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ライブリバント(アミバンタマブ)の作用機序【肺がん】

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2024年9月24日、「EGFR変異(エクソン20の挿入変異)陽性の非小細胞肺がん」を対象疾患とするライブリバント(アミバンタマブ)が承認されました!

一次治療として、化学療法と併用されますね。

ヤンセンファーマ|ニュースリリース

 

その後、以下の申請も行われています。

上記はいずれも現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名 ライブリバント点滴静注350mg
一般名 アミバンタマブ
製品名の由来 抗体をイメージする「Y」、呼吸を意味する「BREATH」、
本剤の有効成分である「amivantamab」を由来とし、
そこにRを加えることで力強さや堅実さを感じさせる響きをもたせ、
ライブリバント®(RYBREVANT®)とした。
製造販売 ヤンセンファーマ(株)
効能・効果 EGFR遺伝子エクソン20挿入変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
用法・用量 カルボプラチン及びペメトレキセドナトリウムとの併用において、
3週間を1サイクルとし、アミバンタマブを点滴静注する(記事内参照)。
収載時の薬価
発売日

 

ライブリバントは国内初となるEGFRとMETの二重特異性抗体です。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
二重特異性抗体は最近続々と登場していますよね。

 

 

また、EGFR変異陽性の非小細胞肺がんは、

  • Common mutation(エクソン19欠失変異、エクソン21のL858R変異)
  • Uncommon mutation

に分けられていて、今までのEGFR阻害薬は「Common mutation」に対するものでした。

 

ライブリバントはUncommon mutationの一種であるエクソン20の挿入変異に対して治療効果が期待されていますよ~!

また、Common mutationに対しても申請が行われているため、今後はより対象が広がる見込みです。

 

今回は非小細胞肺がんとライブリバント(アミバンタマブ)の作用機序・エビデンスについて解説です!

 

肺がんの分類について

肺がんは性質や薬の効き方によって“非小細胞肺がん”と“小細胞肺がん”に分類されています。

早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
この分類によって使用できる治療薬が異なりますが、今回は非小細胞肺がんを解説していきます。

 

非小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)

非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。

  1. 非扁平上皮がん
  2. 扁平上皮がん

 

今回は①非扁平上皮がんを中心にご紹介します。②扁平上皮がんについては以下の記事をご確認ください。

ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】

続きを見る

 

非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)の初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況(ドライバー遺伝子変異など)によって対応するチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)を使用します。1)

ドライバー遺伝子変異など 初回化学療法例
EGFR遺伝子変異陽性
ALK融合遺伝子陽性
ROS1融合遺伝子陽性
BRAF遺伝子変異陽性
MET遺伝子変異陽性
RET融合遺伝子陽性
遺伝子変異/転座陰性
(または不明)

 

最も頻度が高いのがEGFR遺伝子変異陽性で、約半数を占めています。

 

また、EGFR遺伝子変異の中でも、頻度の多いCommon mutationと、頻度の低いUncommon mutationに分類されています。1)

  • Common mutation(エクソン19欠失変異、エクソン21のL858R変異):約9割
  • Uncommon mutation(E709X,G719X,S768I,P848L,L861Q,エクソン19の挿入変異、エクソン20の挿入変異)

 

Common mutationの場合、タグリッソなどのEGFR-TKI単剤(もしくは化学療法併用)が推奨されていますが、Uncommon mutationではエビデンスが乏しく、効果も得られにくいといった問題点がありました。

特に、エクソン20の挿入変異は報告が少なく、有効性も得られづらいことから、ガイドラインでは「EGFR-TKI療法を行わないよう推奨する。」と記載されています。1)

 

今回ご紹介するライブリバントは、エクソン20の挿入変異の一次治療において化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)と併用することで、効果が期待されている薬剤です!

 

また、Common mutationに対しては、一次治療としてライブリバントと新規EGFR-TKIのラゼルチニブを併用することで、タグリッソ単剤よりも効果が優れているとの報告(後述のMARIPOSA試験)がありますので、今後はこちらも期待できると思われます。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
タグリッソは化学療法と併用することも可能なため、「タグリッソ+化学療法」と「ラゼルチニブ+ライブリバント」のどちらが優れているのか、使い分けはどうしていくのかは興味深いですね。
タグリッソ(オシメルチニブ)の作用機序と副作用【肺がん】

続きを見る

 

ライブリバント(アミバンタマブ)の作用機序:EGFR/MET二重特異性抗体

通常、正常細胞におけるEGFR(epidermal growth factor receptor:上皮成長因子受容体)は、因子であるEGF(epidermal growth factor:上皮成長因子)が結合することで活性化されます。

しかし、EGFR変異陽性の非小細胞肺がんでは、EGFの存在有無に関わらず、恒常的に活性化し、がん細胞の増殖促進作用をもたらします。

 

その他にも、がん細胞の増殖を促進させる受容体としてMETが知られています(因子はHGF)。

非小細胞肺がんにおけるEGFRとMET

 

ライブリバントは、一つの抗体分子で二つの抗原(EGFRとMET)に結合するように設計された二重特異性抗体薬です!

ライブリバント(アミバンタマブ)の作用機序:EGFR/MET二重特異性抗体

 

がん細胞のEGFRとMETに結合することによって、以下の3つの作用による抗腫瘍効果を発揮すると考えられています。

  1. EGFRとMETのシグナル伝達阻害 → 増殖の抑制
  2. EGFRとMETの受容体が取り込まれて分解される → EGFRとMETの受容体数の減少
  3. ADCC作用:免疫細胞が、がん細胞を障害する → 抗腫瘍効果

 

エビデンス紹介:PAPILLON試験(エクソン20挿入変異の一次治療)

まずはEGFRエクソン20挿入変異の一次治療のエビデンスを紹介します(PAPILLON試験)。2)

本試験は、EGFRエクソン20挿入変異を有する手術不能・再発の非小細胞肺がん患者さんを対象に、一次治療としてのライブリバント+化学療法群の有効性を、化学療法単独群と比較した第Ⅲ相臨床試験です(日本人を含む)。

 

主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」とされ、結果は以下の通りでした。

ライブリバント+化学療法群 化学療法単独群
PFS中央値 11.4か月 6.7か月
HR=0.40(95%CI]:0.30-0.53)
P<0.001
奏効率 73% 47%

 

ライブリバント+化学療法群で有意なPFSの延長が認められていますね!

 

木元 貴祥
木元 貴祥
生存期間(OS)については未成熟のため、今後の追加解析が待たれます。

 

エビデンス紹介:MARIPOSA試験(一次治療としてのラゼルチニブ併用)

続いて、通常のEGFRのCommon mutationを対象とした臨床試験をご紹介します(MARIPOSA試験)。3)

第3世代のEGFR-TKIであるラゼルチニブを併用した試験ですね。

 

本試験は、EGFR エクソン19欠失変異またはエクソン21のL858R置換変異を有する手術不能・再発の非小細胞肺がん患者さんの一次治療において、以下の3群を比較した第Ⅲ相臨床試験です。

  • ライブリバント+ラゼルチニブ併用群
  • タグリッソ(オシメルチニブ)単剤群
  • ラゼルチニブ単剤群

 

主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」とされ、結果は以下の通りでした(タグリッソ単独群に対するライブリバント+ラゼルチニブ併用群の優越性を検証)。

ライブリバント+
ラゼルチニブ併用群
タグリッソ単剤群 ラゼルチニブ単剤群
PFS中央値 23.7か月 16.6か月 18.5か月
タグリッソ群との差:
HR=0.70(95%CI:0.58-0.85), P<0.001
-
奏効率 86% 85% ?

 

ライブリバント+ラゼルチニブ併用群で有意なPFSの延長が認められています!

 

木元 貴祥
木元 貴祥
今までの絶対王者であったタグリッソに勝利するのはすごいですね!

 

ただ、同様の対象症例(EGFRのCommon mutation)に対して、タグリッソ+化学療法(プラチナ製剤+ペメトレキセド)群とタグリッソ群を直接比較したFLAURA2試験において、タグリッソ+化学療法群で有意なPFSの延長が示されています。4)

 

参考までに両試験を並べてみました(患者背景やPFSの定義が若干異なるため、参考程度です)。

MARIPOSA試験 FLAURA2試験
ライブリバント+
ラゼルチニブ
タグリッソ タグリッソ+化学療法 タグリッソ
PFS中央値 23.7か月 16.6か月 25.5か月 16.7か月
HR=0.70(95%CI:0.58-0.85)
P<0.001
HR=0.62(95%CI:0.48-0.80)
P<0.001
全生存期間(OS)
※いずれも未成熟
HR=0.80 HR=0.90

 

……。いずれの治療群においても似たような治療成績ですね。

 

まだOSのデータが未成熟のため、今後、長期の成績が発表されれば、どちらがどういった対象に適しているのか検討が進むと考えられます。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
まずは副作用プロファイルや化学療法がfitするのかで使い分けられると思いますね。

 

副作用

重大な副作用として、

  • Infusion reaction(41.1%)
  • 間質性肺疾患:間質性肺疾患(頻度不明)、肺臓炎(2.6%)
  • 重度の皮膚障害:発疹(15.2%)、ざ瘡様皮膚炎(4.0%)等
  • 静脈血栓塞栓症:肺塞栓症(4.6%)、深部静脈血栓症(4.0%)等

が挙げられていますので、特に注意が必要です。

 

EGFRを阻害するため、他のEGFR阻害薬と同様、皮膚障害等には注意すべきでしょう。

 

Infusion reactionについては、以下の記載があります。

本剤投与によるinfusion reactionを軽減させるため、本剤投与前に、1サイクル目の第1日目及び第2日目は、副腎皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン剤及び解熱鎮痛剤を投与し、必要に応じてH2受容体拮抗剤や制吐剤を投与すること。1サイクル目の第8日目以降は、抗ヒスタミン剤及び解熱鎮痛剤を投与し、必要に応じて副腎皮質ホルモン剤、H2受容体拮抗剤や制吐剤を投与すること。

 

用法・用量

カルボプラチン及びペメトレキセドナトリウムとの併用において、3週間を1サイクルとし、通常、成人にはアミバンタマブ(遺伝子組換え)として以下の用法及び用量で点滴静注します。なお、患者の状態により適宜減量します。

体重

サイクル

投与日

用量

80kg未満

1サイクル目

1日目

350mg

2日目

1,050mg

8日目、15日目

1,400mg

2サイクル目

1日目

1,400mg

3サイクル目以降

1日目

1,750mg

80kg以上

1サイクル目

1日目

350mg

2日目

1,400mg

8日目、15日目

1,750mg

2サイクル目

1日目

1,750mg

3サイクル目以降

1日目

2,100mg

 

図式化したものが以下の投与スケジュールです(海外HPより)。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
1日目と2日目は、ライブリバントの用量を分割しているのが特徴ですね。

 

また、化学療法(カルボプラチン+ペメトレキセド)のうち、カルボプラチンは4サイクル目まで投与し、その後はライブリバントとペメトレキセドによる治療を継続します。

 

収載時の薬価

現時点では薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ライブリバントはこんな薬

  • 国内初のEGFRとMETの二重特異性抗体
  • EGFRエクソン20の挿入変異に対して化学療法との併用で効果が期待されている
  • EGFRのCommon mutationに対しては、ラゼルチニブとの併用で効果が期待されている

 

他疾患では、いくつかの二重特異性抗体薬が登場していますが、非小細胞肺がんでは初の登場となる見込みです。

また、これまでEGFRのUncommon mutationの中でも、エクソン20の挿入変異に対しては有効な薬剤がありませんでした。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ライブリバントは新たな作用機序・選択肢として期待できるのではないでしょうか。

 

今後は、Common mutationに対して、タグリッソ+化学療法とライブリバント+ラゼルチニブ併用のどちらがよいのか、検討が進むことを期待したいですね。

 

以上、今回は非小細胞肺がんとライブリバント(アミバンタマブ)の作用機序・エビデンスについて解説しました♪

 

参考資料・論文等

  1.  日本肺癌学会|肺癌診療ガイドライン2023年版
  2. PAPILLON試験:N Engl J Med 2023;389:2039-2051
  3. MARIPOSA試験:N Engl J Med. 2024 Jun 26. doi: 10.1056/NEJMoa2403614.
  4. FLAURA2試験:N Engl J Med 2023;389:1935-1948

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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