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フリュザクラ(フルキンチニブ)の作用機序【大腸がん】

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大腸がん

2024年9月24日、「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん」を対象疾患とするフリュザクラカプセル(フルキンチニブ)が承認されました!

武田薬品工業|ニュースリリース

基本情報

製品名 フリュザクラカプセル1mg/5mg
一般名 フルキンチニブ
製品名の由来 海外に準じた
製造販売 武田薬品工業(株)
効能・効果 がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がん
用法・用量 通常、成人にはフルキンチニブとして1日1回5mgを
3週間連日経口投与し、その後1週間休薬する。
これを1サイクルとして投与を繰り返す。
なお、患者の状態により適宜減量する。
収載時の薬価 1mg:5,139.40円
5mg:23,866.90円
発売日

 

フリュザクラは、VEGFR-1/2/3を選択的に阻害する経口薬です。

大腸がんでは、VEGFR 1/2/3やPDGFR、FGFR、KITなどの受容体を幅広く阻害するマルチキナーゼ阻害薬のスチバーガ錠(レゴラフェニブ)が既に使用されていますが、フリュザクラはVEGFRのみを選択的に阻害します。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
VEGFRを選択的に阻害する経口薬は国内初ですね。

 

今回は、大腸がんを中心にがんの血管新生、そしてフリュザクラ(フルキンチニブ)の作用機序やエビデンスについて解説します。

 

大腸がんと治療

早期に発見された場合は手術によってがんを取り除くことができ、場合によっては術後の抗がん剤治療(術後補助化学療法)が行われます。

 

一方、発見時に他の臓器に転移(StagrⅣ)があったり、再発している場合、手術はできないため、抗がん剤(化学療法)による治療が基本です。

 

大腸がんの一次化学療法では抗がん剤(2〜3種)+分子標的薬(ベバシズマブなど)を用いた以下のいずれかの治療法が行われます。

  • FOLFOX+アバスチン/ベクティビクス/アービタックス
  • FOLFIRI+アバスチン/ベクティビクス/アービタックス
  • FOLFOXIRI+アバスチン
  • CAPOX+アバスチン
  • SOX+アバスチン
  • IRIS+アバスチン

 

参考:使用薬剤

 

アバスチン(ベバシズマブ)の詳細については以下の記事をご参考くださいませ。

アバスチン(ベバシズマブ)の作用機序とバイオシミラー【大腸がん】

続きを見る

 

なお、MSI-highが確認された場合、キイトルーダ(ペムブロリズマブ)が初回から単剤で使用可能です。MSI-highとキイトルーダについては以下で解説しています♪

キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序【消化器がん/MSI-High固形がん】

続きを見る

 

一次化学療法に抵抗・不応の場合には二次化学療法として、サイラムザ(一般名:ラムシルマブ)ザルトラップ(一般名:アフリベルセプトベータ)を用いた治療等が行われます。

サイラムザ(ラムシルマブ)の作用機序【胃/大腸/肝細胞/肺がん】

続きを見る

 

その他の二次化学療法および三次化学療法以降の治療としては、

などの選択肢があります。

 

今回ご紹介するフリュザクラは、エルプラット(オキサリプラチン)、カンプト(イリノテカン)、5-FU、抗VEFR療法(アバスチン、サイラムザザルトラップ)、抗EGFR療法(RAS野生型の場合)による治療歴があり、かつ、ロンサーフ配合錠またはスチバーガが不応の場合に効果が期待されています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
本当に最後の砦に使用する薬剤ですね。五次化学療法以降の使用が想定されます。

 

それではここからフリュザクラが関与するがんと血管新生について解説します。

 

がんと血管新生

がん全般的に言えることですが、がん細胞が大きくなるためには多くの栄養素や酸素が必要となります。

 

そこでがん細胞は、自分のところに血管を無理やり作らせようとし、それに関与する因子として、がん細胞はVEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-Dといった「血管増殖因子」を放出することが知られています。

 

この因子が、血管の受容体(VEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3)に結合すると、がん細胞に対して異常な血管が作られ(これを“血管新生”といいます)、この血管を通じてがん細胞は大量の栄養と酸素を得ることができます。

がんの血管新生と、関連する血管増殖因子(VEGF)と受容体(VEGFR)

 

 

木元 貴祥
木元 貴祥
このように、がんは血管新生を通じて増殖し、他の臓器への転移も引き起こされると考えられています。

 

フリュザクラ(フルキンチニブ)の作用機序

フリュザクラは、血管増殖因子が結合する受容体のVEGFR-1、VEGFR-2、VEGFR-3を選択的に阻害する経口薬です。

 

フリュザクラ(フルキンチニブ)の作用機序:VEGFR-1/2/3の選択的阻害薬(経口薬)

血管新生が阻害される結果、栄養供給を妨げることなどにより腫瘍の増殖を抑制するといった作用機序を有しています。

 

参考までに、現在までに承認されている抗VEGF療法は以下をターゲットとしています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
フリュザクラもVEGFによる血管新生経路を遮断する薬剤ですが、上記の薬剤とは作用する範囲が異なるため、既治療であったとしても効果が期待されていますね!

 

エビデンス紹介:FRESCO-2試験

根拠となったのは以下の第Ⅲ相臨床試験です。いずれも大腸がんの三次治療以降を対象に、プラセボとフリュザクラを比較しました。

 

元々、中国で実施されたFRESCO試験を元に、フリュザクラが中国で承認されました。しかしながら、単一国の試験かつ、サイラムザ、ロンサーフ配合錠、スチバーガなどが承認されていない状況で実施された試験でした。

 

そこで、世界14か国で改めて検証されたのがFRESCO-2試験です。今回は代表として、日本人も含まれるFRESCO-2試験をご紹介します。

 

FRESCO-2試験は、エルプラット(オキサリプラチン)、カンプト(イリノテカン)、5-FU、抗VEFR療法(アバスチン、サイラムザザルトラップ)、抗EGFR療法(RAS野生型の場合)による治療歴があり、かつ、ロンサーフ配合錠またはスチバーガが不応の進行・再発の大腸がん患者さんを対象に、プラセボとフリュザクラを比較した国際共同第Ⅲ相試験です。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
つまり、ほぼ全ての標準的な細胞障害性抗がん剤および分子標的薬による治療歴がある患者さんが対象ですね。

 

主要評価項目は全生存期間(OS)とされ、結果は以下の通りでした。

プラセボ群 フリュザクラ群
全生存期間中央値 4.8か月 7.4か月
HR=0.66(95%CI:0.55~0.80)
p<0.0001
無増悪生存期間中央値 1.8か月 3.7か月
HR=0.32(95%CI:0.27~0.39)
p<0.0001
奏効率 0% 2%

 

フリュザクラ群で生存期間の有意な延長が認められていますね!

 

副作用

重大な副作用として、

  • 高血圧:高血圧(29.2%)、高血圧クリーゼ(0.7%)等
  • 皮膚障害(28.3%):手足症候群(18.6%)、発疹(3.3%)等
  • 出血(7.2%):鼻出血(3.3%)、血尿(1.3%)、胃腸出血(0.2%)、喀血(0.2%)等
  • 消化管穿孔(1.3%)
  • 動脈血栓塞栓症(0.4%):一過性脳虚血発作(0.2%)、血栓性微小血管症(0.2%)等
  • 静脈血栓塞栓症(0.7%):肺塞栓症(0.7%)、門脈血栓症(頻度不明)、深部静脈血栓症(頻度不明)等
  • 可逆性後白質脳症症候群(0.2%)
  • 動脈解離(頻度不明)

が挙げられていますので、特に注意が必要です。

 

従って、定期的な血圧測定や尿蛋白の検査が望まれています。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
作用機序的に、既存の抗VEGF療法(例:アバスチン、サイラムザ)と同様ですね。

 

用法・用量

通常、成人にはフルキンチニブとして1日1回5mgを3週間連日経口投与し、その後1週間休薬します。

これを1サイクルとして投与を繰り返します。

 

収載時の薬価

収載時(2024年11月20日)の薬価は以下の通りです。

  • フリュザクラカプセル1mg:5,139.40円
  • フリュザクラカプセル5mg:23,866.90円(1日薬価:17,900.20円)

 

以下の記事で算定根拠等について解説しています。

【新薬:薬価収載】17製品(2024年11月20日)

続きを見る

 

まとめ・あとがき

フリュザクラはこんな薬

  • VEGFR-1/2/3を選択的に阻害する経口薬
  • 全ての標準治療に抵抗性を有する大腸がんに対して効果が期待
  • 1日1回経口投与(3週投与1週休薬)
  • 高血圧、蛋白尿などに注意が必要

 

大腸がんに使用する薬剤は多数あるため、生存期間は年々延長しているものの、スチバーガやロンサーフ以降の治療選択肢は限られていました。

 

フリュザクラは、既存の大腸がん治療薬とは異なる作用機序(選択的VEGFR-1/2/3阻害薬)を有しているため、新たな治療選択肢として期待できるのではないでしょうか。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
今後は、より早期治療ラインでの使用や、他の治療薬との併用などが検討されれば興味深いですね!

 

以上、今回は大腸がんを中心にがんの血管新生、そしてフリュザクラ(フルキンチニブ)の作用機序やエビデンスについて解説しました。

 

引用論文・資料等

  1. FRESCO試験:JAMA. 2018 Jun 26;319(24):2486-2496. 
  2. FRESCO-2試験:Lancet. 2023 Jul 1;402(10395):41-53.

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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