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2025年3月6日、厚労省の薬事審議会・医薬品第一部会にて、「閉塞性肥大型心筋症」を対象疾患とするカムザイオス（マバカムテン）の承認が了承されました！
現時点では未承認のためご注意ください。
基本情報
| 製品名 | カムザイオスカプセル5mg/2.5mg/1mg |
| 一般名 | マバカムテン |
| 製品名の由来 | |
| 製造販売 | ブリストル・マイヤーズスクイブ（株） |
| 効能・効果 | 閉塞性肥大型心筋症 |
| 用法・用量 | 通常、成人にはマバカムテンとして2.5mgを1日1回経口投与から開始し、 患者の状態に応じて適宜増減する。 ただし、最大投与量は1回15mgとする。 |
| 収載時の薬価 | |
| 発売日 |
これまで、肥大型心筋症に対して承認されている薬剤はありませんでしたので、新たな治療選択肢として期待されていますよ～！
今回は肥大型心筋症とカムザイオス（マバカムテン）の作用機序について解説します。
まずは基礎知識のおさらいとして、筋収縮におけるアクチンとミオシンについて簡単な紹介からです！
筋収縮とアクチン・ミオシン
筋肉が収縮することとは、筋肉細胞（筋線維）が短くなることを意味します。この動作によって、私たちは動いたり物を持ち上げたりすることができます。
筋肉の中には「アクチン」と「ミオシン」という2種類の細長いタンパク質フィラメントがあり、これらが互いに滑り込むことによって、筋肉は収縮します。
さて、筋収縮が起こる際には、ミオシンの頭部がアクチンに結合します（クロスブリッジと呼びます）。
このとき、ミオシンはアクチンを引っ張ることで、アクチンとミオシンが互いに滑り込み、筋線維が短くなります。
肥大型心筋症（HCN）とは
肥大型心筋症（HCN：hypertrophic cardiomyopathy）は、原発性の心室肥大（通常左心室、ときに右心室の肥大）をきたす心筋疾患です。1)
左室流出路（左心室から血液が出ていく部位）の閉塞の有無により閉塞性と非閉塞性に大別されます。
今回ご紹介するカムザイオスは、閉塞性の肥大型心筋症に使用しますね。
大部分の場合、初期には無症状もしくは僅かな症状のみとされていますが、場合によっては不整脈に伴う動悸やめまい、運動時の呼吸困難・胸の圧迫感などが現れることがあります。
しかし、無治療で放置してしまうと、心機能（拡張機能と収縮機能）が低下し、心不全や心房細動を起こすため、血栓塞栓性脳卒中のリスクが上昇します。
また、突然死はHCM関連死の約40%を占め、HCMの最も重大な死因のひとつです。2)
原因
心筋収縮関連蛋白の遺伝子異常が主な病因であると考えられているものの、明確な機序は解明されていません。
何らかの遺伝子異常の結果、過剰なミオシン頭部がアクチンとクロスブリッジを過形成することで、心筋の過収縮が起きていると考えられています。
常に筋収縮が起こっていることから、心臓のATPも過剰に消費されている状態です。
治療
これまで、閉塞性のHCNに適用を有する薬剤はありませんでしたが、対症療法として以下の薬剤などが使用されていました。2)
- β遮断薬
- カルシウム拮抗薬（ベラパミル、ジルチアゼムなど）
- 抗不整脈薬（ジゾピラミド、シベンゾリンなど）
カムザイオス（マバカムテン）の作用機序
カムザイオスは、ミオシン頭部に結合してミオシンとアクチンのクロスブリッジを可逆的に阻害するミオシン阻害薬です。3)
カムザイオスがミオシンの働きを抑制することで、心筋における過度な筋収縮を抑制し、ATPの消費も抑制することから、HCNの進行抑制・心保護作用が期待されています！
エビデンス紹介：EXPLORER-HCM試験
根拠となった代表的な臨床試験（EXPLORER-HCM試験）をご紹介します。4)
本試験は閉塞性のHCN患者さんを対象に、カムザイオスとプラセボを比較する国際共同第Ⅲ相臨床試験です。
本試験の主要評価項目は「30週後の臨床反応*」とされ、結果は以下の通りでした。
| カムザイオス | プラセボ | |
| 30週後の臨床反応 | 37％ | 17％ |
| 差：19.4％（95％CI:8.7-30.1％） P＝0.0005 |
||
*臨床反応：最大酸素摂取量（pVO2）の1.5mL/kg/分以上の増加かつNYHA心機能分類の1度以上の改善、または、pVO2の3.0mL/kg/分以上の増加かつNYHA心機能分類の悪化がないことと定義
なお、国内でも単群の臨床試験が行われ、海外臨床試験と遜色のない結果が報告されています（HORIZON-HCM試験）。5)
副作用
後日更新予定です。
用法・用量
通常、成人にはマバカムテンとして2.5mgを1日1回経口投与から開始し、患者の状態に応じて適宜増減します。
ただし、最大投与量は1回15mgとされています。
収載時の薬価
現時点では未承認かつ薬価未収載です。
まとめ・あとがき
カムザイオスはこんな薬
- 国内初の閉塞性HCNの治療薬
- 国内初のミオシン阻害薬
- ミオシンの働きを抑制することで、心筋における過度な筋収縮を抑制する
これまで、肥大型心筋症に対して承認されている薬剤はありませんでしたので、新たな治療選択肢として期待できるのではないでしょうか。
今回は肥大型心筋症とカムザイオス（マバカムテン）の作用機序について解説しました！
参考資料・論文
- 難病情報センター｜肥大型心筋症（指定難病５８）
- 日本循環器学会 ｜心筋症診療ガイドライン（2018年改訂版）
- Eur Heart J. 2023 Nov 21;44(44):4622-4633.
- EXPLORER-HCM試験：Lancet. 2020 Sep 12;396(10253):759-769.
- HORIZON-HCM試験：Circ J. 2024 Dec 25;89(1):130-138.
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