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2022年9月26日、「気管支喘息」を対象疾患とするテゼスパイア皮下注(テゼペルマブ)が承認されました!
アストラゼネカ|ニュースリリース
基本情報
製品名 | テゼスパイア皮下注210mgシリンジ/ペン |
一般名 | テゼペルマブ(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | 複数の炎症経路の起点となるTSLPを阻害する「Tezepelumab」により、 患者さんのもっと良くなりたいという想いを呼び起こさせ (Inspire) 、 喘息で苦しむひとがいない未来を願う (Aspire) 、 という意味を込め「TEZSPIRE」とした。 |
製造販売 | アストラゼネカ(株) |
効能・効果 | 気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない重症又は難治の患者に限る) |
用法・用量 | 通常、成人及び12歳以上の小児にはテゼペルマブ(遺伝子組換え)として 1回210mg を4週間隔で皮下に注射する。 |
収載時の薬価 | シリンジ:176,253円 ペン:178,182円 |
発売日 | 2022年11月16日(HP) |
テゼスパイアはTSLPに対するモノクローナル抗体薬で、作用機序としては国内初ですね!その後、2023年8月には「ペン」製剤が承認されました。
臨床試験では好酸球数やその他の因子に関わらず一定した治療効果が認められていました。
今回は気管支喘息とテゼスパイア(テゼペルマブ)の作用機序・エビデンス、そして類薬の生物学的製剤(デュピクセント等)との違いについて解説していきます。
気管支喘息とは
気管支喘息は、呼吸をするときの空気の通り道が、アレルギーなど炎症によって敏感になり、けいれんを起こして狭くなることで起こります。
発作時の症状としては、「ゼーゼー、ヒューヒュー」といった喘鳴(読み方:ぜんめい)や、激しい咳が出る、呼吸が苦しくなるといった症状が発現します。
日本では、子供の5~7%、大人の3~5%が喘息であると言われております。
子供の喘息は男子に比較的多く、アレルギーが原因であることがほとんどとされていますが、成長するに従って発作が消失することもあります。
主な原因としては、ダニ、ハウスダスト、ペット 花粉、といったアレルギー物質のほか、たばこ、過労、ストレス、感染症などです。原因物質による刺激が気道上皮細胞に伝わると、そこからTSLPと呼ばれるサイトカインが放出されます。1)
TSLP:Thymic stromal lymphopoietin(胸腺間質性リンパ球新生因子)
TSLPは各炎症カスケードの上流に位置しているため、Th2細胞やILC2細胞の活性化とそれに伴う炎症性サイトカイン(IL-4、IL-5、IL-13など)の増加によって気管支喘息の発症・増悪に繋がると考えられています。
気管支喘息の治療
気管支喘息は炎症によって引き起こされているため、抗炎症作用のある「ステロイドの吸入」による治療が基本です。2)
その他に、発作の予防として、以下の薬剤を適宜併用して用います。
- ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA:Leukotriene receptor antagonist)
- 長時間作用性β2刺激薬(LABA:Long Acting β2 Agonist)
- 長時間作用性抗コリン薬(LAMA:Long-Actng anti-Muscarinic Agent)
最近では、吸入ステロイドとLABAを配合した合剤(例:レルベアエリプタ)等も登場してきていますね。
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アテキュラ吸入用カプセル(LABA/ICS)の作用機序【気管支喘息】
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重症喘息
上記のような治療を行っても、喘息がコントロールできない場合もあり、これを「重症喘息」と呼んでいます。
喘息の全患者のうち、重症喘息は約10%と推定されています。
喘息の諸症状は、肥満細胞や好酸球が活性化されて発現すると考えられていますが、重症喘息では、特に好酸球の活性化が関与していることが知られています。
今回ご紹介するテゼスパイアは、薬物治療で改善が認められなかった(効果不十分な)重度の気管支喘息に使用できる薬剤です!同様に使用できる生物学的製剤としては以下があります。
- デュピクセント(デュピルマブ):抗IL-4Rα抗体
- ゾレア(オマリズマブ):抗IgE抗体
- ヌーカラ(メポリズマブ):抗IL-5抗体
- ファセンラ(ベンラリズマブ):抗IL-5受容体抗体
その他、LAMA/LABA/ICSの3剤を配合したエナジア吸入用カプセルも使用できますね。
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エナジア吸入用カプセル(LAMA/LABA/ICS)の作用機序【気管支喘息】
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テゼスパイア(テゼペルマブ)の作用機序:抗TSLP抗体
テゼスパイアは炎症カスケードの上流に位置するTSPLを選択的に阻害する抗体薬です!
TSLPの働きが抑制されることで、下流のTh2細胞やILC2の働きが抑制され、同時に各サイトカインの産生も抑制されます
各炎症性サイトカインの産生量が低下するため、気管支喘息の症状緩和に繋がると考えられていますね!
現在承認されている他の生物学的製剤はいずれも下流のサイトカイン(IL)を標的としていますが、テゼスパイアは上位のサイトカイン(TSLP)を標的としているのが面白いところでしょう。
エビデンス紹介:NAVIGATOR試験
代表的な臨床試験としてNAVIGATOR試験をご紹介します。
本試験は、経口ステロイド薬併用の有無を問わず、中用量もしくは高用量の吸入ステロイド薬(ICS)に少なくとももうひとつの喘息長期管理薬を加えた治療を受けていた成人(18歳から80歳) および青年期 (12歳から17歳)のコントロール不良の重症喘息患者さんを対象として、テゼスパイアとプラセボを比較する第Ⅲ相臨床試験です。
主要評価項目は「年間喘息増悪率 (AAER)」とされ、結果は以下の通りでした。
テゼスパイア群 | プラセボ群 | |
年間喘息増悪率 (AAER) | 0.93 | 2.10 |
率比0.44(95%CI:0.37-0.53) P<0.001 |
血中好酸球数が300/mm3未満の患者さんに限った場合でもテゼスパイア群で有意な改善が認められていました!(率比0.59, P<0.001)
類薬のデュピクセントでは、各バイオマーカー(血中好酸球数、FeNO、血清中総IgE等)が低値の場合、有効性が十分に得られない可能性が示唆されていましたが、テゼスパイアは各バイオマーカーによらず、一定の治療効果が期待されています。
副作用
1%以上に認められる副作用として、注射部位反応(紅斑、腫脹、疼痛等)が報告されています。
重大な副作用としては、
- 重篤な過敏症(頻度不明)
- 心臓障害(頻度不明)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
用法・用量、在宅自己注射
通常、成人及び12歳以上の小児にはテゼペルマブ(遺伝子組換え)として1回210mg を4週間隔で皮下に注射します。
2023年12月1日より、在宅自己注射も可能になりました!
テゼスパイアと類薬(デュピクセント等)の比較・違い
気管支喘息に使用できる抗体薬としては既に以下が承認・販売されていますのでテゼスパイアで5製品目です。
- デュピクセント(デュピルマブ):抗IL-4Rα抗体
- ゾレア(オマリズマブ):抗IgE抗体
- ヌーカラ(メポリズマブ):抗IL-5抗体
- ファセンラ(ベンラリズマブ):抗IL-5受容体抗体
「成人気管支喘息における生物学的製剤の適正使用ステートメント」では、生物学的製剤を使用する際には以下に該当することを確認する必要があります。テゼスパイアも同様になると見込まれますね。
上記ステートメントでは各薬剤に対して、患者選択に関する記載があり、例えばデュピクセントは以下の記載です。
【デュピルマブ(抗IL-4受容体α鎖抗体):患者選択について】
上記の必須項目に加え、以下の項目いずれかを満たす患者であることが望ましい。
- 血中好酸球数が 150/μL 以上、または FeNO が 25 ppb 以上である患者。
- 血清総 IgE 値が 167 IU/mL 以上である患者
その他、投与間隔等に違いがありますので一覧表にしてみました。
投与間隔が一番長いのはファセンラですね。8週間隔で治療が可能なため簡便だと思います。しかしファセンラは小児には使用できません。
2019年5月1日よりデュピクセントが初の自己注射が可能となりました!その後、ヌーカラとゾレアが2021年より、テゼスパイアが2023年より自己注射可能となっています。
ヌーカラは2020年3月25日に6歳以上の小児への適応拡大が承認されています(プレフィルドシリンジ製剤とオートインジェクター製剤を除く)。
-
ヌーカラ(メポリズマブ)の作用機序【気管支喘息/EGPA】
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テゼスパイアも他疾患への適応拡大等、期待したいところです!
収載時の薬価
収載予定時(2022年11月16日)の薬価は以下の通りです。
- テゼスパイア皮下注210mgシリンジ:176,253円
算定根拠については以下をご確認ください。
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【新薬:薬価収載】16製品(2022年11月16日)
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ペン製剤は2023年11月22日に収載されました。
- テゼスパイア皮下注210mgペン:178,182円
まとめ・あとがき
テゼスパイアはこんな薬
- 上位サイトカインのTSLPを選択的に阻害する抗体薬(生物学的製剤)
- バイオマーカーによらず一貫した治療効果が期待されている
- 4週間毎の皮下注
これまで、気管支喘息の生物学的製剤は下流サイトカインのILを標的とするものでした。
テゼスパイアは初の上位サイトカインであるTSLPを標的にする生物学的製剤のため、期待できるのではないでしょうか。
以上、今回は気管支喘息とテゼスパイア(テゼペルマブ)の作用機序・エビデンス、そして類薬の生物学的製剤(デュピクセント等)との違いについて解説しました!
引用文献・資料等
- Trends Immunol. 2019 Sep;40(9):786-798.
- 日本アレルギー学会|喘息予防・管理ガイドライン2021
- NAVIGATOR試験:N Engl J Med 2021; 384:1800-1809
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