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2024年6月24日、アレモ皮下注(一般名:コンシズマブ)の「先天性血友病患者における出血傾向の抑制」に関する適応拡大が承認されました!
ノボ ノルディスクファーマ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | アレモ皮下注15mg/60mg/150mg/300mg |
一般名 | コンシズマブ(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | なし |
製造販売 | ノボ ノルディスクファーマ(株) |
効能・効果 | 先天性血友病患者における出血傾向の抑制 |
用法・用量 | 通常、12 歳以上の患者には、1日目に負荷投与として コンシズマブ(遺伝子組換え)1mg/kgを皮下投与する。 2日目以降は維持用量として1日1回、0.20mg/kgを皮下投与する。 なお、0.20mg/kg の投与を開始後、コンシズマブの血中濃度や 患者の状態により、0.15mg/kgに減量又は0.25mg/kgに増量できる。 |
収載時の薬価 | 皮下注15mg:249,546円 皮下注60mg:844,727円 皮下注150mg:1,893,013円 |
発売日 | 2024年2月16日(HP) |
アレモは、2023年9月25日に「インヒビターを保有する先天性血友病患者における出血傾向の抑制」を対象疾患として承認されました。今後は、インヒビター非保有の血友病に対しても使用可能てすね。
それに伴い、現在の効能・効果の「血液凝固第Ⅷ因子又は第Ⅸ因子に対するインヒビターを保有する先天性血友病患者における出血傾向の抑制」から「血液凝固第Ⅷ因子又は第Ⅸ因子に対するインヒビターを保有する」が削除されました。
血友病には血友病Aと血友病Bがあり、いずれも血液凝固因子の補充が基本です。しかし、補充療法に対してインヒビター(抗体)が産生されることがしばしばあり、その場合、補充療法が無効になってしまうという問題点があります。
アレモは血友病A/Bを問わず、インヒビター保有/非保有の血友病に対して出血傾向を抑制することができる新薬です。
今回は止血のメカニズムと先天性血友病、そしてアレモ(コンシズマブ)の作用機序とエビデンスついてご紹介します。
止血のメカニズム
我々が怪我などをした際に出血すると、体内では血を止めようとする機構(止血機構)が働きます。
止血には、血小板が関わる一次止血と、凝固因子が関わる二次止血があります。
出血が起こると、まずは血中に存在する血小板が活性化し、損傷部位に集まってきて血栓(一次血栓)を形成します。
これを一次止血と呼びますが、これだけでは簡単に剥がれてしまいます。
次いで、一次止血を補強する目的で二次止血が行われます。
二次止血では一次血栓の周囲を「フィブリン」と呼ばれるタンパク質で覆い、強固な止血血栓(二次血栓)を完成させます。
二次血栓に関与するフィブリンは様々な「凝固因子」が血液凝固反応(カスケード)を引き起すことで生成されます。
二次止血時の血液凝固反応(カスケード)とは
血液凝固反応では、全部で14種類の凝固因子が活性化することで引き起こされます。
一般的に凝固因子はローマ数字(例:Ⅴ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ)で表され、活性化した凝固因子はローマ数字の後ろに“a”を付けて(例:Ⅴa、Ⅶa、Ⅸa、Ⅹa)表されます。
体内の血液凝固反応は、反応の引き金となる因子の違いから「外因系」と「内因系」に分けられているものの、最終的には第Ⅹ因子を活性化(Ⅹa)し、トロンビン→フィブリンが産生されることで二次血栓を形成します。
外因系と内因系は共に第Ⅹ因子を活性化することができますが、その強さは内因系の方が約50倍強い1)と言われているため、外因系は補助的な役割です。
この理由として、外因系に存在するTFPI(Tissue Factor Pathway Inhibitor:組織因子経路インヒビター)の関与が知られています。TFPIは第Ⅶa因子と第Ⅹa因子に結合することで、その活性化を阻害しているタンパク質です。
血友病とは
血友病は先天的に血液凝固因子が欠損している疾患です。
第Ⅷ因子が欠損している場合を「血友病A」、第Ⅸ因子が欠損している場合を「血友病B」と分類しています。
血友病は染色遺体の伴性劣性遺伝のため、男性の患者がほとんどを占めます。
国内での発症率は男児出生1万人に約1人で、現在では6,000名程の患者さんがいらっしゃると推測されています。
血友病の病態と症状
血友病では血液凝固因子が欠損していることから、二次止血における血液凝固反応(カスケード)がうまく働きません。
その結果、二次止血に重要な「フィブリン」が生成されないため、様々な出血の症状が現れます。
特徴的な出血症状は、関節内や筋肉内の出血(深部出血)です。その他、抜歯後に血が止まらなかったり、頭蓋内で出血することもあります。
血友病の治療
血友病の治療は、欠損している血液凝固因子を補充する治療が基本です。
血友病による出血を予防するため、上記因子の「定期補充療法」を行います。また、出血してしまった際には適宜、「オンデマンド補充療法」を行います。
参考オンデマンド(on-demand)とは、「必要に応じて」を意味します。
血液凝固因子製剤は在宅でも安全に静脈内投与ができることから、上記の定期補充療法を中心として、出血時には必要に応じてオンデマンド補充療法を行うことが一般的です。
最近では補充療法以外の治療法として、バイスペシフィック抗体(二重特異性抗体)のヘムライブラ(エミシズマブ)が血友病Aの治療薬として使用されることが多くなってきました。
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ヘムライブラ(エミシズマブ)の作用機序と二重特異性抗体【血友病A】
続きを見る
今後、アレモは血友病A/Bを問わず、初回治療から使用可能となりますね!
定期補充療法のデメリット(インヒビターの出現)
定期補充療法は、出血を予防するために常に体内に一定量の凝固因子を存在させておく必要があります。
従って、血中濃度を一定量維持するため、週に3回程投与する必要があります。最近では半減期を延長し、週に1回の投与で治療が可能な製剤もあります。
また、定期補充療法を繰り返していると、補充している凝固因子を「異物(非自己)」と認識し、凝固因子に対して抗体が産生されてしまうことがります。
このような抗体のことを「インヒビター」と呼び、血友病A患者さんの約30%、血友病B患者さんの約1~3%に認められます。
インヒビターが出現してしまうと、当然、補充した凝固因子が働くことができないため、止血能力が失われてしまいます。
インヒビターが出現してしまった場合の治療法には「インヒビター中和療法」や「バイパス止血療法」がありますが、選択肢は限られていました。
今回ご紹介するアレモは、血友病A・血友病Bによらず、インヒビターを保有する血友病患者さんに対して、出血傾向の抑制効果が期待されている薬剤です。
アレモ(コンシズマブ)の作用機序:抗TFPI抗体薬
インヒビターを保有している場合、内因系の血液凝固反応はほぼ停止してしまっている状態です。つまり、血友病Aでは第Ⅷa因子を産生することができず、血友病Bでは第Ⅸa因子を産生することができない状態になっています。
そこで、外因系の経路の登場です。外因系ではTFPIによってその活性化が抑制されていましたが、アレモはTFPIを選択的に阻害するモノクローナル抗体薬です。2)
TFPIの働きが抑制されることで、外因系の血液凝固反応が活性化し、第Ⅶa因子による第Ⅹa因子の産生が促進されます。その結果、フィブリンの産生も促進することから、二次止血が正常に働くことができるようになります。
インヒビター非保有の血友病に対しても、上記の作用機序で凝血反応を回復させることが可能です。
インヒビター保有血友病のエビデンス紹介:Explorer 7試験
インヒビター保有の血友病の根拠となった臨床試験(Explorer 7試験)をご紹介します。3)
本試験は、インヒビターを保有する血友病A/Bの患者さんを対象に、アレモによる予防投与有り群と無し群を比較する第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「治療を要する自然出血および外傷性出血の年間回数」とされ、結果は以下の通りでした。
アレモ予防投与有り | アレモ予防投与無し | |
治療を要する自然出血および 外傷性出血の年間回数 |
1.7回 | 11.8回 |
P<0.001 |
なお、インヒビター非保有の血友病の根拠となった臨床試験は、Explorer 8試験です。4)
現時点では文未公表ですが、アレモの予防投与によって、出血リスクの低減が認められています。
用法・用量、在宅自己注射
通常、12 歳以上の患者には、1日目に負荷投与としてコンシズマブ(遺伝子組換え)1mg/kgを皮下投与し、2日目以降は維持用量として1日1回、0.20mg/kgを皮下投与します。
なお、0.20mg/kg の投与を開始後、コンシズマブの血中濃度や患者の状態により、0.15mg/kgに減量又は0.25mg/kgに増量できます。
在宅自己注射も可能です。
副作用
5%以上に認められる副作用として、注射部位反応(注射部位紅斑、注射部位蕁麻疹、注射部位血腫、注射部位そう痒感、注射部位内出血及び注射部位腫脹等)(16.2%)、プロトロンビンフラグメント1・2増加などが報告されています。
重大な副作用としては、
- ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)
- 血栓塞栓性事象(1.1%)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
収載時の薬価
収載時(2023年11月22日)の薬価は以下の通りです。
- アレモ皮下注15mg:249,546円
- アレモ皮下注60mg:844,727円
- アレモ皮下注150mg:1,893,013円
算定根拠については、以下の記事で解説しています。
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【新薬:薬価収載】13製品(2023年11月22日)
続きを見る
まとめ・あとがき
アレモはこんな薬
- 国内初の抗TFPI抗体薬
- TFPIを阻害することで外因系を活性化し、二次止血を促進させる
- 1日1回の皮下注投与
- インヒビター保有/非保有、血友病A/Bを問わず効果が期待されている
血友病は血液凝固因子の補充が基本です。しかし、補充療法に対してインヒビターが産生されることがしばしばあり、その場合、補充療法が無効になってしまうという問題点がありました。
アレモは血液凝固反応のうち、内因系とは無関係な外因系のカスケードを促進させるため、血友病A・血友病Bを問わず、インヒビターを保有する血友病に対して出血傾向を抑制することができますね。
今後はインヒビター非保有の血友病に対しても使用が広がりますね。
近年、血友病領域では新薬の開発が活発化していますので、今後の治療開発にも期待しましょう!
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ヘムライブラ(エミシズマブ)の作用機序と二重特異性抗体【血友病A】
続きを見る
以上、今回は止血のメカニズムと先天性血友病、そしてアレモ(コンシズマブ)の作用機序等についてご紹介しました。
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