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パドセブ(エンホルツマブベドチン)の作用機序【尿路上皮がん】

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2024年9月24日パドセブ(エンホルツマブベドチン)の「尿路上皮がん」に対して、初回治療におけるキイトルーダ(ペムブロリズマブ)との併用療法が承認されました!

アステラス製薬|ニュースリリース

基本情報

製品名 パドセブ点滴静注用20mg/30mg
一般名 エンホルツマブ ベドチン
製品名の由来 PADCEV=Antibody-Drug Conjugate(抗体薬物複合体)+
Enfortumab Vedotin(エンホルツマブ ベドチン)
製造販売 アステラス製薬(株)
効能・効果 がん化学療法後に増悪した根治切除不能な尿路上皮がん
用法・用量 3投1休の4週1サイクル
収載時の薬価 20mg:61,276円
30mg:99,609円
発売日 30mg:2021年11月30日新発売(HP
20mg:2023年8月8日新発売

 

パドセブは2021年9月27日に、尿路上皮がんの三次治療以降に使用する新規のADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)として承認されました。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
今後は初回治療(一次治療)として使用可能となりましたね。

 

今回は尿路上皮がんとパドセブ(エンホルツマブベドチン)の作用機序・特徴、エビデンスについて解説していきます。

 

尿路上皮がんと治療

腎臓から続く「腎盂→尿管→膀胱→尿道」のことを尿路と呼んでいますが、ここは上皮粘膜に覆われています。そして、尿路の上皮粘膜から発生するがんが尿路上皮がんです。

尿路上皮がんのうち、最も頻度が高いのが膀胱がんであり、全体の約95%を占めています。

 

また、尿路上皮がん細胞のほとんどは「ネクチン-4」と呼ばれる細胞接着分子を発現していることが知られています。

 

初期の尿路上皮がんの場合、開腹手術やTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)などによって根治が可能ですが、発見時に他の臓器に転移のある場合(StageⅣ)、抗がん剤(化学療法)による治療が基本です。1)

 

初回の抗がん剤治療としては治療選択肢が少なく、日本ではゲムシタビン+シスプラチン療法(GC療法)を4~6サイクル行います。

未承認ですが、保険償還可能なパクリタキセル+カルボプラチンが行われることもある

 

GC療法を4~6サイクル行った後は、これまでは経過観察もしくはゲムシタビン単剤による治療が行われていましたが、2021年には維持治療としてのバベンチオ(一般名:アベルマブ)が承認されています。

【効能効果追加】4製品(2021年1月24日)

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木元 貴祥
木元 貴祥
バベンチオは免疫チェックポイント阻害薬で、抗PD-L1抗体薬ですね!他疾患ですが、作用機序はこちら↓↓
バベンチオ/キイトルーダ+インライタの作用機序【腎細胞がん】

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パドセブは初回治療として免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダと併用することで、白金製剤を含む抗がん剤治療よりも予後延長効果が示されたことから、新たな治療選択肢となります!2)

 

なお、現在キイトルーダは二次治療において単剤として承認されていますね。

 

元々、パドセブは白金製剤と免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体薬/抗PD-L1抗体薬)による治療歴のある患者さんに対して効果が期待されていたため、三次治療以降の治療選択肢として登場しました。

 

パドセブ(エンホルツマブベドチン)の構造・作用機序

パドセブは尿路上皮がん細胞のネクチン-4を特異的に認識する抗体のエンホルツマブに、抗がん剤のモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を結合させた構造を有しています。

パドセブ(エンホルツマブベドチン)の構造

 

MMAEは微小管(チューブリン)阻害作用を有していて、強力な抗腫瘍活性を持つ抗がん剤ですが、そのまま体内に投与されると、正常細胞も傷つけてしまうため、副作用が強く発現してしまいます。

 

そこで、尿路上皮がん細胞を特異的に認識する抗体であるエンホルツマブに、抗がん剤のMMAEを結合させることで、抗がん剤ががん細胞のみに作用するよう工夫した薬剤がパドセブです!

 

木元 貴祥
木元 貴祥
エンホルツマブは、いわゆる「薬の運び屋」みたいなイメージですね♪

 

このように抗体医薬品と抗がん剤を結合させた医薬品を「ADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)」と呼んでいて、以下の薬剤が登場してきています。ベドチン人気!(笑)

トロデルビ(サシツズマブ ゴビテカン)の作用機序【乳がん】

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パドセブは尿路上皮がん細胞にある「ネクチン-4」を認識して結合します。その後、パドセブはがん細胞内に取り込まれ、抗がん剤のMMAEが遊離されます。

そしてMMAEは白血病細胞内の微小管(チューブリン)を阻害し、白血病細胞の増殖を抑制するといった作用機序です!

パドセブ(エンホルツマブベドチン)の作用機序:ADCによるターゲティング

 

エビデンス紹介(初回治療):KEYNOTE-A39試験(EV-302試験)

初回治療の根拠となった臨床試験をご紹介します(KEYNOTE-A39試験)。2)

本試験は未治療の局所進行・転移性尿路上皮がん患者さんを対象に、白金製剤を含む化学療法(ゲムシタビン+シスプラチンまたはカルボプラチン)とパドセブ+キイトルーダを比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)」と「全生存期間(OS)」とされ、結果は以下の通りでした。

パドセブ+キイトルーダ群 化学療法群
PFS中央値 12.5か月 6.3か月
HR=0.45(95%CI:0.38-0.54)
p<0.001
全生存期間中央値 31.5か月 16.1か月
HR=0.47(95%CI:0.38-0.54)
p<0.001

 

従来の白金製剤を含む化学療法と比較して、パドセブ+キイトルーダでは有意な生存期間の延長が示されました!!

 

エビデンス紹介(三次治療以降):EV-301試験

三次治療以降の根拠となった臨床試験をご紹介します(EV-301試験)。

本試験はプラチナ製剤を含む化学療法および、抗PD-1抗体もしくは抗PD-L1抗体による治療歴のある尿路上皮がん患者さんを対象に、パドセブと抗がん剤単独(ドセタキセル or パクリタキセル or ビンフルニン)を比較する国際共同第Ⅲ相臨床試験です。3)

 

主要評価項目は「全生存期間」とされ、結果は以下の通りでした。

パドセブ群 抗がん剤単独群
全生存期間中央値 12.88か月 8.97か月
HR=0.70(95%CI:0.56-0.89)
P=0.001

 

抗がん剤単独と比較して有意に生存期間の延長が示されていますね!すごい!

 

副作用

30%以上に認められる副作用として、疲労、食欲減退、脱毛症(45.3%)、そう痒症などが報告されています。

 

また、重大な副作用として、

  • 重度の皮膚障害:中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)(0.4%)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群:SJS)(頻度不明)等
  • 高血糖(9.8%)
  •  末梢性ニューロパチー(55.7%):末梢性感覚ニューロパチー(43.3%)、末梢性運動ニューロパチー(4.1%)、筋力低下(2.6%)、歩行障害(1.4%)等
  • 骨髄抑制:好中球減少(14.0%)、貧血(12.5%)、白血球減少(5.0%)、血小板減少(3.9%)、リンパ球減少(2.7%)、発熱性好中球減少症(0.8%)等
  • 感染症(14.3%)
  • 腎機能障害:急性腎障害(1.5%)等
  • 間質性肺疾患(3.4%):間質性肺疾患(0.4%)、肺臓炎(2.0%)等

が挙げられていますので特に注意が必要です。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
いずれも減量・休薬基準が設けられていますね。

 

収載時の薬価

収載時(2021年11月25日)の薬価は以下の通りです。

  • パドセブ点滴静注用30mg:99,609円

 

算定根拠については以下をご参考ください。

【新薬:薬価収載】12製品+再生医療等製品(2021年11月25日)

続きを見る

 

20mg製剤は、2023年5月24日に薬価収載されました。

  • パドセブ点滴静注用20mg:61,276円

 

まとめ・あとがき

パドセブはこんな薬

  • ADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)
  • ネクチン-4を選択的に認識するエンホルツマブに抗がん剤のMMAEを結合
  • 白金製剤と抗PD-1抗体/抗PD-L1抗体の既治療の尿路上皮がんで効果が期待できる
  • 今後は尿路上皮がんの初回治療としてキイトルーダと併用で用いられる

 

これまで尿路上皮がんは治療選択肢が少なかったのですが、近年、キイトルーダやバベンチオなどの免疫チェックポイント阻害薬も開発されました!

パドセブも新規ADCとして期待できるのではないでしょうか。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
今後は初回治療としてキイトルーダとの併用療法が使用可能となりましたので、非常に楽しみですね!

 

以上、今回は尿路上皮がんとパドセブ(エンホルツマブベドチン)の作用機序・特徴について解説しました!

 

引用文献・資料等

  1. がん情報サービス|膀胱がん
  2. KEYNOTE-A39試験:N Engl J Med 2024;390:875-888
  3. EV-301試験:N Engl J Med 2021; 384:1125-1135.

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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