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2026年9月16日、「白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣がん」を対象疾患とするエラヒア点滴静注(ミルベツキシマブ ソラブタンシン)が承認されました!
武田薬品工業|ニュースリリース
基本情報
| 製品名 | エラヒア点滴静注100mg |
| 一般名 | ミルベツキシマブ ソラブタンシン(遺伝子組換え) |
| 製品名の由来 | 海外に準じた |
| 製造販売 | 武田薬品工業(株) |
| 効能・効果 | 葉酸受容体α陽性の白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣がん |
| 用法・用量 | 3週間毎に点滴静注(記事内参照) |
| 収載時の薬価 | |
| 発売日 |
葉酸受容体α(FRα)を標的とする抗体薬に、微小管阻害薬のメイタンシノイド(DM4)を結合させた国内初のADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)ですね!

今回は卵巣がんとハイツエキシン(リソバリシブ)の作用機序についてご紹介します。
卵巣がんと治療
卵巣がんは、卵巣に発生するがんです。
新たに診断される人数は、1年間に10万人あたり14.3人と言われています。
また、40歳代から増加を始め、50歳代前半から60歳代前半でピークを迎え、その後は次第に減少します。
卵巣がんの約10%は遺伝的要因によるものと考えられており、相同組換え修復異常(HRD:homologous recombination deficiency)の中でもBRCA遺伝子変異があると、発症する危険性を高めることがわかっています。
参考:BRCAは“ビーアールシーエーと読みます。

また、卵巣がんは以下の主な組織型に分類されますが、多くは漿液性がんです。1-2)
- 漿液性がん
- 明細胞がん
- 類内膜がん
- 粘液性がん
また、多くのがん細胞(特に卵巣がん)の表面には「FRα:Folate receptor alpha(葉酸受容体α)」と呼ばれる受容体が過剰に発現していることが知られています(卵巣がんの約90%に発現)。
FRαは細胞が葉酸を取り込むための受容体ですが、正常細胞にはほとんどなく、がん細胞に特異的に発現しているようです。
初期治療
卵巣がん治療の基本は手術です。1)
まずは手術によって、がんの拡がり具合を確認するとともに、がんを手術で取り除きます。
術後には白金(プラチナ)系薬剤のカルボプラチンと、タキサン系薬剤のパクリタキセルを併用した抗がん剤治療を4~5か月程行うのが一般的です。
-

タキソールとタキソテールの作用機序と副作用【抗がん剤】
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また、上記にアバスチン(ベバシズマブ)を併用することもあります。(以下は大腸がんの記事)
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アバスチン(ベバシズマブ)の作用機序とバイオシミラー【大腸がん】
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BRCA遺伝子変異によっては、ゼジューラ(ニラパリブ)やリムパーザ(オラパリブ)といったPARP阻害薬を使用することもあります(変異陰性でも使用することもある)。
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ゼジューラ(ニラパリブ)の作用機序【卵巣がん】
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再発時の治療
再発卵巣がんでは、初回の抗がん剤治療完了から6カ月以上経過している場合、もう一度、白金(プラチナ)系薬剤を含んだ抗がん剤治療が行われます。1-2)
例えば、
などの治療を4~6カ月程行います。
その後は、基本的には無治療で経過観察となりますが、経過観察中にがんが増悪してくることもしばしばありました。
そのため、最新のガイドラインでは抗がん剤治療後には以下の治療による維持療法が推奨されています。1)
- アバスチン(ベバシズマブ)による維持療法(推奨の強さ1)
- 抗がん剤で奏効した場合には、リムパーザもしくはゼジューラによる維持療法(推奨の強さ1)
一方、初回の抗がん剤治療完了から6カ月未満で再発した場合、プラチナ抵抗性再発卵巣がん(PROC:Platinum-Resistant Ovarian Cancer)と判断されます。
PROCに対しては単剤化学療法(パクリタキセル、ペグ化リポソームドキソルビシン、トポテカン等)が用いられてきましたが、効果は限定的で予後は不良でした。

エラヒア(ミルベツキシマブ ソラブタンシン)の構造・作用機序
エラヒアは卵巣がん細胞のFRαを特異的に認識する抗体のミルベツキシマブに、抗がん剤のメイタンシノイド(DM4)を結合させた構造を有しています。

DM4は微小管(チューブリン)阻害作用を有していて、強力な抗腫瘍活性を持つ抗がん剤ですが、そのまま体内に投与されると、正常細胞も傷つけてしまうため、副作用が強く発現してしまいます。
そこで、がん細胞を特異的に認識する抗FRα抗体であるミルベツキシマブに、抗がん剤のDM4を結合させることで、がん細胞のみに作用するよう工夫した薬剤がエラヒアです!

このように抗体医薬品と抗がん剤を結合させた医薬品を「ADC(Antibody Drug Conjugate:抗体薬物複合体)」と呼んでいて、以下の薬剤が登場してきています。
- マイロターグ(一般名:ゲムツズマブ オゾガマイシン):造血器腫瘍
- カドサイラ(一般名:トラスツズマブ エムタンシン):乳がん
- エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン):乳がん
- トロデルビ(一般名:サシツズマブ ゴビテカン):乳がん
- パドセブ(一般名:エンホルツマブベドチン):尿路上皮がん
- アドセトリス(一般名:ブレンツキシマブ ベドチン):造血器腫瘍
- ベスポンサ(一般名:イノツズマブオゾガマイシン):造血器腫瘍
- ポライビー(一般名:ポラツズマブ ベドチン):造血器腫瘍
-

エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)の作用機序【乳/胃/肺がん】
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エラヒアは卵巣がん細胞にある「FRα」を認識して結合します。その後、エラヒアはがん細胞内に取り込まれ、抗がん剤のDM4が遊離されます。
そしてDM4はがん胞内の微小管(チューブリン)を阻害し、増殖を抑制するといった作用機序です!

エビデンス紹介:MIRASOL試験
根拠となった臨床試験はいくつかありますが、代表的な臨床試験(MIRASOL試験)をご紹介します。3)
本試験は、FRα高発現のPROC患者さんを対象に、エラヒアと治験責任医師選択の単剤化学療法(パクリタキセル、ペグ化リポソームドキソルビシン、トポテカン)を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)とされ、結果は以下の通りでした。
| エラヒア群 | 単剤化学療法群 | |
| PFS中央値 | 5.62か月 | 3.98か月 |
| P<0.001 | ||
| 生存期間中央値 | 16.46か月 | 12.75か月 |
| HR=0.67(95%CI:0.50-0.89) P=0.005 | ||
これまで治療法が限られていたプラチナ抵抗性再発卵巣がん(PROC)に対して、エラヒアによって生存期間の有意な延長が示されました!!
用法・用量
通常、成人にはミルベツキシマブ ソラブタンシン(遺伝子組換え)として1回6mg/kg(調整理想体重)を3週間間隔で点滴静注します(患者の状態により適宜減量)。
ただし、1回の総投与量は以下の式により求められる調整理想体重に基づく用量とされています。
- 調整理想体重(kg)=理想体重(kg)+0.4×[実体重(kg)-理想体重(kg)]
- 女性の理想体重(kg)=0.9×身長(cm)-92

副作用
10%以上に認められる副作用として、霧視(38.7%)、ドライアイ(25.9%)、羞明、視力低下、好中球減少症、悪心(24.3%)、下痢(23.5%)、便秘、腹痛、食欲減退、疲労(21.8%)、無力症などが報告されています。
重大な副作用として、
- 角膜障害:角膜症(28.8%)、角膜炎(6.2%)、点状角膜炎(4.9%)等
- 間質性肺疾患(12.3%)
- 末梢神経障害:末梢性ニューロパチー(17.3%)、末梢性感覚ニューロパチー(10.7%)等
- Infusion reaction(6.2%)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
眼関連の副作用が特徴的ですね。
視力低下を伴う角膜障害を含む眼障害があらわれ、失明に至る可能性があることから、眼科医との連携のもとで使用し、本剤の投与開始前に眼科医による診察を実施することとされています。
収載時の薬価
現時点では薬価未収載です。
まとめ・あとがき
エラヒアはこんな薬
- FRα陽性のプラチナ製剤抵抗性再発卵巣がんに用いる、卵巣がん領域初のADC
- FRαを目印に抗がん剤DM4をがん細胞に届け、微小管を阻害して細胞死を誘導する
- 眼障害に注意(点眼管理・眼科連携が重要)
プラチナ製剤抵抗性の再発卵巣がんは、長らく有効な治療選択肢が乏しく予後不良の領域でした。
エラヒアは、FRαという“がん細胞の目印”を利用したADCとして、この10年で初めてPFSとOSの両方を有意に延長した薬剤です。

以上、今回は卵巣がんとエラヒア(ミルベツキシマブ ソラブタンシン)の作用機序・エビデンスについてご紹介しました!
引用文献・資料等
- 卵巣がん・卵管癌・腹膜癌治療ガイドライン 2025年版
- がん情報サービス|卵巣がん・卵管がん
- MIRASOL試験:N Engl J Med 2023;389:2162-2174
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