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2024年6月24日、「MET遺伝子陽性の非小細胞肺がん」を対象疾患とするハイイータン(グマロンチニブ)が承認されました!
海和製薬|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ハイイータン錠50mg |
一般名 | グマロンチニブ水和物 |
製品名の由来 | 特になし |
製薬会社 | 製造販売:海和製薬(株) 販売:大鵬薬品工業(株) |
効能・効果 | MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん |
用法・用量 | 通常、成人にはグマロンチニブとして1回300mgを1日1回空腹時に経口投与する。 なお、患者の状態により適宜減量する。 |
収載時の薬価 | 4,382.30円 |
発売日 | 2024年10月11日(HP) |
ハイイータンはc-MET阻害薬に分類されていて、国内では同じく肺がんに使用するテプミトコ(テポチニブ)やタブレクタ(カプマチニブ)に次いで3製品目となります。
-
タブレクタ(カプマチニブ)の作用機序【MET陽性肺がん】
続きを見る
国内では大鵬薬品工業と販売提携するようですね(大鵬薬品工業|ニュースリリース)。
今回は非小細胞肺がんとMET遺伝子、そしてハイイータン(グマロンチニブ)の作用機序についてご紹介します。
肺がんの分類について
肺がんは性質や薬の効き方によって“非小細胞肺がん”と“小細胞肺がん”に分類されています。
早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。
非小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)
非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。
- 非扁平上皮がん
- 扁平上皮がん
今回は①非扁平上皮がんを中心にご紹介します。②扁平上皮がんについては以下の記事をご確認ください。
-
ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】
続きを見る
非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)の初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況(ドライバー遺伝子変異など)によって対応するチロシンキナーゼ阻害薬を使用します。1)
ドライバー遺伝子変異など | 初回化学療法例 |
EGFR遺伝子変異陽性 |
|
ALK融合遺伝子陽性 | |
ROS1融合遺伝子陽性 | |
BRAF遺伝子変異陽性 | |
MET遺伝子変異陽性 |
|
RET融合遺伝子陽性 | |
遺伝子変異/転座陰性 (または不明) |
|
上記のうち、最も頻度が高いのがEGFR遺伝子変異陽性で、約半数を占めています。
また、MET遺伝子エクソン14スキッピング変異が陽性のこともあり、今回ご紹介するハイイータンは同患者さんに対して使用されます。
割合としては非小細胞肺がんの約3%だそうです。
一方、非小細胞肺がんのうち、扁平上皮がんについては以下の記事をご確認ください。
-
ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】
続きを見る
MET遺伝子変異のがんの増殖メカニズム
がん細胞が増殖するメカニズムは様々な仕組みが存在していますが、がん細胞はしばしば「c-MET」と呼ばれるタンパク質(チロシンキナーゼ)を発現していることあります。
因子であるHGF(肝細胞増殖因子)が、がん細胞のc-METに結合すると、その刺激が細胞内を伝達(シグナル伝達)し、核内に刺激が届けられます。
核内まで刺激が伝達すると、増殖・活性化が促進され、がん細胞の増殖に繋がります。
ただし、因子であるHGFが存在しない場合、刺激が核に伝達しないため、がん細胞は増殖しません。
非小細胞肺がんの患者さんの一部ではMET遺伝子に変異のあることが知られていて、主に以下の2つの変異があります。2)
- METエクソン14(METex14)スキッピング変異
- MET遺伝子増幅
MET遺伝子変異陽性の場合、c-METはHGFが存在しないにも関わらず、恒常的にシグナル伝達が核へと伝達されています。
そのため、常にがん細胞は増殖が活性化されている状態です。
その他、肺がんで使用されるEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(例:タグリッソやイレッサ等)の耐性にもMET遺伝子が関与していると言われています。2)
ハイイータン(グマロンチニブ)の作用機序
ハイイータンは、がん細胞の「エクソン14スキッピング変異」によるc-METを特異的に阻害する薬剤です!
がんの増殖に関与しているc-METを阻害することでシグナル伝達を阻害させ、がん細胞の増殖を抑制するといった作用機序ですね。
エビデンス紹介:GLORY試験
根拠となった臨床試験は、日本と中国の共同で実施された第Ⅰb/Ⅱ相試験のGLORY試験です。2)
本試験MET ex14 スキッピング変異を有する非小細胞肺がん患者さんを対象(治療ラインは問わない)に、ハイイータン1日1回投与の有効性と安全性を検討した臨床試験です。
主要評価項目の奏効率は
- 全体集団:66%
- 化学療法歴のない患者さん:71%
- 化学療法歴のある患者さん:60%
という結果でした。
用法・用量
通常、成人にはグマロンチニブとして1回300mgを1日1回空腹時に経口投与します。
患者の状態により適宜減量
なお、既に承認されているMET阻害薬は、1日1回または2回の経口投与ですね。
- テプミトコ(テポチニブ):1日1回(食後)
- タブレクタ(カプマチニブ):1日2回(食事の影響なし)
- ハイイータン(グマロンチニブ):1日1回(空腹時)
副作用
重大な副作用として、
- 間質性肺疾患:間質性肺疾患(1.2%)
- 体液貯留:浮腫(79.8%)、低アルブミン血症(38.1%)、胸水(9.5%)、心嚢液貯留(2.4%)等
- 肝機能障害:血中ビリルビン増加(27.4%)、ALT増加(26.2%)、AST増加(21.4%)、ALP増加(8.3%)、γ-GTP増加(8.3%)、肝機能異常(4.8%)、肝損傷(1.2%)等
- QT間隔延長(9.5%)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
収載時の薬価
収載時(2024年8月15日)の薬価は以下の通りです。
- ハイイータン錠50mg:4,382.30円(1日薬価:26,293.80円)
算定根拠については、以下の記事で解説しています♪
-
【新薬:薬価収載】12製品(2024年8月15日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ハイイータンはこんな薬
- MET遺伝子変異の非小細胞肺がんに対して効果が期待されている
- 類薬にはテプミトコ(テポチニブ)やタブレクタ(カプマチニブ)がある
- 1日1回経口投与
- 浮腫や低アルブミン血症には注意が必要
非小細胞肺がんでは様々な遺伝子変異が発見され、それに応じた治療が行われています。
MET遺伝子もその一つとして見つかっていましたが、治療選択肢が少ない状況でした。
今後はテプミトコ(テポチニブ)などの類薬との使い分け等も検討されれば興味深いと感じますね!
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テプミトコ(テポチニブ)の作用機序【MET陽性肺がん】
続きを見る
以上、今回は非小細胞肺がんとMET遺伝子、そしてハイイータン(グマロンチニブ)の作用機序についてご紹介しました!
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