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2023年3月27日、エルプラット点滴静注液50mg/100mg/200mg(一般名:オキサリプラチン)の「胃がん」について、新用法・用量として「A法(2週間毎のFOLFOX療法)」を追加することが承認されました。
これまで、胃がんに対してはB法(3週間毎のSOXまたはCAPOX療法)しか使用できませんでした。
現在のエルプラットの効能・効果と対応する用法・用量は以下の通りです。
- 治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん:A法・B法
- 結腸がんにおける術後補助化学療法:A法・B法
- 治癒切除不能な膵がん:A法
- 胃がん:A法・B法
- 小腸がん:A法
※A法:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはオキサリプラチンとして85mg/m2(体表面積)を1日1回静脈内に2時間で点滴投与し、少なくとも13日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。⇒レジメン例はFOLFOX療法、FOLFIRINOX療法
※B法:他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人にはオキサリプラチンとして130mg/m2(体表面積)を1日1回静脈内に2時間で点滴投与し、少なくとも20日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。⇒レジメン例はSOX療法、CAPOX療法
エルプラットでは単剤で使用することができませんので、必ず他の抗がん剤と併用で用いられます。
今回は胃がん、小腸がん、大腸がん(結腸がんおよび直腸がん)、膵臓がんの治療とエルプラット(オキサリプラチン)の作用機序・特徴についてご紹介します。
胃がんの概要・治療
胃がんの治療は発見時のStageによって異なります。
最近では胃がん検診受診率の向上により、より早期で発見できることが多いとされています。
特に早期のStageで発見された場合、手術によってがんを取り除き、その後、再発を抑制する目的で抗がん剤による術後補助化学療法を行います。主に使用される術後補助化学療法としては以下の通りです。
発見時に遠隔臓器に転移がある場合(StageⅣ)や、再発した胃がんの場合、手術によって取り除くことができないため、抗がん剤併用(化学療法)による治療が原則です。
StageⅣや再発の胃がんの場合、約20%はHER2受容体が発現していることが知られています。
HER2が陽性の場合、HER2を阻害するハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)を併用した以下のような化学療法が行われます。
ハーセプチンの作用機序については以下の記事をご確認ください。
-
ハーセプチン(トラスツズマブ)の作用機序と副作用【胃がん】
続きを見る
一方、HER2が陰性の場合、以下のような化学療法が行われます。
- SOX(S-1+エルプラット)±オプジーボ(ニボルマブ)
- SP(S-1+シスプラチン)
- DS(S-1+ドセタキセル)
- XP(カペシタビン+シスプラチン)
- CAPOX(カペシタビン+エルプラット)±オプジーボ(ニボルマブ)
- FOLFOX(エルプラット+5-FU+レボホリナート)±オプジーボ(ニボルマブ)
最近では一次治療から免疫チェックポイント阻害薬のオプジーボ(ニボルマブ)が併用可能になりましたね!
-
オプジーボ(ニボルマブ)の作用機序【胃/尿路上皮がん】
続きを見る
これまで、胃がんの化学療法ではガイドライン等でFOLFOX療法(エルプラットのA法)が掲載されているものの、胃がんにおけるエルプラットの適応は「B法」しかありませんでした。
また、上記の初回治療(一次化学療法)で増悪が認められた場合、二次治療としてはタキソール+サイラムザ(ラムシルマブ)による併用療法が行われます。
-
サイラムザ(ラムシルマブ)の作用機序【胃/大腸/肝細胞/肺がん】
続きを見る
小腸がんの概要・治療
小腸は十二指腸・空腸・回腸から構成されている臓器です。
小腸がんはその名の通り、小腸から発生する悪性腫瘍(がん)で、頻度としてはがん全体のうち約0.5%と非常に稀な疾患です。
早期の小腸がんでは症状がほとんどありません。
進行すると、出血や小腸の閉塞、貧血、黄疸などの症状がみられることがあります。
また、小腸がんは非常に稀な疾患のため、標準治療が存在していませんでした。
他の消化器がんを参考に、早期の小腸がんでは、手術によってがんを取り除く治療が一般的に行われています。
発見時に転移がある小腸がんは、これまで承認された薬剤がなかったのですが、2018年9月21日にエルプラットが小腸がんに対して適応拡大を取得し、FOLFOX療法(A法)が使用可能となりました!
大腸がんの概要・治療
大腸がんも胃がんや小腸がんと同様、早期に発見された場合には手術によってがんを取り除き、その後、再発を抑制する目的で抗がん剤による術後補助化学療法を行います。
結腸がんの術後補助化学療法としては主に使用されるレジメンは以下の通りです。
- CAPOXやFOLFOXの3か月~半年投与
- カペシタビンやS-1や5-FUの半年投与
また、発見時に遠隔転移等のある大腸がんの一次化学療法では抗がん剤(2〜3種)+分子標的薬(ベバシズマブなど)を用いた以下のいずれかの治療法が行われます。
- FOLFOX+アバスチン/ベクティビクス/アービタックス
- FOLFIRI+アバスチン/ベクティビクス/アービタックス
- FOLFOXIRI+アバスチン
- CAPOX+アバスチン
- SOX+アバスチン
- IRIS+アバスチン
参考:使用薬剤
- FOLFIRI:カンプト(イリノテカン)+5-FU+アイソボリン(レボホリナート)
- FOLFOXIRI:エルプラット(オキサリプラチン)+カンプト(イリノテカン)+5-FU+アイソボリン(レボホリナート)
- IRIS:ティーエスワン(S-1)+カンプト(イリノテカン)
アバスチン(ベバシズマブ)の詳細については以下の記事をご参考くださいませ。
-
アバスチン(ベバシズマブ)の作用機序とバイオシミラー【大腸がん】
続きを見る
なお、MSI-highが確認された場合、キイトルーダ(ペムブロリズマブ)が初回から単剤で使用可能です。MSI-highとキイトルーダについては以下で解説しています♪
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キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序【消化器がん/MSI-High固形がん】
続きを見る
二次化学療法ではサイラムザ(ラムシルマブ)が使用可能です。
-
サイラムザ(ラムシルマブ)の作用機序【胃/大腸/肝細胞/肺がん】
続きを見る
また、大腸がんの約5%前後にはBRAF遺伝子変異が認められることがあり、この場合、上記の化学療法は効きが悪く、予後不良とされていました。BRAF遺伝子変異を有する大腸がんの二次化学療法としてはビラフトビ/メクトビ併用療法が使用可能になりました。
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ビラフトビ/メクトビ併用療法の作用機序【悪性黒色腫/大腸/甲状腺がん】
続きを見る
膵臓がんの概要・治療
膵臓は胃の後ろにある細長い臓器で、主な役割としては以下の2つです。
- 食物の消化酵素の分泌(外分泌)
- インスリン等のホルモンの産生(内分泌)
膵臓がんは膵臓にできる悪性腫瘍(がん)のことで、極めて予後の悪い代表的ながんです。
膵臓がんの治療は進行具合に応じて治療が行われますが、早期の場合は手術によってがんを取り除く治療が原則です。
手術の後には再発を抑えるために抗がん剤治療(S-1やジェムザール)が行われます。
しかし、発見時に他の臓器に転移のある場合、もしくは再発の場合は抗がん剤治療が原則です。
現在、膵臓がんの一次化学療法として使用できる治療法としては以下があります。
- ジェムザール(一般名:ゲムシタビン)単剤
- ジェムザール(一般名:ゲムシタビン)+アブラキサン(パクリタキセル)
- ジェムザール(一般名:ゲムシタビン)+タルセバ(一般名:エルロチニブ)
- FOLFIRINOX療法(エルプラット+カンプト+5-FU+アイソボリン併用療法)
- S-1単剤
今回ご紹介するエルプラットはFOLFIRINOX療法として使用します。
二次化学療法としては、ゲムシタビンによる治療歴がある場合、オニバイド(イリノテカン リポソーム製剤)が使用可能です。
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オニバイド(イリノテカン リポソーム製剤)の作用機序【膵臓がん】
続きを見る
エルプラット(オキサリプラチン)の作用機序
がん細胞が増殖する際、まずDNAの複製が行われます。
二本鎖DNAが解かれて一本鎖DNAになり、その後ポリメラーゼ等によって複製が行われて二本鎖DNAが完成します。
エルプラットは、白金製剤(プラチナ製剤)に分類されている抗がん剤です。
がん細胞の二本鎖DNAに結合して架橋構造を形成することで、一本鎖DNAになることを阻害し、その後の複製反応をストップさせます。
その結果、がん細胞死(アポトーシス)を引き起こし、がん細胞の増殖が抑制できると考えられています。
副作用
主な副作用には好中球減少、血小板減少、末梢神経障害、食欲不振、悪心・嘔吐などがあります。
エルプラットは他の抗がん剤と併用するため、好中球減少が高頻度で発現します。従って、適切な減量や休薬を行う必要があります。
また、発熱性好中球減少症を発現する恐れもあるため、FOLFIRINOX療法などの多剤併用療法の場合にはG-CSF製剤(ジーラスタ)の予防的投与も考慮されます。
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ジーラスタ(ペグフィルグラスチム)の作用機序と副作用【G-CSF製剤】
続きを見る
その他、エルプラットに特異的な副作用として末梢神経障害があります。遷延することもあり、患者さんのQOL低下を招く副作用のため、十分に注意する必要があります。
こちらも対処法としては適切な減量・休薬ですね。
類薬(ランダ/ブリプラチン)との違い
エルプラットと同様の白金製剤としては、
- ランダ/ブリプラチン(一般名:シスプラチン):第一世代
- アクプラ(一般名:ネダプラチン):第二世代
- パラプラチン(一般名:カルボプラチン):第二世代
などがあります。
なお、エルプラットは第三世代の白金製剤に分類されています。
ランダ/ブリプラチンとアクプラは腎毒性が強く、投与時には大量の輸液投与(ハイドレーション)が必要なため基本的に入院で行います。
一方、エルプラットでは腎毒性が軽減されているため、ハイドレーションが不要です。そのため、入院が不要で外来で投与ができるといったメリットがあります。
あとがき
エルプラットは大腸がんのキードラッグとして登場しましたが、その後、膵臓がんや胃がん、小腸がんにも適応拡大が行われていきました。
現在も様々な癌腫に対して使用されているため、治療成績の向上に寄与していると考えられます。
以上、今回は胃がん、小腸がん、大腸がん(結腸がんおよび直腸がん)、膵臓がんの治療とエルプラット(オキサリプラチン)の作用機序・特徴についてご紹介しました。
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