11.血液・造血器系

エイフスチラ(ロノクトコグ)の作用機序と副作用【血友病A】

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厚労省は2017年9月27日、「血液凝固第Ⅷ因子欠乏患者における出血傾向の抑制」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品のエイフスチラ静注用250、同500、同1000、同1500、同2000、同2500、同3000(一般名:ロノクトコグアルファ(遺伝子組換え))を承認しました。

製薬会社

  • 製造販売(輸入):CSLベーリング(株)

 

「血液凝固第Ⅷ因子欠乏患者」とは、いわゆる「血友病A」のことです。

今回は止血のメカニズムと血友病、そしてエイフスチラ(ロノクトコグ)の作用機序についてご紹介します。

 

止血のメカニズム

我々が怪我などをした際に出血すると、体内では血を止めようとする機構(止血機構)が働きます。

止血には、血小板が関わる一次止血と、凝固因子が関わる二次止血があります。

出血が起こると、まずは血中に存在する血小板が活性化し、損傷部位に集まってきて血栓(一次血栓)を形成します。

これを一次止血と呼びますが、これだけでは簡単に剥がれてしまいます。

 

次いで、一次止血を補強する目的で二次止血が行われます。

二次止血では一次血栓の周囲を「フィブリン」と呼ばれるタンパク質で覆い、強固な止血血栓(二次血栓)を完成させます。

 

二次血栓に関与するフィブリンは様々な「凝固因子」が血液凝固反応(カスケード)を引き起すことで生成されます。

 

二次止血時の血液凝固反応(カスケード)とは

血液凝固反応では、全部で14種類の凝固因子が活性化することで引き起こされます。

一般的に凝固因子はローマ数字(例:Ⅴ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ)で表され、活性化した凝固因子はローマ数字の後ろに“a”を付けて(例:Ⅴa、Ⅶa、Ⅸa、Ⅹa)表されます。

体内の血液凝固反応は、反応の引き金となる因子の違いから「外因系」と「内因系」に分けられていますが、今回は内因系をメインにご紹介します。

 

内因系の血液凝固反応は第Ⅻ因子が活性化(Ⅻa)されることで開始されます。

ⅫaはⅪを活性化(Ⅺa)させ、Ⅺaが第Ⅸ因子を活性化(Ⅸa)します。

また、第Ⅷ因子が活性化したⅧaと、Ⅸaによって第Ⅹ因子が活性化(Ⅹa)されます。

Ⅹaはプロトロンビンをトロンビンに変換し、トロンビンはフィブリノゲンをフィブリンに変換します。

二次止血時の血液凝固反応(カスケード)

 

このようにして完成したフィブリンが二次止血を行い、強固な血栓(二次血栓)を形成します。

今回ご紹介する血友病は上記の凝固因子が欠損して発症する疾患です。

 

血友病とは

血友病は先天的に血液凝固因子が欠損している疾患です。

第Ⅷ因子が欠損している場合を「血友病A」、第Ⅸ因子が欠損している場合を「血友病B」と分類しています。

血友病は染色遺体の伴性劣性遺伝のため、男性の患者がほとんどを占めます。

国内での発症率は男児出生1万人に約1人で、現在では6000名程の患者さんがいらっしゃると推測されています。

 

血友病の病態と症状

血友病では血液凝固因子が欠損していることから、二次止血における血液凝固反応(カスケード)がうまく働きません。

その結果、二次止血に重要な「フィブリン」が生成されないため、様々な出血の症状が現れます。

血友病の病態

 

特徴的な出血症状は、関節内や筋肉内の出血(深部出血)です。その他、抜歯後に血が止まらなかったり、頭蓋内で出血することもあります。

 

血友病の治療

血友病の治療は、欠損している血液凝固因子を補充する治療が基本です。

 

血友病による出血を予防するため、上記因子の「定期補充療法」を行います。

また、出血してしまった際には適宜、「オンデマンド補充療法」を行います。

※オンデマンド(on-demand)とは、「必要に応じて」を意味します。

 

血液凝固因子製剤は在宅でも安全に静脈内投与ができることから、上記の定期補充療法を中心として、出血時には必要に応じてオンデマンド補充療法を行うことが一般的です。

今回ご紹介するエイフスチラは、血友病Aで欠損している第Ⅷ因子の補充を目的としている治療薬です。

 

エイフスチラ(一般名:ロノクトコグ)の作用機序と特徴

エイフスチラは、遺伝子組換え単鎖血液凝固第Ⅷ因子製剤です。

 

エイフスチラによって第Ⅷ因子が補充されますので、その後の血液凝固反応が進行して無事にフィブリンが生成され二次止血が完了します。

エイフスチラ(一般名:ロノクトコグ)の作用機序と特徴

 

また、エイフスチラは生体内の「フォン・ヴィレブランド因子」と結合することで、構造上安定的であるといった特徴があります。

 

エイフスチラの副作用

軽微な副作用として過敏症やめまいが報告されています。

稀にショックやアナフィラキシーなどの重篤な副作用の発現も認められますので注意が必要です。

 

エイフスチラ投与によるインヒビターの出現

定期補充療法を繰り返していると、補充している凝固因子を「異物(非自己)」と認識し、凝固因子に対して抗体が産生されてしまうことがります。

 

このような抗体のことを「インヒビター」と呼び、血友病A患者さんの約10%~15%に認められます。

インヒビターが出現してしまうと、当然、補充した凝固因子が働くことができないため、止血能力が失われてしまいます。

 

エイフスチラは生体内で「フォン・ヴィレブランド因子」と結合しているため、インヒビターの出現リスクは低い1)とされていますが、やはり注意が必要です。

 

インヒビターが出現した際に使用できる薬剤としてはヘムライブラ(一般名:エミシズマブ)が期待されています。

ヘムライブラ(エミシズマブ)の作用機序と二重特異性抗体【血友病A】

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あとがき

エイフスチラは「フォン・ヴィレブランド因子」と結合することで、生体内で安定して存在すると考えられています。

 

以上、今回は血友病Aとエイフスチラ(ロノクトコグ)の作用機序についてご紹介しました。

 

引用文献・資料等

  1. エイフスチラ:CTD「1.5 起原又は発見の経緯及び開発の経緯」p.6

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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