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2024年8月28日、アレセンサ(アレクチニブ)の効能・効果に「ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんにおける術後補助療法」を追加することが承認されました!
中外製薬|ニュースリリース
基本情報
製品名 | アレセンサカプセル150mg |
一般名 | アレクチニブ塩酸塩 |
製品名の由来 | ALECtinib + sENSible(賢明な、理にかなった)に由来する。 |
製造販売 | 中外製薬(株) |
効能・効果 | 〇ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん 〇ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんにおける術後補助療法 〇再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫 |
用法・用量 | 記事内参照 |
アレセンサは、2014年に「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果として承認されました(20mgと40mg製剤)。
その後、2015年9月2日に150mg製剤が承認され、2020年2月21日には「再発又は難治性のALK融合遺伝子陽性の未分化大細胞リンパ腫(ALCL)」に対する適応拡大が承認されています。
今回は非小細胞肺がんと未分化大細胞リンパ腫と共に、アレセンサ(アレクチニブ)の作用機序についてご紹介します☆
肺がんの分類について
肺がんは性質や薬の効き方によって“非小細胞肺がん”と“小細胞肺がん”に分類されています。
早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。
その中でも非小細胞肺がんは組織型によって以下の2種類に分類されています。
- 非扁平上皮がん
- 扁平上皮がん
今回はALK変異が関係する①非扁平上皮がんを中心にご紹介します。②扁平上皮がんについては以下の記事をご確認ください。
-
ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】
続きを見る
非小細胞肺がんの治療(手術可能な早期の場合)
早期発見で手術可能な場合、手術によってがんを全て取り除くことが可能です。
しかしながら、進行度によっては目に見えないがん細胞が体内に残存している可能性があるため、術後に抗がん剤を用いた治療(術後補助療法)が行われることがあります。
主に使用される薬剤としては
- ティーエスワン(S-1)
- シスプラチン+抗がん剤併用療法
などです。
また、しばしばEGFR遺伝子変異が陽性の場合もあり、その場合、ガイドラインでは従来の術後補助化学療法後にタグリッソによる治療が提案されています(病期Ⅱ-ⅢA期(第8版))。1)
今回、アレセンサはALK融合遺伝子陽性の場合に、単剤で再発リスクの低下が期待されています!
非小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)
非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。
- 非扁平上皮がん
- 扁平上皮がん
非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)の初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況(ドライバー遺伝子変異など)によって対応するチロシンキナーゼ阻害薬を使用します。1)
ドライバー遺伝子変異など | 初回化学療法例 |
EGFR遺伝子変異陽性 |
|
ALK融合遺伝子陽性 |
|
ROS1融合遺伝子陽性 | |
BRAF遺伝子変異陽性 | |
MET遺伝子変異陽性 | |
RET融合遺伝子陽性 | |
遺伝子変異/転座陰性 (または不明) |
|
上記のうち、最も頻度が高いのがEGFR遺伝子変異陽性で、約半数を占めています。
また、ALK融合遺伝子陽性は約2~5%とされ、推定患者数は1600~3900人と少数です。今回ご紹介するアレセンサはALK融合遺伝子陽性の患者さんに使用されます。
末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)とALCL
末梢性T細胞リンパ腫(“PTCL”と略されます)は、血液腫瘍の一種ですが、あまり聞きなれない疾患かもしれません。
血液中にはご存知の通り、「白血球」と呼ばれる細胞が存在し、主に免疫を司っていますが、大きく“顆粒球”と“リンパ球”に分類されます。
- 顆粒球:「好中球」、「好酸球」、「好塩基球」の3つの総称
- リンパ球:「T細胞」、「B細胞」、「NK細胞」の3つの総称
今回ご紹介するPTCLは、血球細胞の中でも「リンパ球のT細胞」が異常増殖することで発症する疾患です。
また、細かくは4つ病型に分類されています。2)
- 非特定型末梢性T細胞リンパ腫(PTCL-NOS)
- 血管免疫芽球性T細胞リンパ腫(AITL)
- ALK陽性未分化大細胞リンパ腫(ALCL)
- ALK陰性未分化大細胞リンパ腫
基本的な治療は抗がん剤の多剤併用による化学療法で、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの4種類の薬剤を用いるCHOP療法が一般的に行われています。3)
このCHOP療法で腫瘍細胞が消えた(完全奏効)場合、治療は終了で、以後は経過観察のみです。
ただし、CHOP療法で治療効果が認められなかった難治性の場合、または完全奏効後に再発した場合には、次に使用できる薬剤は限られていました。
ではここからALK融合遺伝子とがんの増殖について解説していきます。
ALK融合遺伝子とがんの増殖メカニズム
がん細胞が増殖するメカニズムは様々な仕組みが存在していますが、がん細胞は増殖因子の結合する受容体を持っています。
受容体を構成する遺伝子の1つに「ALK遺伝子」が知られていますが、正常なALK遺伝子を持つ受容体では、増殖因子が結合することで、その刺激が細胞内を伝達(シグナル伝達)し、核内に刺激が届けられます。
核内まで刺激が伝達すると、増殖・活性化が促進され、がん細胞の増殖に繋がります。
ただし、増殖因子が存在しない場合、刺激が核に伝達しないため、がん細胞は増殖しません。
しかし、非小細胞肺がんの約2~5%の患者さんでは、ALK遺伝子と別の遺伝子が入れ替わって融合してしまうことが知られています。
融合してしまった遺伝子のことを「ALK融合遺伝子」と呼んでおり、これを元に「ALK融合タンパク」が合成されます。
ALK融合タンパクは、増殖因子が存在しないにも関わらず、恒常的にシグナル伝達が核へと伝達されています。
そのため、常にがん細胞は増殖が活性化されている状態です。
アレセンサ(アレクチニブ)の作用機序
アレセンサはALK融合遺伝子から合成されたALK融合タンパクを特異的に阻害する薬剤です!
ALK融合タンパクを阻害することでシグナル伝達を阻害させ、がん細胞の増殖を抑制するといった作用機序を有しています。
ALK融合タンパクは、がん細胞にしか存在していないため、アレセンサは正常細胞には影響を及ぼしにくいといった特徴があります。
用法・用量
<切除不能な非小細胞肺がんの場合>
通常、成人にはアレクチニブとして1回300mgを1日2回経口投与します。
20mgと40mg製剤しかなかった頃は、40mg製剤を7カプセル、20mg製剤を1カプセルの計8カプセルを1日2回服用と非常に煩雑でした。
150mg製剤が登場したことで、1回あたり2カプセル(150mg×2)の服薬が可能となり、煩雑さが軽減されています。
<非小細胞肺がんの術後補助療法の場合>
通常、成人にはアレクチニブとして1回600mgを1日2回、食後に経口投与します。ただし、投与期間は24か月間までとされています。
<ALCLの場合>
通常、成人にはアレクチニブとして1回300mgを1日2回経口投与します。
ただし、体重35kg未満の場合の1回投与量は150mgとされています。
副作用
主な副作用として便秘、味覚異常、発疹、血中ビリルビン増加、AST(GOT)増加、CPK増加、血中クレアチニン増加などが報告されています。
稀に間質性肺炎が発現する可能性があるため、息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱等がないか確認することが大切です。
類薬とアレセンサの特徴(非小細胞肺がん)
ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんに使用できるALK阻害薬は以下があります。
ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がんの初回治療としてザーコリとアレセンサを直接比較する第Ⅲ相臨床試験(ALEX試験、J-ALEX試験)では、アレセンサの方が治療成績が良かったことが報告されています。4-5)
また、アレセンサは術後補助療法において、従来の化学療法と比較して有意に再発リスクを低減することが示されています(ALINA試験)。6)
アレセンサ以外の類薬については、術後補助療法に使用できません。
あとがき
近年、肺がんの治療薬は様々な薬剤が登場してきています。また、遺伝子検査を用いた治療が最も進んでいるのも肺がんです。
ALCLについては有効な薬剤が少なかったことから、アレセンサが新たな治療選択肢になることは朗報かもしれませんね。
以上、今回は非小細胞肺がんとALCLと共に、アレセンサ(アレクチニブ)の作用機序についてご紹介しました。
参考資料・論文等
- 日本肺癌学会|肺癌診療ガイドライン2024年版
- がん情報サービス|末梢性T細胞リンパ腫
- 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版
- ALEX試験:N Engl J Med 2017; 377:829-838
- J-ALEX試験:Lancet. 2017 Jul 1;390(10089):29-39.
- ALINA試験:N Engl J Med 2024;390:1265-1276
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