新薬承認・薬価収載

【新薬:薬価収載】2製品(2023年12月20日)

2023年12月20日、新薬2製品が薬価収載されました!

 

今回は通常の薬価収載のスケジュール(2月、5月、8月、11月)とは異なり、2製品のみがこのタイミングで収載!

 

レケンビ(レカネマブ)については、年間の市場規模が1500億円を超える可能性がある高額薬剤に該当するとして、通常の薬価算定手続きに先立って中医協で個別に算定方法が議論されていましたね。

 

木元 貴祥
前回の11月には間に合わなかったため、今回のタイミングになったと思われます。

 

その他、厚労省がAMR対策の一環として新たに試行導入した「抗菌薬確保支援事業」の制度を利用した初の薬剤であるフェトロージャ(セフィデロコル)もこのタイミングです!

 

今回は薬価収載の新薬一覧とその算定根拠について紹介していきます。

 

2023年12月20日:薬価収載の2製品

2023年12月20日に薬価収載された新薬一覧は以下の通りです。

製品名
(一般名)
規格 薬価 効能・効果
(簡略)
フェトロージャ点滴静注用
(セフィデロコル)
1g1瓶 20,203円 各種感染症
レケンビ点滴静注
(レカネマブ)
200mg2mL1瓶
500mg5mL1瓶
45,777円
114,443円
アルツハイマー型認知症

 

画像はこちらです。>>高画質で表示

薬価の算定方法

各薬剤の薬価算定方法は2023年12月13日の中医協総会の資料に記載されているため、抜粋してご紹介します。

 

フェトロージャ:類似薬効比較方式(Ⅰ) (レカルブリオ)【加算あり】

フェトロージャは、同じく「各種感染症」に使用するレカルブリオ配合点滴静注用(レレバクタム/イミペネム/シラスタチン)の1日薬価に合わせて算定されました。

算定方式は類似薬効比較方式(Ⅰ)です。

 

また、有用性加算(Ⅰ)(A=35%)が加算されていますね!

 

元々の薬価は1g1瓶 14,965円でしたが、加算(×1.35)の上、以下の薬価に決定しました。

 

  • レカルブリオ配合点滴静注用1.25g1瓶:22,447円(1日薬価:89,788円)
  • フェトロージャ点滴静注用1g:20,203円(1日薬価:121,218円)

 

なお、加算の根拠は以下の通りです。新規作用機序かつ既治療に耐性を示す菌に対しても効果が期待されている点が評価されました。

 

加算の根拠

  • 有用性加算:本剤は初のシデロフォアセファロスポリン系抗菌薬であること、非臨床試験において既存治療薬に非感受性の菌株に対する抗菌効果が示唆されていること等から、有用性加算(Ⅰ)(A=35%)を適用することが適当と判断した。

 

ピーク時の予測販売金額は15億円です。

 

作用機序とエビデンスについては、以下で解説しています。

フェトロージャ(セフィデロコル)の作用機序【CRE】

続きを見る

 

レケンビ:原価計算方式【加算あり】

レケンビは、国内初となる抗アミロイドβ抗体薬のため、同様の効能・効果、薬理作用及び臨床的位置づけを有する既収載品はないことから新薬算定最類似薬はないと判断されました。

よって、算定方式は原価計算方式です。

 

また、有用性加算(Ⅰ)(A=45%)が加算されていますね!原価の開示度が80%以上と高かったことから、加算係数は1でした。

 

木元 貴祥
いつもの加算係数ゼロは回避ですね・・・!

 

その結果、以下の薬価に決定しています。

  • レケンビ点滴静注200mg:45,777円
  • レケンビ点滴静注500mg:114,443円

 

なお、加算の根拠は以下の通りです。新規作用機序である点と、臨床試験での有用性が認められたことが評価されています。

 

加算の根拠

  • 有用性加算:本剤はミクログリアによる食作用を介した可溶性アミロイドβプロトフィブリル除去作用を有する新規作用機序医薬品であること、臨床試験では臨床的に意義のある有効性が示され、既存の治療方法で効果が不十分な患者群においても効果が認められたこと、初めて認知症の進行抑制が認められた薬剤であること等から、有用性加算(Ⅰ)(A=45%)を適用することが適当と判断した。

 

ちなみに、当初算定案に対しては、画期性加算に該当するとの不服申し立てがありました。回答は矢印の通りで、却下されていました。

  • 以下の点を踏まえると、本剤は画期性加算の要件を全て満たすことから、画期性加算に該当する。
    ・アルツハイマー病は「病気の進行が不可逆的で、日常生活に著しい影響を及ぼす疾患」であること、既承認のアルツハイマー病の症状改善薬に臨床症状の進行速度を抑制する薬剤はないことから、加算の要件①-c(a又はbを満たす場合であって、標準的治療法が確立されていない重篤な疾患を適応対象とする)を満たす。
    ・本剤の臨床試験における主要評価項目の結果を踏まえると、対象疾患の病期の進展や重症度の進行を抑制することから、加算の要件①-d(a又はbを満たす場合であって、示された新規の作用機序が臨床上特に著しく有用であると薬価算定組織が認める)を満たす。
    ・本剤の臨床試験において、本剤休薬後も効果が持続し、かつ、日本の医療環境下で標準治療に対してQALYを増加させるとともに医療費や公的介護費等の総費用を減少させることが示唆されたこと等から、加算の要件②-1a(臨床上重要な有効性指標において類似薬に比した高い有効性が示される)を満たす。

↓↓↓

  • 以下の点を踏まえると、加算の要件①-c/d、②-1aに該当せず、画期性加算の要件を満たさない
    ・アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制の適応を有する薬剤が承認・収載されていること、本剤の効能・効果はアルツハイマー病による軽度認知障害及び軽度の認症の進行抑制であり、重度の進行度の範囲を対象としていないこと等から、加算の要件①-cには該当しない。
    ・本剤の臨床試験において、認知症の進行抑制効果が認められたことについては、加算の要件③-e(上記の他、特に著しい治療方法の改善が示されていると薬価算定組織が認める)で評価していることから、加算の要件①-dには該当しない。・本剤休薬後の効果の維持については、臨床試験での示唆に留まり、仮に評価するとしても加算の要件③-eの「治療方法の改善」での評価に含まれると考えられること、また、医療費や公的介護費等の総費用に係る主張については、これまで薬価収載において評価の対象としておらず、具体的な評価・分析等を行った上で臨床上の有用性を評価し、薬価に反映させることは困難であり、現時点では企業の主張する内容の妥当性が判断できないことから、加算の要件②-1aには該当しない。

 

木元 貴祥
画期性加算は70~120%の加算ですからねー。残念でした。

 

ピーク時の予測販売金額は986億円です。

 

作用機序・エビデンスについては、以下の記事で解説しています。

レケンビ(レカネマブ)の作用機序【アルツハイマー型認知症】

続きを見る

 

なお、最適使用推進ガイドラインの対象のため、施設要件・医師要件・患者要件が設けられています。

かなり厳しい要件のため、必ず最適使用推進ガイドラインを確認するようにしましょう。

 

あとがき

今回は通常と異なるスケジュールでの薬価収載でした。

 

レケンビについては、承認前から非常に話題となっていて、特に薬価がどうなるのかが焦点でした。

費用対効果評価についても、既存のルールに沿った上で、特例的な対応を行うことが適切と判断されています。

 

木元 貴祥
今後の動向も要チェックですね!

 

以上、今回は2023年12月20日に薬価収載された新薬2製品についてご紹介しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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