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2024年12月2日、厚労省の薬事審議会医薬品第一部会にて「肥満症」を対象疾患とするゼップバウンド皮下注(チルゼパチド)の承認可否が審議される予定です。
日本イーライリリー|申請のニュースリリース
基本情報
製品名 | ゼップバウンド皮下注 2.5mg/5mg/7.5mg/10mg/12.5mg/15mgアテオス |
一般名 | チルゼパチド(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | |
製薬会社 | 製造販売:日本イーライリリー(株) 販売:田辺三菱製薬(株) |
効能・効果 | 肥満症 ただし、高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、 食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。 ・BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する ・BMIが35kg/m2以上 |
用法・用量 | 通常、成人には、チルゼパチド(遺伝子組換え)として2.5mgから投与を開始し、週1回皮下注射? |
収載時の薬価 | |
発売日 |
肥満症の医療用医薬品としては、既にサノレックス(マジンドール)がありますが、「高度肥満症(肥満度が+70%以上又はBMIが35kg/m2以上)」にしか使用できませんでした。
ダイレクトOTCでは、2023年2月にアライ(一般名:オルリスタット)が承認されています(ニュースリリース)。
その後、2023年3月27日にはGLP-1受容体作動薬(GLP-1アナログ製剤)であるウゴービ(セマグルチド)が肥満症治療薬として登場しました。
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ウゴービ(セマグルチド)の作用機序:サノレックスとの違い【肥満症】
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今回ご紹介するゼップバウンドは、既に糖尿病治療薬として使用されているマンジャロ皮下注(チルゼパチド)の有効成分と同じです。
今回は肥満症とゼップバウンド(チルゼパチド)の作用機序について解説していきます。
肥満症
まずは「肥満」と「肥満症」の定義についてです。
BMI(体格指数=体重kg/身長m2)と呼ばれる数値が25kg/m2以上の場合、「肥満」に分類されます。1-2)
肥満の中でも、肥満による11種の健康障害(合併症)が1つ以上あるか、健康障害を起こしやすい内臓脂肪蓄積がある場合に初めて「肥満症」と診断されます。
【出典】日本肥満学会|肥満と肥満症
また、BMIが35kg/m2以上の場合、高度肥満症に分類されます。
治療
肥満症治療の基本は食事療法・運動療法による減量です。
通常の肥満症の場合は現体重の3%以上、高度肥満症の場合は現体重の5~10%を目標とした減量を行います。
減量目標が達成できない場合、食事療法を強化したり、薬物療法が検討されます。
【出典】日本肥満学会|肥満と肥満症
国内で使用可能な薬物療法としては、サノレックス(マジンドール)がありますが、「高度肥満症(肥満度が+70%以上又はBMIが35kg/m2以上)」にしか使用できませんでした。
2023年に登場したGLP-1受容体作動薬のウゴービは、以下の場合の肥満症に使用できます。ゼップバウンドも同じです!
高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。
- BMIが27kg/m2以上で2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
- BMIが35kg/m2以上
ウゴービは既にガイドライン2)において、推奨グレード表記はないものの、「糖尿病の治療薬であるGLP-1受容体作動薬のなかに、体重減少作用をもつものがある」と書かれています(エビデンスレベルⅠ)。
ここからは、ゼップバウンドの関連するGLP-1やGLP-1について、体内のインスリン作用と共に解説していきます。
インスリンの作用とGLP-1/GLP-1
インスリンは膵臓から分泌されるホルモンです。
分泌されたインスリンは、細胞に作用することで血中のブドウ糖を細胞内に取り込む働きがあります。
また、インスリンの分泌を促進させる物質の一つに「GIP」や「GLP-1」と呼ばれる生体内ホルモンがあります。
- GIP:グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド
- GLP-1:グルカゴン様ペプチド-1
いずれも食事が小腸を通過することで分泌されるホルモンで、膵臓や全身の臓器に対して図のような働きを有します。
主な作用としては、膵臓におけるインスリンの分泌による血糖降下作用ですね。その他にも、GIPはインスリン感受性亢進、食欲減退などの作用が示唆されています。3)
そのため、糖尿病領域で使用されています。
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マンジャロ(チルゼパチド)の作用機序、GLP-1受容体作動薬との比較・違い【糖尿病】
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GLP-1はその他にも、食欲減退・満腹感の亢進や胃内容物の排泄といった肥満症に関わる作用も有することが知られています。
しかしながら、GLP-1は「DPP-4」と呼ばれるタンパク質によって半減期1~2分ほどの早さで速やかに分解され、効果はすぐ失われます。
ゼップバウンド(チルゼパチド)の作用機序:GIP/GLP-1受容体作動
ゼップバウンドは、GIP/GLP-1受容体に対する作動薬で、特にGIPに対する作用が強いとされています。
また、DPP-4による分解を受けにくいため、長時間血中で作用すると考えられていますね。
GIP/GLP-1作用によって、血糖降下作用および、食欲減退や満腹感亢進による体重増加抑制作用が期待されています。
ただし、美容・痩身・ダイエット等を目的とした使用は適応外のため、日本糖尿病学会より注意喚起(GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解)も発出されています。
エビデンス紹介:SURMOUNT-1試験
根拠となった臨床試験(SURMOUNT-1試験)をご紹介します。4)
本試験は、BMI30kg/m2以上もしくは27kg/m2以上で糖尿病以外の肥満関連合併症(高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸、心血管疾患など)を有する患者さんを対象に、ゼップバウンド群とプラセボ群を比較する国際共同第Ⅲ相臨床試験です(日本人を含む)。
複合主要評価項目は「ベースラインからの体重変化率」と「体重5%以上の減量を達成した患者の割合」とされ、結果は以下の通りでした。
ゼップバウンド群 |
プラセボ群 |
|||
5mg | 10mg | 15mg | ||
ベースラインから72週までの 体重の変化率 |
-15.0% | -19.5% | -20.9% | -3.1% |
プラセボとの差:いずれもP<0.001 | ||||
ベースラインから72週までの 5%以上の体重減少の達成割合 |
85% | 89% | 91% | 35% |
プラセボとの差:いずれもP<0.001 |
副作用
後日更新予定です。
用法・用量、自己注射
後日更新予定です。
臨床試験では、週1回皮下注射において2.5mgから投与を開始し、4週間毎に2.5mgずつ増量していました。維持用量は5mg、10mg、または15mgとされています。
自己注射は現時点では不明です。
最適使用推進ガイドラインの要件
ウゴービは最適使用推進ガイドラインの対象でしたので、ゼップバウンドも同様だと考えられます。
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
サノレックス(マジンドール)、ウゴービ(セマグルチド)との違い
現在、国内で肥満症に対して使用できる医療用医薬品は
- サノレックス錠(マジンドール)
- ウゴービ皮下注(セマグルチド)
の2製品です。
主な特徴についてまとめてみましたので、ご参考にしていただければ幸いです。
まとめ・あとがき
ゼップバウンドはこんな薬
- 肥満症に使用する初のGIP/GLP-1受容体作動
- 食欲減退や満腹感亢進、胃内容物の排泄抑制による体重増加抑制作用が期待
- 2.5mgから開始し、週1回の皮下注射
ゼップバウンドの有効成分であるチルゼパチドは、元々は糖尿病治療薬マンジャロとして登場しました。
-
マンジャロ(チルゼパチド)の作用機序、GLP-1受容体作動薬との比較・違い【糖尿病】
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GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動は体重減少作用が示唆されていたことから、国内では美容・痩身・ダイエット等を目的とした適応外で使用されていることがしばしばありました。
そのため、日本糖尿病学会からも「GLP-1受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解」が発出されています。
ゼップバウンドは美容クリニック等で美容・ダイエット目的の適応外で使用されないことを切に祈ります(マンジャロは既に適応外で使用されているとかいないとか…)。
肥満症の治療薬はこれまでサノレックス(マジンドール)しかなく、新たな治療選択肢が期待されていました。2022年にはウゴービが登場し、さらに今回のゼップバウンドが加わります!
以上、今回は肥満症とゼップバウンド(チルゼパチド)の作用機序やエビデンスについて解説しました!
引用文献・資料等
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