8.感染症

パクスロビド(ニルマトレルビル/リトナビル)の作用機序・特徴【COVID-19】

新型コロナウイルス感染症

2022年1月14日、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」を対象疾患とする経口剤のパクスロビド(ニルマトレルビル/リトナビル)の製造販売承認申請が行われました!

ファイザー|申請のニュースリリース

基本情報

製品名パクスロビド
一般名ニルマトレルビル錠(開発コードPF-07321332)と
リトナビル錠の同梱パッケージ
製品名の由来
製造販売ファイザー(株)
効能・効果SARS-CoV-2による感染症
用法・用量ニルマトレルビルとリトナビルを1セットとして
1日2回5日間経口投与?
収載時の薬価

 

これまで新型コロナウイルス感染症で「重症化リスク因子」を有する軽症から中等症の患者さんには抗体薬の以下が使用されていましたが、いずれも注射剤・皮下注でした。

 

その後、2021年12月24日には初の経口剤としてラゲブリオ(モルヌピラビル)が登場しました。

新型コロナウイルス感染症
ラゲブリオ(モルヌピラビル)の作用機序・特徴【COVID-19】

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パクスロビドはラゲブリオ同様、「重症化リスク因子」を有する軽症から中等症の患者さんに使用が見込まれていますね。

 

今回は新型コロナウイルスの基本的な解説と共に、ラゲブリオの作用機序・エビデンスについて解説!

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とは

2019年末頃、中国の中国湖北省武漢市を中心に原因不明の肺炎ウイルスが発生しました。

 

その後、数カ月で日本を含む全世界にパンデミックを引き起こした原因ウイルスが「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)」です。このウイルスによって引き起こされる疾患名として、世界保健機関(WHO) は正式名称を「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)」と発表しました。

「COVID-19」の読み方:コヴィッド・ナインティーン

 

木元 貴祥
ウイルス名がSARS-CoV-2、疾患名がCOVID-19ですね。たまに混同してしまいます(笑)

 

SARSサーズ(Severe acute respiratory syndrome coronavirus:重症急性呼吸器症候群)と言えば、2003年頃に中国を中心に流行したウイルス感染症で、この原因もコロナウイルス(SARS-CoV)でしたね。今回の新型コロナウイルスもSARS-CoVと似ていることからSARS-CoV-2と名付けられています。

 

 

症状としては無症状から風邪様症状(発熱、倦怠感、咳、味覚異常)が多く、重症化することはあまりありません。

しかし、一部、肺炎・呼吸困難・血栓症等、重症化することもあり、特に高齢者や基礎疾患(例:糖尿病心不全COPD等の呼吸器疾患)を持っている方では重症化のリスクが高いと言われています。

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重症化の可能性や世界的なパンデミックにより、日本においてCOVID-19は2020年1月に感染症法に基づく「指定感染症」及び検疫法に基づく「検疫感染症」に指定されました。

【参考】内閣官房|新型コロナウイルス感染症の指定感染症等への指定について

 

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖メカニズム

コロナウイルスの外観は「コロナ(太陽の光冠)」に似ていることからその名前が付けられています。

分類としては「一本鎖プラス鎖RNAウイルス」で、RNAをゲノムとしているウイルスですね!主にヒトの粘膜上皮細胞に感染します。

 

木元 貴祥
ウイルスの分類・・・いくつかありますが覚えていますか??特徴と代表例はこんな感じですね。1)

 

ちなみに、アデノ随伴ウイルスの仕組みを用いた治療法なんかもありますね。

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プラス鎖というのはゲノムそのものがmRNAとして働くことが可能なもの、マイナス鎖というのはゲノムを鋳型として一旦mRNAを作るものを言います。

 

SARS-CoV-2はプラス鎖の一本鎖RNAウイルスですので、ゲノム自体がmRNAとして働き、ヒト細胞内に侵入するとすぐにウイルスタンパク質の合成が始まりますね。

 

SARS-CoV-2がヒトの粘膜上皮細胞に感染する場合、以下の図のようなプロセスで感染・増殖します。

  1. 吸着・膜融合・脱殻:ヒト細胞内に入る
  2. ゲノム(RNA)の複製とタンパク質合成:ヒト細胞内で増える
  3. 細胞からの遊離:ヒト細胞外へ出て、他の細胞に感染する

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染・増殖メカニズム:プロテアーゼとは

 

上記②のタンパク質合成の過程では、翻訳で合成されたタンパク質は非常に高分子(大きい)のため、適切なサイズに切り取る必要があります。ここで働くのがプロテアーゼです。

プロテアーゼがタンパク質を適切な大きさに切り取ることで、ウイルスタンパク質が完成し、増殖していきます。

 

ちなみに、②の過程のうち、RNAポリメラーゼに関与しているのが以下の薬剤ですね。

 

重症度別の治療方法

現在、重症度別の治療方法については厚労省の「新型コロナウイルス感染症(COVID 19 )診療の手引き」や日本感染症学会の「COVID-19に対する薬物治療の考え方」2)に掲載されています。

新型コロナウイルス感染症(COVID 19 )診療の手引き:重症度別マネジメントのまとめ

厚生労働省|新型コロナウイルス感染症(COVID 19 )診療の手引き 第6.1版

 

中等症Ⅰ~重症例では国内初の治療薬として登場したベクルリー(レムデシビル)が使用され、重症例では適宜ステロイドやオルミエント(バリシチニブ)が併用されます。

ベクルリー(レムデシビル)の作用機序・副作用【COVID-19】

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軽症・中等症Ⅰで重症化リスク因子のある場合には以下の選択肢です。

 

木元 貴祥
今回ご紹介するパクスロビドも上記と同様の対象に使用できる経口剤ですね。

 

そもそも、まずは感染しないように手洗い・うがい、そしてワクチン接種が大事なのをお忘れないように~。

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パクスロビド(ニルマトレルビル/リトナビル)の作用機序:プロテアーゼ阻害

パクスロビドの有効成分であるニルマトレルビルはタンパク質合成過程におけるプロテアーゼを選択的に阻害するといった作用機序です!3)

 

タンパク質合成が完了しないため、ヒト細胞内で増殖することができなくなり、結果としてウイルスの増殖抑制効果を発揮すると考えられていますね。

パクスロビド(ニルマトレルビル/リトナビル)の作用機序:プロテアーゼ阻害と分解抑制

 

同時に服用するリトナビルニルマトレルビルの代謝(分解)を抑制することで、ニルマトレルビルの体内濃度を長時間維持する役割を担っています。

 

木元 貴祥
リトナビルは、HIVに使用する抗ウイルス薬でも代謝を遅らせる目的で併用されていまよね~。優秀!

 

エビデンス紹介:EPIC-HR試験

根拠となった臨床試験をご紹介します(EPIC-HR試験)。4-5)

現時点では論文未公表のため、ニュースリリースから引用

 

本試験は重症化リスク因子を1つ以上有し、軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症の入院していない成人患者さんを対象としてパクスロビドとプラセボを検証する国際共同第Ⅲ相試験です(日本を含む)。発症から5日以内に投与が開始されています。

 

主要評価項目は発症から3日以内に治療を受けた患者さんのうち、28日目までにおける「入院または死亡の割合」とされ、中間解析時点の結果は下表の通りでした。4)

プラセボ群パクスロビド群
28日までの入院または死亡率
(発症から3日以内に治療を受けた)
7.0%0.8%
入院・死亡リスク89%減少
p<0.0001
28日までの入院または死亡率
(発症から5日以内に治療を受けた)
6.7%1.0%
p<0.0001

 

なお、最終解析時点でも3日以内に治療を受けた患者さんにおいて、入院・死亡のリスク低減は89%と保たれていました!5日以内に投与を受けた場合でも88%のリスク低減でした。5)

 

木元 貴祥
類薬のラゲブリオでは最終解析で差が縮まっていましたが、パクスロビドは全く縮まっていませんね!すごい。

 

オミクロン株、デルタ株への治療効果は?

ファイザー社のニュースリリース5)によれば、前臨床試験においてオミクロン株に対する抗ウイルス効果は認められているとのことでした。また、他の変異株(アルファ、ベータ、デルタ、ガンマ、ラムダ、ミュー)においても同様とのこと。

 

各変異株はウイルス表面のスパイクタンパクの変異なので、パクスロビドの作用機序からするとあまり関係ないのかな、という印象です。

 

木元 貴祥
EPIC-HR試験で各変異株に対する効果などが公開されればいいですね~。

 

参考までに、ロナプリーブやゼビュディなどのオミクロン株に対する効果は以下の通りです。

  • ロナプリーブ:オミクロン株に対しては中和活性が低下するため、推奨されない
  • ゼビュディ:オミクロン株に対して中和活性は保たれていたと報告されている。
  • ラゲブリオ:オミクロン株に対して前臨床試験では抗ウイルス効果が認められた。

 

副作用

後日更新予定です。

臨床試験では味覚障害(6%)、下痢(3%)、高血圧(1%)、筋肉痛(1%)などが認められていましたが、いずれも軽度とのことでした。

 

用法・用量:5日以内に服用開始して5日間経口投与

後日更新予定です。

臨床試験では発症から3日以内の方が若干治療効果が高い印象ですが、基本的には5日以内に服用すると思われます。

 

ニルマトレルビル錠とリトナビル錠が同梱されているとのことなので、1日2回一緒に服用し、投与期間は5日間経口投与です。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

ラゲブリオみたいに「登録センター」でもできるんですかね。

 

まとめ・あとがき

パクスロビドはこんな薬

  • 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する経口治療薬
  • ニルマトレルビルがプロテアーゼを選択的に阻害することでウイルスの増殖を抑制する
  • リトナビルはニルマトレルビルの分解を抑制する

 

COVID-19はワクチンや有効な治療薬も存在していませんでしたが、2020年以降、凄まじいスピードで治療薬やワクチンが開発されていきました。初めての登場はベクルリーでしたね。

ベクルリー(レムデシビル)の作用機序・副作用【COVID-19】

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その後、軽症から中等症に使用できる初の抗体カクテル療法のロナプリーブ点滴静注(カシリビマブ/イムデビマブ)や、ゼビュディ点滴静注液(ソトロビマブ)が登場しました。

さらにその後、経口薬のラゲブリオ(モルヌピラビル)が登場し、今回のパクスロビドも経口薬です。

 

治療効果の直接比較はできませんが、ラゲブリオよりパクスロビドの方が高い印象を受ける一方で、リトナビルはCYP3Aと強い親和性があることから、併用禁忌や併用注意が多いと予想しています。

 

木元 貴祥
基礎疾患等があって併用薬が多い場合、パクスロビドは使用し辛いかもしれませんね。

 

ワクチンはこちらの記事でまとめていますので、ご覧下さいませ♪

コミナティ、スパイクバックス、バキスゼブリアの作用機序【新型コロナウイルスワクチン】

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以上、今回は軽症・中等症の新型コロナウイルス治療薬の経口剤であるパクスロビド(ニルマトレルビル/リトナビル)の作用機序とエビデンスについて解説しました!

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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