奏効率† | 11.1% | 19.8% |
P=0.0001 |
*無増悪生存期間:薬を投与してから、がんが大きく(増大)するまでの期間
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合
1)VELOUR試験:J Clin Oncol. 2012 Oct 1;30(28):3499-506.
ザルトラップの薬価
収載時(2017年5月24日時点)の薬価は以下の通りです。
- 100mg4mL1瓶:78,614円
- 200mg8mL1瓶:153,409円
ザルトラップの類薬(作用機序の違い)
類薬には、アバスチン(一般名:ベバシズマブ)、サイラムザ(一般名:ラムシルマブ)がありますが、それぞれ作用機序が異なっています。
- ザルトラップ:VEGF-A、VEGF-B、PlGFを阻害する(血管新生因子を阻害)
- アバスチン:VEGF-Aを阻害する(血管新生因子を阻害)
- サイラムザ:VEGFR-2を阻害する(血管新生因子の結合する受容体を阻害)
作用機序をみると、ザルトラップはアバスチンより広範囲に血管新生因子を阻害していることがわかりますが、この差が臨床的にどのような効果・副作用に繋がるのか気になるところですね。
あとがき
StageⅣの大腸がんの二次治療では血管新生阻害薬としてアバスチン、サイラムザ、ザルトラップの3剤の治療選択肢があります。
2016年以前には二次治療で使用できる血管新生阻害薬はアバスチンしかなかったため、これまでは初回治療から二次治療までアバスチンを継続して使用する「BBP:Bevacizumab Beyond Progression」が一般的に行われていました。
今後はこれらの薬剤との使い分けについて検討されれば興味深いと感じます!
以上、本日は大腸がんの新薬であるザルトラップをご紹介いたしました☆
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