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2026年10月21日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて、ツカイザ錠(ツカチニブ)の効能・効果に「胆道がん」を追加することが承認了承されました。
現時点では胆道がんは未承認のためご注意ください。
ファイザー|ニュースリリース
基本情報
| 製品名 | ツカイザ錠50mg/150mg |
| 一般名 | ツカチニブ エタノール付加物 |
| 製品名の由来 | 特になし |
| 製造販売 | ファイザー(株) |
| 効能・効果 | 化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳がん |
| 用法・用量 | トラスツズマブ(遺伝子組換え)及びカペシタビンとの併用において、 通常、成人にはツカチニブとして1回300mgを1日2回経口投与する。 なお、患者の状態により適宜減量する。 |
| 収載時の薬価 | 50mg:2,818.40円 150mg:7,317.00円 |
| 発売日 | 2026年4月21日新発売(HP) |

2026年2月19日に「HER2陽性乳がん」を対象疾患として承認されましたが、今後は胆道がんにも使用可能となります。
今回は乳がん・胆道がんと共に、ツカイザ(ツカチニブ)の作用機序・エビデンスについて解説していきます。
乳がんの概要
2021年の女性乳がんの罹患数は約98,782人と、女性のがんの中では最も多く、約20%を占めると言われています。
手術で取り切れるような早期の乳がんでは、5年生存率は80%を超えます(StageⅠ~Ⅱでは90%を超える)ので、治癒することが可能な比較的予後の良いがんとして知られています。
ただし、発見時に手術ができない(手術不能)の乳がんや、再発した乳がんでは5年生存率は30%と、治癒を見込むのは難しくなってしまいます(基本的には延命)。
従って、日頃の観察やがん検診(マンモグラフィや超音波検査)によって、できるだけ早期に発見することが非常に重要です!!!
また、乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られていて、多くの場合、ホルモン受容体(エストロゲン受容体)陽性の乳がんです。

その他、乳がんの15%~25%は「HER2(“ハーツー”と読みます)」と呼ばれるタンパク質が細胞膜に発現していることもあり、従来は予後不良と言われていました。

早期の乳がんの治療
早期の乳がんは基本的には手術によって完全に取り除くことが可能です。
早期乳がんの中でも術後に再発リスクが高いと診断された患者さんでは、術後にホルモン療法や抗がん剤によって再発を抑える薬物療法(初期治療)が行われることがあります。
治療法については、以下の記事をご参照ください。
-

フェスゴ配合皮下注(ペルツズマブ/トラスツズマブ)の作用機序【乳がん/大腸がん】
続きを見る
転移のある乳がんの治療(手術不能)
発見時に転移がある乳がんの場合、手術はできませんので、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬)が基本となります。
転移のある乳がんの場合も、がん細胞の性質によって薬物療法の種類が異なります。
- ホルモン陽性の乳がん:ホルモン療法(タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬など)±CDK4/6阻害薬
- HER2陽性の乳がん:ハーセプチン(トラスツズマブ)±パージェタ(ペルツズマブ)±抗がん剤(タキサン系)
- ホルモンもHER2も陰性の乳がん(トリプルネガティブ乳がん):抗がん剤±免疫チェックポイント阻害薬
最も多いとされるのが、①「ホルモン陽性の乳がん」で、この場合はホルモン療法が基本で、可能であればCDK4/6阻害薬を併用します。
なお、ホルモン療法は、閉経前であればタモキシフェンが使用され、閉経後であればアロマターゼ阻害薬が使用されます。
また、近年ではCDK4/6阻害薬を併用する場合、閉経前であってもアロマターゼ阻害薬が使用されるケースがありますね(アロマターゼ阻害薬の添付文書上は適応外に該当)。1)
「②HER2陽性の乳がん」の場合にはパージェタやハーセプチンが使用でき、効かなくなった場合、二次治療としてエンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)やカドサイラ点滴静注用(トラスツズマブ エムタンシン)を使用します。
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エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)の作用機序【乳/胃/肺がん】
続きを見る
今回ご紹介するツカイザは、上記の治療にも抵抗性を示した場合に
と併用することで治療効果が期待されていますよーー!!

なお、「③ホルモンもHER2も陰性の乳がん(トリプルネガティブ乳がん)」の場合、抗がん剤が基本ですが、PD-L1が陽性の場合には免疫チェックポイント阻害薬と併用することもあります。
胆道がんとは
肝臓で生成される胆汁(主に脂肪を分解する消化液)は、肝臓内の管を通って十二指腸の乳頭部から放出されます。
この胆汁が通る管のことを「胆管」と呼んでいます。また、胆汁を一時的に貯留する器官が「胆のう」です。

胆道がんはその名の通り、胆道から発生する悪性腫瘍です。
初期にはほぼ無症状ですが、がんが進行すると、
- 黄疸
- 腹痛
- 体重減少、発熱、食欲不振、全身倦怠感
といった症状が発現してきます。3)
治療法
初期に発見できた場合、手術による切除が最も有効な治療になります。
しかし、発見時にがんが大きくて切除できない場合(局所進行)や、他の臓器に転移している場合(遠隔転移)、手術はできません。
この場合、抗がん剤による化学療法が第一選択です。初回治療(一次治療)として使用される化学療法には以下があります。4)

最近では一次治療に免疫チェックポイント阻害薬のイミフィンジ(デュルバルマブ)も併用可能になりました。
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イミフィンジ(デュルバルマブ)の作用機序と副作用【肺/胆/肝/胃/子宮体がん】
続きを見る
初回治療を行ったとしてもいずれは抵抗性が生じ、上記治療が不応となってきます。
その場合、二次治療が行われますが、残念ながら明確なエビデンスのある治療法がなく、5-FU系抗がん剤(例:S-1等)が選択されることが多いです。3)
-

ティーエスワン(TS-1)と5-FUの作用機序と特徴【抗がん剤】
続きを見る
がんの遺伝子検査でMSI-Hと診断された場合にはキイトルーダ(ペムブロリズマブ)が二次治療に行われることもありますね。3)
-

キイジェクト/キイトルーダ(ペムブロリズマブ)の作用機序【消化器がん/MSI-High固形がん】
続きを見る
今回ご紹介するツカイザは、HER2が陽性の場合、二次治療としてハーセプチン(トラスツズマブ)との併用で治療効果が期待されている薬剤です!
近年では、FGFR2融合遺伝子が陽性の場合、以下のFGFR阻害薬も使用可能になりましたね。
IDH1遺伝子変異が陽性の場合、ティブソボ(イボシデニブ)が使用されます。
-

ティブソボ(イボシデニブ)の作用機序【AML/胆道がん】
続きを見る
HER2/HER3によるがん細胞の増殖
がんの増殖に関わるタンパク質(受容体)としてHERファミリーが知られており、以下の種類があります。
- HER1(別名:EGFR)
- HER2
- HER3
- HER4
乳がんでは特にHER2が重要で、HER2を有するがん細胞では増殖シグナルが活性化されているため、予後不良とされていました。

HER2は単独でも増殖シグナルを活性化しますが、HER3と二量体を形成することでより強固なシグナル伝達が活性化され、がん細胞の増殖を促進します。
ツカイザ(ツカチニブ)の作用機序:経口HER2阻害
ツカイザはHER2の細胞内ドメインを可逆的に阻害する抗HER2阻害薬です!2)
HER2やHER2/HER3の二量体からのシグナル伝達が抑制される結果、がん細胞の増殖が抑えられると考えられていますね。


乳がんのエビデンス紹介:HER2CLIMB試験
根拠となった臨床試験(HER2CLIMB試験)をご紹介します。5)
本試験は、トラスツズマブ、ペルツズマブおよびトラスツズマブ エムタンシンの治療歴のある切除不能なHER2陽性乳がん患者さんを対象に、「トラスツズマブ+カペシタビン+ツカイザ群」と「トラスツズマブ+カペシタビン+プラセボ群」を比較した海外第Ⅱ相臨床試験です(日本人は含まれず)。
主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)*」とされ、結果は以下の通りでした。
| ツカイザ群 | プラセボ群 | |
| PFS中央値 | 7.8か月 | 5.6か月 |
| HR=0.54(95%CI:0.42-0.71) P<0.001 | ||
| 全生存期間中央値 | 21.9か月 | 17.4か月 |
| HR=0.66(95%CI:0.50-0.88) P=0.005 | ||
*PFS(無増悪生存期間):がんが増悪または死亡するまでの期間

なお、HER2CLIMB試験はアジア人が含まれていなかったため、同試験と同様の症例を対象とした日本・韓国・台湾で実施されたHER2CLIMB-03試験(単群)も実施され、HER2CLIMB試験とそん色のない結果が得られています。6)
胆道がんのエビデンス紹介:SGNTUC-019試験
胆道がんへの申請の根拠となった臨床試験(SGNTUC-019試験)をご紹介します。7)
本試験は、HER2陽性の固形がんの患者さんを対象とした国際共同第Ⅱ相バスケット試験で、胆道がんコホートでは、治療歴のあるHER2陽性(HER2高発現またはHER2遺伝子増幅)の胆道がんの患者さん30例にツカイザ+トラスツズマブが投与されました。
主要評価項目は「奏効率」とされ、結果は46.7%(90%CI:30.8-63.0)でした。
用法・用量
<乳がん>
トラスツズマブ(遺伝子組換え)及びカペシタビンとの併用において、通常、成人には1回300mgを1日2回経口投与します。
患者の状態により適宜減量
<胆道がん>
トラスツズマブ(遺伝子組換え)との併用において、通常、成人には1回300mgを1日2回経口投与します。
副作用
5%以上に認められる副作用として、食欲減退(20.9%)、疲労(36.0%)、無力症、筋骨格痛、手足症候群(64.9%)、爪の障害、下痢(72.6%)、悪心(52.1%)、口内炎(26.8%)、嘔吐(25.3%)、腹痛、消化不良などが報告されています。

重大な副作用として、
- 重度の下痢(10.6%)
- 肝機能障害:高ビリルビン血症(21.9%)、AST増加(20.0%)、ALT増加(20.0%)
- 間質性肺疾患(頻度不明)
が挙げられていますので、特に注意が必要です。
収載時の薬価
収載時(2026年4月15日)の薬価は以下の通りです。
- ツカイザ錠50mg:2,818.40円
- ツカイザ錠150mg:7,317.00円(1日薬価:29,268.00円)
算定根拠については以下の記事で解説しています。
-

【新薬:薬価収載】6製品(2026年4月15日)
続きを見る
まとめ・あとがき
ツカイザはこんな薬
- HER2を選択的に阻害する経口のHER2阻害薬
- HER2陽性乳がんの三次治療以降として、ハーセプチン(トラスツズマブ)+ゼローダ(カペシタビン)と併用する
- HER2陽性胆道がんの二次治療として、ハーセプチン(トラスツズマブ)と併用する
- 1日2回経口投与

また、一次治療としてのタキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法後に病勢進行のないHER2陽性乳がん患者における維持療法として、トラスツズマブ+ペルツズマブへのツカイザ追加投与を検証した第Ⅲ相試験(HER2CLIMB-05試験)8)も既に公表されていて、有望な結果が報告されていることから、今後は一次治療への適応拡大も待たれるところです。
その他、大腸がんや婦人科がんに対する第Ⅱ相/第Ⅲ相試験も多数進行中のため、他癌腫への適応拡大も期待できるのではないでしょうか。
Pfizer Oncology Development|Tucatinib
以上、今回は乳がんと共に、ツカイザ(ツカチニブ)の作用機序・エビデンスについて解説しました!
引用文献・資料等
- 乳癌診療ガイドライン2022年版
- Mol Cancer Ther. 2020 Apr;19(4):976-987.
- がん情報サービス|胆管がん
- 日本肝胆膵外科学会|胆道癌診療ガイドライン
- HER2CLIMB試験:N Engl J Med 2020;382:597-609
- HER2CLIMB-03試験:ClinicalTrials.gov|NCT04721977>Results Overview
- SGNTUC-019試験:J Clin Oncol. 2023 Dec 20;41(36):5569-5578.
- HER2CLIMB-05試験:J Clin Oncol. 2026 Jun 10;44(17):1597-1607.
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