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アナエブリ(ガラダシマブ)の作用機序【遺伝性血管性浮腫(HAE)】

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2025年1月30日、厚労省の薬事審議会・医薬品第二部会にて「遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制」を対象疾患とするアナエブリ皮下注(ガラダシマブ)の承認が了承されました!

CSLベーリング|ニュースリリース

現時点では未承認のためご注意ください。

基本情報

製品名 アナエブリ皮下注200mgペン
一般名 ガラダシマブ(遺伝子組換え)
製品名の由来
製造販売 CSLベーリング(株)
効能・効果 遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制
用法・用量 通常、成人及び12歳以上の小児には、ガラダシマブ(遺伝子組換え)として
初回に400mgを皮下投与し、以降は200mgを月1回皮下投与する。
収載時の薬価
発売日

 

遺伝性血管性浮腫(HAE)は稀な疾患でこれまで治療選択肢が限られていました。

発作の発症抑制としては、HAEでは初の経口薬のオラデオ(ベロトラルスタット)が2021年に承認されていますが、まだまだ治療選択肢が少ないのが現状です。

 

2022年には2~4週毎の皮下注投与製剤であるタクザイロ皮下注(ラナデルマブ)も登場しています。

タクザイロ(ラナデルマブ)の作用機序【遺伝性血管性浮腫(HAE)】

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木元 貴祥
木元 貴祥
今回ご紹介するアナエブリは新規の作用機序(抗FⅫa抗体)を有するため、新たな治療選択肢として期待できると思われます!

 

今回はHAEの疾患と共にアナエブリ(ガラダシマブ)の作用機序を解説していきます。

 

遺伝性血管性浮腫(HAE)とは

遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema: HAE)は全身の皮下や粘膜に「浮腫(むくみ)」が起こる疾患で、遺伝的要素が多いとされています。

※HAEの読み方ですが、「ハエ」や「エイチエーイー」と呼ばれます

 

浮腫が起こる部位によって症状が異なりますが、多い部位としては手足や消化管、咽頭と言われています。

  • 手足の皮膚:手や足がむくんでしまう
  • 消化管:激しい腹痛と共に悪心・嘔吐・下痢が起こる
  • 咽頭:呼吸困難

 

原因

生体内には「ブラジキニン」と呼ばれる炎症性物質が存在していますが、通常は「C1-インヒビター(別名:C1-インアクチベーター)」と呼ばれる物質によってその産生までのカスケードが抑制(制御)されています。

※上記イラストはカリクレインを例にしていますが、それ以外の経路もC1-インヒビターによって抑えられていると考えられています。

 

しかしHAEでは遺伝的要因等によってC1-インヒビターが欠損もしくは活性が低下してしまっている状態です。1)

 

木元 貴祥
木元 貴祥
この結果、ブラジキニンが過剰に産生されてしまい、HAEの発症・急性発作が発症すると考えられています。

HAEにおけるブラジキニンの産生のカスケード:血液凝固第Ⅻ因子から始まって、ブラジキニンB2受容体までの図

 

治療

HAEの症状が起こった場合(急性発作時)、C1-インヒビター製剤の補充療法やフィラジル(イカチバント)の投与を行います。1)

ベリナート(ヒトC1-インアクチベーター)の作用機序【遺伝性血管性浮腫(HAE)】

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ベリナートは静注製剤のため、自己注射はできず、病院等で投与する必要がありましたが、フィラジルは自己注射も可能ですね。

 

予防

HAEの急性発作の発症抑制(長期予防)を目的として使用できる薬剤は、2021年に登場した初の経口薬のオラデオ(ベロトラルスタット)などがあります。

オラデオ(ベロトラルスタット)の作用機序【遺伝性血管性浮腫(HAE)】

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オラデオは経口で簡便に予防が可能ですが、連日服用する必要がありました。

 

ガイドラインにおいては、副作用や患者さんの状態などを考慮した上で、以下の選択肢が同列で推奨されています。1)

 

木元 貴祥
木元 貴祥
今回ご紹介するアナエブリは、タクザイロと同様の皮下注製剤で、4週間に1度の投与で予防が可能です!

 

その他、侵襲を伴う処置(例:歯科治療、出産、小手術)を行うと、HAEの発作が引き起こされることがあり、その発症抑制としてはC1-インヒビター製剤(ベリナート)が用いられます。

侵襲を伴う処置のHAE発作抑制に対してはオラデオ、タクザイロ、アナエブリも適応外

 

アナエブリ(ガラダシマブ)の作用機序:抗FⅫa抗体薬

これまでのHAE予防薬・治療薬は、ブラジキニンの産生における下流のカスケード(キニノーゲンからの変換阻害や、ブラジキニンの受容体遮断)をターゲットとしていました。

 

今回ご紹介するアナエブリは、より上流のカスケードをターゲットとしている薬剤です。

アナエブリは、カリクレインが産生される際に重要な「活性化血液凝固第Ⅻ因子(FⅫa)」を阻害するモノクローナル抗体薬で、より上流を阻害することで、それより下流の各因子およびブラジキニンの産生を抑制し、HAEの進行を抑制すると考えられています。

アナエブリ(ガラダシマブ)の作用機序:抗FⅫa抗体薬

 

木元 貴祥
木元 貴祥
疾患の原因となるカリクレインやブラジキニンの産生を抑制できるといった作用機序ですね。国内初の機序です!

 

エビデンス紹介:VANGUARD試験

根拠となった臨床試験(VANGUARD試験)をご紹介します。2)

本試験は12歳以上のHAE患者さんを対象に、プラセボ群とアナエブリ群の有効性・安全性を検証した国際共同第Ⅲ相臨床試験です。

 

主要評価項目は「HAEの月間平均発作回数」とされ、結果は以下の通りでした。

プラセボ群 アナエブリ群
HAEの月間平均発作回数 2.01回 0.27回
平均差: -87%(95%CI:-96~-58)、
P<0.0001

 

木元 貴祥
木元 貴祥
プラセボと比較して、有意に発作回数の減少が認められていますね!

 

副作用

後日更新予定です。

臨床試験では、 上気道感染症、 鼻咽頭炎、 頭痛などが認められていました。

 

用法・用量、在宅自己注射

通常、成人及び12歳以上の小児には、ガラダシマブ(遺伝子組換え)として初回に400mgを皮下投与し、以降は200mgを月1回皮下投与します。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
ペン製剤のため、在宅自己注射も期待できそうです。

 

収載時の薬価

現時点では未承認かつ薬価未収載です。

 

まとめ・あとがき

アナエブリはこんな薬

  • HAEの急性発作の発症抑制として使用する
  • 活性化血液凝固第Ⅻ因子(FⅫa)を阻害し、ブラジキニンの産生を抑制する
  • 月1回の皮下注投与

 

HAEは稀な疾患ですが、これまで急性発作予防に使用できる薬剤は限られていました。

 

木元 貴祥
木元 貴祥
アナエブリは月1回の皮下注で予防可能ですので、新たな選択肢として期待できるのではないでしょうか。

 

他の薬剤についても併せてご確認くださいませ♪

 

以上、今回は遺伝性血管性浮腫(HAE)とアナエブリ(ガラダシマブ)の作用機序についてご紹介しました。

 

 

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  • この記事を書いた人

木元 貴祥

株式会社PASS MED(パスメド)代表

【保有資格】薬剤師、FP、他
【経歴】大阪薬科大学卒業後、外資系製薬会社「日本イーライリリー」のMR職、薬剤師国家試験対策予備校「薬学ゼミナール」の講師、保険調剤薬局の薬剤師を経て現在に至る。

今でも現場で働く現役バリバリの薬剤師で、薬のことを「分かりやすく」伝えることを専門にしています。

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