12.悪性腫瘍

ツカイザ(ツカチニブ)の作用機序【乳がん】

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2026年1月29日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて「HER2陽性乳がん」を対象疾患とするツカイザ錠(ツカチニブ)の承認可否が審議される予定です!

ファイザー|申請のニュースリリース

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名 ツカイザ錠50mg/150mg
一般名 ツカチニブ エタノール付加物
製品名の由来
製造販売 ファイザー(株)
効能・効果 化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳がん
用法・用量 1日2回経口投与?
(トラスツズマブおよびカペシタビンとの併用)
収載時の薬価
発売日

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ツカイザは新規の経口HER2阻害薬ですね!

 

同様の作用機序を有する薬剤として、HER2とEGFRを阻害するタイケルブ(ラパチニブ)がありますが、ツカイザはよりHER2を選択的に阻害します。

 

今回は乳がんと共に、ツカイザ(ツカチニブ)の作用機序・エビデンスについて解説していきます。

 

乳がんの概要

2021年の女性乳がんの罹患数は約98,782人と、女性のがんの中では最も多く、約20%を占めると言われています。

 

手術で取り切れるような早期の乳がんでは、5年生存率は80%を超えます(StageⅠ~Ⅱでは90%を超える)ので、治癒することが可能な比較的予後の良いがんとして知られています。

 

ただし、発見時に手術ができない(手術不能)の乳がんや、再発した乳がんでは5年生存率は30%と、治癒を見込むのは難しくなってしまいます(基本的には延命)。

 

従って、日頃の観察やがん検診(マンモグラフィや超音波検査)によって、できるだけ早期に発見することが非常に重要です!!!

また、乳がんの発生には女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっていることが知られていて、多くの場合、ホルモン受容体(エストロゲン受容体)陽性の乳がんです。

 

その他、乳がんの15%~25%は「HER2(“ハーツー”と読みます)」と呼ばれるタンパク質が細胞膜に発現していることもあり、従来は予後不良と言われていました。

HER2陽性の乳がんの割合頻度は約15~25%

 

早期の乳がんの治療

早期の乳がんは基本的には手術によって完全に取り除くことが可能です。

早期乳がんの中でも術後に再発リスクが高いと診断された患者さんでは、術後にホルモン療法や抗がん剤によって再発を抑える薬物療法(初期治療)が行われることがあります。

 

治療法については、以下の記事をご参照ください。

フェスゴ配合皮下注(ペルツズマブ/トラスツズマブ)の作用機序【乳がん/大腸がん】

続きを見る

 

転移のある乳がんの治療(手術不能)

発見時に転移がある乳がんの場合、手術はできませんので、薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤、分子標的薬)が基本となります。

 

転移のある乳がんの場合も、がん細胞の性質によって薬物療法の種類が異なります。

  1. ホルモン陽性の乳がん:ホルモン療法(タモキシフェンやアロマターゼ阻害薬など)±CDK4/6阻害薬
  2. HER2陽性の乳がん:ハーセプチン(トラスツズマブ)±パージェタ(ペルツズマブ)±抗がん剤(タキサン系)
  3. ホルモンもHER2も陰性の乳がん(トリプルネガティブ乳がん):抗がん剤±免疫チェックポイント阻害薬

 

最も多いとされるのが、①「ホルモン陽性の乳がん」で、この場合はホルモン療法が基本で、可能であればCDK4/6阻害薬を併用します。

なお、ホルモン療法は、閉経前であればタモキシフェンが使用され、閉経であればアロマターゼ阻害薬が使用されます。

 

また、近年ではCDK4/6阻害薬を併用する場合、閉経であってもアロマターゼ阻害薬が使用されるケースがありますね(アロマターゼ阻害薬の添付文書上は適応外に該当)。1)

 

「②HER2陽性の乳がん」の場合にはパージェタやハーセプチンが使用でき、効かなくなった場合、二次治療としてエンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)やカドサイラ点滴静注用(トラスツズマブ エムタンシン)を使用します。

エンハーツ(トラスツズマブ デルクステカン)の作用機序【乳/胃/肺がん】

続きを見る

 

今回ご紹介するツカイザは、上記の治療にも抵抗性を示した場合に

と併用することで治療効果が期待されていますよーー!!

 

木元 貴祥
木元 貴祥
基礎研究では、ツカイザとトラスツズマブを併用することで相加的に抗腫瘍効果を発揮すると報告されていましたね。2)

 

なお、「③ホルモンもHER2も陰性の乳がん(トリプルネガティブ乳がん)」の場合、抗がん剤が基本ですが、PD-L1が陽性の場合には免疫チェックポイント阻害薬と併用することもあります。

 

HER2/HER3によるがん細胞の増殖

がんの増殖に関わるタンパク質(受容体)としてHERファミリーが知られており、以下の種類があります。

  • HER1(別名:EGFR)
  • HER2
  • HER3
  • HER4

 

乳がんでは特にHER2が重要で、HER2を有するがん細胞では増殖シグナルが活性化されているため、予後不良とされていました。

HER2/HER3によるがん細胞の増殖:HER2とHER3の二量体が重要

 

HER2は単独でも増殖シグナルを活性化しますが、HER3と二量体を形成することでより強固なシグナル伝達が活性化され、がん細胞の増殖を促進します。

 

ツカイザ(ツカチニブ)の作用機序:経口HER2阻害

ツカイザはHER2の細胞内ドメインを可逆的に阻害する抗HER2阻害薬です!2)

HER2やHER2/HER3の二量体からのシグナル伝達が抑制される結果、がん細胞の増殖が抑えられると考えられていますね。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
HER2選択的であることから、EGFR関連の毒性(例:下痢、皮膚障害)の低減も期待されていますよ。

 

エビデンス紹介:HER2CLIMB試験

根拠となった臨床試験(HER2CLIMB試験)をご紹介します。3)

本試験は、トラスツズマブ、ペルツズマブおよびトラスツズマブ エムタンシンの治療歴のある切除不能なHER2陽性乳がん患者さんを対象に、「トラスツズマブ+カペシタビン+ツカイザ群」と「トラスツズマブ+カペシタビン+プラセボ群」を比較した海外第Ⅱ相臨床試験です(日本人は含まれず)。

 

主要評価項目は「無増悪生存期間(PFS)*」とされ、結果は以下の通りでした。

ツカイザ群 プラセボ群
PFS中央値 7.8か月 5.6か月
HR=0.54(95%CI:0.42-0.71)
P<0.001
全生存期間中央値 21.9か月 17.4か月
HR=0.66(95%CI:0.50-0.88)
P=0.005

*PFS(無増悪生存期間):がんが増悪または死亡するまでの期間

 

木元 貴祥
木元 貴祥
PFSと全生存期間の有意な延長が示されていますね!

 

なお、HER2CLIMB試験はアジア人が含まれていなかったため、同試験と同様の症例を対象とした日本・韓国・台湾で実施されたHER2CLIMB-03試験(単群)も実施され、HER2CLIMB試験とそん色のない結果が得られています。4)

 

用法・用量

正式承認後に更新予定です。

臨床試験では、トラスツズマブおよびカペシタビンとの併用において、1回300mgを1日2回経口投与とされていました。

 

副作用

後日更新予定です。

臨床試験では、下痢、手足症候群、悪心、倦怠感、嘔吐などが報告されていました。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

ツカイザはこんな薬

  • HER2を選択的に阻害する経口のHER2阻害薬
  • HER2陽性乳がんの三次治療以降として、ハーセプチン(トラスツズマブ)+ゼローダ(カペシタビン)と併用する
  • 1日2回経口投与

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ツカイザは、新たな治療選択肢として期待できそうですね!

 

また、一次治療としてのタキサン+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法後に病勢進行のないHER2陽性乳がん患者における維持療法として、トラスツズマブ+ペルツズマブへのツカイザ追加投与を検証した第Ⅲ相試験(HER2CLIMB-05試験)5)も既に公表されていて、有望な結果が報告されていることから、今後は一次治療への適応拡大も待たれるところです。

 

その他、大腸がんや胆道がん、婦人科がんに対する第Ⅱ相/第Ⅲ相試験も多数進行中のため、他癌腫への適応拡大も期待できるのではないでしょうか。

Pfizer Oncology Development|Tucatinib

 

以上、今回は乳がんと共に、ツカイザ(ツカチニブ)の作用機序・エビデンスについて解説しました!

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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