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2025年2月27日、薬事審議会・医薬品第二部会にて、「IDH1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病」を対象疾患とするティブソボ錠(イボシデニブ)の承認が了承されました!
現時点では未承認のためご注意ください。
基本情報
製品名 | ティブソボ錠250mg |
一般名 | イボシデニブ |
製品名の由来 | |
製造販売 | 日本セルヴィエ(株) |
効能・効果 | IDH1遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病 |
用法・用量 | アザシチジンとの併用において、通常、成人にはイボシデニブとして 1 日 1 回500 mg を経口投与する。 なお、患者の状態により適宜減量する。 |
収載時の薬価 | |
発売日 |

強力な化学療法の適応とならない未治療の急性骨髄性白血病に対して使用が見込まれます。
今回は急性骨髄性白血病とティブソボ(イボシデニブ)の作用機序やエビデンスについてご紹介します。
急性骨髄性白血病とは
白血病は「血液のがん」です。
血液細胞には、白血球、赤血球、血小板等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。
また、白血球には
- 顆粒球(骨髄系):好中球、好酸球、好塩基球
- リンパ球(リンパ系):B細胞、T細胞、NK細胞
があります。
急性骨髄性白血病(AML:acute myeloid leukemia)は、白血球の中でも「顆粒球」の未熟細胞が腫瘍化する疾患で、予後は不良とされています。1)
この腫瘍化した未熟な顆粒球のことを「白血病細胞」と呼んでおり、急性骨髄性白血病の約6~10%にIDH1遺伝子変異が認められています。2)

ミトコンドリア内における正常なIDH1は、イソクエン酸をα-ケトグルタル酸に変換していますが、IDH1遺伝子に変異があると、異常なIDH1が産生されます。
この異常なIDH1は、イソクエン酸を2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)に変換してしまい、これが発がんの原因およびがん細胞の増殖に寄与していると考えられています。
予後因子
急性骨髄性白血病には以下のような様々な予後因子が知られています。1)
因子 | 予後良好 | 予後不良 |
年齢 | 50歳以下 | 60歳以上 |
発症様式 | de novo | 二次性 |
染色体の核型 | t(8;21) t(15;17) inv(16) or t(16;16) |
3q異常 5・7番の異常 複雑核型 等 |
遺伝子異常 | NPM1変異 CEBPA変異 |
FLT3変異 TP53変異 |
寛解までの治療期間 | 1回 | 2回以上 |

治療
基本的な治療は、抗がん剤の多剤併用療法(化学療法)です。1)
1カ月程の化学療法(寛解導入療法)によって8割以上の患者さんでは「完全寛解」が得られ、その後、地固め療法を数回行います。
そして完全寛解が5年以上続けば、「治癒」に至ります。
現在、標準的な寛解導入療法は、アントラサイクリン+標準量シタラビンで、具体的には以下のような治療です。
- DNR+AraC療法:ダウノルビシン(DNR)50 mg/m2を5日間+シタラビン(AraC)100mg/m2を7日間持続投与
- IDR+AraC療法:イダルビシン(IDR)12 mg/m2を3日間+シタラビン(AraC)100mg/m2を7日間持続投与
※FLT3変異を有する場合には、上記の寛解導入療法にヴァンフリタ(キザルチニブ)を併用する場合もある
最近では、アントラサイクリン系薬剤のダウノルビシンと、シタラビンを1:5のモル比で配合した新規のリポソーム製剤のビキセオス配合静注用も登場しました。
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ビキセオス配合静注用(ダウノルビシン/シタラビン)の作用機序【AML】
続きを見る
また、標準的な導入化学療法が不適格(例:併存疾患・年齢)な患者さんの初回治療としては、ビダーザ(一般名:アザシチジン)の単剤や、ビダーザ+ベネクレクスタ(ベネトクラクス)が使用されます。
今回ご紹介するティブソボは、標準的な導入化学療法が不適格なAMLの初回治療として、ビダーザと併用で使用します。

ティブソボ(イボシデニブ)の作用機序:IDH1阻害薬
ティブソボは、異常なIDH1を選択的に阻害するIDH1阻害薬です。
異常なIDH1が阻害されることで、がん細胞の増殖に寄与していた2-HGの産生が抑制され、がん細胞の増殖抑制効果が得られると考えられますね。
エビデンス紹介:AGILE試験
根拠となった臨床試験(AGILE試験)をご紹介します。2)
本試験は強力な導入化学療法が適応とならない(例:併存疾患・高齢)未治療のAML 患者さんを対象に、ビダーザ(アザシチジン)+プラセボ群と、ビダーザ(アザシチジン)+ティブソボ群を比較する第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「無イベント生存率」とされ、結果は以下の通りでした。
試験群 | ビダーザ+ ティブソボ群 |
ビダーザ+ プラセボ群 |
12か月時点の 無イベント生存率 |
37% | 12% |
HR=0.33[95%CI:0.16-0.69], p=0.002 |
||
全生存期間中央値 | 24.0か月 | 7.9か月 |
HR=0.44[95%CI:0.27-0.73], p=0.001 |

直接的な比較はできませんが、同様の対象に対して実施されたベネクレクスタの第Ⅲ相臨床試験(VIALE-A試験)3)の結果よりも良好そうな印象を受けます。
副作用
後日更新予定です。
臨床試験では、骨髄機能抑制(好中球減少など)、感染症、出血などが高頻度に認められていました。
用法・用量
後日更新予定です。
臨床試験では、1日1回経口投与とされていました。
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
まとめ・あとがき
ティブソボはこんな薬
- 国内初のIDH1阻害薬
- 異常なIDH1を阻害することで2-HGの産生を抑制する
- 感染症や出血に注意が必要
標準的な導入化学療法が不適格(例:併存疾患・年齢)なAMLに対しては、これまで治療選択肢が限られていました。

ベネクレクスタとの使い分けは今後の検討が待たれるところでしょう。
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ベネクレクスタ(ベネトクラクス)の作用機序と副作用【CLL/AML】
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なお、IDH1遺伝子変異は胆道がんでもしばしば認められることから、胆道がんを対象としたティブソボの国内臨床試験も進行中です。今後の適応拡大も期待できますね!
海外では既に胆道がんの適応が承認されています(ClarIDHy試験)4)が、日本人未参加。
以上、今回は急性骨髄性白血病とティブソボ(イボシデニブ)の作用機序についてご紹介しました。
引用文献・資料等
- 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2024年版
- AGILE試験:N Engl J Med 2022;386:1519-1531
- VIALE-A試験:N Engl J Med 2020; 383:617-629
- ClarIDHy試験:Lancet Oncol. 2020 Jun;21(6):796-807.
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