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ブルキンザ(ザヌブルチニブ)の作用機序【CLL/WM/LPL】

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2024年10月30日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて「慢性リンパ性白血病」、「原発性マクログロブリン血症」、「リンパ形質細胞リンパ腫」を対象疾患とするブルキンザカプセル(ザヌブルチニブ)の承認可否が審議される予定です。

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名 ブルキンザカプセル80mg
一般名 ザヌブルチニブ
製品名の由来
製造販売 BeiGene Japan
効能・効果 ●再発・難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)
●原発性マクログロブリン血症及びリンパ形質細胞リンパ腫
用法・用量 1日2回経口投与?
収載時の薬価
発売日

 

ブルキンザは新規のBTK阻害薬に分類されています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
なお、中国の会社であるBeiGene Japan社の日本進出第一号の新薬です!

 

慢性リンパ性白血病(CLL)では、既に初回治療として以下のBTK阻害薬が承認されていますが、ブルキンザは再発・難治例に対して使用が見込まれます。

 

また、原発性マクログロブリン血症(WM)とリンパ形質細胞リンパ腫(LPL)では、既にBTK阻害薬のベレキシブル(チラブルチニブ)が承認されていますので、ブルキンザは新たな治療選択肢に加わります。

ベレキシブル(チラブルチニブ)の作用機序【悪性リンパ腫】

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近年はBTK阻害薬の開発が活発ですね。マントル細胞リンパ腫でも新規BTK阻害薬のジャイパーカ(ピルトブルチニブ)が2024年に承認されました。

ジャイパーカ(ピルトブルチニブ)の作用機序【MCL】

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今回は慢性リンパ性白血病(CLL)、原発性マクログロブリン血症(WM)、リンパ形質細胞リンパ腫(LPL)とブルキンザ(ザヌブルチニブ)の作用機序、エビデンスについてご紹介します。

 

慢性リンパ性白血病とは

白血病は「血液のがん」です。

血液細胞には、白血球(好中球、好酸球、好塩基球)、赤血球、リンパ球(B細胞やT細胞)等がありますが、これら血液細胞の異常化(腫瘍化=がん化)によって引き起こされる病気が白血病です。

 

慢性リンパ性白血病(CLL:chronic lymphocytic leukemia)は、リンパ球のうち「成熟した小型のB細胞」が腫瘍化する疾患です。

腫瘍化したB細胞が末梢血や骨髄に存在している時には「慢性リンパ性白血病」と呼ばれ、リンパ節にあるときは「小リンパ球性リンパ腫」と呼ばれます。

 

慢性リンパ性白血病の発生頻度は日本では非常に少なく、白血病全体の約1~2%で約2,000人と推定されています。

また、慢性リンパ性白血病の腫瘍細胞の表面には「B細胞受容体(BCR)」が発現していることが知られています。

慢性リンパ性白血病(CLL)とBCR

 

慢性リンパ性白血病の症状と治療

慢性リンパ性白血病は進行が緩やかで無症状であることが多く、この場合経過観察が基本です。

進行すると倦怠感、寝汗を伴う微熱、貧血、血小板減少が認められることもあります。

 

症状がある場合、初回治療として基本的にBTK阻害薬が推奨されています。1)

 

その他、抗がん剤(フルダラビンやシクロホスファミド)と適宜リツキサン(一般名:リツキシマブ)を併用した治療などが行われることもあります。

 

しかし上記の治療を行っても治療抵抗性になったり、一度は寛解(効いた)にも関わらず再発してしまうこともあります。

 

この場合、リツキサン+ベネクレクスタ(ベネトクラクス)等が使用されますが、その他の治療選択肢は限られていました。

ベネクレクスタ(ベネトクラクス)の作用機序と副作用【CLL/AML】

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ブルキンザは、初回治療で再発・難治性となった慢性リンパ性白血病に対して単剤で治療効果が期待されています。また、臨床試験ではイムブルビカと比較して有意なPFSの延長および有害事象が低かったと報告されていました。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
続いて、WM/LPLについてです。

 

悪性リンパ腫とは

造血機腫瘍の中でも、リンパ系の血球成分(例:B細胞、T細胞、NK細胞など)から発生するものを「悪性リンパ腫」と呼んでいます。

 

細かい分類は非常に多いのですが、大きく分類すると以下の2種類です。1)

  • ホジキンリンパ腫(HL:Hodgkin lymphoma)
  • 非ホジキンリンパ腫(NHL:Non Hodgkin lymphoma)

 

木元 貴祥
木元 貴祥
国内ではほとんどがNHLと言われていますね。

 

今回ご紹介するWM、LPLも全てNHLの一種に分類されています。

 

また、悪性リンパ腫では、疾患の悪性度や予後の臨床分類としてアグレッシブ分類(低悪性度、中悪性度、高悪性度)が行われますが、WMとLPLは「低悪性度」に分類されています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
WMとLPLも、CLLと同じく「B細胞受容体(BCR)」が関与すると考えられていますね。

 

リンパ形質細胞リンパ腫(LPL)・原発性マクログロブリン血症(WM)

リンパ形質細胞性リンパ腫(LPL:Lymphoplasmacytic Lymphoma)は、悪性リンパ腫の中でもリンパ球や形質細胞が腫瘍化(がん化)してしまい、骨髄やリンパ節、脾臓、肝臓などに浸潤するのが特徴です。

 

また、リンパ形質細胞性リンパ腫の中には特に骨髄に浸潤して悪さをするものがいて、これを原発性マクログロブリン血症(WM:Waldenström’s macroglobulinemia)と呼んでいます。

 

LPLやWMは、低悪性度に分類されていて、非常に進行が遅いため、症状がなければ経過観察を行います。

しかし、病状進行によって症状が出てきた際には、抗がん剤や分子標的治療薬などを適宜併用した治療を行うことになります。

 

症状として血液の循環が悪化する状態(過粘稠度症候群かねんちょうどしょうこうぐん)にある場合には「血漿交換」を行い、並行して抗がん剤による薬物療法を行うことが一般的です。

 

血漿交換とは?

体外に取り出した血液を血漿分離器で血球成分と血漿成分に分離した後、患者さんの血漿を廃棄し、その分を健常な方の血漿(あるいはアルブミン)で置き換える治療を言います。

血漿交換を行うことで、血漿成分に含まれる病因物質を除去することができます。同時に、正常な血漿に含まれる凝固因子を補充することも可能です。

【出典】大阪大学腎臓内科

 

薬物療法としては、シクロホスファミド、フルダラビン、ベルケイド(一般名:ボルテゾミブ)トレアキシン(一般名:ベンダムスチン)、デキサメタゾン等を用いた併用療法が基本で、リツキサンを併用することもあります。

 

しかし、初回治療で抵抗を示したり、再発したりした場合、その後の治療選択肢は限られていました。

 

今回ご紹介するブルキンザはLPLやWMの初回治療例や、再発・難治例に対して治療効果が期待されていますね!

 

木元 貴祥
木元 貴祥
それではブルキンザの関与する「B細胞受容体(BCR)」と「ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)」についてご紹介します。

 

ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)とは

慢性リンパ性白血病の腫瘍細胞(B細胞)の表面には「B細胞受容体(BCR)」が発現していることが知られています。

BCRに増殖因子が結合すると、そのシグナル伝達が細胞質内に伝えられ、途中に「ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)」を経由して核内に伝わります。

 

核内までシグナル伝達が伝わると腫瘍細胞の増殖が促進され、活性化・症状悪化が引き起こされると考えられます。

BCRとブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)

 

ブルキンザ(ザヌブルチニブ)の作用機序

ブルキンザは腫瘍細胞の「ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)」を選択的に阻害する薬剤です。

BTKを阻害することでシグナル伝達が阻害され、結果的に腫瘍細胞の増殖を抑制することが可能となります。

ブルキンザ(ザヌブルチニブ)の作用機序

 

第二世代のBTK阻害薬に分類されていて、腫瘍細胞のBTKに対してより選択的に作用するため、第一世代のイムブルビカと比較して副作用の軽減も期待されていますね。2)

 

再発・難治性CLLのエビデンス紹介:ALPINE試験

再発・難治性CLLの根拠となった臨床試験(ALPINE試験)をご紹介します。3)

本試験は1つ以上の治療歴(BTK阻害薬既治療例は除く)のある再発・難治性の慢性リンパ性白血病患者さんを対象に、イムブルビカ群とブルキンザ群を比較した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。

 

本試験の主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)*」で、結果は以下の通りでした。

対照群 イムブルビカ群 ブルキンザ群
24か月時点のPFS率* 65.9% 78.4%
HR=0.65(95%CI:0.49-0.86)
P=0.002
死亡率 18.5% 14.7%
HR=0.76(95%CI:0.51-1.11)
<有害事象>

●好中球減少

●心房細動または粗動

 

24.4%

13.3%

 

29.3%

5.2%

*治療を開始してから、がんが増悪するまでの期間

 

イムブルビカと比較して、ブルキンザでは有意にPFSを延長することが認められていますね。死亡率も有意差はないもののブルキンザで低い傾向でした。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
また、イムブルビカではしばしば心毒性が問題となりますが、ブルキンザは心毒性が低い傾向です。一方、好中球減少には注意が必要そうです。

 

原発性マクログロブリン血症に対しては、第Ⅲ相試験のASPEN試験4)によって、イムブルビカと同程度の有効性が示されていました。

 

副作用

正式承認後に更新予定です。

 

用法・用量

正式承認後に更新予定です。

臨床試験では、1日2回経口投与とされていました。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ブルキンザはこんな薬

  • 経口のBTK阻害薬(第二世代)
  • 再発・難治の慢性リンパ性白血病に対して、イムブルビカよりも効果が高く、副作用の軽減が期待
  • 好中球減少には注意が必要
  • 1日2回経口投与

 

これまで慢性リンパ性白血病の治療選択肢は限られていたことから、今後、色々な薬剤開発が進めば良いなと感じています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
近年では相次いで新薬が承認されていますので、今後も期待できるのではないでしょうか!

 

以上、今回は慢性リンパ性白血病(CLL)、原発性マクログロブリン血症(WM)、リンパ形質細胞リンパ腫(LPL)とブルキンザ(ザヌブルチニブ)の作用機序・エビデンスについてご紹介しました!

 

引用文献・資料等

  1. 日本血液学会|造血器腫瘍診療ガイドライン2023年版
  2. J Hematol Oncol. 2022 Oct 1;15(1):138.
  3. ALPINE試験:N Engl J Med 2023;388:319-332
  4. ASPEN試験:J Clin Oncol. 2023 Nov 20;41(33):5099-5106.

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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