新薬承認・薬価収載

【第二部会:期待の新薬】6製品+8製品(2023年7月31日)

2023年7月31日、厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会にて、新薬として7製品の承認可否が審議され、うち6製品が承認了承されました!

その他、報告のみで適応拡大される8製品もあります。

 

今回、継続審議となったのは、塩野義製薬の新型コロナウイルスワクチンであるコブゴーズ筋注です。

現在までに評価された臨床試験成績のみでは、本ワクチンの有効性を明確に説明することが難しい」と判断され、継続審議となったようですね・・・。

 

もう一つ審議された第一三共のmRNAワクチンのダイチロナ筋注は承認了承されたため、近日中の承認が見込まれています。

 

木元 貴祥
今回は概要についてご紹介します。

 

審議品目:6製品

●ダイチロナ筋注(一般名:コロナウイルス(SARS-CoV-2)RNA ワクチン)
:「SARS-CoV-2による感染症の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。

コミナティ、ダイチロナ、コスタイベなどの作用機序【新型コロナウイルス】

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木元 貴祥
初の国産のmRNAワクチンですね!

 

初回免疫としては使用できず、18歳以上の追加免疫用として使用します。

 

今回は起源株(従来株)を用いたワクチンですが、現在、オミクロン株に対応した2価ワクチンの臨床試験も進行中のため、今後の適応拡大も期待できそうです。

 

●クイントバック水性懸濁注射用(一般名:沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオヘモフィルスb型混合ワクチン)
:「百日せき、ジフテリア、破傷風、急性灰白髄炎及びインフルエンザ菌b型による感染症の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品及び新医療用配合剤。

百日せき、ジフテリア、破傷風、急性灰白髄炎(ポリオ)、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(Hib)による感染症を予防する5種混合ワクチンですね。

 

5種混合ワクチンは、2023年3月27日に承認されたゴービックに続いて2製品目です。

 

●アレモ皮下注15mg、同皮下注60mg、同皮下注150mg、同皮下注300mg(一般名:コンシズマブ(遺伝子組換え))
:「血液凝固第Ⅷ因子又は第Ⅸ因子に対するインヒビターを保有する先天性血友病患者における出血傾向の抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。

アレモ皮下注(コンシズマブ)の作用機序・特徴【血友病】

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木元 貴祥
国内初の抗TFPIモノクローナル抗体薬ですね。

 

インヒビターを保有するあらゆるタイプの血友病に対して、出血抑制が期待されています。

 

●フェスゴ配合皮下注MA、同配合皮下注IN(一般名:ペルツズマブ(遺伝子組換え)・トラスツズマブ(遺伝子組換え)・ボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え))
:「HER2陽性の乳がん」、「がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品及び新医療用配合剤。

フェスゴ配合皮下注(ペルツズマブ/トラスツズマブ)の作用機序【乳がん/大腸がん】

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パージェタ(ペルツズマブ)とハーセプチン(トラスツズマブ)の配合皮下注製剤ですね!

 

木元 貴祥
皮下組織における浸透性を向上させるために、ボルヒアルロニダーゼ アルファが配合されています。

 

ボルヒアルロニダーゼを配合しているのは、ダラキューロ(ダラツムマブ)に次いで2製品目でしょうか。いずれも皮下注投与によって投与時間の大幅な削減が期待できます。

ダラキューロ/ダラザレックス(ダラツムマブ)の作用機序【多発性骨髄腫】

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●エンハーツ点滴静注用100mg(一般名:トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え))
:「がん化学療法後に増悪したHER2(ERBB2)遺伝子変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を効能・効果とする新効能医薬品。

エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)の作用機序【乳/胃/肺がん】

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非小細胞肺がんでは初の抗HER2抗体ですね!二次治療以降での使用が見込まれています。

 

●シュンレンカ皮下注463.5mg、同錠300mg(一般名:レナカパビルナトリウム)
:「多剤耐性HIV-1感染症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。

シュンレンカ皮下注/錠(レナカパビル)の作用機序【HIV】

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国内初のカプシド阻害薬です。

 

木元 貴祥
既存薬と作用機序が異なることから、多剤耐性のHIVに対しても効果が期待されています!

 

最初に経口剤による治療を行い、その後、皮下注による治療に移行します。皮下注は半年に1度の投与のため、利便性が向上しますね!

 

第二部会で承認了承後、翌日の2023年8月1日に正式承認されました。早い!

 

報告品目:8製品

●リムパーザ錠100mg、同錠150mg(一般名:オラパリブ)
:「BRCA遺伝子変異陽性の遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺がん」を効能・効果とする新用量医薬品。

リムパーザ(オラパリブ)の作用機序【卵巣/乳/膵/前立腺がん】

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これまで、同効能・効果に対しては、既存のホルモン薬に抵抗性が認められた場合に単剤での使用に限られていました。

 

今回の適応拡大により、ホルモン薬のザイティガ(アビラテロン)と初回から併用して使用可能となります。

 

●ルミセフ皮下注210mgシリンジ(一般名:ブロダルマブ(遺伝子組換え))
:「既存治療で効果不十分な掌蹠膿疱症」を効能・効果とする新効能医薬品。

ルミセフ(ブロダルマブ)の作用機序【乾癬・脊椎関節炎】

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掌蹠膿疱症に使用する生物学的製剤としては、トレムフィア(グセルクマブ)スキリージ(リサンキズマブ)に次いで3製品目ですね。

 

●ペグフィルグラスチムBS皮下注3.6mg「モチダ」
●ペグフィルグラスチムBS皮下注3.6mg「ニプロ」(一般名:ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)[ペグフィルグラスチム後続1])
:「がん化学療法による発熱性好中球減少症の発症抑制」を効能・効果とするバイオ後続品。

 

木元 貴祥
ジーラスタのバイオ後続品(バイオシミラー)が初登場です!!

 

ただし、効能・効果は先発のジーラスタと異なるため、注意が必要ですね。

ジーラスタ(ペグフィルグラスチム)の作用機序と副作用【G-CSF製剤】

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●ウステキヌマブBS皮下注45mgシリンジ「F」(一般名:ウステキヌマブ(遺伝子組換え)[ウステキヌマブ後続1])
:「既存治療で効果不十分な下記疾患:尋常性乾癬、関節症性乾癬」を効能・効果とするバイオ後続品。

 

こちらも、ステラーラ初のバイオ後続品ですが、乾癬にしか使用できません。先発品はクローン病や潰瘍性大腸炎の適応症を有しているため、適応症が異なることに注意が必要です。

ステラーラ(ウステキヌマブ)の作用機序【クローン病/潰瘍性大腸炎】

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●FDGスキャン注(一般名:フルデオキシグルコース(18F))
:「悪性腫瘍の診断(○胸膜中皮腫、食道がん、胃がん、消化管間質腫瘍、肝がん、胆道がん、膵がん、膀胱がん、腎盂・尿管がん、子宮がん、卵巣がん、骨軟部腫瘍、皮膚がん(他の検査、画像診断により病期診断、転移・再発の診断が確定できない場合)の診断、○胸腺腫瘍、腎がん、精巣腫瘍、甲状腺がん(他の検査、画像診断により転移・再発の診断が確定できない場合)の診断、○多発性骨髄腫が疑われる又は多発性骨髄腫患者における骨病変又は髄外病変の可視化(他の検査、画像診断により骨病変又は髄外病変の存在が疑われる場合))、心サルコイドーシスが疑われる又は心サルコイドーシス患者における炎症部位の可視化」を効能・効果とする新効能医薬品。

 

●スパイクバックス筋注(一般名:コロナウイルス(SARS- CoV-2)RNAワクチン)
:「SARS-CoV-2による感染症の予防」を効能・効果とし、小児用量を追加する新用量医薬品。

1価ワクチン(起源株)の6歳~11歳の初回免疫と、2価ワクチン(起源株/オミクロン株BA.1および起源株/オミクロン株BA.4-5)の6歳~11歳の追加免疫の用量が追加されますね。

これまで1価ワクチン(起源株)は12歳以上しかなく、2023年2月11日で接種が終了していました(厚労省HP)。今後、6歳~11歳については初回免疫として起源株を接種し、追加免疫として2価ワクチンが使用可能となります。

 

●①コミナティRTU筋注②同RTU筋注1人用③同筋注5~11歳用④同筋注6か月~4歳用(一般名:コロナウイルス(SARS-CoV-2)RNAワクチン)
:「SARS-CoV-2による感染症の予防」を効能・効果とする新効能・新用量・その他の医薬品。

 

2価ワクチン(起源株/オミクロン株BA.4-5)について、生後6か月以上の全年齢層における初回免疫と、生後6か月~4歳における追加免疫の用量の追加がされますね。

 

以下の記事で現時点での情報を一覧表でまとめていますので、ご参照くださいませ~。

コミナティ、ダイチロナ、コスタイベなどの作用機序【新型コロナウイルス】

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あとがき

今回の注目は、新型コロナウイルスワクチンでは初の国産ワクチンであるダイチロナ筋注でしょうか。

 

木元 貴祥
現在は起源株のみですが、今後の2価ワクチンの適応拡大も期待したいところです。

 

その他、ジーラスタやステラーラの初のバイオ後続品も登場しますので、注目したいところですね。適応症が異なるため、そこまで爆発的な浸透は期待できないかもしれませんが・・・。

 

以上、今回は2023年7月31日の厚労省の薬食審・医薬品第二部会で承認了承された薬剤の概要についてご紹介しました。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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