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2024年11月22日、リムパーザ錠(オラパリブ)の効能・効果に「ミスマッチ修復機能正常(pMMR)の進行・再発の子宮体がんにおけるデュルバルマブ(遺伝子組換え)を含む化学療法後の維持療法」を追加することが承認されました。
アストラゼネカ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | リムパーザ錠100mg/150mg |
一般名 | オラパリブ |
製品名の由来 | 特になし |
製薬会社 | 製造販売元:アストラゼネカ(株) プロモーション提携:MSD(株) |
効能・効果 | ○BRCA遺伝子変異陽性の卵巣がんにおける初回化学療法後の維持療法 ○白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法 〇相同組換え修復欠損を有する卵巣がんにおけるベバシズマブを含む初回化学療法後の維持療法 ○がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳がん 〇BRCA 遺伝子変異陽性かつHER2 陰性で再発高リスクの乳がんにおける術後薬物療法 〇BRCA 遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん 〇BRCA 遺伝子変異陽性の治癒切除不能な膵癌における白金系抗悪性腫瘍剤を含む化学療法後の維持療法 〇ミスマッチ修復機能正常(pMMR)の進行・再発の子宮体がんにおけるデュルバルマブ(遺伝子組換え)を含む化学療法後の維持療法 |
用法・用量 | 通常、成人にはオラパリブとして1回300mgを1日2回、経口投与する。 なお、患者の状態により適宜減量する。 (ただし、術後薬物療法の場合、投与期間は1年間までとする。) |
収載時の薬価 | 100mg 1錠:3,996.00円 150mg 1錠:5,932.50円 |
リムパーザは国内初のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬として2018年に登場しました。
参考:PARPは“パープ”と読みます。
これまでのリムパーザの効能・効果は以下の通りです。
- 「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法」:2018年1月19日に承認
- 「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳がん」:2018年7月2日に適応拡大
- 「BRCA遺伝子変異陽性の卵巣がんにおける初回化学療法後の維持療法」:2019年6月18日に適応拡大
- 「卵巣がんにおけるベバシズマブを含む初回化学療法後の維持療法」、「前立腺がん」、「膵がん」:2020年12月25日に適応拡大
- 「BRCA 遺伝子変異陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳がんにおける術後薬物療法」:2022年8月24日に適応拡大
- 「BRCA 遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん」について、ザイティガ(アビラテロン)との併用療法を可能とする用法・用量拡大:2023年8月23日に適応拡大
-
イミフィンジ(デュルバルマブ)の作用機序と副作用【肺/胆/肝/子宮体がん】
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本記事では卵巣がん・乳がん・膵臓がん・前立腺がんの概要、そしてリムパーザ(オラパリブ)の作用機序についてご紹介します。
卵巣がんと治療
卵巣がんは、卵巣に発生するがんです。
新たに診断される人数は、1年間に10万人あたり14.3人と言われています。
また、40歳代から増加を始め、50歳代前半から60歳代前半でピークを迎え、その後は次第に減少します。
卵巣がんの約10%は遺伝的要因によるものと考えられており、相同組換え修復異常(HRD:homologous recombination deficiency)の中でもBRCA遺伝子変異があると、発症する危険性を高めることがわかっています。
参考:BRCAは“ビーアールシーエーと読みます。
<卵巣がんのBRCA遺伝子変異の割合(日本人)>
- 卵巣がん全体:14.7%
- 早期卵巣がん:4.9%
- 進行卵巣がん:24.1
引用|CHARLOTTE試験:Int J Gynecol Cancer. 2019 Jul;29(6):1043-1049.
初期治療
卵巣がん治療の基本は手術です。1)
まずは手術によって、がんの拡がり具合を確認するとともに、がんを手術で取り除きます。
術後には白金(プラチナ)系薬剤のカルボプラチンと、タキサン系薬剤のパクリタキセルを併用した抗がん剤治療を4~5カ月程行うのが一般的です。
-
タキソールとタキソテールの作用機序と副作用【抗がん剤】
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また、上記にアバスチン(ベバシズマブ)を併用することもあります。(以下は大腸がんの記事)
-
アバスチン(ベバシズマブ)の作用機序とバイオシミラー【大腸がん】
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今回ご紹介するリムパーザは相同組換え修復異常(HRD)がある場合、上記の初回の白金系抗がん剤治療後の維持治療としてアバスチンとの併用で再発を抑えることが期待できます。
リムパーザ単剤の維持治療の場合、BRCA遺伝子変異のみに限られています。
しかし、一定数の患者さんでは残念ながら再発してしまうこともあり、その場合、次の治療が行われます。再発の時期としては、治療後2年以内が多くみられます。
再発時の治療
再発卵巣がんでは、初回の抗がん剤治療完了から6カ月以上経過している場合、もう一度、白金(プラチナ)系薬剤を含んだ抗がん剤治療が行われます。1-2)
例えば、
などの治療を4~6カ月程行います。
その後は、基本的には無治療で経過観察となりますが、経過観察中にがんが増悪してくることもしばしばありました。
そのため、最新のガイドラインでは抗がん剤治療後には以下の治療による維持療法が推奨されています。2)
- アバスチン(ベバシズマブ)による維持療法(推奨の強さ1)
- 抗がん剤で奏効した場合には、リムパーザもしくはゼジューラ(ニラパリブ)による維持療法(推奨の強さ1)
再発卵巣がんにリムパーザを使用する場合、BRCA変異の有無に関わらず上記の再発治療が完了した後(本来であれば経過観察中)に投与することで、がんの増悪を抑え、生存期間の延長が期待できます。
また、維持療法後にも再発した場合、HRDがあって3レジメン以上の化学療法歴があれば、ゼジューラ(ニラパリブ)単剤療法が提案されています(推奨の強さ2)。
乳がんの概要
2011年の女性乳がんの罹患数は、約72,500人と、女性のがんの中では最も多く、約20%を占めると言われています。
手術で取り切れるような早期の乳がんでは、5年生存率は80%を超えます(StageⅠ~Ⅱでは90%を超える)ので、治癒することが可能な比較的予後の良いがんとして知られています。
ただし、発見時に手術ができない(手術不能)の乳がんや、再発した乳がんでは5年生存率は30%と、治癒を見込むのは難しくなってしまいます(基本的には延命)。
従って、日頃の観察やがん検診(マンモグラフィや超音波検査)によって、できるだけ早期に発見することが非常に重要です!!!
また、乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られています。
早期の乳がんの治療
早期の乳がんは基本的には手術によって完全に取り除くことが可能です。
場合によっては、術前や術後にホルモン療法や抗がん剤によって再発を抑える治療(術前・術後補助療法)が行われることもあります。
代表的な術後治療としては以下の記事をご覧ください。
-
パージェタ(ペルツズマブ)の作用機序と副作用【乳がん/大腸がん】
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基本的には予後良好ですが、BRCA遺伝子陽性や腋窩リンパ節転移が4個以上の患者さんでは再発リスクが高いと言われています。
今回ご紹介するリムパーザは、BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳がんの術後治療として使用できます。
ちなみに、ホルモン陽性HER2陰性で再発リスクが高い場合、ベージニオ(アベマシクリブ)が術後にホルモン療法と併用可能です。
-
ベージニオ(アベマシクリブ)の作用機序:イブランスとの違い/比較【乳がん】
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転移のある乳がんの治療(手術不能)
発見時に転移がある乳がんの場合、手術はできませんので、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬)が基本となります。
乳がんは、がん細胞の性質によって、薬物療法が異なります。
- ホルモン陽性の乳がん:ホルモン療法
- HER2陽性の乳がん:ハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)±パージェタ(一般名:ペルツズマブ)±抗がん剤
- ホルモンもHER2も陰性の乳がん:抗がん剤
最も多いとされるのが、「ホルモン陽性」の乳がんで、この場合はホルモン療法が基本です。
ホルモン陽性の乳がんに対しては
といったCDK4/6阻害薬が使用できます。
-
ベージニオ(アベマシクリブ)の作用機序:イブランスとの違い/比較【乳がん】
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今回ご紹介するリムパーザはBRCA遺伝子に変異のあるHER2陰性(ホルモン陽性もしくは陰性)の場合に使用できる薬剤です!
日本人では、乳がん全体の約3~5%にBRCA遺伝子変異があると言われています。
膵臓がんの概要と治療
膵臓がんは発見時の進行具合(Stage)に応じて治療が行われますが、早期の場合は手術によってがんを取り除く治療が原則です。
手術の後には再発を抑えるためにTS-1やジェムザール(一般名:ゲムシタビン)が行われます。
-
ティーエスワン(TS-1)と5-FUの作用機序と特徴【抗がん剤】
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しかし、発見時に他の臓器に転移のある場合(StageⅣ)や、遠隔転移は無いものの切除不能な場合(StageⅢ)は抗がん剤治療(化学療法)が原則です。
現在、膵臓がんの初回に使用できる化学療法(一次化学療法)の選択肢としては以下になります。
- ジェムザール単剤
- ジェムザール+アブラキサン
- TS-1単剤
- FOLFIRINOX療法(エルプラット+カンプト+5-FU+アイソボリン併用療法)
アブラキサンについては以下の記事で作用機序等を解説していますのでご確認くださいませ。
-
アブラキサン(パクリタキセル)の作用機序と副作用【膵臓がん】
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FOLFIRINOX療法については以下をご覧ください。
-
エルプラット(オキサリプラチン)の作用機序【各癌腫とレジメン】
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そして膵臓がんでBRCAに変異(約5%前後)がある場合、白金系抗がん剤治療後の維持治療としてリムパーザの治療効果が期待されています。
膵臓がんの一次化学療法で白金製剤を含んでいるのは、エルプラット(オキサリプラチン)を含んだFOLFIRINOX療法のみですね。
また、一次化学療法や維持療法で増悪が認められた場合には二次化学療法としてオニバイドやTS-1やジェムザールを含んだ治療等が使用されます。
-
オニバイド(イリノテカン リポソーム製剤)の作用機序【膵臓がん】
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前立腺がんの概要と治療
早期の前立腺がん(限局性、局所進行)の場合、
- 手術
- 放射線療法
- ホルモン療法
などを単独もしくは適宜組み合わせた治療が行われます。
中心的に用いられるのはホルモン療法で、前立腺がんはアンドロゲンによって増殖するため、アンドロゲンを除去する治療(androgen deprivation therapy:ADT)を行います。
昔はADTとして精巣を物理的に摘出する「外科的去勢術」が行われていました。
しかし、患者さんによっては精巣がなくなることへの抵抗感が強いため、現在のADTは薬による「内科的去勢術」としてホルモン療法が行われます。
現在、初回のホルモン療法としては、
- LH-RHアゴニスト:アンドロゲン生成抑制
- GnRHアンタゴニスト:アンドロゲン生成抑制
- 抗アンドロゲン製剤:がんのアンドロゲン受容体を阻害
などが行われますが、場合によってはザイティガ(アビラテロン)やイクスタンジ(エンザルタミド)を上記と併用することもあります。
-
イクスタンジ(エンザルタミド)の作用機序と副作用【前立腺がん】
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しかしながら、ホルモン療法によるADTを行っていても抵抗性を示して、がんの増殖が抑えられないこともあります。
このような状態を去勢抵抗性前立腺がん(CRPC:castration resistant prostate cancer)と呼んでいます。
他の臓器に転移の無いCRPCでは、その後、約90%の患者さんが骨転移を経験してしまい、予後が不良となります。
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現在、CRPCの治療としては、新規のホルモン製剤である以下の薬剤が使用されています。
-
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これまで、リムパーザはCRPCでBRCA変異等がある場合、ザイティガやイクスタンジを使用した後での使用に限られていました。今回の適応拡大によって、ザイティガとリムパーザを初回から使用することが可能になりました!
それではここから、DNAの修復メカニズムとリムパーザの作用機序についてご説明します。
DNA修復因子:PARPとBRCA
通常、ヒトの細胞内のDNAが損傷を受けると、「PARP」や「BRCA」と呼ばれる修復因子によって修復されることが知られています。
PARPはDNAの一本鎖が切断された時、BRCAはDNAの二本鎖が切断された時にそれぞれ修復する因子です。
しかしながら、「BRCA」が変異している場合、DNAの修復がうまくできず、がん化する可能性が高くなります。
BRCAの変異は、特に乳がんや卵巣がんで多いとされています。
リムパーザ(オラパリブ)の作用機序
リムパーザはDNA修復因子である「PARP」を特異的に阻害する作用機序を有しています!
BRCA変異のがん細胞でPARPを阻害すると、一本鎖切断DNAの修復ができずに、二本鎖が切断されてしまいます。
本来であれば、二本鎖が切断されると、「BRCA」によって修復されますが、BRCA変異のがん細胞はBRCAが元々変異しているため、修復することができません。
従って、がん細胞のDNAが壊れてしまい、「合成致死」と呼ばれるがん細胞死が誘導されると考えられています!
一方、正常のヒト細胞では、PARPが阻害され、二本鎖が切断されたとしても、BRCAは正常ですので、BRCAによって元通りのDNAに修復されます。
従って、副作用も少ないと考えられていますが、やはり特徴的な副作用(悪心・嘔吐、疲労、貧血等)には注意が必要です。
初回卵巣がんのエビデンス紹介:SOLO-1試験
初回卵巣がんの根拠となった臨床試験の一つである「SOLO-1試験」をご紹介します。
SOLO-1試験は、BRCA遺伝子変異の初発卵巣がんに対して白金(プラチナ)系薬剤を含んだ抗がん剤治療が行われた患者さんを対象に、プラセボとリムパーザを直接比較する第Ⅲ相臨床試験です。3)
本試験の主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」で、結果は以下の通りでした。
試験名 | SOLO-1試験 | |
試験治療 | プラセボ | リムパーザ |
3年時点のPFS率* | 27% | 60% |
HR=0.30, P<0.001 | ||
PFS中央値 | 13.8か月 | 未到達 |
3年時点の生存率 | 80% | 84% |
HR=0.95 |
*無増悪生存期間(PFS):治療を開始してからがんが大きく(増悪)するまでの期間
このようにリムパーザではプラセボと比較して増悪・死亡のリスクの有意な低下が認められています。
再発卵巣がんのエビデンス紹介:SOLO-2試験
再発卵巣がんの根拠となった臨床試験の一つの「SOLO-2試験」をご紹介します。
SOLO-2試験は、BRCA遺伝子変異の再発卵巣がんに対して白金(プラチナ)系薬剤を含んだ抗がん剤治療が行われた患者さんを対象に、プラセボとリムパーザを直接比較する第Ⅲ相臨床試験です。4)
本試験の主要評価項目である「無増悪生存期間(PFS)」の中央値は、プラセボ群で5.5か月、リムパーザ群で19.1か月と有意にリムパーザ群で延長していました(HR=0.30, p<0·0001)。
その他にも、BRCA遺伝子変異を問わず、再発卵巣がんに対して白金(プラチナ)系薬剤を含んだ抗がん剤治療が行われた患者さんを対象に、プラセボとリムパーザを直接比較する第Ⅱ相臨床試験の報告もあります。5)
本試験の主要評価項目である「無増悪生存期間(PFS)」の中央値は、プラセボ群で4.8か月、リムパーザ群で8.4か月と有意にリムパーザ群で延長していました(HR=0.35, P<0.001)。
切除不能乳がんのエビデンス紹介:OlympiAD試験
切除不能乳がんの根拠となった臨床試験の一つの「OlympiAD試験」をご紹介します。6-7)
本試験は、タキサン系もしくはアントラサイクリン系薬剤の治療歴のあるBRCA遺伝子変異かつHER2陰性の乳がん患者さんを対象に、一次~三次治療として標準的な治療(カペシタビン or エリブリン or ビノレルビン)とリムパーザを直接比較する第Ⅲ相臨床試験です。
本試験の主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」で、結果は以下の通りでした。
試験名 | OlympiAD試験 | |
試験治療 | 標準的な治療 | リムパーザ |
PFS中央値 | 4.2か月 | 7.0か月 |
HR=0.58, P<0.001 | ||
全生存期間中央値 | 17.1か月 | 19.3か月 |
HR=0.90, P=0.513 | ||
奏効率† | 28.8% | 59.9% |
†奏効率:がんが30%以上縮小した患者さんの割合
本試験の結果より、これまで標準であった抗がん剤と比較してリムパーザはPFSと奏効率は改善しましたが、生存期間の有意な延長は認められませんでした。
BRCA遺伝子変異があっても、ホルモンが陽性の場合、まずはホルモン療法(例:アロマターゼ阻害薬+CDK4/6阻害薬、)が基本ですので、リムパーザはその後の使用が想定されます。
CDK4/6阻害薬については以下の記事をご参考くださいませ~。
-
ベージニオ(アベマシクリブ)の作用機序:イブランスとの違い/比較【乳がん】
続きを見る
乳がん術後治療のエビデンス紹介:OlympiA試験
乳がん術後の根拠となった臨床試験の一つの「OlympiA試験」をご紹介します。8)
本試験は、BRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性で再発高リスクの乳がん(ホルモン発現状況は問わない)で、標準的な術前または術後治療を行った患者さんを対象に、リムパーザの1年投与群とプラセボ投与群を比較する国際共同第Ⅲ相試験です。
本試験の主要評価項目は「浸潤性無再発生存(IDFS)」とされ、結果は以下の通りでした。
リムパーザ群 | プラセボ群 | |
3年IDFS率 | 85.9% | 77.1% |
HR=0.58 (99.5%CI: 0.41-0.82)、p<0.001 |
膵臓がんのエビデンス:POLO試験
膵臓がんの根拠となった試験はPOLO試験です。9)
本試験はBRCA変異の遠隔転移膵臓がんで白金系抗がん剤(プラチナ製剤)を含む治療歴のある患者さんを対象に、維持治療としてリムパーザとプラセボを比較する第Ⅲ相臨床試験です。
プラチナ製剤は16週間以上施行して病勢進行がないこと
主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」で、結果は以下の通りでした。
試験名 | POLO試験 | |
試験治療 | プラセボ | リムパーザ |
PFS中央値 | 3.8か月 | 7.4か月 |
HR=0.53, P=0.004 | ||
全生存期間中央値 | 18.1か月 | 18.9か月 |
HR=0.91, P=0.68 |
前立腺がんは割愛しますが、ザイティガやイクスタンジ治療歴のあるCRPC患者さんを対象としたPROfound試験において、リムパーザの有効性が示されています10)。
またCRPCの初回治療において、ザイティガとリムパーザを併用することを検証したPROpel試験では、ザイティガ単独よりも有意な無増悪生存期間の延長が示されています11)が、全生存期間の延長は示されていません12)。
用法・用量
いずれの適応においても用法・用量は共通です。
通常、成人にはオラパリブとして1回300mgを1日2回、経口投与します。なお、患者さんの状態により適宜減量します。
ただし、乳がんの術後薬物療法の場合、投与期間は1年間までとされています。
副作用
主な副作用として、悪心、貧血、疲労、嘔吐、無力症、味覚異常などが報告されています。
稀ですが、重大な副作用としては骨髄抑制と間質性肺疾患が発現する可能性がありますので、こちらは特に注意が必要です。
まとめ・あとがき
リムパーザはこんな薬
- PARP阻害薬に分類されている
- PARPを阻害すると「合成致死」と呼ばれるがん細胞死が誘導される
- 乳がんや卵巣がんの初回に使用する場合にはBRCA遺伝子変異の検査が必須
- 膵臓がんや前立腺がんにも効果が期待されている
- 乳がんの術後治療としても期待されている
リムパーザはPARP阻害といった初の作用機序を有する薬剤ですので、今後の適応拡大等も期待されています。
2020年には2製品目となるPARP阻害薬ゼジューラ(ニラパリブ)が登場し、2024年にはターゼナ(タラゾパリブ)も登場しました!3製品の比較等については以下の記事をご覧ください。
-
ターゼナ(タラゾパリブ)の作用機序:リムパーザ、ゼジューラとの違い【乳/前立腺がん】
続きを見る
以上、本日は卵巣がん・乳がん・膵臓がん・前立腺がんとリムパーザについてご紹介しました☆
子宮体がんについては、併用するイミフィンジの記事で解説しています。
-
イミフィンジ(デュルバルマブ)の作用機序と副作用【肺/胆/肝/子宮体がん】
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引用文献・資料等
- 卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版
- 卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン2020年版 CQ12・13・25アップデイト
- SOLO-1試験:N Engl J Med 2018; 379:2495-2505
- SOLO-2試験:Lancet Oncol. 2017 Sep;18(9):1274-1284.
- 卵巣がん第Ⅱ相試験:N Engl J Med. 2012 Apr 12;366(15):1382-92.
- OlympiAD試験:N Engl J Med. 2017 Aug 10;377(6):523-533.
- OlympiAD試験(追加解析):Ann Oncol. 2019 Apr 1;30(4):558-566.
- OlympiA試験:N Engl J Med 2021; 384:2394-2405
- POLO試験(膵臓がん):N Engl J Med 2019; 381:317-327
- PROfound試験(前立腺がん):N Engl J Med 2020; 382:2091-2102
- PROpel試験(前立腺がん):NEJM Evid 2022;1(9). DOI: 10.1056/EVIDoa2200043
- PROpel試験(前立腺がん)のOS:Lancet Oncol. 2023 Oct;24(10):1094-1108.
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