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2021年6月23日、「各種感染症」を対象疾患とするレカルブリオ配合点滴静注用が承認されました!
MSD|ニュースリリース
基本情報
製品名 | レカルブリオ配合点滴静注用 |
一般名 | レレバクタム水和物/イミペネム水和物/シラスタチンナトリウム |
製品名の由来 | 特になし |
製造販売 | MSD(株) |
効能・効果 | <適応菌種> 本剤に感性の大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、 エンテロバクター属、セラチア属、緑膿菌、アシネトバクター属 ただし、カルバペネム系抗菌薬に耐性を示す菌株に限る <適応症> 各種感染症 |
用法・用量 | 通常、成人には1回1.25g(レレバクタムとして250mg/イミペネムとして500mg/ シラスタチンとして500mg)を1日4回30分かけて点滴静注する。 |
収載時の薬価 | 22,447円 |
有効成分のイミペネムはカルバペネム系抗菌薬です。既にイミペネムとシラスタチンの配合剤はチエナム点滴静注用などが承認・販売されています。
細菌の分類と耐性機序、そしてレカルブリオの作用機序とエビデンスについて紹介します。
細菌の構造と分類(グラム染色)
細菌はヒトを含む真核生物と比較して非常に単純な構造から成り立っています。
主には、鞭毛、莢膜、細胞壁、細胞膜、細胞質などから構成されており、DNAは核膜に覆われていません。(真核生物のDNAは核膜に覆われている)
特に細胞壁の合成では「ペニシリン結合タンパク質(PBP)」が関与しており、細菌の細胞壁内に存在していますが、これはヒトには存在していません。
また、細菌を分類する手法としてグラム染色が知られており、以下に大別されます。
- グラム陽性菌(例:黄色ブドウ球菌、MRSA)
- グラム陰性菌(例:大腸菌)
-
シベクトロ(テジゾリド)の作用機序と副作用【MRSA】
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グラム陽性菌では細胞壁が厚いため色素が抜けずに染色されたままになります。
一方、グラム陰性菌は細胞壁が薄いため、染色しても色素が抜けてしまいます。
臨床的にもグラム陽性か陰性かによって薬剤の感受性や耐性機序等が異なるため、重要な分類法となります。
カルバペネム系抗菌薬の耐性機序(β-ラクタマーゼ)とMDRP
細菌感染に使用する代表的な抗菌薬(抗生物質)としてカルバペネム系抗菌薬があり、幅広い抗菌スペクトラムを有しているのが特徴です」。
作用機序としては、細菌のPBPに結合して細胞壁合成を阻害することで殺菌的に作用すると考えられていますね。
また、カルバペネム系抗菌薬の耐性に関わる因子として「β-ラクタマーゼ」が知られています。
これは細菌が産生する物質で、ペニシリン系抗菌薬・セフェム系抗菌薬・カルバペネム系抗菌薬を分解して活性を低下させてしまいます(耐性の獲得)。
特に臨床上、院内感染等で問題となるのが多剤耐性緑膿菌(MDRP:Multi Drug Resitant Psedomonas aeruginosa)でしょう。緑膿菌はグラム陰性菌で、元々薬剤耐性を起こしやすい菌です。1)
- カルバペネム系抗菌薬
- キノロン系抗菌薬
- アミノグリコシド系抗菌薬
に耐性を生じやすく、これら3つ全てに耐性獲得した緑膿菌がMDRPです。
この中でもカルバペネム系抗菌薬の耐性には前述のβ-ラクタマーゼが強く関与しています。
レカルブリオ配合点滴静注用の作用機序と特徴
レカルブリオ配合点滴静注用は以下を配合した薬剤です。
- イミペネム:カルバペネム系抗菌薬
- シラスタチン:腎DHP-Ⅰ(デヒドロペプチダーゼ-Ⅰ)阻害薬
- レレバクタム:β-ラクタマーゼ阻害薬
カルバペネム系抗菌薬のイミペネムは細菌の細胞壁合成に関与しているペニシリン結合タンパク質(PBP)を阻害することで細胞壁合成を阻害します。
また、イミペネムは腎DHP-Ⅰと呼ばれる酵素によって分解されるため、これを阻害するシラスタチンも配合されています。同時にイミペネムの腎毒性軽減効果も期待されていますよ!
元々、イミペネムはβ-ラクタマーゼで分解されにくい薬剤なのですが、耐性菌はしばしばより強力なβ-ラクタマーゼを産生します。これを阻害するのがレレバクタムです。
以上より、カルバペネム系抗菌薬に耐性を有している細菌に対してもイミペネムの活性が維持されて抗菌作用を発揮すると考えられます。
β-ラクタマーゼのクラス
もう少し詳しい話をすると、β-ラクタマーゼの中にも主に3つのクラスがあります。
- クラスA:ESBL(Extended Spectrum β-lactamase:基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ)など
- クラスB:カルバペネマーゼ、メタロ-β-ラクタマーゼなど
- クラスC:AmpCなど
レレバクタムはクラスAとクラスCを阻害することが示されていますが、クラスBは阻害しません。2)
エビデンス紹介:国内第Ⅲ相試験
根拠となった臨床試験は多数ありますが、日本人の試験をご紹介します。2)
本試験は複雑性腹腔内感染症(cIAIs)または複雑性尿路感染症(cUTI)を有し、注射剤による抗菌薬治療が必要な入院中の日本人患者さんを対象に、レカルブリオ投与による有効性と安全性を検討した試験です。
主要評価項目は以下の通りとされました。
- cIAIs:治療終了時の臨床効果(有効率)
- cUTI:治療終了時の微生物学的効果(消失率)
治療終了時の結果 | 臨床効果 | 微生物学的効果 |
cIAIs | 85.7% | 85.7% |
cUTI | 100% | 100% |
副作用
重大な副作用として、
- 中枢神経症状:痙攣、呼吸停止、意識障害、意識喪失、呼吸抑制、錯乱、不穏等
- ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
- 中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(いずれも頻度不明)
- 重篤な肝障害
- 気管支痙攣、間質性肺炎、PIE症候群(いずれも頻度不明)
- 重篤な血液障害
- 重篤な腎障害
- 偽膜性大腸炎(頻度不明)
- 血栓性静脈炎(頻度不明)
が挙げられていますので注意が必要です。
用法・用量
通常、成人には1回1.25g(レレバクタムとして250mg/イミペネムとして500mg/シラスタチンとして500mg)を1日4回30分かけて点滴静注します。
収載時の薬価
収載時(2021年8月12日)の薬価は以下の通りです。
- レカルブリオ配合点滴静注用:22,447円
算定根拠等については以下をご確認ください。
-
【新薬:薬価収載】15製品+再生医療等製品(2021年8月12日)
続きを見る
まとめ・あとがき
レカルブリオはこんな薬
- カルバペネム系抗菌薬のイミペネムと、DHP-Ⅰ阻害薬のシラスタチン、β-ラクタマーゼ阻害薬のレレバクタムを配合した注射剤
- レレバクタムはクラスA/Cのβ-ラクタマーゼを阻害する
- カルバペネム系抗菌薬耐性菌に使用する
これまでカルバペネム系抗菌薬に耐性を示した場合、治療選択肢が限られていました。レカルブリオは新規のβ-ラクタマーゼ阻害薬のため、耐性菌に対しても効果が期待されています!
多剤耐性菌は接触感染によって院内で広がるため、まずは接触感染を抑えるのが重要です。また、不必要な抗菌薬の乱用にも注意したいですね!
以上、今回は細菌の分類と耐性機序、そしてレカルブリオの作用機序とエビデンスについて紹介しました。
引用文献・資料等
- 国立感染症研究所|薬剤耐性緑膿菌感染症とは
- 国内第Ⅲ相試験:J Infect Chemother. 2021 Feb;27(2):262-270.
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