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ルマケラス(ソトラシブ)の作用機序【KRAS変異陽性の肺がん/大腸がん】

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2025年9月19日ルマケラス(ソトラシブ)の効能・効果に「がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」を追加することが承認されました!

基本情報

製品名 ルマケラス錠120mg
一般名 ソトラシブ
製品名の由来 LUMA(ラテン語で「光」や「明るさ」を意味する語源を持ち、明確な道筋を照らすことを意味する)
KRAS(NSCLCに認められる変異の1つであるKRAS G12C変異を標的とすることを意味する)
製造販売 アムジェン(株)
効能・効果 ●がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
●がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん
用法・用量 通常、成人にはソトラシブとして1回960mgを1日1回経口投与する。
なお、患者の状態により適宜減量する。
収載時の薬価 4,204.30円
発売日 2022年4月20日新発売

 

ルマケラスは、2022年1月20日に「KRAS G12C変異陽性の非小細胞肺がん」を対象疾患として承認された初のKRASケーラス阻害薬です。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
これまでKRASを標的とする薬剤の開発は不可能とまで言われていました。

 

今後は、KRAS変異を有する大腸がんの二次治療としても期待です!

 

今回は非小細胞肺がん・大腸がんとKRAS変異、そしてルマケラスの作用機序・エビデンスについて解説していきます。

 

肺がんの分類について

肺がんは性質や薬の効き方によって“非小細胞肺がん”と“小細胞肺がん”に分類されています。

早期に発見できた場合、手術の適応になりますが、発見時に他の臓器に転移がある場合、化学療法(抗がん剤や分子標的薬)の治療が中心となります。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
この分類によって使用できる治療薬が異なりますが、今回は非小細胞肺がんを解説していきます。

 

非小細胞肺がんの治療(切除不能・再発の場合)

非小細胞肺がんはその組織型によって以下の2種類に分類されています。

  1. 非扁平上皮がん
  2. 扁平上皮がん

 

今回は非扁平上皮がんを中心にご紹介します。扁平上皮がんについては以下の記事をご確認ください。

ポートラーザ(ネシツムマブ)の作用機序と副作用【肺がん】

続きを見る

 

非小細胞肺がん(非扁平上皮がん)の初回化学療法(一次化学療法)は、がんの遺伝子状況(ドライバー遺伝子変異など)によって対応するチロシンキナーゼ阻害薬を使用します。1)

ドライバー遺伝子変異など 初回化学療法例
EGFR遺伝子変異陽性
ALK融合遺伝子陽性
ROS1融合遺伝子陽性
BRAF遺伝子変異陽性
MET遺伝子変異陽性
RET融合遺伝子陽性
遺伝子変異/転座陰性
(または不明)

 

 

今回ご紹介するKRAS変異のうち、KRAS G12C変異は日本人では4.5%に認められると言われています。2)

 

ただし、ルマケラスは初回化学療法としては使用できず、二次・三次化学療法で使用されるため、初回化学療法は「遺伝子変異/転座陰性(または不明)」の場合に該当しますね。1)

 

抗がん剤と免疫チェックポイント阻害薬の併用については以下の記事で解説しています。

テセントリク(アテゾリズマブ)の作用機序【肺がん/乳がん/肝がん】

続きを見る

 

大腸がんと治療

早期に発見された場合は手術によってがんを取り除くことができ、場合によっては術後の抗がん剤治療(術後補助化学療法)が行われます。

 

一方、発見時に他の臓器に転移(StagrⅣ)があったり、再発している場合、手術はできないため、抗がん剤(化学療法)による治療が基本です。

 

大腸がんの一次化学療法では抗がん剤(2〜3種)+分子標的薬(ベバシズマブなど)を用いた以下のいずれかの治療法が行われます。

  • FOLFOX+アバスチン/ベクティビクス/アービタックス
  • FOLFIRI+アバスチン/ベクティビクス/アービタックス
  • FOLFOXIRI+アバスチン
  • CAPOX+アバスチン
  • SOX+アバスチン
  • IRIS+アバスチン

 

参考:使用薬剤

 

アバスチン(ベバシズマブ)の詳細については以下の記事をご参考くださいませ。

アバスチン(ベバシズマブ)の作用機序とバイオシミラー【大腸がん】

続きを見る

 

一次化学療法に抵抗・不応の場合には二次化学療法として、サイラムザ(一般名:ラムシルマブ)ザルトラップ(一般名:アフリベルセプトベータ)を用いた治療等が行われます。

サイラムザ(ラムシルマブ)の作用機序【胃/大腸/肝細胞/肺がん】

続きを見る

 

その他の二次化学療法および三次化学療法以降の治療としては、

などの選択肢があります。

 

また、大腸がんの40%ほどはKRAS変異を有すると考えられていて様々な変異が知られています。

 

ルマケラスが使用できるKRASG12C変異は、大腸がん全体の3~4%と報告3)されていて、その場合、二次治療以降でベクティビクス(パニツムマブ)と併用で使用します。

 

KRAS G12C遺伝子変異陽性のがん細胞

がん細胞が増殖するメカニズムは様々な仕組みが存在していますが、がん細胞はしばしばEGFRと呼ばれるタンパク質を発現していることあります。

因子であるEGFが、がん細胞のEGFRに結合すると、その刺激が細胞内を伝達(シグナル伝達)し、核内に刺激が届けられます。

 

このシグナル伝達の中継点としてKRASが存在することが知られており、KRASに伝わったシグナルはいくつかのタンパク質を経由して核内まで届けられます。

EGFRとKRASの働き

 

核内まで刺激が伝達すると、増殖・活性化が促進され、がん細胞の増殖に繋がります。

ただし、因子であるEGFが存在しない場合、刺激が核に伝達しないため、がん細胞は増殖しません

 

しかし、非小細胞肺がんの4.5%にはKRAS遺伝子変異の中でもG12Cに変異あることが知られています。

 

KRAS遺伝子変異陽性の場合、因子であるEGFが存在しないにも関わらず、恒常的にシグナル伝達が核へと伝達されています。

 

つまり、KRAS遺伝子に変異があると、常にがん細胞の増殖が活性化されるというわけです。

KRAS G12C遺伝子変異陽性のがん細胞

 

元々、KRAS遺伝子に変異のある患者さんではがん細胞の増殖速度や転移が促進されており、更には薬剤が効きにくいことから予後不良とされていました。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
さらにKRASは変異しても特徴的な構造を有さないため、薬剤開発は困難もしくは不可能とまで言われていて、多くの新薬開発が失敗してきています。

 

そんな中、ついにKRASを阻害する薬剤として登場したのがルマケラスです!!

 

ルマケラス(ソトラシブ)の作用機序

ルマケラスはKRAS G12C変異に対する初の阻害薬です。変異したKRASの働きが抑制されることで、がん細胞の増殖抑制効果が得られると期待されています。

ルマケラス(ソトラシブ)の作用機序:KRAS G12Cの選択的阻害薬

 

肺がんのエビデンス紹介:CodeBreaK 100試験

根拠となったのは国際共同で実施された第Ⅱ相試験(CodeBreaK 100試験)です。4)

本試験はKRAS G12C変異を有する既治療(3治療以下)の局所進行または転移のある非小細胞肺がん患者さんを対象に、ルマケラス1日1回投与の有効性と安全性を検討した試験で、主要評価項目は「奏効率」とされました。

 

結果は以下の通りで、主要評価項目は達成されています。

  • 奏効率:37.1%(95%CI:28.6-46.2%)
  • 奏効期間中央値:11.1か月
  • 無増悪生存期間中央値:6.8か月
  • 全生存期間中央値:12.5か月

 

木元 貴祥
木元 貴祥
二次・三次治療を対象とした試験としては良好な結果ですね!

 

大腸がんの臨床試験(CodeBreaK 300 試験)は割愛しますが、二次治療以降においてベクティビクス(パニツムマブ)との併用で良好な成績が報告されていました。3)

 

用法・用量

通常、成人にはソトラシブとして1回960mgを1日1回経口投与します。

患者の状態により適宜減量。結腸・直腸がんの場合はパニツムマブと併用。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
大腸がんの場合は、以下のスケジュールですね。ベクティビックスは2週間毎に投与します。

ルマケラス.JP|結腸・直腸癌

 

副作用

5%以上の認められる副作用としては、下痢(25.9%)、悪心(15.2%)、嘔吐、疲労(10.3%)などが報告されています。

 

重大な副作用としては、

  • 肝機能障害:ALT増加(13.6%)、AST増加(13.6%)、Al-P増加(6.2%)、ビリルビン増加(1.6%)等
  • 間質性肺疾患:肺臓炎(0.8%)等

が挙げられていますので、特に注意が必要です。

 

収載時の薬価

収載時(2022年4月20日)の薬価は以下の通りです。

  • ルマケラス錠120mg:4,204.30円

 

算定根拠については以下をご参考ください。

【新薬:薬価収載】8製品+再生医療等製品(2022年4月20日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

ルマケラスはこんな薬

  • 初のKRAS阻害薬
  • KRAS G12Cを阻害することでがん細胞の増殖を抑制する
  • 1日1回経口投与

 

開発不可能とまで言われてKRAS阻害薬。他の固形がんでも良好な成績5)が報告されていますので、今後の適応拡大等も期待したいですね!

 

木元 貴祥
木元 貴祥
大腸がん領域でも使用可能になりましたので、治療成績の向上に寄与できると思います。

 

以上、今回は非小細胞肺がん・大腸がんとKRAS変異、そしてルマケラスの作用機序・エビデンスについて解説しました♪

 

参考資料・論文等

  1.  日本肺癌学会|肺癌診療ガイドライン2024年版
  2. J Clin Oncol. 2020;38(5):9589.
  3. CodeBreaK 300 試験(大腸がん):N Engl J Med 2023;389:2125-2139
  4. CodeBreaK 100(非小細胞肺がん):N Engl J Med 2021; 384:2371-2381
  5. CodeBreaK 100(固形がん):N Engl J Med. 2020 Sep 24;383(13):1207-1217. 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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