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2024年12月27日、「再発又は難治性の濾胞性リンパ腫」を対象疾患とするルンスミオ点滴静注(モスネツズマブ)が承認されました!
中外製薬|ニュースリリース
基本情報
製品名 | ルンスミオ点滴静注1mg/30mg |
一般名 | モスネツズマブ(遺伝子組換え) |
製品名の由来 | LUNSUMIO(ルンスミオ)は、 LUN(Luna):リンパ腫と闘う患者を照らす天上の光、 SUM(足し合わせる):悪性 B 細胞(CD20)と T 細胞(CD3)の二重特異性抗体である、 IO:免疫療法 に由来する |
製造販売 | 中外製薬(株) |
効能・効果 | 再発又は難治性の濾胞性リンパ腫 |
用法・用量 | 21日1サイクル(記事内参照) |
薬価 | 1mg:83,717円 30mg:2,393,055円 |
発売日 | 2025年3月19日(HP) |
ルンスミオは、CD3とCD20に共に結合可能な二重特異性抗体(バイスペシフィック抗体)に分類されています。

既に大細胞型B細胞リンパ腫や濾胞性リンパ腫に対しては、同じ作用機序を有するエプキンリ(エプコリタマブ)が承認されていますので、ルンスミオは2製品目となります。
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エプキンリ(エプコリタマブ)の作用機序【DLBCL】
続きを見る

濾胞性リンパ腫とルンスミオ(モスネツズマブ)の作用機序について解説していきます!
濾胞性リンパ腫とは
濾胞性リンパ腫は、悪性リンパ腫の種類の1つに分類されている血液腫瘍で、リンパ球の中でも「B細胞」が腫瘍化して発生します。
進行は比較的遅く、「低悪性度」に分類されています。
疫学的には、悪性リンパ腫の約15~20%を占めていて、近年増加傾向です。

また、腫瘍化したB細胞の細胞膜表面にはしばしば「CD20」が発現していることが知られています。
濾胞性リンパ腫の治療
早期の場合には、腫瘍細胞が凝集しているリンパ節部位への放射線照射が行われることが多いです。
放射線が難しい患者さんでは、経過観察で様子を見ることも行われます。
一方、進行している場合、抗CD20抗体(リツキシマブまたはガザイバ(オビヌツズマブ))併用化学療法が推奨されています。1)
主には以下のような併用療法です。
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ガザイバ(オビヌツズマブ)の作用機序と副作用【悪性リンパ腫】
続きを見る
上記の治療で抵抗性が認められた場合、そ初回治療で使用しなかった治療や、CAR-T細胞(キメラ抗原受容体T細胞)療法のキムリア(チサゲンレクルユーセル)などが使用されます。EZH2遺伝子変異陽性の場合、タズベリク(タゼメトスタット)も使用可能です。
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タズベリク(タゼメトスタット)の作用機序【悪性リンパ腫】
続きを見る
しかし、上記の治療を2回以上行ったにも関わらず抵抗性・再発を示した場合、その後の治療選択肢は限られていました。

ルンスミオ(モスネツズマブ)の構造・作用機序
体内の腫瘍細胞を除去する免疫細胞としてT細胞やNK細胞がありますが、T細胞は細胞膜表面に「CD3」と呼ばれるタンパク質を発現していることが知られています。
ルンスミオはB細胞由来の腫瘍細胞のCD20を認識する抗CD20抗体と、T細胞のCD3を認識する抗CD3抗体を組み合わせた構造を有している二重特異性抗体(バイスペシフィック抗体)です。
T細胞は体内の腫瘍細胞を発見して除去してくれる免疫細胞ですが、腫瘍細胞はそれから逃れようとしています。
ルンスミオは腫瘍細胞のCD20とT細胞のCD3を共に認識することで、腫瘍細胞とT細胞に架け橋を形成します。腫瘍細胞とT細胞が連結することで、腫瘍細胞は逃げられなくなります。

その結果、腫瘍細胞に対するT細胞の攻撃が促進され、さらにADCC(抗体依存性細胞障害)活性やDCD(補体依存性細胞障害)活性によって腫瘍細胞を除去できると考えられます。
エビデンス紹介:海外第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験
根拠となった臨床試験は海外で行われた海外第Ⅱ相臨床試験2)と、国内第Ⅰ相試験の拡大コホートです。
参考までに海外第Ⅱ相臨床試験では、完全奏効が60.0% (95% CI 49.1-70.2)と主要評価項目を達成していました。2)
副作用
重大な副作用として、
- サイトカイン放出症候群(45.9%)
- 神経学的事象(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群含む)
- 感染症:肺炎(2.8%)、菌血症(頻度不明)、敗血症性ショック(0.9%)等
- 腫瘍フレア(1.8%)
- 腫瘍崩壊症候群(0.9%)
- 血球減少:好中球減少(23.9%)、血小板減少(4.6%)、貧血(4.6%)、発熱性好中球減少症(頻度不明)等
が挙げられていますので特に注意が必要です。
サイトカイン放出症候群対策として、投与時には以下を行うこととされています。
1サイクル目(1、8及び15日目)及び2サイクル目については、本剤投与の60分前に、副腎皮質ホルモン剤を前投与すること。3サイクル目以降は、本剤の前回投与後にサイトカイン放出症候群があらわれた患者には、サイトカイン放出症候群があらわれなくなるまで、副腎皮質ホルモン剤を前投与すること。また、サイクルによらず、本剤投与の30~60分前に、必要に応じて解熱鎮痛剤や抗ヒスタミン剤を前投与すること。
なお、類薬のエプキンリ(エプコリタマブ)でもサイトカイン放出症候群が重大な副作用として挙げられています。
用法・用量
通常、成人にはモスネツズマブ(遺伝子組換え)として、21日間を1サイクルとし、
- 1サイクル目は1日目に1mg、8日目に2mg、15日目に60mg
- 2サイクル目は1 日目に60mg、
- 3サイクル目以降は1日目に30mg
を8サイクルまで点滴静注します。
8 サイクル終了時に、完全奏効が得られた患者は投与を終了し、また、病勢安定又は部分奏効が得られた患者は、計17 サイクルまで投与を継続するとされています。

収載時の薬価
収載時(2025年3月19日)の薬価は以下の通りです。
- ルンスミオ点滴静注1mg:83,717円
- ルンスミオ点滴静注30mg:2,393,055円(1日薬価:113,955円)
算定根拠については、以下の記事で解説しています。
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【新薬:薬価収載】11製品(2025年3月19日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ルンスミオはこんな薬
- 国内2製品目のCD3とCD20に共に結合可能な二重特異性抗体(バイスペシフィック抗体)
- 2つ以上の全身療法の治療歴を有する濾胞性リンパ腫に効果が期待されている
- サイトカイン放出症候群には注意が必要

エプキンリ(エプコリタマブ)との使い分け等が気になりますので、今後検討されることを期待しています。
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エプキンリ(エプコリタマブ)の作用機序【DLBCL】
続きを見る
以上、今回は少し難しかったかもしれませんが、濾胞性リンパ腫とルンスミオ(モスネツズマブ)の作用機序について解説しました!
引用文献・資料等
- 造血器腫瘍診療ガイドライン 2024年版
- 海外第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験:Lancet Oncol. 2022 Aug;23(8):1055-1065.
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