4.消化器系

リンゼス(リナクロチド)の作用機序:類薬との使い分け/比較【便秘症】

リンゼス錠0.25mg(一般名:リナクロチド)に「慢性便秘症(器質的疾患による便秘を除く)」の効能・効果が2018年8月21日に追加されました。

製薬会社

  • 製造販売:アステラス製薬(株)

 

リンゼスは既に「便秘型過敏性腸症候群」の効能・効果を有していますが、上記の適応が追加されました。

 

今回は、慢性便秘症とリンゼス(リナクロチド)の作用機序、そして類薬(グーフィスアミティーザ)との違い・使い分けについてご紹介します。

 

便秘の疫学

便秘症は、

  • 本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態

と定義されています。

 

便秘の患者さんは全人口の1割程度で、治療に不満を抱く患者さんも多い疾患です。

皆様も便秘は経験されたことがあると思いますが、実際に便秘になると、、、辛いですよね・・・。

 

発症は年齢が高くなればなるほど割合が多くなります。

また、男女比では女性に多くいとされていますが、高齢になれば男女差は無くなっていきます

特に80歳以上では男性に多いとされています。

 

便秘の症状と種類

便秘の主症状は、腹痛、直腸残便感、腹部膨満感などがあります。

 

また、発症経過から「急性便秘」と「慢性便秘」に大別されています。

具体的には、排便回数の減少排便困難の状態が6カ月以上持続する場合に、「慢性便秘」と診断されます。

 

さらに原因や病態により「器質性便秘」と「機能性便秘」等に分類されています。

  • 器質性便秘:腸の形態的変化(構造異常)を伴う便秘で、胃腸の疾患によるものが多い
  • 機能性便秘:腸の形態的変化(構造異常)を伴わない便秘で、胃腸の機能低下(ストレスや運動不足、食生活)によるものが多い

一般的には機能性便秘が多いとされていますね。

 

便秘の治療

これら便秘症に対しては、

  • 生活習慣の改善(食事、運動、睡眠、飲酒など)
  • 内服薬による治療

を適宜組み合わせて行われます。

 

「便通異常症診療ガイドライン2023:慢性便秘症」において、推奨の強さ「強」で推奨されている内服薬は以下の通りです。

推奨度 エビデンスレベル 分類 代表薬の例
A 浸透圧性下剤 塩類下剤:酸化マグネシウム
糖類下剤:ラクツロース、D-ソルビトール
浸潤性下剤:ジオクチルソジウムスルホサクシネート(ビーマス配合錠)
高分子化合物:PEG(モビコール配合内用剤)
粘膜上皮機能変容薬 アミティーザ(ルビプロストン)
リンゼス(リナクロチド)
胆汁酸トランスポーター阻害薬 グーフィス(エロビキシバット)

※推奨度:(1)強い推奨、(2)弱い推奨
※エビデンスレベル:A(質の高いエビデンス)からD(非常に質の低いエビデンス)まで分類

 

同ガイドラインにはフローチャートも掲載されていて、第一選択薬は「浸透圧性下剤です。

改善が認められればそのまま継続しますが、改善が認められない場合、粘膜上皮機能変容薬や胆汁酸トランスポーター阻害薬を選択します。

 

リンゼス(一般名:リナクロチド)の作用機序

一般的に、便秘になる時には腸管内の水分が不足してしまっています。

リンゼスは、グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体刺激薬で、これまでの治療法とは異なる作用機序によって腸管内の水分量を増やし、便を柔らかくすることで便秘を改善する薬剤です。

 

リンゼスが腸粘膜上皮細胞に発現しているGC-C受容体を刺激すると、上皮細胞内の「cGMP」が増加します。

cGMP上昇によって、クロールイオン(Cl-が細胞内から細胞外(腸管内)に移動します。

次に、腸管内の電化を合わせるためにナトリウムイオン(Na+が腸管内に移動します。

Na+とCl-が合わさると、NaCl(塩化ナトリウム)になりますので、腸管内の浸透圧が亢進します。

そして浸透圧を等張にするために、上皮細胞内の水分が腸管内に移動します。

このような作用機序によって、腸管内に水分を分泌する働きをするのがリンゼスです!

これによって、腸管内の蠕動運動も高まり、便秘を改善すると考えられています。

 

また、リンゼスによってcGMPが増加すると、cGMPが求心性神経(痛みを感じる神経)を抑制することで、慢性便秘症による痛み(腹痛、腹部不快感など)を緩和する効果も示唆されています!

便秘症では腹部の痛みを伴うこともありますので、このような場合にはリンゼスがよい選択肢になるかもしれません。

 

エビデンス紹介:国内第Ⅲ相試験

根拠となった試験として、日本人の慢性便秘症患者さんを対象とした第Ⅲ相試験があります。1)

慢性便秘症患者さんを対象に、リンゼス0.5mgの1日1回投与群またはプラセボ投与群を投与する群を比較した試験です。

 

投与期間は4週間とされ、主要評価項目は「排便回数の変化量(観察期間と評価期間第1週の差)」でした。

試験群 プラセボ群 リンゼス群
観察期間の
排便回数
1.74±0.64回 1.67±0.75回
評価期間第1週の
排便回数
3.22±1.78回 5.69±3.92回
排便回数の変化量
(評価期間-観察期間)
1.48±1.84回 4.02±3.82回
変化量の群間差:2.53
p<0.001

 

上記の結果より、プラセボと比較してリンゼス群で排便回数の改善効果が認められています。

 

1)リンゼス添付文書

 

リンゼス錠の用法・用量

リンゼス0.5mgを1日1回、食前に経口投与します。

食前投与の理由ですが、食後に投与してしまうと食事による腸管への水分分泌も加わり作用が増強される結果、副作用として下痢の頻度が高くなるためです。

 

リンゼス錠の副作用

主な副作用として下痢が報告されています。

基本的には減量や休薬等で対処可能です。

 

あとがき

慢性便秘症の治療薬は2012年のアミティーザを皮切りに、2018年にはグーフィス、リンゼスの適応拡大、と治療選択肢が広がっています。

グーフィス(エロビキシバット)の作用機序と副作用【便秘症】

続きを見る

 

グーフィスやリンゼスは、従来の酸化マグネシウム製剤と比較して高マグネシウム血症の心配がありません。

しかし、薬価が高いといった点や、効きすぎてしまう(下痢)こともありますので、投与初期には十分注意深く様子を見る必要があります。

 

また、2018年には新規の浸透圧性下剤であるモビコール(一般名:マクロゴール)やラグノス(一般名:ラクツロース)も登場しました!

モビコールを含めた比較表については以下の記事をご覧ください。

モビコール配合内用剤(マクロゴール)の作用機序:類薬との比較/違い【便秘症】

続きを見る

 

以上、今回は慢性便秘症とリンゼス(リナクロチド)の作用機序についてご紹介しました。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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