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ビンゼレックス皮下注(ビメキズマブ)の作用機序【乾癬】

2023年12月22日ビンゼレックス皮下注(ビメキズマブ)の以下の適応拡大が承認されました!

既存治療で効果不十分な以下の疾患

  • 乾癬性関節炎
  • 強直性脊椎炎
  • X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎

ユーシービージャパン|ニュースリリース

基本情報

製品名 ビンゼレックス皮下注160mgシリンジ/オートインジェクター
一般名 ビメキズマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来 Bimekizumab と Excellent に由来
製造販売 ユーシービージャパン(株)
効能・効果 既存治療で効果不十分な下記疾患
〇尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症
〇乾癬性関節炎
〇強直性脊椎炎、X 線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎
用法・用量 記事内参照
収載時の薬価 オートインジェクター:156,820円
シリンジ:156,587円
発売日 2022年4月20日新発売(HP

 

ビンゼレックスは、2022年1月20日に「尋常性乾癬、膿疱性乾癬及び乾癬性紅皮症」を対象疾患として承認された新規の生物学的製剤です。

 

木元 貴祥
乾癬に使用する生物学的製剤(抗体薬)としては、以下の記事にもまとめていますが、ビンゼレックスは11製品目の登場ですね。
【乾癬】生物学的製剤の一覧と作用機序/特徴のまとめ

続きを見る

 

既に乾癬で承認・販売されている

IL-17Aを阻害する抗体薬ですが、ビンゼレックスはIL-17AとIL-17Fを共に阻害するといった作用機序を有しています。

 

阻害の範囲が広いため、より炎症抑制効果が示唆されていますね。コセンティクスとの直接比較試験(後述)の結果も興味深い結果でした。

 

今回は乾癬とビンゼレックス(ビメキズマブ)の作用機序・特徴についてご紹介します。

 

皮膚のターンオーバー

通常、皮膚は外からの刺激・乾燥等を防御したり、細菌・ウイルスの侵入を防ぐといった免疫機能を司っています。

 

構造としては、表面から順に、

  • 表皮
  • 真皮
  • 皮下組織

の3層に分かれています。

 

また、表皮はさらに

  • 角質層
  • 顆粒層
  • 有棘層
  • 基底層

の4層から構成されています。

 

皮膚はその機能を保つため、基底層で常に新しい細胞が作られています

基底層で新しくできた細胞は徐々に角層へと押し上げられ、最終的には垢となって剥がれ落ちます。

 

このような皮膚の細胞サイクルを「ターンオーバー(分化)」と呼び、通常、約28~40日サイクルで繰り返されています。

ターンオーバーの仕組み

 

乾癬とは

乾癬の患者さんでは、慢性の炎症を伴う何らかの原因で上記のターンオーバーのサイクルが4~5日と極端に短くなっています。

そのため、皮膚が盛り上がったような状態(“肥厚”と呼びます)になり、赤い発疹(“紅斑”と呼びます)を伴うことを特徴とします。

 

また、皮膚の一部がかさかさになって剥げ落ちる(“落屑”と呼びます)こともあります。

 

乾癬の分類

乾癬は5つの種類に分類されていますが、約9割は「尋常性乾癬」です

  • 尋常性乾癬
  • 関節症性乾癬
  • 滴状乾癬
  • 乾癬性紅皮症
  • 膿疱性乾癬

乾癬性紅皮症や膿疱性乾癬は非常に稀ですが、発症すると症状が厳しいため、重症になることが多いです。

 

木元 貴祥
今回ご紹介するビンゼレックスは尋常性乾癬膿疱性乾癬乾癬性紅皮症に使用できますね。

 

今後は関節症性乾癬に対しても使用可能となります。

 

乾癬の原因

明確な原因は不明確ですが、

  • 遺伝的素因
  • 環境要因(ストレス、食生活、肥満等)

などによって、免疫機能が異常になることで発症すると考えられています。

 

何らかの原因によって、マクロファージ等が産生する炎症性サイトカイン(IL-12、IL-23、TNFα)等によって炎症が引き起こされ、乾癬の症状が発現します。

IL-23はヘルパーT細胞の一種であるTh17を活性化し、Th17が産生する「IL-17A」や「IL-17F」も乾癬の発症と維持に重要であると考えられています。

乾癬の発症にはIL-17AとIL-17Fが重要である

 

乾癬の重症度と治療

乾癬の重症度は皮膚の症状や状態、患者さんが感じる不便さ、等を指標に「軽症」、「中等症」、「重症」の3つに分けられています。

 

重症度に応じて、以下の4つの治療が単独もしくは組み合わせて行われますが、中心となるのは外用療法です。

  • 外用療法(塗り薬)
  • 光線療法(紫外線照射)
  • 内服療法(経口薬)
  • 生物学的製剤治療(注射薬)

 

外用療法(塗り薬)には、ステロイド外用薬や活性型ビタミンD3外用薬が用いられます。

内服療法(経口薬)には、チガソン(一般名:エトレチナート)等のビタミンA誘導体の他、免疫抑制薬やPDE4阻害薬のオテズラ(アプレミラスト)が重症度に応じて使用されます。

オテズラ(アプレミラスト)の作用機序【乾癬/ベーチェット病】

続きを見る

 

そして生物学的製剤治療(抗体薬)は基本的には、以下のような患者さんにしか使用することができません。1)

  • 外用療法、光線療法、内服療法で改善しない患者さん
  • 乾癬性関節炎で痛みが激しい患者さん
  • 乾癬性紅皮症膿疱性乾癬等の重症な患者さん

 

また、生物学的製剤治療は日本皮膚科学会で定められた病院でのみ治療ができます。1)

 

木元 貴祥
今回ご紹介するビンゼレックスも生物学的製剤に分類されていますね。

 

ビンゼレックス(ビメキズマブ)の作用機序:抗IL-17A/F抗体

ビンゼレックス(ビメキズマブ)は炎症の原因となっているIL-17AとIL-17Fを共に阻害するモノクローナル抗体薬です。

その結果、Th17関連の炎症反応が抑制され、乾癬の症状緩和が得られると考えられます。

ビンゼレックス(ビメキズマブ)の作用機序:IL-17AとIL-17Fを共に阻害する抗体薬

 

類似の作用機序(IL-17A)を有する生物学的製剤としてはコセンティクス(セクキヌマブ)トルツ(イキセキズマブ)が既に承認・販売されています。

 

木元 貴祥
ビンゼレックスはより広範囲のILを阻害するため、治療効果が高いと期待されています!

 

エビデンス紹介:BE RADIANT試験(コセンティクスとの直接比較)

根拠となった臨床試験をご紹介します(BE RADIANT試験)。2)

本試験は既存治療で効果不十分な中等度~重度の慢性尋常性乾癬患者さんを対象に、ビンゼレックスとコセンティクスを直接比較する第Ⅲb相臨床試験です。

 

主要評価項目は「16週時点におけるPASI 100の達成率*」とし、非劣性の検証、次いで優越性の検証が行われました。

ビンゼレックス群 コセンティクス群
16週時点におけるPASI 100の達成率 61.7% 48.9%
非劣性および優越性の P<0.001

*PASI(Psoriasis Area and Severity Index):乾癬の面積と重症度の指標でPASI 100は「100%の改善」と定義される

 

木元 貴祥
コセンティクスと比べて有意な改善が得られていますね!

 

ちなみに、同様の試験デザインでビンゼレックスとコセンティクスとヒュミラを直接比較したBE SURE試験3)でもビンゼレックス群で有意なPASI 90の改善とIGAスコアの改善が認められていますよ~。

 

他の生物学的製剤との違い

乾癬に用いる他の生物学的製剤には以下の種類があり、それぞれ作用機序が異なります。

 

投与間隔や自己注射について詳しくは以下の記事にまとめていますのでご参照ください。(ビンゼレックスも追記済!)

【乾癬】生物学的製剤の一覧と作用機序/特徴のまとめ

続きを見る

 

副作用

重大な副作用として、

  • 重篤な感染症(0.5%)
  • 好中球数減少(0.5%)
  • 炎症性腸疾患(0.1%未満)
  • 重篤な過敏症反応(頻度不明)

が挙げられていますので、特に注意が必要です。

 

木元 貴祥
他の生物学的製剤と同様ですね。

 

用法・用量、自己注射

効能・効果によって、用法・用量が異なります。

 

〈尋常性乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症〉

通常、成人にはビメキズマブ(遺伝子組換え)として、1 回320 mg を初回から16 週までは4 週間隔で皮下注射し、以降は8 週間隔で皮下注射します。

なお、患者の状態に応じて16 週以降も4 週間隔で皮下注射できます。

 

〈乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、X 線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎〉

通常、成人にはビメキズマブ(遺伝子組換え)として、1 回160 mg を4 週間隔で皮下注射します。

 

木元 貴祥
乾癬性関節炎以外の乾癬の維持期には8週間隔の投与ですね!

 

なお、2023年5月より、在宅自己注射も可能となりました。ただし、「4週間隔投与の場合のみとすること」とされています。

 

収載時の薬価

収載時(2022年4月20日)の薬価は以下の通りです。

  • ビンゼレックス皮下注160mg オートインジェクター:156,820円(1日薬価:5,601円)
  • ビンゼレックス皮下注160mg シリンジ:156,587円(1日薬価:5,592円)

 

算定根拠については以下をご参考ください。

【新薬:薬価収載】8製品+再生医療等製品(2022年4月20日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

ビンゼレックスはこんな薬

  • IL-17AとIL-17Fを共に阻害する生物学的製剤(抗体薬)
  • コセンティクスやヒュミラと比較して有意に高い治療効果が認められている
  • 維持期は8週毎の投与

 

木元 貴祥
ビンゼレックスはコセンティクスやヒュミラとの直接比較試験があるため、使い分けのヒントになりそうですね。

 

乾癬領域では近年では相次いで新規の生物学的製剤が登場しています。

 

乾癬の生物学的製剤のまとめ記事もありますので、ご参考にしてもらえれば嬉しいです。

【乾癬】生物学的製剤の一覧と作用機序/特徴のまとめ

続きを見る

 

今後は、強直性脊椎炎や体軸性脊椎関節炎に対しても使用可能となりますね!

 

以上、今回は乾癬とビンゼレックスの作用機序・特徴についてご紹介しました。

 

引用文献・資料等

  1. 日本皮膚科学会:乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2022年版)
  2. BE RADIANT 試験:N Engl J Med 2021; 385:142-152
  3. BE SURE試験:N Engl J Med 2021; 385:130-141

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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